福島県と福島県立医科大学の横暴がまたでました



作成: 本田 紀生 日時: 2011年9月27日 18:47より

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福島県の横暴、福島県立医大の悲劇

小松秀樹

2011年9月27日 MRIC by 医療ガバナンス学会 発行  http://medg.jp
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○報道
福島民報(2011年9月20日)によれば、福島県と福島県立医大は、総事業費約1千億円で330床を有する放射線医学県民健康管理センターなど5施設を、5年以内に新設しようと計画しています。これを、東日本大震災の復興計画として、国の第三次補正予算案に盛り込むよう求めています。
復興とは、被災者の生活が再建されることです。私は、東北大学による東北メディカル・メガバンク構想に対する批判で、復興予算を使うことを正当化するための4条件を提案しました。(「東北メディカル。メガバンク構想の倫理的欠陥」http://medg.jp/mt/2011/09/vol268.html#more)

1.地元の被災者の生活の維持と再建に直結すること
2.被災者の雇用に直結すること
3.被災者を多数雇用する地元企業にお金が落ちること
4.被災地を後にした被災者の再就職と生活再建に直結すること

福島県立医大の計画は、東北メディカル・メガバンク構想と同様、被災者の生活再建とは無縁です。復興予算の受益者は、福島県立医大ではなく、浜通りの被災者であるべきです。日本では、火事場泥棒のような予算要求がこれまでも横行し、実際に認められ、発展を阻害してきました。日本を腐らせてきたと表現する方が適切かもしれません。大震災を機に、この悪しき習慣を廃するべきです。

○計画概要
記事を読む限り、盛りだくさんの内容です。まとめると下記5事業です。

1.医療施設の拡充
がんの早期治療を担うために、330床の放射線医学県民健康管理センターを新設する。附属病院にある甲状腺外科、血液内科、放射線科、皮膚科、小児科、産科を移す。このために、9階建て・延べ床面積2万9千平方メートルの壮大な箱を建設する。
画像診断のための施設として、分子イメージング施設を2か所に設置する。PET、高解像度CT、ホールボディカウンターなどを設置する。
2.がん治療薬の開発
創薬・治験センターを新設する。
3.被ばく者健康管理
被曝医療専門講座を新設する。全県民を対象とした健康管理調査を行い、結果を集積・解析する。
4.医学部の定員増
医師養成数を増やし、公的病院に派遣する。
5.医療産業振興
放射線関連の医療産業の集積に取り組む。

○計画の問題点
1.医療施設の拡充
現在、附属病院は778床の病床をもてあまし気味だと聞いています。病床利用率と平均在院日数を調べれば、実態は簡単に分かります。果たして、330床は活用できるのでしょうか。附属病院から診療科を移すとすれば、附属病院はガラガラになるのではないでしょうか。病院は膨大な赤字を生みます。
もし、330床を増床するとすれば、株式会社の社長が、株主に大きな事業計画を説明するように、事業計画を、責任を持って納税者に説明できるのでしょうか。国、県が赤字補てんを続けることになる可能性が高いと思いますが、そうなった場合の責任は誰がとるのでしょうか。
赤字が増えると、福島県立医大付属病院の運営費はどう考えても削られます。公的施設だとしても、事業計画がずさんだと、その後の経営を蝕みます。財政破綻をきたした自治体の行政サービスと同じで、診療水準が下がります。診療を担当している福島県立医大の診療科の教授たちは、この計画を知らされていなかったと聞いています。果たして納得するでしょうか。

一部では、復興予算を、病棟の建て直しと医療機器の充実に回そうとしているのだと言われています。これが本当なら、被災者はだしに使われただけで、震災と関係のない計画です。ホールボティカウンターは、予算の体裁を整えるためかもしれません。実際、ホールボティカウンターが切実に求められた時期はすでに過ぎました。通常の病院は、診療で得た収入で病棟を建設し、医療機器を購入します。この計画は、真面目に診療している全国の病院を愚弄するものです。
そもそも、福島県内で医療サービスが足りずに困っているのは浜通りです。福島市ではありません。警戒区域の病院は閉鎖されました。緊急時避難準備区域のすべての病院で収入が激減しました。一部の病院では、被災地の医療を維持するために、職員の給与が大幅に削減されています。復興予算を使うのなら、浜通りの医療機関を援助すべきです。

2.がん治療薬の開発
福島県立医大に、がん治療薬の開発が果たして可能でしょうか。過去、がん治療薬を開発したことがあるのでしょうか。そもそも、開発しようとしたことがあるのでしょうか。福島県立医大に創薬の下地があるのでしょうか。どう考えても創薬は無理です。福島県立医大は、これまで、医師養成と通常の医療を行ってきただけです。これだけでも、きちんとできれば、立派な仕事です。
日本の製薬メーカーにとって、膨大な費用がかかる新薬開発は難しくなっています。世界のメガファーマが、許認可を含めて開発環境の悪い日本で、しかも、研究実績が高いとは言えない福島県立医大と協力関係を結ぶとは思えません。
実現できるはずのない事業を持ちかけて、お金を出させることを、日本語では詐欺と言います。国会は詐欺を正当化するための機関ではないはずです。

3.被ばく者健康管理
福島県・福島県立医大は浜通りの被災者から信頼されていません。この状況で無理に健康管理を県民に押し付けても、さらなる離反を招くだけではないでしょうか。理由を思いつくままに箇条書きにします。
1)福島県立医大は、原発事故後、浜通りの医療機関から一斉に医師を引き上げた。
2)福島県立医大は、被災地で本格的な救援活動をしなかった。
3)福島県は、南相馬市の緊急時避難準備区域に住民が戻った後も、法的権限なしに、入院病床を再開するのを拒否し続けた。
4)福島県立医大副学長に就任した山下俊一氏は、原発事故後早い段階で、過度に、安全・安心をふりまいた。子供の被曝を助長した可能性があると親たちから恨まれた。被災地の住民の中でリコール運動が起きている。
5)福島県・福島県立医大は、放射線被ばくについての被災者の不安が強かったにも関わらず、健康診断や健康相談を実施しようとしなかった。しびれを切らした市町村が、県外の医師たちに依頼して健診を始めたところ、県はやめるよう圧力をかけた。
急がないといけない場所についても、県は除染を開始しようとしなかった。このため、市町村が外部の専門家と一緒に除染を開始した。
6)福島県は、健診に一切寄与しなかったにもかかわらず、地元の市町村が独自に行った健診結果を県に報告せよ、ついては、個人情報を出すことについての了解を地元で取れと指示した。県や福島県立医大の職員は、健診場所に来ていない。常識外れの傲慢な行動と言わざるを得ない。
7)地元の病院には、甲状腺の専門家や甲状腺の超音波検査に習熟した技師がいない。そこで、地元の病院の院長が、他県の専門機関の協力を得て、小児の甲状腺がんの健診体制を整えようとした。講演会や人事交流が進められようとしていた矢先、専門機関に対し山下俊一氏と相談するよう圧力がかかり、共同作業が不可能になった。関係者はこれまでの経緯から、福島県が横やりを入れたと推測した。
8)福島県立医大は、学長名で、被災者を対象とした調査・研究を個別に実施してはならないという文書を各所属長宛てに出した。行政主導で行うからそれに従えとの指示である。
9)福島県・福島県立医大は、住民の生活上の問題や不安に向き合おうとしてこなかった。福島県の健康調査について、住民は、実験動物として扱われていると感じ始めている。

4.医師養成と公的病院への派遣
福島県立医大の定員増が、そのまま福島県の医師を増やすことにはつながりません。福島県庁は日本の医師の信頼を失っており、福島県は医師として働くのに適さない場所だと思われています。
二つの有名な事件を紹介します。福島県は、いずれの事件でも自らの責任問題を解決していません。多くの医師は、同じことが今後も繰り返されるだろうと思っています。
1)福島県庁は、大野病院事件で死亡した妊婦の家族への賠償金支払いを容易にするために、医師に過失があったとする報告書を作成し、刑事訴追を誘発した。最終的に医師は無罪になったが、この事件は、日本の医療を危機的状況に追い込んだ。
2)大野病院の約2km南に双葉病院がある。共に原発まで約5km。双葉病院は、原発事故で、電気、水道、外部との通信が断たれた。避難誘導が中断された後、院長を含めて残った6名の職員が、2日間、孤立無援のまま200名を超える患者を守り続けた。搬送が再開された後3号炉の水素爆発が生じた。職員は、警察に強制されて、病院を一時的に退避した。自衛隊との待ち合わせ場所が食い違い、最終搬送に合流できなかった。福島県災害対策本部が実情を調査しないまま「病院関係者の付き添いはなかった」と発表したため、報道機関が、いっせいに「患者を見捨てて逃げた」と病院を非難した。当時、双葉町役場そのものも避難し、混乱していた。避難誘導の責任は、福島県災害対策本部にあったのではないか。

5.医療産業振興
福島県は、放射能汚染、風評被害によって、投資場所として新たなハンディを負いました。株式会社では、義侠心も経済合理性で裏打ちされていなければなりません。明らかに損になるとすれば、株主に対する背任です。
コンビニエンスストアチェーンのローソンは、新浪社長を先頭に、被災地で大活躍しました。一連の活動は、社会のインフラとしてのコンビニの立場をさらに強めました。長期的に見れば、経済合理性のある企業活動です。
震災のなかった他の県でも企業誘致は盛んです。私には、原発事故を乗り越えて、医療産業に投資させるための経済合理性のある誘致策が想像できません。税の無駄遣いを排除するために、説得力のある誘致策が提示されなければ、予算に組み込むべきではありません。

○学問における批判精神と政治における立憲主義
福島県個別の問題から、話題を変えます。
まず、学問における批判精神についてです。盲目的に行政に従えというのは、学問に必須の批判精神を捨てよというのに等しいことです。日本では、批判精神を行政に売り渡すことが、学者としての出世の条件になっています。日本の学会の中心的学者は、研究班の班長職や審議会の委員職を得るために、行政にすり寄ります。自らの権威を行政に認定してもらおうとします。

日本原子力学会は、学会自身が反省しているように、批判精神が欠如していました。学会が学問の場ではありませんでした。権威と研究費を独占した原子力ムラが、批判精神の阻害要因でした。批判精神の排除が、原子力発電の安全性を損なう方向に働いたと思います。
実際には、批判精神がなければ、学問的真理についての真剣な議論が成立せず、学問になりません。批判は、けなすことではなく、正しく評価することです。結果として研究者を勇気づけることもしばしばあります。権力が学問における正しさの決定に関与すれば、ガリレオの宗教裁判になります。日本の学問が世界の一流になれない最大の理由は、批判精神が足りないことにあるかもしれません。

もう一つは、近代立憲主義の意味です。行政権力にタガをはめて常に監視していないと専制を招くという考え方です。近代国家は、市民革命によって専制を乗り越えて成立しました。日本国憲法は、「人権保障と権力分立原理を採用し、権力を制限して自由を実現するという立憲主義の思想」(『立憲主義と日本国憲法』高橋和之、有斐閣)を基礎にしています。憲法は公務員に憲法擁護義務を負わせていますが、一般国民には負わせていません。人権を侵すのは公権力であり、憲法は国民に戦えと命じています。すなわち、憲法12条前段は「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によって、これを保持しなければならない」としているのです。福島県が震災以後行ってきたことは、近代立憲主義が実際に必要であることを示す具体例です。

○復興に県は必要か
話を被災地に戻します。
福島県は、原発事故後、住民が切望している施策を迅速に実施しようとしませんでした。民間の組織や個人、市町村が動こうとすると、県が邪魔をしました。私自身、震災でいくつかの救援活動に関わりましたが、福島県は、阻害要因にしかなりませんでした。県民に対して悪意を持っているのではないかと思ったほどです。国と市町村だけなら、もっと機動的に動けたはずです。

復興では、県の役割はさらに小さくならざるを得ません。市町村ごとに個別事情がまったく異なるからです。私は、9月23日、桜井南相馬市長、立谷相馬市長から、別々に、長時間お話をうかがう機会を得ました。両市は、隣り合っていますが、状況、課題がまったく異なっていることが良く分かりました。
三陸の被災地の事情も、それぞれ大きく異なります。例えば、1本松が象徴になっている陸前高田市は、市街地の建物の大半が消滅しました。市街地の広い地域が海面とほとんど同じ高さになりました。絶望的ですが問題を設定しやすいと思いました。一方で、釜石市の中心街では、建物は残っていましたが、全ての店舗の1階が破壊されていました。震災から半年後、人が住んでいる様子はなく、ほとんどがそのままになっていました。今も停電しているのか、信号機が動いていませんでした。釜石市の1970年の人口は72,923人、2010年の人口は39,578人。2020年までの10年間で、さらに18%人口が減少すると、2008年段階で推計されていました。震災前にも、中心街はシャッターが閉じられた店舗が多かったはずです。所有者も高齢者が多かったはずです。所有者による再建は期待できません。所有者が若くても、需要の大幅縮小が予想される状況で、店舗への投資を躊躇するのは当たり前です。よほどの権限を、釜石市に与えない限り、所有権に阻まれて、中心街は現状のまま使われずに放置されるでしょう。陸前高田市と釜遂u椈ケ圓諒悊┐詭簑蠅呂泙辰燭・曚覆蠅泙后・・錫鮠w)w)錫鮠w)住民にとって意味のある復興を迅速に行うために、特別法を制定して、県の役割をなくして、財源と権限を市町村に移すべきです。県に復興計画を求めるから、火事場泥棒になってしまうのです。市町村ごとの状況が大きく異なるところで、県に大きな計画を提案させると、被災者の具体的問題からかけ離れてしまうのは当たり前です。被災者の生活に関わる重要な決定は、被災地の市町村しか下せません。県が踏み込んだ決定を下すには、正当性を支える根拠が弱すぎます。市長村長は住民の投票で選ばれます。本気で復興するためには、国が市町村を直接支援するような仕組みにするべきです。

憲法92条は、「地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める」と規定しています。「地方自治の本旨」には、「住民自治」と「団体自治」の二つの意味があるとされています。「住民自治」とは、地方公共団体の運営が住民の意思によって行われるべきことを意味します。

「団体自治」とは、ひとまとまりの地方の運営は、国とは独立した、すなわち、国の言いなりにならない統治機構により行われるべきことを意味します。市町村で状況が異なれば、「団体自治」は、当然、県ではなく市町村が担うべきです。復興予算を県に提案させることには、憲法上の大きな問題があります。

○結論
国は、復興予算を、増税でまかなおうとしています。すべての国民が、自らを犠牲にして、被災者を助けようとするものです。福島県・福島県立医大の計画には、復興予算の基本である被災者への同情と奉仕の精神が欠如しています。税金を使うことについて、公共心と自制心が欠如しています。実施されれば、福島県立医大の将来を奪います。赤字で病院運営に支障が出ることが問題なのではありません。誇りを捨ててしまうことが問題なのです。大学も人間同様、誇りがないと未来を切り開けません。

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