2012年8月28日火曜日

木村真三 & 高辻俊宏 「被曝と遺伝:本当のことを話そう」 (週刊現代 9/17号)



木村真三 & 高辻俊宏

 「被曝と遺伝:本当のことを話そう」 (週刊現代 9/17号)


 「低線量被曝は体にいい」「内部被曝は怖くない」そんなまやかしの言葉

を吐く「識者」がはびこっている。業を煮やした科学者二人が緊急対談。

低線量被曝の遺伝子への影響を明らかにする。

DNAは確実に変化した

*突然変異は線量に比例する

*小児糖尿病や妊娠性貧血

*専門家たちが沈黙する「理由」

DNAは確実に変化した

木村:福島第一原発の事故によって大量の放射性物質が大気中にまき散

らされました。今日はその放射性物質による被曝がヒトの遺伝にどう関わっ

てくるのかを、放射線の生物への影響についての専門家である高辻先生と

議論させてもらおうと思います。

高辻:はじめに、この問題を福島の地域的な問題と捉えて考えると現実を

見誤るということを指摘させてください。福島第一原発から放出された放射

性物質は、薄くではありますが、日本全国にばらまかれてしまっています。

私が住む長崎にも、4月の段階で飛んできていることを確認しています。

正確には、日本だけでなく世界中にばらまかれてしまったわけですが。

ーーーーーーー

長崎大学准教授で、放射線の生物への影響を研究してきた

放射線生物物理学の専門家だ。


獨協医科大学准教授で、放射線衛生学の専門家として

原発事故後の福島で調査を続けている。

木村氏が採取した土壌や植物のサンプルを高辻氏が検査するなど、

研究分野を超えた専門家たちでチームを組み、

放射能汚染に立ち向かっている。

両氏とも、チェルノブイリでの実地調査を長年続けてきた

現場主義の研究者。その知見から想定される、

低線量被曝の遺伝子への影響とはー。
ーーーーーーー


木村:その放射性物質による低線量被曝は、

果たして人体にどの程度の影響を与えるものなんでしょうか。



高辻:放射線に被爆すると、細胞中のDNAに必ず変化が起こります。

しかし、その変化はほとんどの場合、

目に見える形では人体に何も起こしません。

 ただ、DNAは確実に変化していて、

その傷ついた遺伝子を盛った人たちの子孫が

何世代もかけて積み重なっていくと、ごくわずかですが、

生存にとって何がしか都合の悪いことが起こってくると考えられます。

 遺伝的影響というのはDNAの変化による突然変異ということです。

放射線を浴びたDNAの傷を修復する働きも細胞の中にはありますし、

またDNAの変化の仕方にも細胞の機能が複雑に絡んでいて、

どう変化するかは予想がつかないというのが実態です。



木村:遺伝的影響というと、

自分たちの子供や孫の世代に何か影響が出るのではないかと

一般的に思われていますが、

われわれ研究者が懸念しているのはもっと先の世代、

5代先、10代先ということですよね。

高辻:そうです。すでに日本人全体が放射性物質により多かれ少なか

DNAを傷つけられています。

そしてほとんどの場合、身体に影響が出ていませんが、

細胞は何らかの突然変異を起こしています。

そして、われわれの子孫は代を重ねるごとにそのDNAの傷を

蓄積していくわけです。



木村:その蓄積の結果、今は眼に見えていないような異常が、

何十世代か先の子孫のときにポンと目に見える形

 ー 例えば通常の遺伝性疾患でも頻度の高い遺伝性難聴や

色盲・色弱というような形で出てくるケースがあるということですね



高辻:それもありますが、

集団遺伝学者は目に見えないような形ーつまり運動機能の劣化とか

ほんの少しIQが低いとか、

そういう量的な変異として出てくるものが多いと指摘しています。

こうした遺伝的影響が出てきたとしても、周囲はもちろん、

本人さえも気づかないでしょうね。



突然変異は線量に比例する


木村:現実として、

福島県を中心に

放射能レベルがこれまでの10~20倍に上がったような地域、

あるいはそれ以上のところもあるわけですが、

そういうところに住まざるを得ない人たちもたくさんいます。

そういう人たちに対する遺伝的な影響は

実際にどう出てくるかという問題を、高辻先生はどう考えていますか。



高辻:突然変異は線量に比例して発生するということは、

ほとんどの突然変異に対して実験により見いだされています。

 自然状態で起こる突然変異率を2倍にするのに必要な線量

「倍加線量」

と言いますが、

その倍加線量がいくらになるかによって、

目立った突然変異が早く現れるかどうかが決まってくる

と考えられています。


 実験科学である放射線生物学の世界で、

低線量とは100ミリシーベルト以下を示すのですが、

普通、突然変異の実験に使われる

ショウジョウバエやマウスなどの倍加線量は

だいたい500ミリシーベルトとか1シーベルトといった、

比較的高い線量なんです。


 一方で、放射線に敏感なことで知られるムラサキツユクサは、

本来アオイ色の雄しべが、

20ミリシーベルトの被曝で突然変異が倍加しピンク色に変色します。

そういう類のものがヒトの遺伝子の中にもあるならば、

その程度の線量でもかなり影響が出てくるかも知れない。

それもやはり、数世代以降の発現ということになると思いますが。



小児性糖尿病や妊娠性貧血


木村:今回の事故で可哀想なのは、福島県に住む妊娠中の女性です。

報道では、

生まれてくる胎児に先天的異常があることを恐れて中絶したり、

子作りを控えたりする女性がいると言われています。

これは全くもって必要ないことです。

遺伝的な影響が出るとしても、

それは2~3代先で発現するようなものではありません。



高辻:そうですね。福島県内に限らず、

今回の放射性物質の拡散による遺伝的影響はすぐには出ないんです。



木村:それから、低線量被曝のメカニズムを考える場合、

外部被曝よりも、内部被曝の影響を心配しなければなりませんね。



高辻:従来は、なんの根拠もないまま、

外部被曝と内部被曝の危険性は同程度である

と考えられてきたわけですが、

最近になって「そうでないかも知れない」と言われ出してきました。



木村:僕はチェルノブイリへ何年も調査に通っています。

まだはっきりと証明できるところまでたどり着いていませんが、

内部被曝の影響が疑われる症状はたくさんあります。

高濃度汚染地域に住む子供たちも2~3代目に入ってきていますが、

目につくのはぜんそく小児糖尿病

それからはっきりとは目に見えない虚弱体質です。


 これはその地域の風土的ものなのかそうじゃないのか

分らなかったんですが、

過去30年の統計データを見ても確かに増えてきているんですよ。


 もしかしたら、本来は数世代から十数世代先に出てくるような障害が、

倍加線量を超える環境で生活することで、

2~3世代目で目に見える影響が出てきているのかもしれません。

というのも、

森と共存しているその地域の人々は

森から得られるベリーやきのこを主要な食材にしている。

これらは放射性セシウムを濃縮するという機構を持っているので、

ここから内部被曝をしている人が多いのです。

この内部被曝によって被爆線量が劇的に上昇している可能性があります。



高辻:可能性はありますね。



木村:一方、あちらでは周産期異常という問題も出てきています。

一番目立っているのは妊娠性貧血ですが、

流産の率も上昇してきているそうです。


  もともと母胎には、養分でも毒でも身体の中に蓄積したものを

赤ちゃんに吸われていく性質があります。

この機能によって身体の中にため込んだ不必要なものを

赤ちゃんに送ることで母体を守るという機構があるのです。

放射性物質でも同様の作用が起こると考えると、

これからわれわれは

内部被曝に対する対策を徹底する必要があるんです。


 だから食品汚染に対しての危機感というのが

非常に高くなってくるはずです。

なので、その危険性を研究者、

とりわけ衛生学者などがもっと声を大にして発言していかないといけない。


 ただしはっきり言っておかなければなりませんが、

僕は福島県内でホールボディカウンターを使って

80人くらいの方々の内部被曝を調査しています。

その結果で言うと、ほとんど身体に影響のないレベルなんです。

高くても0.25ミリシーベルトで、

この数値は現在身体の中に入ってしまった放射性セシウム

全部排出されるまでに受ける総被曝料線量を計算した数費です。

この程度なら今のところは心配する必要は全くありません。



高辻:

1974年に書かれた「遺伝学から見た人類の未来」

という本があります。


編者は集団遺伝学の巨人と呼ばれる木村資先生です。


その本の中で、著者の1人、田中克己先生がこんなことを書いています。


 「遺伝的影響は、現代人が受けた利益に対し、

子孫が遺伝病患者や虚弱者の多発という形で

支払わなくてはなりません。

人類集団にいったん発生した突然変異遺伝子は急には

消滅しないから、長く子孫を苦しめることになりかねません。

そうなったら

現代人は、人類始まって以来

最も愚かで利己的な世代だと言われても抗弁できないでしょう」と。


 まさに今回の原子力事故の影響というのはそういうことです。

40年近く前に、集団遺伝学の研究者たちは予言していたのです。




専門家たちが沈黙する「理由」


木村:放射線遺伝学については、

われわれより詳しい専門家がたくさんいるはずなんですよ。

本来なら、その専門家たちこそが、事故が起きた後、

直ちにその遺伝的影響について説明しなければならなかったわけですが、

誰も口を開かなかった。

しかも、その理由は「パニックになるから」だと言う。

それじゃあなんのための研究者なのか。

 この話はちゃんと説明すればパニックになるような話じゃない。

きちんと伝えて、

それこそ「直ちに影響はない」ということを理解してもらい、

さらに「直ち」じゃなく、

どれくらい先に危険性があるのかを説明しなければならない。

 政治家も東電も、そしてわれわれも認識しなければなりません。

ものすごく先の世代まで負の遺産を遺してしまうんだということを。


いったんDNAに刻まれた傷というのは

癒せるものではない。

それによる影響は、

われわれが死んだはるか後の世界に遺してしまうものなんです。



高辻:今できることは、

まずは自然放射線を超えるような過剰な被曝を

人間や動植物に何世代にもわたってさせないことです。

被害を最小限にするために、

線量の高いところに住んでいる方には

できるだけ移住してもらうことも重要です。


 十数世代、あるいは数十世代後には、

幾ばくかの人たちが遺伝的影響を受け、

生まれることが出来なかったり、若くして亡くなったり、

あるいは社会に適応できず、

子供を作ることができなかったりということになる。


 原発から出る高レベルの放射性廃棄物

地下に何万年もかけて貯蔵しなければなりません。

われわれは、そういう気の遠くなるような将来の子孫に対してツケを

回そうとしていましたが、今回の事故で、

遺伝的な負荷をも彼らにツケ回しすることになってしまったのです。


木村:われわれはチェルノブイリやスリーマイル、

地下核実験や大気中核実験を経験し、

そのたびに被曝のリスクは高まってきた。

今回の福島第一の事故は

そこにプラスアルファとして加わってくるわけですが、

間近で起きた放射線事故後の世界に生きる人間として、

われわれ人類は新たなフェーズに突入した。

今後はそのように考え方を改めていかなければならないんだと思いますね。

2012年8月25日土曜日

「チェルノブイリ」より 土壌汚染現在1138Bq/kgから5695Bq/kgで将来起こり得ること。

土壌汚染現在1138Bq/kgから5695Bq/kgで将来起こり得ること。「チェルノブイリ」より抜粋
http://www.asyura2.com/11/genpatu14/msg/568.html
投稿者 爺さん 日時 2011 年 7 月 21 日 00:18:22: pkMRoq8j2xu8g
チェルノブイリの
Zone of living with periodical monitoring
 (定期的なモニタリングを伴う生活地域)は、
Cs-137が37000Bq/m2-185000Bq/m2です。

Bq/m2÷65=Bq/kgとすると、569Bq/kg-2846Bq/kgとなります。

現在の土壌Bq値が2年で半減するとしたら、

現在値は1138Bq/kg-5695Bq/kgあたりでしょうか。

65がもっと大きな値なら、現在値はより少なくなります。
関東にも存在する値です。
行政が何の手も打たずに風評と唱えている場所もあります。
居住リスクを考える一つの手がかりとして、
チェルノブイリの該当する汚染地帯で起きた健康被害を、
ヤブロコフ博士編著「チェルノブイリ----」から抜粋邦訳します。

旧ソビエトの論文らしく具体的な数値が省かれていて、
郷愁をそそられますが、参考にはなるかと。
糞英語が苦手というだけで、御用学者にはぐらかされ、
偽りの安全を押し売りされ、被験体とされている、
被曝地の同胞に友愛をこめて。
(以下抜粋訳 significantは有意と訳しました。
英文はnoticeable,marked等と使い分けています。)

第2章 チェルノブイリ破局の公衆衛生public healthへの影響
5.1. 血液・リンパ系疾患
5.1.1. 血液と造血器官の疾患
5.1.1.1. Belarus 

3. 血液学的異常の発生率は、
1Ci/km2以上のレベルのCs-137によって汚染された地域の
1,220,424人の新生児において、有意に高かった。(Busuet et al.,2002) p.58

5.1.2. 心臓血管系疾患
5.1.2.1. Belarus
 10. 帝王切開出産時の失血量は、
Cs-137 1Ci-5Ci/km2レベルの
汚染地帯に住むGomel Province出身女性の方が、
汚染されていない地域に住む女性に比べて、
有意に多かった。(Savchenko et al.,1996) p.62

11. Cs-137 1Ci-5Ci/km2レベル以上に汚染された地域に住む
10歳から15歳の少女は、
低汚染地域に住む少女に比べて、
大脈管の血管運動神経反射に示される後肢への血液供給が
有意に異常だった。
(Khomich and Lysenko,2002;Savanevsky and Gamshey,2003) p.62

5.2. 発生学的変化
5.2.1.1.3. Russia
10. 染色体異常の発生頻度は、
Cs-137レベル 3Ci/km2以上に汚染されたチェルノブイリ地帯の個体において、
2倍から4倍だった。(Bochkov,1993) p.68

11. 重度に汚染されたBryansk ProvinceのNovozybkovと
Klintsy地区,そして、Tula ProvinceのUzlovaya駐屯所Stationに住み続けた、
子宮筋腫(myomas)に罹患した女性の、
T-locus(TCR)変異を伴うリンパ球数と
染色体異常数は、
放射線汚染レベルと相関していた

(tABLE5.10-- Novozybkovsky District 708Bq/m2, Klintsovsky District 322Bq/m2, Uzlpvaya Station 171Bq/m2 ) p.69

5.2.1.1.4. 他の国々
 1.YUGOSLAVIA. 破局数ヶ月後に妊娠した新生児において、
染色体異常数は4.5%(1976-1985平均)から7.1%へと増加した。
(Lukic et al.,1988) p.70

2.AUSTRIA. 1987年にその地で検査された17名の成人において、
染色体異常数は4倍から6倍に増加していた。
さらにその内の、
破局前と1年後に検査された2名は11倍に増加していた。
(Pohl-Ruling et al.,1991) p.70

3.GERMANY(南部地域). 
1987年から1991年に検査された29名の子供と成人において、
染色体異常数は2倍から6倍に増加していた。
(Stephan and Oestreicher,1993) p.70

4.NORWAY(北部地域). 
1991年に、遺伝子異常数の10倍の増加が、
56名の成人において統制群と比較して見い出された。
(Brogger et al.,1996;Schmitz-Feuerhake,2006参照) p.71

5.2.1.2. 遺伝子変異
5.2.1.2.1. トリソミー21 (ダウン症候群) 
 2.GERMANY. 西ベルリンで、
1986年5月に妊娠した赤ん坊babyにおいて、
ダウン症候群を伴った新生児数は2.5倍に増加した。
(Wals and Dolk,1990; Pperling et al.,1911,1994;and others;Figure5.3) 
南部ドイツではトリソミー21事例数の増加は、
羊水穿刺診断により判定された
。(Sperling et al.,1991;Smitz-Feurhake,2006) p.71
<ダウン症候群(ダウンしょうこうぐん、Down syndrome)は、体細胞の21番染色体が1本余分に存在し、計3本(トリソミー症)持つことによって発症する、先天性の疾患群。ダウン症とも呼ばれる。多くは第1減数分裂時の不分離によって生じる他、第2減数分裂時に起こる。治療法・治療薬はない。蒙古症とも呼ばれる。>
 3.SWEDEN. ダウン症候群を伴った新生児数は、
スウェーデン東北部において30%増加した。
東北部はチェルノブイリ放射性核種により最も汚染された地域だった。
(Ericson and Kallen,1994) p.71

4.GREAT BRITAIN. チェルノブイリにより汚染された地帯の一つである
スコットランドLothianにおいて、ダウン症候群を伴う新生児数は倍加した。(Ramsey et al.,1991) p.71

5.3. 内分泌系疾患
5.3.1. 内分泌系疾患データの概観
5.3.1.1. Belarus

10. タイプⅠ糖尿病の発生は破局後ベラルーシ全土で増加した。(Mokhort,2003) 
そして、重度汚染された地域においてその程度はさらに凄まじかった。(Table5.21) p.79

11. 検査された1,026,046名の授乳していたnursing母親たちの内、
Cs-137汚染1Ci/km2以上の地帯出身女性の方が、
糖尿病発生率が有意に高かった。(Busuet et al.,2002) p.79

13. 1993年から2003年に汚染地帯で、50歳未満の男性と全年齢の女性に、
非毒性な単結節と多結節の甲状腺腫と自己免疫甲状腺炎が原因の、
病的状態が有意に増加した。(National Belarussian Report,2006) p.79

15. 1-5Ci/km2の放射能汚染地域(Gomel City)に住み続けた若い女性の、
月経サイクルの第1と第2相の血清中において、
取り込まれたCs-137レベルとプロラクチン濃度の間に相関があった。
それとともに、
第2月経サイクル相の取り込まれたCs-137とプロゲステロン濃度にも
相関があった。(Yagovdik,1998) p.79

5.3.1.2. Ukraine
1. 内分泌系疾患(自己免疫甲状腺炎・甲状腺機能亢進・糖尿病)
の顕著な増加が、全汚染地帯で1992年に始まった
(Tron'ko et al.,1995) p.80

4. 汚染地帯では少女の思春期の始まりが遅れ、
女性の月経サイクルは乱れた
(Vovk and Mysurgyna,1994;Babich and Lypchansksys,1994) 
Sr-90とPuに汚染された地帯では、
少年の思春期は2年遅れ、少女では1年送れた。
しかし一方で、Cs-137に汚染された地帯では性的発達は加速された。(Paramonova and Nedvetskaya,1993) p.80

6. 1986年から1993年にかけて
汚染地帯の16.000名以上の妊婦を評価したところ、
破局2年後、
有意に高レベルな甲状腺刺激ホルモンと
甲状腺ホルモン(TSH and T-4)が明らかにされた。

1988年から1990年にかけて、
主要な甲状腺ホルモンは標準値に近かった。
しかし、
1991年から1992年にかけてTSH,T-4,T-3のレベルは減少した。
1993年になると妊婦および新生児の甲状腺機能亢進が初めて観察された。(Dashkevich et al.,1955;Dashkevich and Janyuta,1997) p.80

7. 汚染地帯に住む50歳以上の女性の約30%が
潜伏性甲状腺機能不全だった。(Panenko et al.,2003) p.80

9. 糖尿病の有意な増加が汚染地帯で破局数年後に観察された。
(Gridjyuk et al.,1998) p.80

5.3.1.3. Russia
1. ホルモン不均衡
(エストラジオール・プロゲステロン・黄体刺激ホルモン・テストステロン)が、
汚染地帯で破局5から6年後に広範に広がった
(Gorptchenko et al.,1995) p.80

 5. 汚染地帯の合計17.7%の妊婦が、
閉経および生殖能力喪失と結びついた、
プロラクチンレベルの有意な増加を示した。(Strukov,2003) p.81

5.3.2. 甲状腺機能障害
 すべての汚染地帯で非悪性甲状腺疾患の著しい増加があった。(Gofman,1994;Dedov and Dedov,1996) 関連した疾病は次を含む。
傷woundsと潰瘍の治癒遅滞、
毛髪の成長遅滞、
虚弱、
脱毛、
呼吸循環器系感染へのかかりやすさ、
夜盲、
めまい頻発、
耳鳴り、
頭痛、
疲労、
精力減退、
食欲欠乏(アノレクシア)、
子供たちの成長遅滞、
男性の性的不能、
出血増加(月経過多を含む)、
胃酸欠乏(アクロリドリア)、
軽貧血。p.83
 
甲状腺機能亢進症候群の内、
疾病として必ずしも記録されないが、
汚染地帯で頻度が増して見られたものは次。
顔面と瞼の膨張、
寒さへの感受性の亢進、
発汗減少、
眠気、
舌膨張、
発話の速度低下、
荒くしゃがれた声、
筋肉痛、
減衰したあるいは傷害された筋肉運動協調、
間接の硬さ、乾燥して荒れ青ざめて冷たい皮膚、
貧弱な記憶、
遅い思考、
呼吸困難(ディスプニーア)、
(Gofman,1990;and others) p.83

甲状腺の病変は副甲状腺の病変と密接に結びついている。
副甲状腺機能は、
甲状腺手術を受けた個人の16%で破壊されていた。
(Demedchik et al.,1996) 
副甲状腺障害に帰される多数の症候群が
チェルノブイリ地帯で観察された。
それらの中には次のものが含まれていた。
男性と女性の性腺機能不全、
正常な身体・性的発達の障害、
下垂体腫瘍、
骨粗しょう症、
脊椎圧迫骨折、
胃十二指腸潰瘍、
尿路結石、
カルシウム胆のう炎。(Dedov and Dedov,1996;Ushakov et al.,1997) p.83

5.3.2.1.Belarus
6. 調査は、Cs-137 1Ci-15Ci/km2レベルの汚染地域出身母体の、4から5月齢胎児の43%に甲状腺病理を発見した。(Kapytonova et al.,1996) p.84
5.3.2.4. 他の国々
POLAND. 
チェルノブイリ・フォールアウトにより汚染された国土の南東部分に住む、
検査された21,000人の個人の内、
2人に1人の女性と10人に1人の子供が肥大した甲状腺を持っていた。
いくつかの居住地では、
甲状腺病理は住民の70%に見られた。
(aSSOCIATED pRESS,2000) P.86

5.3.3. 結論
現在までの1つの重要な発見は、甲状腺癌各1症例あたり、
約1,000症例の他種類甲状腺病理が存在すると言うことだ。
ベラルーシだけでも、最大150万人が甲状腺疾病の危機に瀕していると、
専門家は推定している。(Gofman,1994;Lypyk,2004) p.87

5.4. 免疫システム疾患
5.4.1. Belarus
11. Cs-137 1Ci-5Ci/km2レベルに汚染された地域出身の、
検査された1,313名の子供たちの中のある者たちは、
免疫システムに問題を起こしていた。
その問題は、
低下した好中性食細胞活動、
減少したIgAとIgM、
増加した赤血球凝集、を含んでいた。

(Bandazhevsky et al.,1995) p.88

15. 母乳中の免疫グロブリン IgA, IgM, IgG, A(sA)のレベルは、
汚染地域において有意に低かった。
急性呼吸器ウイルス感染(ARV)、
急性気管支炎、
急性腸感染、
貧血症は、
汚染地域出身の母乳養育の乳児において、数倍多かった。
(Zubovich et al.,1998) p.88

5.4.2. Ukraine 
8. 内部そして外部放射線放射の神経ホルモン反応への影響は、
明らかに異なっている。
内部放射による自己免疫反応の漸進的な進展がある一方、
外部放射による急激な展開がある。(Lysany and Lyubich,2001) p.90

5.6. 泌尿生殖器系疾患と生殖機能異常
5.6.1. Belarus
10. 
1Ci-5Ci/km2に汚染された地域(Gomel City)の
未出産女性の月経機能異常は、
卵巣嚢胞変性と子宮内膜増殖の増加と結びついていた。
卵巣の大きさは血清中テストステロン濃度と相関していた。
(Yagovdik,1998) p.97

5.6.4. 他の国々
 3.CZECH REPUBLIC. 
チェルノブイリ・フォールアウトに最も罹災した
チェコ共和国ボヘミアとモラヴィアにおいて、
月ごとに生まれる男子数は600ヶ月の観察中1度だけ変化した。
(1950-1999) 
1986年11月、長期間の人口統計学的傾向を基に期待されるより、
457人少ない男子が生まれた。
この変化は、破局の時に子宮内7-9週間の赤ん坊に生じた。P.102

5.これ以外の諸国. 誕生時の男女性比率への、
長期間にわたる慢性的な破局の影響が、
デンマーク・フィンランド・ドイツ・ハンガリー・ノルウェー・ポーランド・スイスで、
1982年と1992の間に生じた。
男子の比率は増し、
1987年に性差比は1.0047(95%CI:1.0013-1.0081,P<0.05)であった。
ドイツにおける1986年と1991年の男子の比率と、
地域レベルの放射能被曝との正の相関は、
mSv/yearあたり1.0145という性差比に反映されている。
(95%CI:1.0021-1.0271,P<0.05) (Frentzel-Beyme and Scherb,2007 p.102

5.7. 骨と筋肉の疾患
5.7.2. Ukraine
2. 胎盤に0.9-3.25Bq/kgレベルで取り込まれたCs-137は、
管状骨構造の弱さと脊柱軟骨の破壊に導く。(Arabskaya et al.,2006) p.102

5.8. 神経系および感覚器官の疾病と
それらのメンタル・ヘルスへの影響
 30数年前、
神経系はイオン化放射線に対して
最も耐性があるシステムだとみなされていた。
しかし、これは明らかに大線量に関してだけ当てはまる。
(Gus'kova and Bsisogolov,1971) 
そこで、チェルノブイリ・フォーラム(2005)の報告は、
あらゆる神経学的病気・亢進したレベルの鬱状態・心理的問題を、
心的外傷後ストレスに帰着させた。
(Havenaar,1966; Havenaar et al.,1997a,b)
チェルノブイリの破局以来、
低線量そして低線量率の放射線が、
神経系の精密な構造・高次神経系活動・視角眼球構造、
さらにすべての汚染地帯に広がった神経心理学的異常に対して、
甚大な影響を有することは明白である。
脳の放射線感受性を支持する、ますます増加する証拠がある。
チェルノブイリの破局後22年を経て、
低レベル・イオン化放射線が、
中枢神経系と自律神経系の双方に変化をもたらすことは明らかだ。
そしてそれは放射線が引き起こす脳病理に凝縮する。
(概観はLoganovsky,1999参照)
枢神経系(CNS)のある部分は、特に放射線障害を受けやすい。

5.8.1. 神経系疾患
5.8.1.1. Belarus
2. 神経系と感覚器官の疾病に由来する病的状態が、
すべての汚染地帯で顕著に増加した。(Lomat et al.,1996) p.105

6. 破局後10年、神経系異常は汚染地から退避した10代の間で、
病的状態の2番目の原因だった。
検査された2,335名の10代において1,000人あたり331人の事例があった。(Syvolobova et al.,1997)p.105

7. 成人の神経学的および精神医学的異常は、
汚染地帯で有意に多かった。
(31.2 vs.18.0%) 
短期記憶障害と注意失錯が16歳から17歳の高校生に見られた。
これらの条件の危篤性seriousnessは汚染レベルと直接的に相関していた。
(Ushakov et al.1997)p.105

5.8.1.2. Ukraine
11. 破局後最初の6年間、特に1990年以降、
汚染地帯で成人の神経系の病的状態が著しく増加するのが観察された。(Table5.24)p.107

5.8.1.4. 他の国々
3.SWEDEN. 1983年から1988年に生まれた
562,637名のスウェーデン人に関するデータ・セットの包括的な分析が
明らかにした事によれば、
破局の最中に子宮内にいた群は、破局期間の直前直後に生まれた群よりも、
学業成績が劣っていた。
この障害は受胎後8から25週に被曝した群で最大だった。
さらに、よりたくさんのフォールアウトを受けた地域で生まれた生徒に、
より多くの損傷が見られた。
8つの最も影響を受けた市出身の生徒は、
高校入学資格を得ることが有意に(3.6percentage points)少なかった。
(Almond et al.,2007) p.112

5.8.2. 感覚器官の疾病
5.8.2.4. 他の諸国
 2.NORWAY. 新生児の白内障が破局1年後に2倍の頻度で生じた。
(Irgens et al.,1991) p.115

5.12. 先天性奇形
5.12.1. Belarus
5. いわゆる「きれいな」地域(1Ci/km2以下)と呼ばれる場所の
約24%の子供たちが、先天的奇形を伴って生まれる。
Cs-137汚染が1Ci-5Ci/km2レベルの汚染地区では値は30%、
15Ci/km2以上の汚染レベルを伴う地区では
先天的奇形の割合は83%に達した。(Table5.67) p.125

(訳注 1Ci-5Ci/km2=3,7000Bb/m2-185,000Bq/m2, ÷65で、569Bq/kg-2,846Bq/kg)
(訳注 15Ci/km2=555,000Bq/m2, ÷65で、 8538Bq/kg)
5.12.4. 他の国々
 4.CZECH REPUBLIC. チェルノブイリ前3ヶ月、記録された先天奇形の比率は約16.3(1000人誕生につき)、そしてチェルノブイリ後3ヶ月は18.3だった。1986年から1987年にかけて先天奇形率は有意に増加した。約26%の増加、1000人あたり15から19へ。(UNICEF,2005:from table1.2, calculation by A.Y.) p.130
6.FINLAND. 1987年2月と1987年12月の間、先天的奇形の事例数は、適度にmoderately汚染された地域と高度に汚染された地域において、それぞれ、10%と6%期待値より高かった。より発生数が多い下位グループは、中枢神経系異常と四肢減少limb-reduction異常を含んでいた。(Harjuletho et al.,1989,1991)  p.130
8.GERMANY. The Jena Regional Malformation Registryは、1986年と1987年に、1985年と比べて先天奇形の増加を記録した。個別の奇形は続く数年間で元に戻った。(Lotz et al.,1966, by Hoffmann,2001)奇形増加は、中枢神経系奇形と腹壁異常で最もはなはだしかった。みつくち/口蓋破裂に関する、GDR Malformation Registryの全国的な分析は、1980年と1986年の全国平均と比較して、1987年に9.4%増加したことを明らかにした。(Zieglowski and Hemprich,1999) この増加は、チェルノブイリ・フォールアウトにより最も影響されたドイツの北部3province(州・県)で、最も著しかった。(Hoffmann,2001) p.130-131
11.NORWAY. 1983年5月から1989年4月に妊娠した全新生児のデータは、チェルノブイリからの計算された総放射線量と脳水症のような先天奇形との間に、正の相関を見い出した。ダウン症候群とは負の相関があった。(Terje Lie et al.,1992;Castronovo,1999)p.131
6.2. 甲状腺癌
6.2.1. どのようにして人々は甲状腺癌になるか
6.2.1.4. 他の諸国
 I-131だけでなく、他の放射性核種も、甲状腺癌を引き起こし得ることに注意することは重要だ。
 1.AUSTRIA. 甲状腺癌数の増加は1990年に始まり、汚染された地帯では1995年に特に多かった。(Weinish,2007) p.170
2.CZECH REPUBLIC. 1976年から1990年にかけて甲状腺癌患者数は毎年2%上昇した。1990年以降この癌の発生率は男女込みで年4.6パーセント有意に増加した。(95%CI:1.2-4.1,P=0.0003)女性の値は男性に比べて著しく高かった。チェルノブイリ事故以来、チェコ共和国だけでも、メルトダウン以前に期待されていたより426人余分に発生した。(95%CI:187-688)(Murbeth et al.,2004;Frentzel-Beyme and Scherb,2007)破局後、甲状腺癌発生率は、年齢と性別に依存して、最大5%の追加的各年増加を示した。(Frentzel-Beyme and Scherb,2007) P.172
6.3. 血液白血病癌
6.3.4. 他の国々
 1.GERMANY. 西ドイツで1986年7月1日と1987年12月31日の間に生まれた幼児において、白血病の発生率は1.5倍増加した。  P.180
2.GREAT BRITAIN. 1987年にスコットランドで4歳以下の子供たちの白血病は37%増加した。(Gibson et al.,1988; Busby and Scot Cato,2000; Busby,2006)p.180
7.1. 出生前死亡率の増加
7.2. 出産直前、乳幼児、学童期の死亡率
7.4. 全般的死亡率
 (訳者--これらは北半球のほとんどの国で増加し、高汚染地帯で著しいのですが、この投稿の趣旨に沿った物を1つだけ記載します。)
7.4.3. 全般的死亡率 ロシア
 Lipetsk Cityの全般的死亡率は、そこではCs-137地表汚染は5Ci/km2未満だったが、1986年から1995年にかけて、67%増加した。(1,000人につき7.5人から12.6人へ、Krapyvin,1977) p.207

(以上 抜粋和訳)
次回は、牛を出荷していたりするあたりの地表汚染度で何が起こったか、抜粋してみます。
加えて、農業関係の部分が、出版前公開されなかったら、その部分の全訳を投稿します。
でも、その前に、生き残らないといけないから、放射線防護剤について投稿するかもしれません。

2012年8月21日火曜日

デルテ・ジーデントプフ医学博士インタビュー チェルノブイリの子供達を療養滞在のためドイツに招聘し続けて来た。


MARDI 27 DÉCEMBRE 2011

ドイツTAZ紙:デルテ・ジーデントプフ医学博士インタビュー

ソース:TAZ:Ärtztin mit sozialer Verantwortung (社会的使命感を負った女医)

女医デルテ・ジーデントプフは、20年来、チェルノブイリの子供達を療養滞在のためドイツに招聘し続けて来た。彼女は、福島事故に対する措置に、ただただ唖然としている。(ガブリエレ・ゲートレ取材) 

***

12月初旬、ジーデントプフ博士は私達取材班を、ベルリン・パンコフの市民公園沿いにある彼女の小さな屋根裏のアパートに迎え入れてくれた。 お茶とクッキーをはさんで、今までの救援活動や経験について語ってくれる。

「一番ひどいのは、責任者達がチェルノブイリから何一つ学んでいないことです。チェルノブイリ事故よりもさらに規模の大きい福島原発事故に対する対応ぶりには、私は茫然自失としています。日本政府が避難地区を事故に見合った範囲に拡大しなかったこと、女性や子供達を即座に安全な南部に避難させなかったことに対しては、ただただやり場のない怒りを感じるだけです。そうした適切な措置を取る代わりに、国民はシステマティックに騙されてきました。実際の危険に関する情報は伝えられない、あるいは伝えられても誤った情報である。なんという無責任でしょう。これから日本の方々を襲おうとしている健康問題は想像を絶します。しかも政治と原子力産業はそのことを黙認しているのです! 世界中で!

 チェルノブイリの先例を見れば、事故の規模についてはある程度想像が出来るでしょう。多くの人々がチェルノブイリははるか昔のことだ、ウィキペディアで調べられるような過去の事故だと考えています。しかし汚染地域の住民達は1986年から現在までチェルノブイリ事故と共に生活してきているのです。事故による被害は収束するということを知りません。自然災害と違って、原発事故の被害は時間の経過と共に減少していく代わりに増大していくのです。しかもその期間は今後少なくとも300年間にも及びます。このことに関しては後ほどもっと詳しくお話しましょう。(Gesundheitliche Folgen von Tschernobyl, 20 Jahre nach der Reaktor- Katastrophe )」

人々は何十年にも渡って汚染地域で生活してきた

「その前にまず 何故私達が援助活動をベラルーシーで始めるようになったのか、手短にお話しましょう。チェルノブイリ事故による汚染地域の大部分はベラルーシーにあるのです。当時のソ連邦に降下した放射性物質の70%が当時の旧ソ連ベラルーシー共和国に降り注ぎ、国土のおよそ四分の一が放射能汚染されました。ベラルーシーの国境は原子炉から約15キロの距離にあります。

それだけではありません。事故後、風向きが変わって放射能雲がモスクワに向かい始めたとき、ヨウ化銀を用いた人工雨によって、大急ぎで放射性物質のベラルーシー領域への降下が促進されたのでした。もちろん住民には何も知らされませんでした。五月初旬のよく晴れた日、突然空からべとべとした黄色い雨が落ちて来たと人々は語ります。 このことは長年の間住民に明らかにされず、ただ移住が行われ、指令が出され、人々をなだめすかせるようなことが行われただけでした。計測器は厳重に禁止されていました。

特に汚染がひどかったのがゴメルとモギリョフでした。このモギリョフ地方にあるのが、私が20年来足を運び続けている小都市コスジュコヴィッチなのです。ゴメルとモギリョフ両地方は大きな面積が放射能汚染され、約百万人が移住させられましたが、移住を実行するためにはまず大きな都市や区域に家々を建設しなければなりませんでした。ミンスク(ベラルーシー首都)周辺には大きな街が建てられました。新しい住居に移住できるようになるまで、多くの人々は十年間も汚染地域に住み続けなければなりませんでした。そして今でも多くの人々が汚染された土の上に住み、農業に従事しています。

ソ連邦が崩壊した後には、こうした措置の責任はすべてベラルーシーが負うことになりました。私達の「区域」だけでも8000人の住民が移住させられました。26の村が取り壊され、土に埋められました。放射能汚染地域の村々の多くは、空っぽのまま取り残されています。そこには老人達が帰郷したり、町で生活していけないアフガニスタンやチェチェン戦争の旧軍人達が住み着いたりしています。

チェルノブイリ周辺の閉鎖区域でも似たような光景が見られます。古い村に人々は電気も水道もないまま住み続け、自分達の手でなんとか生き延びています。この地域の地面は砂地です。ベルリンと同じで、白樺の森はベルリンからモスクワまで続いています。この土地では地下水は浅く、放射性物質が年に2センチずつ沈下していくと考えると、現在では地下50センチまで達していることになり、地下水まであとわずかです。

国家予算の半分

そういうわけですから、彼の地では大々的な変革が起こりました。ベラルーシーは莫大な医療費を負担しなければいけませんでした。チェルノブイリ事故後十年、十五年に渡って行われてきた国土に対する対策、校庭の除染ですとか、取り壊しなど。いったいその汚染土がどこに運ばれていったのか私は知りません。こうした費用はすべてベラルーシーが負担しなければなりませんでした。おそらく国家予算の半分はチェルノブイリ事故処理のために消えていったと思われます。

とうとうある時期、ソ連時代のような比較的気前の良い措置を実施し続けることは望まれなくなり、また続けることも不可能になったのです。ルカシェンコ大統領がチェルノブイリ事故は収束したものであり、博物館に収めるべき過去の出来事であると発表したのはそのためです。放射能汚染されていたベラルーシーの地域はすべて安全になったと公式表明されました。

旧リキダートア達(事故処理作業員)で証明書を保持する者には、事故後20年間、「石棺費」と呼ばれる補償が支払われてきました。また移住をさせられた人々も請求権を所持していました。こう言った手当てが広範囲に中止されてしまったのです。決して多額ではありませんでしたが、その他に無料に施されていた医療手当ても廃止されてしまいました。またチェルノブイリ事故の影響と認められてきた幾つかの病気も、現在では容易には認められなくなりました。
事故を起こしたチェルノブイリ原発とその周辺地域には、およそ百万人の「事故処理作業員」 が送られました。ほとんどが若者です。そして多くがベラルーシー出身でした。今日こうした作業員のほとんどが身障者です。肺癌、甲状腺癌、心臓疾患、腎臓や胃腸の障害、白血病のほか、精神病を病んでいる者もあります。すでに約十万人が40~50代で亡くなっています。自殺をした者も数多くあります。それなのにあっさりと「チェルノブイリは過去のものだ」といわれるのです。ミンスクでは抗議運動が起こりました。そして現在キエフでも旧リキダートア達が、ウクライナ政府が目論んでいる年金や手当て打ち切りに対してハンガーストライキを行ったところです。

例えばベラルーシーでは、被害者達は幼稚園や学校給食が無料だったり、子供達は特別のヴィタミン剤や保養を受けることも出来ました。保養こそ今でも年に一度受けることが出来ますが、その他の措置はすべて打ち切られてしまいました。ヴィタミンたっぷりの給食もです。被害者達は今でも証明書を所持していて私達に見せてくれますが、実際には価値がなくなってしまったわけです。事故当時の請求権はすべて廃止されてしまったのです。

そもそも収入が少ない上に体も壊している人々にとって、こうした廃止や短縮はすぐに響きます。今もちょうど毎年恒例の地方税増税を行ったところです。つまり水道代と暖房費。例えばこの暖房ですが、田園地帯を通って耐寒措置の施されていない配管から都市や大きな住宅、団地に送られるので、途中で多くの熱が失われてしまいます。そして人々は失われた暖房分も支払わなければなりませんから、村に住んだ方が安くあがることになります。

国民の生活を圧迫する国家巨大赤字は、確かにチェルノブイリ事故処理を原因とする面もありますが、ずさん極まりない経済体制によるところも大きいのです。ベラルーシーのハイパー・インフレは目下113パーセントにも昇ります。国民の平均所得は月々150~300ユーロ(約1万5千円~3万円)です。外国での就労は認められていません。

反対運動はまったく存在を許されない

ベラルーシーと新たなEU参加国であるポーランドやラトヴィア、リトアニアへの国境は非常に近いです。しかし問題はお金や国家破綻の脅威だけではありません。20年間この国はどうにも民主主義を樹立させられずにいるのです。政権に対する反抗はまったく許されません。それでもなお抗議運動が起こるのです。新しい原発建設と言うとんでもない政治決定に対する抗議です。

ベラルーシーは原発を所持しません。しかし福島原発事故後間もなくルカシェンコは、ロシアの支援を受けて、リトアニアとの国境から20キロの場所にあるオストロヴェッツに原発を建設すると発表しました。その後ルカシェンコとプーチンの間で契約も締結されました。建設費用は50億ユーロ以上掛かると言われていますが、この新型でまったく安全な原発により、クリーンで安価なエネルギーの供給が可能になり、雇用も増加するというお決まりのプロパガンダが行われています。東でも西でも原発産業はまったく変わりません。

(中略:デルテさんのベラルーシー訪問や支援活動について語られますが長いのでいったん略させていただきます)

さて、現地の人々の健康状態についてお話しましょう。ドイツでは耳にすることのない内容です。次のことをよく念頭に入れておくことが重要です:事故から時間が経過するとともに、人々の健康と生物学上の被害は甚大になっていくのです。ドイツ政府もマスコミも、ルカシェンコ大統領と同じ様にこの事実から目を逸らそうとしています。事故は過去のもの、博物館入りしたものと言う政治決定がなされたからです。

身を隠す母親たち

チェルノブイリ事故後、様々な異なる被害の波が発生しました。最初の波はまず成人に襲いかかりました。リキダートア達、放射能汚染した村を訪れた医者やその他の人々、そしてそう言う場所に住んでいた人々の多くが間もなく癌で亡くなったのです。またもう一方で、間もなく子供達も被害を受け始めました。ベラルーシーではヨード不足が蔓延しています。ベラルーシーには海岸がありませんから。その点日本は幸運でした。蔓延するヨード不足のため、ベラルーシーの子供達は甲状腺に大量の放射性ヨウ素を取り込んでしまいました。放射性ヨウ素は半減期が短いので、最初の十日間で取り込まれたことになります。

またチェルノブイリ事故後、被害を受けた妊婦を全員堕胎させる試みが行われました。しかし一部の妊婦達は身を隠してしまったのです。そしてその翌年生まれてきた子供達の間にも、甲状腺癌が現われたのでした。甲状腺癌はチェルノブイリ事故以前には子供にはまったく見られなかったのに、今では4000人の子供の甲状腺癌がベラルーシーでは公的に認められています。この子供達は手術を受け、放射性治療を受けました。それでも一生ホルモン投与を続けなければ、クレチン病 (甲状腺機能低下による先天性の病気; 体の奇形・白痴症状を伴う)を患ってしまいます。こうした一連の治療は、後年発症した機能障害のケースも含めて、事故から25年が経過した今日でも無料で行われるべきです。

続く世代には血液の病気が増発しました。ですから私達は「チェルノブイリは遺伝子の中で荒れ狂っている」と表現するのです。そしてこの現象はあと300年間続くことになるでしょう。これはストロンチウムとセシウムの半減期30年を十倍して計算した大まかな期間です。そして少なくとも7から8世代を意味します。半減期が2万4千年のプルトニウムには言及しません。糖尿病も問題の一つで、成人のみならず子供や特に新生児に見られます。かつてはありえなかったことです。

糖尿病に対して、ベラルーシーは二種類のインシュリンを購入して、すべての患者に対応しようとしています。しかし子供には少なくとも三種類のインシュリンが必要です。これはNGOが面倒を見なければ、手に入らない状態です。NGOはまた、不足している知識を人々に広める役割も果たしています。さらなる問題としては、子供の視力障害、白内障が挙げられます。また女性の間では乳癌が増加し、患者の多くは5年以内に命を落としてしまいました。もしかしたら被曝によって引き起こされる癌は、通常の生活の中で発生する癌よりもタチが悪いのでしょうか?

奇形の数も増えました。堕胎は大きなテーマです。ベラルーシーには避妊費用を負担できる人がほとんどいないのです。ですからこれは大きな問題です。また逆に不妊に悩む夫婦の問題も発生しています。コスチュコヴィッチでは30%の夫婦が、望まない不妊に悩んでいます。また現在6,7,8,9歳の子供達の間で悪性腫瘍が増加し、新たな問題となっています。脳腫瘍や骨の腫瘍です。
まだまだ問題はあります。放射能汚染した地域では、傷口がなかなか癒えないのです。これはドラマチックでした。原因は免疫力の低下。骨に取り込まれたストロンチウムのせいです。骨の中では血液が製造されますが、それが常に被曝を続ける状態になるわけです。ちょうどエイズと同じような状況で、抗体が製造されなくなるために予防接種が効かないのです。そのために予防接種にも関わらず急性灰白髄炎(ポリオ)が増加しました。予防接種が効かなくなったせいと栄養状態が悪いせいで結核も増加しました。その上人々は自家菜園に雨水を撒き、秋になると今でも汚染度の極めて高いキノコや野いちごを収穫します。

傷ついた細胞

被曝が直接引き起こす健康被害にはまた、身体又は精神に障害を持つ子供の増加があります。女性の卵巣は胎児の状態ですでに形成されることをよく知っておかなければなりません。そして細胞の多くは約8百万個の卵胞に発達します。母体が受けている傷はすべてこうした細胞に伝達されます。胎盤という保護膜がありますが、よりによって放射性物質はこの部分に凝縮しやすいのです。傷ついた卵子は修復されることができません。誕生時に1~2百万個が傷ついていることになります。思春期では約40万個がまだ残っています。依然傷ついたままの卵子を持った母体が妊娠すると、それに応じた障害が引き起こされるのです。もう一つ知っておかなければならない大事なことがあります。こうした遺伝子の障害や癌と言った症状の原因はすべて低線量被曝 だということです。これはリキダートア達を襲った被曝症状とは別物なのです。そして責任者達はこのことを頑なに認めようとしていません。

身体に取り込まれた人工放射性物質が内臓器官を傷つけるのは、波長の短い放射線を発するためです。放射性物質が細胞を傷けた場合起こりえる現象は四通りあります:

 1)細胞は死亡する 
2)細胞の機能が障害を受ける
3)細胞は劣化し癌に変わっていく
4)細胞は修復される

 4)が可能なのは成長した細胞だけです。胎児には修復機能は全く備わっていませんし、子供の細胞も修復はできません。子供の細胞は成長と分裂を行うように出来ているだけで、修復機能は徐々に取得されていくものなのです。そのため、子供達はひときわ被曝の脅威にさらされています。福島の妊婦と子供達が即座に避難させられなければいけなかったのもそのためなのです!

原子力産業の規模というものは、私達などにはまるで想像も及ばないほど巨大なものです。あまりに多くの経済的利権、お金が背景に絡んでいます。そして原子力産業とそのロビイスト達(これに含まれるのは政治家や関連組織ですが)は、徹底して冷笑的な存在であり、それに見合った行動を取ることだけは私達にもわかります。まずは被曝許容基準量が一番の例です。ベラルーシーとウクライナでさえ、被曝許容基準は私達(ヨーロッパ)よりも低いのです。とにかく世界には完全に中立の機関が一つとして存在しないのです。WHOには、放射線防護の専門家はたった1人しかいません。 それにどっちみちWHOは発言なんてできないのです。放射線問題に関しては完全に口を封じられてしまっているからです。1957年にIAEA(世界原子力機構)との間に結んだ協定によって、WHOは、本当の放射能危機に関するいかなる報告を行うことも阻止されているのです。私達はこの口封じの協定を断固として弾劾しなければなりません。IPPNWはこの協定の破棄を求めています!この協定を破棄することで、WHOはようやく自らの憲章前文を正当に実施することが出来るようになるかもしれません:「最高水準の健康に恵まれることは、 あらゆる人々にとっての基本的人権のひとつです。」

IPPNWは、2011年8月に公表したFoodwatch リポートにおいて明白な表現を行っています:「許容基準の設定とは、結局のところ社会が許容する死亡者数を意味するのである。」

***

医学博士デルテ・ ジーデントプフ。1942年オルデンブルグ(北ドイツ)生まれ。同地でアビトゥア(大学入学資格)まで学び、1961年からヴュルツブルグ、ベルリン、 ゲッティンゲンで人間医学を学ぶ。1966年学位取得試験、1968年博士号取得。1967年結婚し、子供二人を持つ。1970年からはヘッセン州ディー ツェンバッハの共同診療所に一般医・心理セラピストとして常勤。2003年現役引退。

ジーデントプフ博士は1981年の創設当時からIPPNW  (核戦争防止国際医師の会)に所属する。 
90年代はじめ「ディーツェンバッハ・コスチュコヴィッチ友の会財団」を設立。年二回、ベラルーシに医療器具、衣服、自転車、ミシン、コンピューターなどの支援物資を送付するなどしている。

ド イツでは20年来、チェルノブイリの子供達のための療養滞在が組織されて来ている。ディーツェンバッハ市ではホストファミリーが毎年夏にベラルーシーの子 供達を迎える。今では「友の会」はメンバーの数も増え、コスチュコヴィッチ市との間に数々の交友を実現させてきた。何人かの実行グループのメンバーが世話 を一手に引き受け、寄付金や物資支援も募集している。2009年チェルノブイリ事故から23周年の日には、両市は姉妹都市となった。ジーデントプフ博士は 医師の夫を持ち、子供が二人いる。父親は地方医、母親は教師で主婦だった。

2012年8月15日水曜日

六ケ所村の再処理工場  平均的な原子力発電所から、環境に出される放射性物質の1年分を、この再処理工場から出される量は、1日で抜いてしまう


六ヶ所再処理工場が、1日で33京ベクレル(原発1年分超)の放射能を、環境に放出するワケ

2012年07月22日 | 日本とわたし


千葉「京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さんです。小出さん、今日もどうぞよろしくお願い申し上げます」

小出「よろしくお願いします」

千葉「今日は、毎日新聞論説委員の池田昭さんと一緒に、お話を伺います」

小出「はい」

池田「あ、よろしくお願いします」

小出「はい。池田さんよろしくお願いします」

池田「どうも」

千葉「さて小出さん、先週このコーナーでですね」

小出「はい」

千葉「え……リスナーの方から頂いた質問で、
青森県六ケ所村の再処理工場から環境に出される放射性物質が、めっちゃめちゃ多い、ということで。
年間で33京ベクレルもある
という、お話について、伺ったんですけれども」

小出「はい」

千葉「平均的な原子力発電所から、環境に出される放射性物質の1年分を、この再処理工場から出される量は、1日で抜いてしまう、ということでしたよね」

小出「そうです」

千葉「まあ、再処理工場は、それぐらい多くの放射性物質を環境に出す、というお話で。
わたくしめっちゃめっちゃ驚いたものですから、もう少し、このことについて、今日は詳しくお伺いしたいと思っております」

小出「はい」

千葉「で、早速なんですが」

小出「はい」

千葉「なんでですね。再処理工場は、そんなに放射性物質が出るんですか?」

小出「はい。再処理工場という名前を聞くとですね、普通の方の中には、原子力発電所が生み出す放射能を、なにか処理してくれる、消してくれる工場なのかと、考える方が結構いらっしゃることに、私は気が付きました」

千葉「はい」

小出「しかし、再処理工場というのは、もちろん、放射能を消したりすることができるわけではありませんで。やることは、プルトニウムという、長崎原爆の材料になった物質を、ただ取り出すということをやる工場、です。
それで、ちょっと、皆さんにイメージを持っていただきたいのですが。
原子力発電所でウランを燃やしていますが、そのウランは、直径1センチ高さ1センチ、という、まあちょっと大きめの枝豆の豆のようなですね、ぐらいの大きさの瀬戸物に、焼き固めてあります」

千葉「はい」

小出「それを、燃料棒という、まあ、細長い物干し竿のようなものの中に、ずらりと並べて詰めてある、のです。
で、運転中はその、ウランが燃えて、核分裂生成物、いわゆる死の灰ができていくのですが、
それと同時に、プルトニウムという、長崎原爆の材料もできていくという、そういう物理的な性質を持っています


千葉「ええ」

小出「で、原子力発電所が、長い間運転していると、燃料の焼き固めた瀬戸物の中に、核分裂生成物とプルトニウムが、どんどん溜まってきますし、
燃え残りのウランもまた、残っているという状態で、いわゆる、使用済みの燃料になります。
で、通常運転中は、それらすべてが、燃料棒という金属の鞘の中に閉じ込められている、ことになっていますので、
原子力発電所から出てくる放射能は、基本的には、あまり多くないという状態にした、のです」

千葉「はい」

小出「ただし、再処理という作業の目的は、プルトニウムを取り出すということなのです。
一体じゃあ、瀬戸物に焼き固めたウランの塊の中から、プルトニウムをどうやったら取り出すことができるのか、ということを皆さんに想像して欲しいのですが。
まず、その、金属の棒の中に入っていたら、全く手をつけることができませんから、金属の棒を、再処理工場で、一番初めてちょんぎってしまいます」

千葉「はい」

小出「つまり、せっかく放射性物質を閉じ込めていた金属の鞘を、バラバラにしてしまって、瀬戸物をむき出しにするという作業から始まるのです。
次に、瀬戸物の中には、核分裂生成物と、プルトニウムと、燃え残りのウランが渾然一体となって、まあ1つの瀬戸物の塊を作っているのですが、
その中からプルトニウムだけを取り出す、ということをしようとしたら、どうしたら良いでしょうか


千葉「もう、バラバラ……に、しちゃうんですか」

小出「はい(苦笑)。まあバラバラに、まあ例えば、瀬戸物を砕く、という事もいいかもしれませんけど。
砕いたところで、いずれにしても、ウランと燃え残りのウランと、核分裂生成物とプルトニウムが、渾然一体となった、ただただまあ、バラバラになった瀬戸物になるだけなんですね。
ですからどうするかというと、瀬戸物をどろどろに溶かして、液体にすると言っているのです」

千葉「はい」

小出「皆さん、家庭の茶碗とかですね、お皿とか箸置き、それをどろどろに溶かすということが、想像できるでしょうか」

千葉「いやあ……、あんまり想像できませんよね」

小出「ですよねえ。
要するに、大変まあ、困難なことをやろうとしているわけで。
濃度の濃い硝酸を、温度をかけて温めて、その中で、瀬戸物をどろどろに溶かしてしまう、というのです。
んで、その上で、薬品を加えていって、燃え残りのウランと、核分裂生成物と、プルトニウムを、
ケミカル、まあ化学的な精査操作をして、分けるというのが、再処理という作業
、なのです。
で、原子力発電所では、せっかく瀬戸物の中に閉じ込めていた、あるいは、燃料棒の中に閉じ込めていたという放射能を、
全部バラバラにして、剥き出しにして、液体にして分離するというのが、再処理という作業
なのです。
もう、途方も無い危険な作業ですし、放射能が外に出てきてしまうということは、もうどうしようもないことなのです」

千葉「んー、せっかく閉じ込めていた、その放射性物質、放射能を、そうやってバラバラにすることによって」

小出「はい」

千葉「外に出しちゃうということなんですか?」

小出「そうです」

千葉「え……でも、そんなにたくさん、環境に出てしまうということを、国は認めてるんですか」

小出「もちろん、です。
元々、この再処理という作業は、はじめに聞いていただきましたように、長崎原爆を作る材料だったプルトニウムを、どうしても取り出さなければいけないという、軍事的な要請で始められたのです」

千葉「ほう」

小出「んで……軍事的な要請というのは、安全性も経済性も無視できるという、条件がありますので、ようやくにして成り立った技術なのです。
ただ、日本というこの国は、取り出したプルトニウムを、原爆にするのではなくて、また、原子力発電所の燃料に使うんだ、ということを言って、再処理ということをやろうとした、のです。
でも、軍事的な目的でやろうと、商業的な目的でやろうと、やることは同じなわけですから、
膨大な放射性物質が、環境に出てくるということは避けられない
ことになった、のです」

千葉「え、でも小出さん」

小出「はい」

千葉「33京ベクレルなんてものすごい量の、まあ放射性物質が出てくるわけですから」

小出「はい。それはあの、クリプトン85という、たった1種類の放射性物質で、それだけ、です。
その他にも、トリチウムであるとか、炭素14であるとか、もう様々な放射性物質を、環境に出す
ことになります」

千葉「はい。これは、出すのを防ぐ技術ってのは今、無いんですか?」

小出「クリプトン85というのは、希ガス、と私達が呼んでいる放射性物質でして、
完全なガス体で、どんなことをやっても、他の物質と化合しないし、フィルターというものにもくっつかないという、そういう特殊な性質をもっています。
そのため、再処理工場側は、クリプトン85に関しては、一切補足しないで全量を放出する、と言っています」

千葉「うーん」

小出「ただし、やり方はあるのです。
例えば、クリプトン85というその……気体……まあガスなのですけれども、マイナス153度まで冷やすことが出来れば、液体に出来ます」

千葉「はい」

小出「液体に出来れば、もちろん閉じ込めることが出来る、わけですから、お金をかけて、やろう、やる気になればできるのです。
ただし、そんなことはしない、というように、再処理工場が言っています」

池田「うー……」

千葉「お金かかるからですか」

小出「お金がかかるからです。
すでに国の方は、クリプトン85を閉じ込める技術を開発するために、確か160億円だったと思いますが、研究開発資金を投入しました。
そして、出来るということは分かったのですが、実際にやろうと思うとお金がかかるし、仮に閉じ込めたとしても、それをずうっとお守りをするのも大変なので、もう初めから放出してしまう、ということにしました

池田「あの小出さん」

小出「はい」

池田「先日来ですね、」

小出「はい」

池田「あの……福島原発、からですね」

小出「はい」

池田「あの、たとえその使用済燃料棒ではないとはいえですね、あの、燃料棒の取り出しの映像が映ってますよね」

小出「はい」

池田「あれ見ても、多くの人達が見たと思うんですが、かなりゾッとする話なんですが」

小出「そうですね」

池田「それをどろどろにしちゃう、ということになるとですね」

小出「はい」

池田「これはかなり愚かな、行為の繰り返しと」

小出「はい。私は、やるべきでないと思います」

池田「うーん……」

千葉「ん……」

池田「ですよね……」

小出「はい」

池田「あれでも、ぞっとするような映像を見せつけられてるような気がするんですね」

小出「そうですね。まあ原子力というものに手を染めてしまえば、どうしても放射性物質を作ってしまう、わけです」

池田「そうですね」

小出「はい。大変な困難な問題を、これからずうっと抱えていくことになります」

千葉「分かりました。小出さんどうもありがとうございました」

小出「はい。ありがとうございました」

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六ヶ所村再処理工場の全景


いったい、原子力業界の人間は、なにを考えてこんなことをやってるのやろう。
この再処理については、原子力の親玉のアメリカでさえ、カーター政権時代に、政策で禁止してるっちゅうのに。
それは1977年のことで、今からもう35年も前の話やし。
ただ、その後で、あの、思い出すのもおぞましい、ブッシュが共和党の政権を取り戻した2001年に、
『国際原子力エネルギーパートナーシップ(GNEP)』構想っちゅう、おなじみ大文字のアルファベットが並ぶ悪巧みが打ち出されて、
アメリカが中心になって、原子力先進諸国(もちろん日本もグルやったんやろ)、濃縮・再処理技術を放棄した諸国に対し、
発電用の核燃料を供給したる、使用済燃料の引き取りもやったるわ、とか言うて、甘い話を餌に妙なちょっかい出しとったんやけど、
そんな愚かで意味の無い構想なんか、もちろんオバマ政権は却下。無かったことになってるねん。

再処理なんか多分無理。
最初は夢を抱いて、必死で研究開発してたんやろけど、
現実的に賢う考えてたら、もうとっくの昔に中止して然るべきことのはず。

原発廃炉も大事やけど、この六ヶ所を動かしてしもたら終わり。
施設周辺の農産物、海産物、さようなら。
イギリス(セラフィールド)やフランス(ラ・アーグ)の再処理施設周辺では、小児白血病が増えてて、それを政府も認めてんねん。
おまけに、そこにも活断層があるやもしれんと言うてる学者がおんねん。
そんな、プルトニウムだらけのとこに、おっきな地震が起こったら、どないなると思う?
だいたい、プルサーマル発電も、高速増殖炉も、もうあかんのに、なんでそんな再処理工場なんかが必要なわけ?
意味ないやん。

もうええかげんに退場して!
日本から追い出してやりたいけど、そうはいかんわ。
なにがなんでも、あんたらを、日本の法で罰したる!

けどな、あんたらがなんぼ罰せられても、あんたらが撒いた放射能汚染も、放射能のゴミも、それからボロボロの原発も、みんなみんな残り続けるねん。
それが、日本の未来をどれだけ大変なもんにするか、そのことの罪深さを、思い知らせてやりたい。

「ホールボディカウンター検査は、受ける必要はない!~絶対に受けてはいけない!」

 結論を先に述べますと、「ホールボディカウンター検査は、受ける必要はない!~絶対に受けてはいけない!」となります。この結論に至るまでには、今回の原発事故により飛散した放射性物質の核種と、それぞれの人体における被曝のパターンを正しく知る必要があります。
 今回の評論は、一部専門的なところもあり、一度読んだだけでは理解しにくいかもしれませんが、ぜひ何度も読んで、すべてを理解してください。
 ほとんどのマスコミは全く取り上げていませんが、日本政府がIAEAに報告するために作成した資料で、昨年8月26日に経済産業省から発表された福島第一原発から放出された核種と広島原爆で放出された核種の試算表を見ると、福島県から関東一帯で、決定的というべきか、運命的というべきか、致命的という言うべき重大なことが進行していることがわかります。
 アルファ核種として、プルトニウム238、239、240、ベータ核種として、キセノン、ストロンチウム、テルル、ヨウ素、ネプツニウム、セシウム、ガンマ核種として、ヨウ素、セシウムが大量に放出されました。
 この中で最も量が多かったのは、希ガスと言われるキセノンガスであり、これはベータ線を出します。 乳がんとの関連性が疑われている核種です。
 次に多かったのは、セシウムであり、半減期約2年のセシウム134が半分、半減期30年のセシウム137が残りの半分です。これはベータ線も出しますが、一般の人が問題にしているのは、セシウムのガンマ線です。
 その次は、ヨウ素、ストロンチウム、テルルで、この中でヨウ素はガンマ線も出しますが、その他の核種はベータ線を出すものです。

 アルファ線を出す代表核種であるプルトニウム~地球上における最強の毒と言われる~の降下量は、これらの核種よりは少ないのですが、ここで、プルトニウムよりはるかに大量に降下したネプツニウムに注目しなくてはなりません。ネプツニウムは、半減期2.356日でベータ線を出して、プルトニウム239に変わります。プルトニウム239は、アルファ線を出します。3月15日ごろ、関東から福島に大量に降ったネプツニウムは、約2日経ったくらいから、そこらここらで大量にプルトニウムを生産していたことになります。
 さて、3月11日の地震により、福島第一原発は冷却機能を失い、水素爆発に至ったわけですが、その中でプルトニウムを燃料として使用している3号機は、水素爆発の直後、即発臨界という現象が起こり、使用済み燃料プールにあった核燃料が、ほぼすべて核爆発を起こして消失しています。これは、ほとんどの日本の研究者は指摘していませんし、政府や東電も認めていませんが、アメリカのスリーマイル島の原発事故の原因調査の最高責任者であったアニーガンダーセン博士が事故直後から指摘しています。水素爆発の温度は約600℃であるのに対し、核爆発は何千℃、何万℃に至ります。プルトニウムの沸点は、約3200℃であり、水素爆発ではプルトニウムは気体にはなりませんが、核爆発では一瞬で気体となり、空高く舞い上がります。3号機の使用済み核燃料プールに入れてあった核燃料がほぼすべて無くなっていること、爆発のビデオ解析から爆発のスピードが音速を超えることが明らかであることから、3号機の核爆発は100%間違いないといえます。先に述べた放出核種の分析と、この現象はよく一致します。
 3号機の爆発のあった3月14日と2号機と4号機の爆発のあった15日は、公開されているSPEEDIのデータによると、南向きの風が吹いており、死の灰の塊であるプルトニウムを大量に含んだ放射能雲は、千葉、東京、神奈川を直撃しました。幸い雨は降っておらず、風向きが北向きへと変わり、大量の地上降下は避けられましたが、相当の放射能汚染があるはずです。南の風に押し上げられた放射能雲は、15日の午後には栃木県県北、群馬県県北、福島へ到達し、残念ながら小雨の降っていたこれらの地方には、大量の地上汚染となりました。つまり、これらの地方の放射性物質による放射能汚染は、巷で言われているセシウムだけではなく、大量のアルファ核種~プルトニウムなどや、ベータ核種~ストロンチウムなどによる汚染があるということになります。
 ガンマ線は、市販のガイガーカウンターやシンチレンションカウンターで簡単に測定できますが、アルファ線、ベータ線は、特殊なガイガーカウンター~その他の機器を使用しないと測れません。特殊なガイガーカウンターで那須町、那須塩原市の土壌を測定してみましたが、やはり大量のアルファ線~すなわちプルトニウムと考えられるものを検出します。
 ここで、内部被ばくと外部被ばくの違い、アルファ、ベータ、ガンマ、それぞれの核種の特徴を簡単にまとめてみましょう。
 まず、アルファ線について、空気中では、せいぜい3センチから45ミリくらいしか進みません。ついで、ベータ線は1メートルから最大10メートル進みます。ガンマ線は100メートルくらい到達します。
 外部被ばくについて、これは人体が外部から受ける放射線による被曝です。したがって、アルファ線は無視してよく、一部ベータ線も影響しますが、ガンマ線が主体です。ガンマ線は、鉄筋の建物ならば防護できますが、木造では防護できず、ガンマ線源から遠ざかること~近寄らないこと、疎開や移住することで防護できます。
 今回の事故で問題になっている核種は、セシウム134と137です。
 内部被ばくについて、これは人体が呼吸や飲食によって、放射性物質を取り込んで生じる被曝です。アルファ線、ベータ線、ガンマ線、すべての放射線が関係します。この中で特に影響の大きいものが、アルファ線とベータ線です。この2種は、人間の2本鎖DNAを2本とも切断します。障害細胞の修復困難の可能性~すなわち発ガンの可能性が高まります。ガンマ線は1本だけです。前述のようにアルファ線は、人体の中では、ほんの数ミリしか進みません。たった数ミリしか進まないから力が弱いのではなく、その短い距離で猛烈にエネルギーを消費して細胞を傷害しますので、人体には特に悪い放射線です。
 今回の事故で主として問題になる核種は、プルトニウム、ストロンチウム、ヨウ素、セシウム、キセノンなどです。
 この中で、まずヨウ素131を見てみましょう。ヨウ素131を呼吸で吸い込むと、すぐに甲状腺に集まってきます。日本人は海藻をよく食べるから大丈夫などということは、ありません。甲状腺内でベータ崩壊が起こり、ベータ線を出して甲状腺を傷つけます。ベータ崩壊に伴って出てきたキセノン131のうちの一部がガンマ崩壊して、ガンマ線を出して2度甲状腺を傷つけます。ヨウ素131の物理学的半減期は8日で、8日で吸い込んだヨウ素131の半分は、キセノン131に変わります。一方、生物学的半減期は80日であり、これは吸い込んだヨウ素131が体の中から半分が出て行く時間です。いずれにせよ、80日目に調べたのでは、ヨウ素131は体の中にはほとんどありませんので、ホールボディカウンターなどの被曝したかどうかの検査をしても意味がありません。物理学的半減期が短い放射性物質は、一気に崩壊が起こり、放射線が一気に出て細胞障害がおこるので、発ガン性が高いと覚えておいてください。
 セシウム137の場合は、物理学的半減期30年>生物学的半減期70~100日であって、一気にはベータ崩壊とガンマ崩壊が起こりませんが、体から排泄されるまで連続して放射線被曝を生じて発ガン性が高まります。ホールボディカウンターで検出されるものは、この核種です。
 プルトニウムストロンチウムは、いずれも物理学的半減期、生物学的半減期ともに、2万4千年と数十年(プルトニウム239)、29年と数十年(ストロンチウム90)と半減期の長い放射性物質です。いずれも人体に入ると長期間にわたり細胞を傷害して、しかも近くの細胞を執拗に障害するので、発ガンの危険の特に高い放射性物質です。ホールボディカウンターでは全く検出できない核種です。
 いよいよ、本題のホールボディカウンターですが、NaI(TI)シンチレーション検出機を使って全身を検査するものです。基本的にはガンマ線を放出する核種、セシウム134、137、カリウム40、ヨウ素131などのγ線を放出する核種を検出するものです。ベータ核種のストロンチウム90やアルファ核種のプルトニウム239などの最も危険な核種は検出できません。また、正確に測るには、30分以上かけて、データの分析に熟練した技師が行う必要があり、とても2~3分の流れ作業的検査では正確な被曝の証拠は出ません。ECRR(ヨーロッパ放射線防護委員会)のバズビー博士は「そもそもセシウムしか重要視していないホールボディカウンター検査は意味がない。こんなものにお金を使うより、食の安全にお金をかけるべきだ。」と言っておられます。
 福島県では、昨年から住民のホールボディカウンター検査が始まりましたが、被曝の検出率は数%と低いようです。栃木県でも、18歳以下の住民を対象に検査を行うように予算が付けられるようですが、どうでしょうか。おそらく内部被ばくが証明できるのは、検査人数の1%以下でしょう。
 事故から1年が経とうとしておりますこれからの時期にホールボディカウンター検査をしても、ヨウ素131は全く検出できませんし、もともとプルトニウム、ストロンチウムは全く検出できません。したがって、ほとんどの人が内部被ばくは無かったとされてしまいます。実際は、ヨウ素131の大量被ばく、プルトニウムとストロンチウムもかなりの量を内部被ばく、セシウムもそれなりに大量に被曝しているのに。
 これでは、原発村の学者たちの思うつぼにはまります。原発村の学者は、データがほしいのです。 栃木県や福島県の住民を検査したが、ほとんど内部被ばくはなかった。したがって、今後がん患者が増えても、原発事故によるものではない~こういう結論がほしいのです。本当は、アルファ核種やベータ核種の内部被ばくを正確に測定できる機械で測定せず、しかも短時間にいい加減な測定をして、内部被ばくがなかったことにして導き出した、でたらめな結論であるにもかかわらず。
 彼らは、ICRP(国際放射線防護委員会)の内部被ばくを考慮しない、外部被ばくだけの放射線障害の結論~チェルノブイリ原発事故では、原発職員が約50名急性放射線障害で死亡したが、住民への影響は、小児の甲状腺ガンがほんの少し増えただけであった!その他の病気が増えたのは、ストレスによるものである!~他の臓器のがん患者や奇形の子供の出産も大幅に増えており、完全なでたらめ!!~こんな結論を今だに信じて疑わない~疑いたくない連中です。
 もう一度言いましょう! 原発村の学者は、内部被ばくを十分に調べた、外部被ばくも測定したが、内部被ばくはほとんどなかったので、ガン患者が激増しても原発事故のせいではない。原発事故の住民への影響はなかった~という結論(もちろん!完全なデタラメ!)がほしいのです。
 栃木県の放射線防護のアドバイザーも福島県の責任者も、これら原発村の学者グループであることから、いずれの県も住民が見殺しにされるか、モルモットにされることは明らかです。
 結論として、ホールボディカウンター検査は受ける必要はない~絶対に受けてはいけないいうことになります。
 もし、あなたの子供がホールボディ検査を受けたとすると、おそらく内部被ばくはないと判定されるでしょう。そして、数年後あるいは10数年後に原発事故の放射線の影響でガンを発症しても、それは原発事故のせいではないといわれるでしょう。担当者は、きっとこう言うはずです。「だって、ホールボディカウンター検査で内部被ばくがないと言われたんでしょう?だったら、お子さんがガンになったって、それは原発事故のせいではないですよ。日ごろの健康管理が悪かったんじゃないですか?」と。
2012年1月16日 もみの木医院長 川口 幸夫

読書会に爆破予告? 多様性をめぐり分断深まるアメリカの今 2023年6月27日 LGBTQ アメリカ

  読書会に爆破予告? 多様性をめぐり分断深まるアメリカの今 アメリカ各地で広がっている、ある読書会。 子どもたちに多様性への理解を深めてもらいたい。そんな思いから始まりました。 しかし今、こうした読書会が爆破予告や反対デモで、中止に追い込まれる事態が相次いでいるといいます。 い...