2012年5月15日火曜日

カリウム40を引き合いにした安全デマへの反論


カリウム40を引き合いにした安全デマへの反論
~カリウム40による内部被曝とヨウ素131、セシウム134・137による内部被曝を検証する~

 目次
 1.放射能って何?
 2.放射性元素の半減期
 3.天然放射性元素
 4.ベクレルとシーベルト(放射線の単位)
 5.カリウム40
 6.カリウム40とヨウ素131
 7.カリウム40とセシウム134・セシウム137
 8.生物学的半減期と実効半減期
 9.毎日 a ベクレルの放射性物質を摂取し続ける場合の n 日目の蓄積量

 最近、「放射能は怖くない」とか「むしろ少量なら健康にいい」といった議論を見かけることが多くなりました。 
 こうした議論でよく引き合いに出されるのが天然放射性物質の存在です。 確かに放射性物質は有史以前から地球上に存在しており、生物は放射性物質に対してある程度の耐性を持っています。 しかし、これを理由に放射能は安全であるとする議論には怪しいものが多々あります。 ここではそうした議論のうち、カリウム40を引き合いにした安全デマへの反証を試みます。

放射能って何?

 放射能とは放射線を出す能力のことです。 よく放射線や放射性物質と混同して使われますが、正しい用語としては放射線や放射性物質を使うべきです。 放射性物質が放射能を持っているわけですね。

 放射性物質(元素)とは、安定に存在できず 高エネルギーの粒子や電磁波を放出しながら他の元素に姿を変える不安定な元素のことです。 元素の種類が変わるこの現象を「崩壊」、このとき放出される高エネルギー粒子や電磁波を「放射線」、最初の元素が姿を変えた新しい元素を「娘核種」といいます。 新たに生じた「娘核種」が安定な元素なら「崩壊」はそこで停止しますが、娘核種が不安定な放射性元素なら安定な娘核種に変わるまで崩壊が続きます。

放射性元素の半減期

 放射性元素の崩壊のペースは元素の種類によって決まっています。 崩壊は一気に起こるわけではなく、放射性元素の存在量に比例した割合でおきます。 ある一定期間(たとえば2年)で放射性元素の量が半分になるとすると、次の2年でさらに半分に(一番最初の1/4)、 さらに2年の後にまた半分(一番最初の1/8)、というように減少します。

 放射性元素の量が初めの半分になるまでの期間を半減期(物理的半減期)と呼びます。 注意すべきは物理的半減期が経過しても放射性元素の量は半分に減るだけだということです。 物理的半減期の約3.32(=log210)倍を経過すると初めの1/10に、約6.64(=log2100)倍を経過するとようやく初めの1/100に減ります。

天然放射性元素

 地球上のすべての物質(元素)は太陽のような恒星の核融合反応で作られたと考えられています。 恒星が生涯を終えると、そこで生まれた多様な元素が新たな恒星や惑星を作ります。 現在地球上に残っている天然放射性元素のうち量が多いものは地球誕生時からの生き残りなのです。 地球が生まれてから四十数億年が経過していますから、量が多い天然放射性元素は半減期の長いものばかりです。

 そのうち、特に人間への影響が大きいものにウラン238やトリウム232、カリウム40があります。
これらの放射性物質は花崗岩などの岩石に含まれ、自然放射線の源になります。 ウラン238やトリウム232の娘核種にはラジウムやラドンがあり、 このうちラドンはラドン温泉として健康増進効果があると喧伝される一方、被曝による発癌リスクの上昇が指摘されています。
 ウラン、トリウム、ラジウム、ラドンは生物が必要とする元素ではありませんが、カリウムは生物にとって必須の元素です。 そのために生物の体内に大量に存在し、内部被曝の原因となります。

ベクレルとシーベルト(放射線の単位)

 内部被曝の話を始める前に放射線の単位について確認しておきましょう。

 ベクレル(Bq)は放射性元素の量を表す単位で、1ベクレルは1秒間に1個の原子が放射性崩壊を起こす時の分量です。
1個の放射性崩壊が開放するエネルギーは元素の種類や崩壊のタイプによって違います。 この崩壊エネルギーの大きさが放射線の人体に対するダメージの大体の目安になります。 崩壊1個当たりのダメージが元素によって違うわけですから、同じベクレル数でも元素によって人体へのダメージは異なります。
 そこで、人体に対する破壊力の目安としてシーベルト(Sv)という単位が用いられます。 (シーベルトは放射性崩壊がもたらすエネルギーを生体組織の質量当たりで換算したもので、単位は[J/kg]に等しくなります。)
 1シーベルトは単位として大きすぎるため、その1/1000のミリシーベルト(mSv)や1/1000000のマイクロシーベルト(μSv)もよく使われます。 難しい話を全部理解する必要はありませんが、 ベクレルは1秒あたりの崩壊数、シーベルトはそれを人体への影響に換算したエネルギー量ととらえておいてください。

カリウム40

 カリウムは地球上に普通に存在する元素です。 その大半は放射性のないカリウム39とカリウム41で占められていますが、カリウム全体の0.01%ほどがカリウム40という放射性元素です。

(カリウム39とか40とかいう番号は原子核の中に含まれる核子の個数を表しています。 核子の個数が違っても元素としての化学的性質は全く同じですが、比重がわずかに違うほか放射性の有無だけが変わります。 こうした核子の個数違いの元素のことを同位元素(同位体)、同位元素のうち放射性をもつものを放射性同位元素(同位体)と言います。)
 カリウム1gにはカリウム40が約30ベクレル含まれ、白米1kgでは33ベクレル、海水1リットルで12ベクレルのカリウム40が含まれます。 カリウムは人体中で一定量に保たれており、体重60kgの成人男子で約4000ベクレルのカリウム40を含有しています。 カリウムは全身に広がりますので、カリウム40による内部被ばくは身体の部位によらず年間0.17ミリシーベルトと見積もることができます。
 自然の状態で人間は内部被ばくをしながら生きている。だから人間は放射線に対する耐性を生まれつき備えている。ここまでは確かに事実です。
(カリウム40に関する諸数値はWikipediaによりました)

カリウム40とヨウ素131

 だからと言って、人体が人工の放射性物質に対しても十分な耐性を持っている、という議論にはなりません。

 放射性ヨウ素131に関してはすでに別のサイトで反論があります (makirintaroさんのブログ http://ameblo.jp/makirin1230/entry-10927802058.html) ので、ここでは要点だけをまとめさせて頂きます。計算上のポイントは次の3点です。
  • カリウム40は体中に均一に広がるのに対し、経口摂取されたヨウ素131は20%が甲状腺に集まる
  • 甲状腺の質量は全体重の約1/3000
  • カリウム40の崩壊エネルギーは平均0.52MeV、一方ヨウ素131の崩壊エネルギーは平均0.19MeV(カリウム40の約0.365倍)
結果として、経口摂取された同じベクレル数のヨウ素131が甲状腺に与えるダメージの大きさはカリウム40に比べて
3000×(20/100)×0.365 = 219.2
と約220倍になってしまいます。 事実、ヨウ素131は甲状腺ガンやバセドウ病の"治療薬"として甲状腺の組織を"殺す"ために使われます。 ただし、ヨウ素131は半減期が約8日と短いのでカリウム40のように被曝が恒常的に続くことはありません。 このこともヨウ素131が"治療薬"として利用される理由になっています。
 3月に福島原発から漏れたヨウ素131はほとんど残っていませんので、これ以上何事もなければ今後ヨウ素131による被曝はないと考えていいでしょう。 現段階ではヨウ素131による健康被害の報告はないようですが、 甲状腺被曝が目に見える病状に変わるまで何年も潜伏期間がありますから本当に問題なかったかどうかまだわかりません。
(本節で取り上げた諸数値の出典はmakirintaroさんのブログ http://ameblo.jp/makirin1230/entry-10927802058.html にあります)

カリウム40とセシウム134・セシウム137

 セシウムはヨウ素と並んで原子力災害に際して影響の大きい放射性物質の一つです。 セシウムは本来生物にとって必要のない元素ですが、科学的性質がカリウムと似ているため生体に吸収されやすい性質をもちます。 逆もまた真なりで排出もされやすいのですが、飲食物中に一定量の放射性セシウムが含まれるような状態が続くと カリウム40のように常に一定量が体内に存在して内部被曝を起こします。

 放射性セシウムによる内部被曝の影響を評価する場合の計算上のポイントは次の3点にまとめられます(計算方法の詳細はこのページ最後の2節をご覧ください)。
  • セシウム134の実効半減期 Teff は約88日~約158日、セシウム137の実効半減期 Teff は約70日
  • 毎日 a ベクレルのセシウムを摂取し続ける場合の n 日目の蓄積量は
    a × (1 - rn) / (1 - r)   ただし r = (1/2)^(1/Teff)
  • セシウム134の崩壊エネルギーは平均0.16MeV、セシウム137の崩壊エネルギーは平均0.19MeV(カリウム40は0.52MeV)
 2点目の式が計算の要になります。 詳しくはjavascriptの計算ツールを追加作成しましたのでご利用ください(計算ツールについている最後のボタンがそれです)。 ここではひとまずおよその傾向をまとめておきましょう。
  • セシウムを一定量摂取し続ける場合、蓄積量は日数とともに増えるが増え方は徐々に穏やかになり、やがて上限に達する。
  • 蓄積量の上限は実効半減期 Teff の値によって異なり、Teff = 70 日で約 101.5a ベクレル、 Teff = 88 日で約 127.5a ベクレル、Teff = 158 日で約 228.4a ベクレルとなる。
  • セシウムの摂取が実効半減期 Teff と同じだけ続くと上限値の丁度半分のセシウムが蓄積する。
 つまり、大雑把にいってセシウムの摂取を続けると一日摂取量の100~200倍が蓄積するということです。 ちなみにこの結論はICRPのPublication111(http://www.jrias.or.jp/index.cfm/6,15092,c,html/15092/20110420-192047.pdf)の図2.2とも符合します。
ICRPのPublication111の図2.2
 このグラフでは1日に1ベクレルのセシウム137を摂取し続けた場合と10ベクレルのセシウム137を摂取し続けた場合の蓄積量が計算されています。 いずれの場合も摂取を続けることによって一日摂取量の150倍程度の蓄積が起きると読み取れます。
 さて、原子力安全委員会の暫定基準値では水道水で放射性セシウム200Bq/kg(ベクレル毎キログラム)、食品で500Bq/kg(ベクレル毎キログラム)が許容されています。 この基準値で水を毎日1.5リットル、食品をかれこれ1kg摂取し続けるとしましょう(ほぼ成人の平均)。 毎日のセシウム摂取量は800ベクレルですから、長期摂取による蓄積量は80000から160000ベクレルです。
 これはカリウム40の蓄積量4000ベクレルに対して20~40倍になります。 セシウムの崩壊エネルギーはカリウムの1/3程度ですから、体に対するダメージは少し減ってこの1/3倍つまり約7倍から14倍程度です (なお、セシウムによるダメージがカリウムのそれと比べて小さいから安全という訳ではないことにご注意ください。 セシウムによるダメージはカリウムのダメージに上乗せで効きます。セシウムによるダメージがカリウムと同等ならトータルで2倍のダメージです。)。
 これは影響ないレベルでしょうか?健康な人間がカリウム40による内部被曝に対して抵抗力をもっていることは確かです。 しかし、どれほどの余裕をもってカリウム40のダメージに対抗しているか定かではありません。個人差もあるでしょう。 ある人は放射線によるダメージが自然状態の8倍でも大丈夫かもしれません。でも、人によっては2倍になっただけでも危ないかもしれません。 仮に内部被曝の増加によって直接的なダメージを受けない場合でも身体の負担は増えます。 よく言われる放射線による免疫力の低下がこれに該当するでしょう。放射線の影響は発癌率の上昇や白血病というかたち以外でも現れるのです。
 素人考えですが、少なくとも「暫定基準値」が健康に影響ないレベルと考えてよい合理的な理由は見当たりません。


生物学的半減期と実効半減期

 生物は新陳代謝をしていますから、生物の体内に入った放射性元素は元素崩壊を待たずに排出される部分があります。 大雑把に言うとこの排出のペースもまた放射性元素の存在量に比例した割合でおきます。 したがって、ある一定期間(たとえば70日)で放射性元素の量が半分になるとすると、次の70日でさらに半分に(一番最初の1/4)減少します。 生物の新陳代謝によって放射性元素の量が初めの半分になるまでの期間を生物学的半減期と呼びます。 生物学的半減期は年齢・性別や生活環境によって変わるので物理的半減期と違って値に幅が出ます。

 実際に生物の体内から放射性元素が消えるペースは物理的半減期と生物学的半減期の相乗効果になります。 物理的半減期を Tp(日)、生物学的半減期を Tb(日)とすると生体中の放射性元素は 物理的作用(元素崩壊)によって一日で (1/2)^(1/Tp) 倍に、 生物学的作用(新陳代謝)によって一日で (1/2)^(1/Tb) 倍に減少します。 双方の作用を合わせると (1/2)^(1/Tp) × (1/2)^(1/Tb) 倍に減少するわけです。
 物理的作用と生物学的作用をどちらも考慮して生物の体内から放射性物質が消えるペースの目安として実効半減期を使うことがあります。 実効半減期を Teff(日)とすると一日で放射性物質は (1/2)^(1/Teff) 倍に減少するわけなので、 これを先ほどの (1/2)^(1/Tp) × (1/2)^(1/Tb) 倍と等しいとして
(1/2)^(1/Teff) = (1/2)^(1/Tp) × (1/2)^(1/Tb)
これを解いて Teff = Tp × Tb / (Tp + Tb) となります。
  • セシウム134の物理的半減期を約2年、生物学的半減期を100~200日とすると実効半減期は88~158日
  • セシウム137の物理的半減期を約30年、生物学的半減期を約70日とすると実効半減期は約70日
となります。前節で用いた実効半減期はこの値です。
(セシウムの生物学的半減期の参考にしたサイトが行方不明になってしまいましたが、その名残が社団法人広島県医師会のサイトhttp://www.hiroshima.med.or.jp/pamphlet/245/1-1.html にありました) 


毎日 a ベクレルの放射性物質を摂取し続ける場合の n 日目の蓄積量

 最後に前前節で取り上げたセシウム蓄積量の計算方法を紹介しておきます。 計算方法は数列の和を用いる方法と指数関数を積分する方法がありますが、 現実の放射性物質の摂取の仕方と比べてどちらが近いとも言えないので 高校の理系進学クラスでしかやらない指数関数の積分ではなく数列の和で計算します。 どちらの計算方法でもわずかな違いしか出てきませんので、毎日同じだけの放射性物質を摂取するという大雑把な仮定に比べればささいな差です。

 ある日 a ベクレルの放射性物質を摂取したとするとその放射性物質は翌日には (1/2)^(1/Teff) 倍に減少します。 ちょっと面倒なので (1/2)^(1/Teff) = r と書くと一日前に摂取した a ベクレルの放射性物質は翌日には ar ベクレルになります。 この放射性物質はさらに翌々日には ar2 ベクレルになり3日後には ar3 ベクレルになります。 つまり n 日分の蓄積量は当日摂取した a ベクレルから n-1 日前に摂取した arn-1 ベクレルまでの和
a + ar + … + arn-1 = a × (1 - rn) / (1 - r)   ただし r = (1/2)^(1/Teff)
となります。
最終更新日時: 01/28/2012 14:53:33

セシウム放射線内部被曝とカリウム

セシウム放射線内部被曝とカリウム (少し詳しい解説、その1)

はじめに 福島原発爆発によって莫大な放射能が環境に撒き散らされました。 原発事故後、健康にとって、特に重要な放射能は、放射性ヨウ素、ストロンチウム、セシウムです。放射性ヨウ素の半減期は8日なので、4月初めに存在した放射性ヨウ素は、9ヶ月たった2022年1月では、1/2の33乗、100億分の1と、ほとんどなくなっています。

ストロンチウムとセシウムの半減期は約30年と長いので、福島原発から放出されたストロンチウムとセシウムの地球にある放射能量はほとんど減っていません。現在、食物や環境で測定されている放射能はほとんどがセシウムで、食物や環境のセシウム放射能が減っているのは、地上から減っているのではなくて、別の場所に移動したからです。ストロンチウムはガンマ線を出さないので測るのが面倒なこともあり、あまり測定、公表していませんが、ストロンチウム汚染がないことや、心配しないでよいことを意味しません。原発で作られた放射性ストロンチウムの量はセシウムと同程度存在すると考えられますが、大気などへの拡散の仕方が違うので、セシウムが検出されたところには同程度のストロンチウムがあるということでもありません。

放射性ヨウ素、ストロンチウム、セシウムの生体に対する傷害作用が違うのは、放射能・放射線の種類が違うからというよりは、主に放射性物質が生体のどこにどれくらいの期間存在するかということによるものです。

ヨウ素は甲状腺に集まるので、甲状腺傷害や、甲状腺癌の発生頻度を上げます。ストロンチウムは摂取すると、骨に集まって骨の成分として骨に固まってしまうので、排泄は難しく、同じ場所で放射線を出し続けるので、近くにある骨髄細胞が持続的に被曝し続け、白血病など、骨髄で作られる白血球などの血液細胞に傷害が出やすくなります。セシウムは体中の水に溶けて広く分布します。同じベクレル数の放射能を摂取しても、ヨウ素やストロンチウムのように特定の場所に集中的に被曝させるのではなく、全身の細胞が低いレベルで被曝します。

放射線の作用は、様々な物質(分子)の構造を少しこわすことで、紫外線の働きと似ています。紫外線を強くあてると、塗装の色が変わったり、紙やプラスチックががさがさになったりします。生体内でも蛋白や様々な生体構成物質、遺伝子の本体であるDNAが変異を生じて、体内で様々なことが起きます。DNAが変異を起こした場合は、その細胞から新しい細胞が作られるとき、新しい細胞にDNAは変異したまま複製されて引きつがれます。

本論ではストロンチウムの話は省略して、
セシウムの放射能とカリウムについて述べます。
原子炉や核爆発で30種類以上の放射性セシウムが作られますが、
その多くは半減期が数日から1秒以下と短く、
被曝を避けるうえで重要なのはセシウム134とセシウム137の2つです。
前者の半減期は約2年、
後者は約30年で、放射線を出すこと以外の元素としての性質は、
非放射性のセシウムと同じです。

セシウムの体内分布 


ヨウ素は甲状腺細胞のヨウ素を取り込むポンプの働きによって
甲状腺に取り込まれます。


ストロンチウムはカルシウムと似ていて、
骨の成分として骨の中に固まります。


セシウムは、水に溶けて体中に分布しますが、
カリウムと似た分布、挙動をすると考えられています。

セシウムはカリウムと似ていてもまったく同じではないので
カリウムの動態からセシウムを機械的に同じと考えるのは正しくありません。


カリウムについては非常に詳しくわかっており、一方セシウムについては、
厳密な測定は十分されていないので、
測定されてわかっていることとカリウムの動態からの推測をして考えます。

「セシウムは筋肉に多く含まれる」と解説されることがあります。
大まかには正しいのですが、かなりあいまいな言いかたです。
例えば、屍体から摘出した臓器のセシウム放射能を測定して
他の臓器や組織よりも、
筋肉組織(骨格筋)のセシウム放射能が高いという研究結果があります。
発表された測定値はおそらく事実と思います
(中には嘘を発表する人がいることはご存知の通り)。

おおまかには正しく、重要な知見ですが、
これだけで単純に、


「骨格筋細胞内のセシウム濃度は他の細胞よりも高い」
と結論できません。


評価、結論するには以下の考慮すべきことがあります。


骨格筋組織重量の大部分は細胞(骨格筋細胞)である


一方、腱組織などは、細胞が作った、


コラーゲンなどの細胞外成分が大部分を占め、


細胞が占める割合は少ない。多くの組織はこの間にある。


だから、重量あたりの腱組織のセシウム濃度が筋肉より低くても、


腱を構成している細胞内のセシウム濃度が低いとはいえない。


また、消化腺など、分泌機能を持つ細胞では、


細胞内に分泌顆粒という袋があり、


その中には、細胞内液とは組成が異なる成分がある。


だから


臓器や組織の重さとセシウム放射線を測って計算した


重量あたりの放射線量の結果は、


正確には細胞内のセシウム量や濃度を意味しない。



カリウムの生体内分布


一部は蛋白などと結合して水に溶けない状態で存在するが、


カリウムの大部分はイオンとして水に溶けて体中に分布し、


細胞内液には細胞外液よりはるかに高い濃度で分布する(約20倍)

この細胞内外の不均等分布は、主に、




①ナトリウムを細胞外に、カリウムを


細胞内にエネルギーを使って輸送する細胞膜にあるポンプ蛋白の働きと、


②細胞膜がナトリウムを通しにくいために


細胞外のナトリウムイオンが高いまま保たれる結果、


細胞外の陽イオンが高く、細胞内陽イオンが細胞外液と均等になるように、


細胞膜を通過しやすいカリウム(陽イオン)が


細胞内に多く移動して分布することなどによる。




・ 細胞膜は脂でできているので、


ナトリウムやカリウム、カルシウム、ブドウ糖など、


水溶性の物質は細胞膜を透過しない。


細胞膜に浮かんで存在しているそれぞれの機能を持つ蛋白と結合したり、


それぞれのイオンを通す穴の役割をするイオンチャンネル蛋白を介して、


細胞膜を通過する。


ナトリウムチャンネル、


カルシウムチャンネル、


カリウムチャンネルなどはそれぞれ複数の種類があり、


細胞の種類による分布や働きが異なる。



・ セシウム放射能が筋肉組織に多く含まれることのメカニズムは、


セシウムが細胞内の水に多く溶けて分布していることと、


骨格筋組織は細胞成分の割合が多いことによる。


これに加えて、筋細胞は他の細胞よりもセシウム濃度が高い可能性があるが、


発表された文献をよく吟味しないと、


骨格筋細胞が、他の細胞よりも高濃度にセシウムを含有しているかについて、


今、私は断言できない。



・ 細胞内外のセシウムの不均等分布のメカニズムの中心は、


セシウムを運ぶポンプの働きよりは、


おそらく、セシウムが細胞膜のカリウムチャンネルを通過することだろう


と私は推測しているが推測である。


推測の理由は省略する。


どの程度までわかっているのか文献を調べればわかるが、


今のところ文献を調べるだけの余裕がないから調べていない。



・ セシウムがナトリウムチャンネルは通過せず、


カリウムチャンネルを通過することが、


セシウムが細胞内に多く分布するメカニズムと考えた場合、


複数あるカリウムチャンネルのどれもセシウムの通過させやすさは一様か、


異なる種類のチャンネルにおいてカリウムの通過しやすさと


セシウムの通過しやすさは同程度かなどの問題がある。



・ 酸素や血流がなくなると、


細胞膜にあるナトリウムポンプはエネルギー供給が途絶えて働かなくなり、


その結果細胞内から細胞外へのナトリウムくみ出しが減って、


細胞内のナトリウム濃度が高まる。


細胞内ナトリウムが増えた結果、


細胞内外でのナトリウムイオンの濃度差減少によって


細胞内外の陽イオン濃度の不均衡が減少し、


その結果、カリウムは細胞内から細胞外へ拡散移動して


細胞内濃度は低下する。


おそらくセシウムもカリウムに似た挙動をするだろうがその速さ、


程度はカリウムとは異なるだろう。





臓器や細胞によって異なるが、


心臓が止まって人が死亡しても、


細胞は数時間から数十時間は生きている。


その間、細胞の様々な機能は低下し、やがて死ぬ。


死後摘出した臓器はこのような条件で得られたものなので、


セシウムがカリウムと似た動きをするのであれば、


死後、細胞内のセシウムは細胞外に移動するはずだから、


そのとき測定した細胞内のセシウム濃度は


正常に細胞が生きている状態から変化している。


細胞外に移動しても、血流が途絶えているので、


細胞付近にかなり留まっていると考えれば、


臓器の組織重量あたりのセシウム意量はあまり変化しない


と考えてもよいかも知れないが断定はできない。





体内カリウムの放射線 




カリウムは動植物の体内に多く存在し、


細胞機能にとっ基本的で重要な物質です。


大部分は水に溶けて存在し、


動物では 細胞内液には


細胞外液のセシウム濃度の20倍以上の濃度で保たれています。


人間の体重の約60%は水で、


細胞内に40%、


細胞外に20%存在します。


細胞内外の水の量と、


細胞内外のカリウム濃度はそれぞれほぼ一定に保たれているので、


体全体のカリウム量も一定に保たれていることになります。




地球上のカリウムには1万分の1の放射性カリウムが均等に混じっています。


生体内には一定量のカリウムが存在しますから、


人は必ずカリウムによる放射線の内部被曝を受け続けています。


生体内の放射能のほとんどはカリウム由来で、


60kgの成人では総量3000~4000ベクレルで、


無視できるほどは少なくはありません。





生体内でカリウム濃度


通常は15% 程度の変動範囲内に調節されています


食物に含まれるカリウム摂取が余分なときは尿として排泄され、


摂取量が少ないときは、


尿中カリウム排泄を減らして、体内のカリウム濃度を保ちます。


腎不全でカリウムを十分排泄できず体内にカリウムが増えすぎたり、


食事をとれないなどによって長期にカリウム摂取が減ると、


心臓が止まるなど重大な障害を生じます。

「カリウムには放射能があるから、


どんな食物にどれくらいのカリウムがあるかを知り、摂取量を下げよう」


と考える人がいますが正しくありません。


カリウムは生体にとって絶対に必要な物質で、


体内の量は一定に保たれていますから、


普通に生活している範囲では食物摂取によるカリウムは沢山摂っても、


減らしても、体内のカリウムとカリウムによる放射線被曝は変わりません。


放射能セシウム汚染食物などを介して、


体内に少量の放射線セシウムがあった場合、


カリウムはセシウム放射線より高レベルであっても、


カリウムを飲食すると、余分のカリウムは尿に排泄され、


この時セシウムも一緒に排泄される傾向があり、


カリウムは一定に保たれ体内セシウムを尿に排泄する効果があります。

カリウムは放射能があるからと考えて、


カリウム摂取を減らしてしまうと、尿中排泄カリウムが減り、


体内のカリウム量は下げずに、セシウムの排泄を遅らせて、


生物学的半減期を延長させ、


その結果、セシウムをより長期に体内にとどめることになります。

「①ヒトはカリウムの放射線には適応して進化してきたから、


②カリウムは自然放射能だから、生体に有害ではない」


と言う人がいますが正しくありません。


ガンマ線やベータ線で内部被曝すれば、


カリウムによる自然放射能も、セシウムの人工放射能も、作用は同じです。

放射能を持たないカリウムだけの食事をして、


カリウムによる内部被曝をなくすことができれば、


おそらく、癌や、老化をはじめ多くの健康を害するものが軽減するはずです。


しかし放射能を持たないカリウムを入手できないので、


1万分の1の放射性カリウムを含むカリウムを食べて生きています。









2012年5月12日土曜日

講演「被曝をどう避けるか」要旨 「被曝をどう避けるか」 講師:岡山 博


講演「被曝をどう避けるか」要旨

「被曝をどう避けるか」
講師:岡山 博、仙台赤十字病院呼吸器科、東北大学臨床教授
主催:放射線被曝から子どもを守る会
日時:2011年12月17日
ところ:仙台市医師会館ホール

講演の主なスライドのまとめです。。
日本のがん死亡率を正確な文章に修正しました。
2012年1月2日掲載、2012年1月22日修正。

被曝をどう避けるか
 放射線と身体への影響についてお話します。
 医学知識を知ると深く理解できるが、知らなくても、大丈夫。
 被曝を避ける事と、医学的知識は別の話です。
 同じ知識を持っていても「放射線を避けるな」と言う人も「避けろ」と言う人もいます
 学ぶと言うことは、鵜呑みにする事ではなく、本当にそうかと自分で考え、判断すること
 被曝をどう考えるか、避けるためにどうするかを議論しましょう。
 講演途中でも、質問や意見、歓迎します。


1. 放射線とは何か
2. 汚染の状況
3. 被曝と生体への影響
4. 被曝を避けるために・議論
   ・被曝の危険性はどの程度か
   ・被曝の避け方
       家庭が、社会ができること
   ・環境除染した放射能をどうするか
   ・農漁業者を守るには?
   ・心配するなという専門家の意見?
          など 何でも


I, 放射線・放射能とは何か

放射線の作用
紫外線に似ている。いろいろな物質を変性する。
例えば
 印刷されたインクの色があせる
 プラスチックなどぼろぼろになる
 生体内でも蛋白やDNAやいろいろな物質を変性させる。
 細胞障害ややけど(急性・短期的傷害)
 老化、癌、生殖機能、先天異常を増やす(長期的傷害)

放射線の作用
 アルファ線、ベータ線、ガンマ線
放射性物質から出る。
放射性物質の種類で
 どの放射線が出るか、
 いつまで出し続けるかは
原子によって決まっている。

放射線を出す性質は分子ではなく原子の性質。だから
微生物や化学反応でなくしたり減らすことはできない。
放射性元素の性質で時間とともに減少するのを待つだけ(半減期)
除線は、放射能を移動させることしかできない。

放射線の種類
放射性物質から出るエネルギー。
高熱を出し続ける鉄球と考えるとわかりやすい
・α線:陽子2個と中性子2個の粒
・β線:もっと小さな電子1個の粒
・γ線:紫外線の続き(電磁波)

原発のしくみ    
U235+n→U236→A+B+2~3n
・ウランの原子核に中性子が衝突すると、
衝突の仕方で何種類もの大きさの2つの原子核と2~3個の中性子に分裂する
・ウランの量と密度が高いと、連鎖反応して爆発、少ないと中性子が核に衝突せず、すり抜けて、反応は停止する。この中間の微妙なところで反応させて熱を取り出す
・火薬を使って水を沸かすことと似ている。多いと爆発、少ないと反応停止し、中間は難しい。
・核分裂で約100種の放射性物質が作られ
・1億倍の放射線と熱が出る
・放射性物質の種類で、アルファ、ベータ、ガンマ線を、いつまで出し続けるかが決まっている。

放射線核種
名称      記号   半減期  放射線の種類
ヨウ素-131     131I    8日    ベータ線、ガンマ線
セシウム-137    137Cs   30年    ベータ線、ガンマ線
ストロンチウム-90  90Sr   29年    ベータ線
プルトニウム-239   239PU   2万4千年  アルファ線
カリウム-40      40K  13億年   ベータ線、ガンマ線

放射性ヨウ素とセシウム137はアルファ線を出さない
アルファ線を出すものはラジウム、ウラン、プルトニウム

II. 放射能汚染の状況

爆発後初期~3月末
 膨大な放射能ほこり。風に乗って散らばった。
 大きなほこりはゆっくり地面に落ち、小さなほこりは空中に浮遊、世界に拡散。雨や雪が降ると、放射能ほこりはまとまって落下した
 呼吸で吸い込み、食物として摂取し、被曝してしまった。
 最も多かったのは、ヨウ素。
今は3月末比で 1/100万以下に減少。
甲状腺癌の原因。
癌は確認できる5mm以上に育つまで、癌になってから早いものでも5年以上かかる。
 セシウム、ストロンチウムなども拡散


この時期に行うべきだった被曝対策
 高度汚染の可能性がある地域からの避難
 被災者に安全な水、食料を届ける。汚染飲食禁止
 ヨウ素剤服用
 避難しない人への指導
・ 汚染食品飲食制限
・ 外出・外気ほこりを避ける。マスク。
・ 体についた放射能を流す。シャワー
・ 家にほこりを持ち込まない。
 今の10倍の汚染可能性もあった。この程度で済んだのは偶然ともいえる。
 大量の放射能ほこりが風邪で北西に流れ、飯舘村や福島市、宮城県白河市南部と丸森町を強く汚染した。南風が更に続けば、仙台は、飯舘や福島と同様に汚染されたはずだ。
 風は南東から北風に急に逆転して、仙台ではなく、郡山や白河、栃木、群馬が汚染された。これがわかったのはずっと後。重大な危険の可能性があったので、福島、仙台は避難や窓閉め、建物の換気停止、外出控え、マスク着用をすべきだった。

外国大使館、東電、国内大企業、マスコミが行った自己防衛対策(正しい)
 東電、東北電力は社員家族を福島から緊急避難指示
 多くの大使館は、自国民の日本からの退去や
関西への避難、汚染食品回避を指示。退去用飛行機を準備
 震災、原発対策のために宮城県沖に出動したアメリカ原子力空母は、放射能汚染を避けるためすぐに、宮城県沖から撤退
 多くの大企業は本社機能を東京から大阪に移転
 震災報道のため、仙台に拠点を作ったCNN(米)とBBC(英)放送は、すぐに拠点を山形と秋田に避難
 国内大手マスコミは、原発50km以内から記者を含め全員撤退、進入禁止。

政府や自治体、東電が実際に行った事
 東電、東北電力、政府は、震災当日に、7時間半後の原発爆発と、その後の大爆発、深刻な放射能汚染を予測していた。
 原発事故収拾作業から撤退すれば、原子炉の冷却不能が確定し、4基の原子炉が全て爆発することを意味したが、東電は、事故収束の見通しを立てられず原発事故作業からの撤退を内定した。これは総理大臣から拒否され、作業中止は免れ、原子炉冷却作業が続けられた。
 東電や東北電力は社員と家族を、緊急に福島から避難させた。社員家族が知人に緊急連絡して、福島県から避難できた一般住民も多い。
 一般住民には知らせなかった。
 政府とマスコミは「汚染はわずかだ、危険は無い。惑わされるな、あわてるな、家に留まれ」と避難を抑制。危険性を指摘する発現は「不安を煽る」として発現や報道を抑圧した。
 その結果、沢山の人が被曝した
・被曝回避の機会を失った。
・子どもを雪であそばせた。
・マスクもしなかった。
・汚染された地域や自家栽培の野菜を食べさせた。
・ヨウ素剤を服ませなかった
・汚染を心配する人を異常者扱い。自由に物言えぬ社会。
その裏で電力会社・大企業、マスコミは
危険を知り、社員避難や会社機能の大阪へ移転など正しい対策をとっていた!

原子炉事故の破局的進行や、高度被曝が20%の可能性で予想される時
・「重大な被曝を受ける可能性がある」と
対策や避難を進めるべきだが
・「高度被曝の可能性は低い。落ち着くように」と
説明し、避難や対策を遅らせ、抑制した

オバマ大統領は、ハリケーンの時、
「判断を遅らせて被害を増やすな、
すぐ決断し避難せよ」と指揮し、住民に呼びかけた

最悪の被害を確認してから行うのは、
危険対策ではなく、判断責任回避し住民に被害拡大

汚染状況、汚染予測を知らせなかった
・批判意見はないかのように無視し、汚染を過小評価する解説を繰り返した。
・政府の「安全解説」に批判的な意見は存在しないかのように報道。
・批判的意見は「扇動」あるいは「風評」と嘘扱い
・政府会見で、事実を求める質問もされなくなった。
・日本政府と気象庁は緊急時のために作った放射線汚染予測を公開しなかった
・日本気象庁の発表データを使って、ドイツ、スイス、オーストリア、台湾など各国の
気象庁が日本の放射線汚染予測図を毎日時間を追って発表。
日本人のために、日本語の発表も

外国の反応など
 ウクライナ医学アカデミーロガノフスキー氏「チェルノブイリでの経験がある。協力できると日本大使館に出向いたが門前払いされた」
 ドイツ救援チーム3月14日、急きょ帰国した。「日本政府は事実を隠蔽し、過小評価している。」と早期帰国の理由を語った。
 ドイツ首相も「日本からの情報は矛盾している」と繰り返した。(2011年3月16日 読売新聞)
 被災地のために外国から、緊急供与された放射能測定器40000個が、羽田空港倉庫に保管されたまま、配布されなかった
 「子どもたちを20mSvの放射能にさらすのを、今すぐやめてください」在フランス日本大使、仏市民団体「原発をやめる会」他からの抗議の手紙受け取りを拒否(8月31日)
 安全だと強弁して事故を起こした責任者が今も、原発事故処理を仕切っている
 原発事故の危険性を主張し、事故時の対策を研究・要求してきた国内の専門家は今も排除したまま

現在の大気の汚染状況(推測)
 3月爆発後、空中に拡散した放射能粒子は地面に降下するか世界中に拡散した。
 当初と比べ、ずっと少なくなった。しかし
 今も事故原子炉と原発から放射能が拡散している。
 原子炉周辺のがれきや地面に落ちた放射能ほこりが乾いて風で舞うこともある。
 普通の状態であればマスクの価値は下がった

現在の地表の汚染状況
地表に落ちた放射能
 雨水で流れ、乾いたところに残る。
 水がたまって乾いた所のごみや枯れ草に吸着している。雨が降るたびに少しずつ解けて流れ、地面にしみこんでいる。
 土にしみこんだセシウムの一部を植物は吸い上げる。葉についた、ほこりや雨の中のセシウムの一部は直接吸収される。
 水道水の汚染はおそらく少ない

現在の海の汚染状況
汚染水を大量に海に放出している
 海水・海底・ヘドロと、海草・魚が汚染され続けている。
・ヨウ素:80日で 1/ 1000 160日で1/100万に
減る。海草に蓄積。甲状腺に集まる
・セシウム:魚や貝の肉。水に溶ける。
福島海底ヘドロから大量セシウム
・ストロンチウム: ほとんど未測定。
海底、魚の骨に蓄積。食べると骨にたまる。
 時間とともに全国に拡散拡大する。
・日本周囲太平洋は注意

現在の地表汚染状況と食物
 ヨウ素:大量に放出されたが、放射能はなくなっている
 セシウム:大気中セシウムは葉からも吸収された。土やホットスポットのごみ、枯れ草に付着。土中セシウムは植物に吸収される。何十年も続く。海や沼のセシウムは植物や虫、魚に吸収される。
 ストロンチウム:汚染された植物や飼料を食べて、動物に吸収され、骨に蓄積され放射線を出し続ける。牛乳や小魚など骨に注意

今は、何から被曝するか
 空気中に浮遊する放射能ほこりは少ない。
 環境放射線は地面に積もった放射能ほこりからのセシウム、ストロンチウム。放射能ごみをなめたり、ほこりが舞い上がると吸入し内部被曝の原因になる。外部被曝もある。除染
 放射能や毒物被害を避ける方法は、毒を避けることが基本。毒を採った上でどう減らすかではない。
 食物中のセシウムと、ストロンチウムが重要。


放射線規制
放射線暫定規制値
厚生労働省  3月29日に緊急とりまとめ
・放射性ヨウ素:年間2mSv(甲状腺等価線量としては年間50mSv)
・放射性セシウム:年間5mSv
という実効線量が安全とした

食品放射能暫定基準
暫定基準とは
・緊急事態で、水や食物が手に入らない時、「害を承知で、食べるのもやむをえない」制限
・食べ物が無くてもこれ以上は、食べてはいけない上限。安全な基準ではない。
・飲み物の暫定基準は:海洋投棄を禁止されている原発からの汚染廃水より高い

現在の暫定基準はヨーロッパの緊急時規制値とほぼ同じ
おかしいのは

・汚染地域に、汚染されていない飲食物を緊急に供給しない
・原発爆発直後のまま、緊急事態として続けている
・有害だが緊急時には一時やむをえない値を「安全」という
・被曝を避けるのではなく拡散・拡大させる姿勢と政策。
・汚染されていない地域にも、汚染食品を意図して拡散

食品放射能測定
 国や自治体が食品放射能を測定した。
 農作物はよく洗い、魚は頭と内臓を取ってから測定するように指示
 暫定基準以上の作物が出たら一時出荷停止にし、なるべく早く解除した。暫定基準以下は安全と宣言
 同じ地域の、測定しなかった畑の作物や、別の種類の作物は出荷停止しない。
 給食など「勝手に」測定することを実質的に禁止した。
 汚染の危険を指摘する発言や行動を抑圧
 危険性を話題にすることを「風評」と嘘扱い

食品衛生法
 第6条 有毒な疑いがある食品は、販売、製造してはならない。
 ただし、人の健康を損なうおそれがない場合として厚生労働大臣が定める場合においては、この限りでない。

文部科学省は
「市場に流通している食品は、安全という前提。
給食に限って何かをすることは考えていない」


食物や環境放射能の基準
許容量:法律で決まっている
 許容基準を定める目的は; 被曝と被害を少なくするため(世界各国、国際機関、日本の法律全て) 。
 緊急時暫定基準: 安全な水や食料がない緊急時に、害を承知でやむを得ず許容する量。緊急時でもそれ以上は摂ってはいけない。安全を意味しない。
 鉛や水銀、農薬などの毒物規制は、毒を摂取させないための基準。有害とわかっている量よりはるかに低量で規制=安全管理の原則

ドイツ放射線防護協会
 「放射線汚染された食品やゴミを汚染されていないものと混ぜて『安全である』として通用させることを禁止する国際的な合意がある。日本の官庁は希釈禁止に抵触している」(2011年11月)

電離放射線障害防止規則
 「放射性物質」とは、40Bq/cm2を超えるもの
 汚染した場合、標識し
・1mで0.01ミリシーベルト毎時以下、
・4Bq/cm2 (約400Bq/kgの土、100Bq/kg枯草)
以下、になるまで除去
 第29条 清掃を行なうときは、じんあいの飛散しない方法で。
 第33条 貯蔵はかぎ閉鎖の貯蔵施設
 第35条 焼却は、気体がもれるおそれ、灰が飛散するおそれのない構造の焼却炉

暫定基準値は、法律違反
『放射線障害防止法、3条』;一般人の許容放射線量は年間1ミリシーベルト以下とする。

放射能の単位
 ベクレル:1秒で出る放射線の数
 シーベルト(旧 REM):
さまざまな仮定・推測をして計算した体に与える影響の大きさの値
実効線量、性質の異なる危険性を、無理に同じ単位で表す
換算法: 核種に対する実効線量係数をかける
例)100 Bqのヨウ素を1回、経口摂取した場合は、
実効線量係数0.022( (セシウムであれば0.019)(成人)
ヨウ素でもセシウムでも大まかに0.02としてかけると
100 Bq× 0.02= 2 μSv
(100 Bq 食べると2 μSv 被曝する)

セシウムを毎日摂取した時の計算
1年あたりミリシーベルト
=(1日に食べるBq)×(365日)×0.02×1/1000(mSv/ 年)
(×1/1000は μSv を mSvに直すため)
=(1日に食べるBq)× 0.0073(mSv/ 年)
毎日100Bq 食べると 
=100Bq×0.0073=0.73 mSv (約 1 mSv)1年で被曝する

60kg の成人が毎日食べ続けて平衡状態に達した時の
体内セシウム放射能は
1日に食べるBq の約100倍(子どもは半減期短いのでそれより低値)で安定する
毎日100Bq 食べると約1年で(子どもはもっと早い) 全身に含まれるセシウムは
100Bq ×100 倍=10000 Bq に落ち着く
(60kg 成人で K の4000Bq の 2.5 倍)

III. 放射線被曝と生体への影響
内部被曝の経路
 呼吸: 放射性の微粒子や気体を吸い込む
 飲食物: 放射性物質が付着した飲食物を摂取する
 皮膚や傷口から吸収

内部被曝の危険性 
 放射線源からの距離が近い
1cm では 10m の100万倍被曝する
 体内に、長期間残る
 同じ部位の細胞が繰り返し被曝する
蛋白や遺伝子変異、炎症を起こす
老化、骨髄機能抑制(感染、出血、貧血)
癌、先天異常、遺伝的障害

放射線核種による生体影響の違い
 ヨウ素
甲状腺に集まる →甲状腺腫・甲状腺癌   
半減期 8日
 セシウム 
細胞内の水に多く溶けて分布→さまざまの癌
半減期 30年、 生物学的半減期 1~2ヶ月
 ストロンチウム
カルシウムに似て骨に分布
→白血病・リンパ腫
半減期 29年。Cs137出れば、Sr90存在

被曝の身体への影響、特にDNA損傷と癌について
癌とは何か
 正常の細胞は
常に必要なだけ、新しい細胞が増殖し、古い細胞が静かに自ら死んでいく(皮膚では、ふけや垢になる)
 細胞が死ななくなって細胞の数が増え続けるのが癌

癌のでき方
 1人の人では、どの細胞もまったく同じ遺伝子を持ち、変化しない
 ①細胞増殖を始める、②止める
③自殺させる、    ④間違ったDNAを修
に関係した数十個の遺伝子がある
 1個の細胞内で、これらの遺伝子が3~4個が、間違って異常DNAに変わると、増殖が止まらない、自分で壊れない癌細胞になる

遺伝子に対する、確率的傷害作用
 多くの毒物や大量被曝による急性放射線障害は
毒の量が多いほど障害の程度が強くなる
微量では生体に影響は無い

 放射線被曝による長期障害は遺伝子(DNA)変異
被曝線量が増えると確率的に傷害の頻度が増える.
被曝線量が減ると傷害の頻度が減るだけ

20ミリシーベルトの被曝で1000人に1人が癌で死亡する.
同量の放射能を1000人で分けても10万人で分けても1人が癌で死亡

ベラルーシ甲状腺癌を、どう評価するか
15歳以下  7人 → 407人  58倍
55~64歳  54 人→ 326人  6倍

「50倍に増えるほど危険だ」と考えるか
「1年で、10万人のうち死亡がわずか数人増えただけだから気にするな」と考えるか
放射線専門医が専門家として判断し、その結論で国民を教育する問題か?

甲状腺癌は少ない癌だから少し増えてもわかった
わかるまでに20年かかった
現在日本では、10万人あたり年間270人、肺がんだけでも、82人/10万人/年が癌で死亡する。全癌死亡や、肺癌は事故前から多いので、被曝によって甲状腺癌と同程度の死亡が増えても、わずかなパーセント増加にしかならず、おそらく証明できない。比較対象にする汚染されなかった地域の人も、食品などによって被曝しているので、比較を難しくする。しかし、事故以前は若年者のがんは少ないので、がんの種類を細かく分けて、年齢別統計を取ると、いくつかのがんでは増加したことが分かる可能性がある。

(参考)
日本の年間死亡数
114万人
907人/10万人

日本の癌死亡
34万人/年
273人/10万人/年
全死亡の30%

日本の肺癌死亡
65000人/年
82 人/10万人/年
男70歳~
500人/10万人/年

イギリス核再処理工場 周囲の白血病増加
「他にも多い地域があるので放射能の影響とはいえない」という反論

1950~89年に乳がんが2倍以上になった地区(郡)
アメリカ
ほとんどが原子力施設160km以内

原発周辺で小児白血病が増加
ドイツ政府の大規模調査 2007 で確定
放射線かどうかは未検討

IV. 被曝を避けるために
食品からの被曝を避けるために
 摂取した放射能の害を減らすことよりも、
摂取しないことが基本
 汚染食品を避ける
 汚染可能性ある地域のものは、
計測された値を知り、自分で評価する
判断を他人に任せない

汚染食品の考え方
1) 「暫定基準以下だから安全」は誤り
2) 「安全安心を示すための測定」はあてにならない
低そうなものを選んで測定している
高く出たら隠す、過小評価する傾向
全体の傾向を意味しない
3) 「汚染を発見し、流通や摂取を避ける」目的の測定が必要
4) 現状では、安全確認できないものを避ける
5) 「安全か?」と他人に評価まで頼るのはやめ、測定値を知って、自分で判断する

食品による内部被曝の避け方
家庭でできること
1.汚染食品を避ける
2.食べる量を減らす。特に過食傾向の人
3.調理法
4.排泄を促す(過剰に重視すべきではない)

放射線元素による違い
 ヨウ素
半減期が短いので、今はなくなっている
 ストロンチウム
ほとんど測定していない
吸収されると、骨に固まって、いつまでも残る。
とにかく避ける。汚染牛乳、小魚、魚の骨
調理法で解決できない
 セシウム  現在最も多い。これは工夫できる

汚染食品の避け方
1) 安全と確認できない食品を避ける
・ 汚染地域の農作物
・ 日本周囲太平洋の海産物
・ 「国産」と言う表示など産地表示があいまいなもの。
・ 国産の加工食品。産地ではなく、加工所を表示している
・ 外食

2)  「安全か?」と他人に頼るのは止め、
測定値を知って、自分で評価する

食品の選び方
・誰に従って安全と思うのではなく、
・放射線の値を聞いて
・安全性は自分で判断する
・ 基準値以下というのは安全を意味しない
・ 測定値を隠す人の安全説明は、さらに危ない。

他人の安全を軽視し、消費者に情報や事実を教えず、判断させず、自由な議論を歓迎せず安全という評価を強要する人を信頼すべきではない

セシウムを避ける調理法
 セシウムは生きた細胞内の水に多く溶けている。カリウムに似た分布
 生野菜、果物、肉、魚は細胞が大部分。染み出して流し去らなければ、全て残る。
 細胞を殺し、水につけておくと細胞から外に染み出す
 葉野菜100g を1Lでゆでると1/10に、もう一度ゆでなおすと、1/100に減る。大根や芋など大きな塊は染み出すのに時間がかかる
 マカロニをたっぷりの水でゆでると約20%に減る。水を替えてゆでなおすとさらに減る
 米をとぐと、ぬかの分を減らせる。といだ後、一晩水につけ翌日2回水を替えてから炊くとさらに減らせると思う
 乾燥食品や、焼く料理は、水がなくなるだけでセシウムは全て残る

ヨウ素の避け方
 今はほとんどない。
 また原発から放出されたら、多いときは逃げる
 多くない時は、風下であれば吸入注意、外に出ない。窓閉め、喚起やめる。インフルエンザ用マスク。
 食物注意。特に海草に集まる
 大量被曝可能性高いときはヨウ素(ヨード)剤内服

ストロンチウムの避け方
 少し面倒なのであまり測っていない。
 カルシウムに似て、骨に集まる。骨に固まって動かないので、隣の同じ細胞が放射線を浴び続ける。白血病など血液の病気の原因
 魚・かに・貝類と、それを食べる魚の骨はさらに濃縮。牧草・骨粉を食べた家畜のミルク、骨
 福島海底の泥からセシウム大量に検出されたストロンチウムも多いはず。
 汚染の可能性ある魚、特に骨を食べない。小魚
 日本周囲の太平洋は汚染の可能性高い

個人で避けた汚染食品はどこへ?
  自分で避けた食品は?
廃棄されない。
業者が安く買って使う;加工食品、外食産業  
  食べたら1000人に1人が癌で死ぬ放射線を
1万人で分けて食べても1人が死ぬ
=癌を起こす確率的作用
  薄めて流通する汚染食品の全体量を増やすと→癌は増える。だから
  汚染食品を作らせない、流通させないことが最も大切

放射能許容量を考える基準
 被曝を避けたいか、それとももっと被曝させたいか
 何のために
 どの程度まで被曝受け入れると判断するか
 俗論や無責任な解説を排除する。

以上が放射能をどこまで受け入れるか
を考える基準。
だから、
事実と根拠は聞くが、評価・判断は自分でする

食品の放射能測定の目的
食品の有毒物や放射能を測るのは
毒物を食べさせないため
・ところが今の日本は
「これくらいは安全だからもっと食べろ」
「不安に思うのは知識不足で、過剰反応」
「食べても安全だ」と言うために、
測定している


IV. 議論しましょう

異なる意見があって始めてよい議論ができます。
私の意見も述べます。
 被曝の危険性はどの程度か
 被曝を避けるために。家庭でできること、社会としてとりくむこと
 除染・汚染処理問題。除染した汚染物をどう処理するか
 農漁業者をどう守るか、
 「この程度の放射能は安全だ、安心して食べよう」という意見をどう考えるか
 その他なんでも質問、発言してください


(後日追加資料) 
・ 文部科学省は、震災直前の去年3月3日、東京電力など原発を持つ3社と非公式の会合。東京電力などは文科省に対し、巨大津波の危険を指摘する報告書の内容について、貞観地震に関する記述を修正するよう要求したということです。テレ朝ニュース2012,2,26
・ ハーメルンプロジェクト志田氏「『安全だ、避難は不要だと』と福島県民に説明・指示する県教育庁担当者5人に聞いたうちの3人が『自分のこどもは既に避難させている』」と。
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21:46  |  放射線  |  TB(0)  |  CM(51)  |  EDIT  |  Top↑
★ままりんさんへ
> ままりんさん
>
> コメントありがとうございます。
> ご質問①給食 ②花粉 ③放射能を話題にすると怒られる、神経質だと言われるについて。
> まず①についてお返事を書きました。
> 長い文章になったので、
> 「給食の放射能問題をどう考えるか 解説と私の意見 (03/08)と賭して別の記事として載せました。
> どうぞ読んで、コメントください。
> 早くお返事したほうが良いと思い、まだ未整理ですが載せました。
> 文章の重複や漢字変換間違いなどあると思いますが、後で整理修正します。
> ②と③については後日書きます。
> 書かなかったらまた請求してください。
> 岡山博 

読書会に爆破予告? 多様性をめぐり分断深まるアメリカの今 2023年6月27日 LGBTQ アメリカ

  読書会に爆破予告? 多様性をめぐり分断深まるアメリカの今 アメリカ各地で広がっている、ある読書会。 子どもたちに多様性への理解を深めてもらいたい。そんな思いから始まりました。 しかし今、こうした読書会が爆破予告や反対デモで、中止に追い込まれる事態が相次いでいるといいます。 い...