放射性物質が放つ放射線はいくつかの種類があるが、原子力発電所から離れた場所で関係してくるのはアルファ線、ベータ線、ガンマ線になる。(中性子線は核分裂している所にしかない為)

今回はなぜ内部被曝ではアルファ線が危険なのか調べてみた。

【どの放射性物質がどの放射線を出すのか?】

名称        記号  半減期 放射線の種類
炭素-11       11C  20分   ガンマ線
酸素-15       15O   2分   ガンマ線
リン-32       32P  14日   ベータ線
カリウム-40     40K  13億年  ベータ線、ガンマ線
鉄-59        59Fe  45日   ベータ線、ガンマ線
コバルト-60     60Co  5.3年  ベータ線、ガンマ線
ストロンチウム-90  90Sr  29年   ベータ線
ヨウ素-131     131I   8日   ベータ線、ガンマ線
セシウム-137    137Cs  30年   ベータ線、ガンマ線
ラジウム-226    226Ra 1600年   アルファ線
ウラン-235     235U   7億年  アルファ線、ガンマ線
ウラン-238     238U   45億年  アルファ線
プルトニウム-239   239PU   2万4千年  アルファ線


表を見て判るように、今、巷を騒がせている放射性ヨウ素とセシウム137はアルファ線を出さない放射性物質だ。
アルファ線を出すものはラジウム、ウラン、プルトニウムということが判る。

【それぞれの線種の特徴】
それぞれの線種は「透過力」と人体に影響を与える力「電離作用」の2つで特徴付けられる。
透過力とは物をすり抜ける力だ。

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外部被曝の場合はこの透過力が強ければ離れた場所にいたとしても体内の臓器までが放射線の影響を受けてしまう。

電解作用とは放射線が私たちの身体、細胞に当たると細胞を構成している原子の廻りの電子をはじき飛ばしてしまうことを表す。

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はじけ飛んだ電子はDNAなどを傷つけたり他にも酵素機能の低下、細胞分裂の遅れなどを引き起こす。
照射される量が少なければ細胞レベルの回復力が働き大きな問題は無いが、一定量以上の放射線を浴びるとこの電離作用によって細胞の死を招いてしまう。

では線種ごとにどれくらいの透過力と電離作用能力を持っているのか簡単にまとめてみた。

●アルファ線
透過力:超弱い! 空気中で数cm、水中で0.04mmしか進めない。
電離作用能力:強い! ガンマ線の20倍

●ベータ線
透過力:弱い 空気中では数mしか進めない
電離作用能力:弱い

●ガンマ線
透過力:強い 鉛の板や厚いコンクリートでないと防げない
電離作用能力:弱い

透過力を人に、電離作用能力を武器に例えるとすると。。

アルファ線 機関銃を持った赤ん坊
ベータ線   拳銃を持った小学生
ガンマ線   ナイフを持ったスーパーマン

あくまでイメージだがこんな感じだろうと思う。
ひとたび中に入ってしまえば機関銃の引き金は赤ん坊だって引くことができるのだ。

さて、アルファ線であるが、外部被曝の場合は皮膚についたとしても内部組織までは影響を及ぼすことが出来ないので問題ないのだが、ひとたびアルファ線を放つ放射性物質が体内に入ると着床した部分に集中的に放射線を照射することになる。
先ほども書いたがアルファ線は水中では0.04mmしか進めない。このことがかえって災いとなる。
0.04mmしか進めないということは0.04mmまでの細胞に放射線が集中するということでもある。多分細胞の数として1個か2個分の厚さだろう。

アルファ線は透過力が弱いからと安心していい放射線ではない。細胞に影響を及ぼす電離作用能力は一番強いのだ。

これを証明するもう一つの話を書こう。
人体が放射線を受けた場合の影響を加味した数字を表す単位がシーベルト(Sv)で物質の吸収線量を表す単位がグレイ(Gy)なのだが、これは

シーベルト = 放射線加重係数 × グレイ

で、計算される。
放射線加重係数とは放射線種により身体に及ぼす影響が違うのでその強さを係数に表したものだ。
ベータ線とガンマ線はこの係数が1なので結果的に1Sv = 1Gyとなるのだが、アルファ線はこの係数が20なのだ。
吸収線量が1グレイ(Gy)でもアルファ線の場合には20シーベルト(Sv)になるということは覚えていて欲しい。

もし仮にアルファ線を照射する放射性物質が飛んでいることが判ったら外出は控え、目張りした家の中にこもることをお勧めする。
アルファ線を照射する放射性物質。具体的に言えばウランとプルトニウム! こいつらは本当にヤバイ!