除染地区拡大で天文学的数字の費用 国の負担「100兆円」超える恐れも
J-CASTニュース 10月4日(火)19時32分配信
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「年間1ミリシーベルト以上」は広範囲に及ぶ(文部科学省「航空モニタリング」より) |
当初、政府は1ミリ以上5ミリシーベルト未満の場所は線量の高い場所をスポット的に除染することを念頭にしていたが、対象地域が大幅に広がることになる。福島、栃木、群馬の3県をまるごと覆いそうな面積で、財政支援が想定外の膨大な金額に上る恐れが現実的になってきた。
■毎時0.1マイクロシーベルト以下は会津の一部しかない
1~5ミリシーベルトの地域の除染は、細野豪志環境相兼原発事故担当相が2011年10月2日、福島県の佐藤雄平知事に「国の責任でやる」と財政支援を約束したものだ。その数日前、環境省は2012年度予算の概算要求に、除染や放射能汚染の廃棄物処理として4500億円以上の金額を盛り込んだ。だが1~5ミリシーベルト地域が全面的に加われば、負担額の拡大は免れない。
福島県内で、年間1ミリシーベルト以上に該当する地域はどれほどあるのか。県の環境回復チームに尋ねると、例えば同じ学校内でも校庭と側溝、草木のある場所では線量が違うことから、「現在精査している最中」だという。
そこで、文部科学省が9月12日に公表した航空モニタリングの測定結果を目安とした。地表面から1メートルの高さの空間線量率のデータを見ると、毎時の放射線量が示されている。毎時0.114マイクロシーベルトを浴び続けると年間1ミリシーベルトに達する計算になるが、地図上で毎時0.1マイクロシーベルト以下の地域は、主に会津地方の一部に見られるに過ぎない。ただし文科省に聞いても、面積の具体的な数字までは算出していないという。
航空モニタリングはこれまで東北と関東の計8県で実施されているが、栃木県北部や群馬県北部、埼玉県西部、茨城県南部、千葉県北部でいずれも毎時0.1マイクロシーベルトを超えている地域が多く見られる。大まかな目算だが、該当地域をすべて合わせると福島、栃木、群馬の3県をまるごと覆いそうな面積に見える。細野環境・原発相は10月4日、福島県以外でも年間1ミリシーベルト以上であれば除染の際の支援をすると表明した。3県の面積の合計は約2万5700平方キロメートル。これだけの土地を除染するとなれば、費用も年月も相当かかることは間違いない。
■福島の「年5ミリシーベルト以上地域」だけで118兆円?
経済学者の池田信夫氏はブログで、福島県内で「年間5ミリシーベルト以上」に該当する地域が県全体の17.5%に当たるとした。計算すると約2412平方キロメートルだ。さらに池田氏は、かつて公害病のひとつ「イタイイタイ病」で問題となったカドミウムの除染で投じられた金額を適用した。政府が負担したのは、1500~1600ヘクタールで8000億円と言われている。これを当てはめると、除染費用は118兆円になるという。
これが「年間1ミリシーベルト以上」となれば膨大な金額に上る。文科省の航空機モニタリングで、確実に年間1ミリシーベルトに達する「毎時0.2マイクロシーベルト」以上に色分けされた地域を見ると、福島県1県分に相当しそうだ。県の総面積は1万3782平方キロメートル。これにカドミウム除染の費用をかけると、約689兆円となった。さらに「毎時0.1マイクロシーベルト」なら、該当面積は先述の通り福島、栃木、群馬3県分にも達し、その額は実に1285兆円。
■「0.5マイクロシーベルト以下にするのは非常に難しい」
もちろん、人の住んでいない山間部まで除染するのかどうかも不明だし、カドミウム除染の費用がそのまま今回の原発事故に伴う除染の金額と一致するわけでもない。航空モニタリングによる線量マップも参考値に過ぎない。それでも費用が天文学的数字になるのは確実で、池田氏がブログで「年間5ミリシーベルトの除染は財政的に不可能であり、1ミリシーベルト以上は空想の世界」と表現したのもうなずける。
一口に除染と言っても、地面の表土を削り取るだけではない。建物であれば壁や屋根の洗浄と拭きとり、道路や公園なら側溝にたまった泥や枯葉の除去、森林の場合は樹木の枝切りや伐採と作業は多岐にわたる。東京大学アイソトープ総合センター長の児玉龍彦教授は、2011年7月27日に開かれた衆院厚生労働委員会でこの点を指摘し、自身の手による除染の実体験を基に「(毎時)0.5マイクロシーベルト以下にするのは非常に難しい」と話した。
児玉教授はさらに、除染に民間の技術を結集して「除染研究センター」を設置しないと、「何十兆円という国費がかかるのを、利権がらみの公共事業になりかねない」と、怒気を含んだ口調で話した。だがそれ以前に、今のままでは「何十兆円」で済まない事態にすら陥りかねない。
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