土壌の放射能汚染対策:放射線と食べ物

 2月5日、印西市文化ホールで開催された「放射線と食べ物」を聴講する。講師は女子栄養大学副学長の香川靖雄先生。
http://saienojisan.seesaa.net/article/250913150.html
 印西市も放射能のホットスポット地域で、市の教育委員会が「市民に放射線と食物に関する理解を深めさせる」ために開催した講演会である。

 講師は昭和32年に東京大学医学部、37年に大学院生物系研究科を卒業し、信州大学医学部生化学や女子栄養大学などの教授を歴任した分子生物学者である。

 行政やメディアが報道している疫学的見解と異なり、分子生物学と栄養学に立脚した講演で参考になる点が多かったので一部を紹介したい。

1.行政やメディアが行っている疫学的見解と異なる点
(1)疫学(行政やメディア) 
 ①放射線量の影響:100mSv以下は影響が不明
 ②被曝による障害発生:数年間はかかる
 ③自然放射能の影響:自然放射能を除外している
 ④原爆被爆者データ:放射線障害を激甚としている
 ⑤放射能被曝防護:緊急時にヨウ素剤を投与

(2)分子生物学と栄養学
 ①放射線量の影響:1mSvでも有害(DNA(遺伝子)が損傷する)
 ②被曝による障害発生:3分間で障害を検出できる
 ③自然放射能の影響:影響する(成人で体内にカリウムム40を7000Bq蓄積)
 ④原爆被爆者データ:定期検診と栄養で健康維持できる
 ⑤放射能被曝防護:持続的な防護食で対処

 行政やメディアは、原発事故で飛散した放射性セシウムだけを取り上げているが、講師は自然放射能とセシウムの両方が影響するとしている。

 また放射線量100mSv(ミリシーベルト)以下の領域に閾値は存在せず、自然放射能とセシウムの線量が多いほど被曝障害は多くなるとしている。

 放射線がDNA(遺伝子)を損傷する割合は、線量が多いほどDNAに当たる確率が高くなると言う実測結果に基づいている。

 最後に放射能被曝を防護するには、普段から防護食(緑黄色野菜と果物)をたくさん摂取する必要があると訴えた。


2.自然放射能の実態
(1)自然放射能の種類と被曝量

 自然放射線は大きく宇宙(宇宙線)、大地(カリウム40、ウラン238、トリウム232、ルビジウム87、ウラン235など)、食べ物(カリウム40など)、空気中(ラドンなど)の4種類に分けられる。

 また人間は体内にも放射性物質を持っており、体内からの放射線も浴びている。体内には成人男子で7、000ベクレルの放射性物質が蓄積されている。

 体重60kgの人で、カリウム40が4、000ベクレル、炭素14が2、500ベクレル、ルビジウム87などで7、000ベクレルとなる。

 自然放射線の被曝量は世界平均で2.4mSv。内訳は宇宙線0.35mSv、大地0.4mSv、食物0.35mSv、空気中(ラドンなど)1.3mSvである。

 人類は宇宙や大地、食物、空気中の放射線を浴びながら生活している。自然放射線を1人当たり年間約2.4mSv浴びている実態を知る必要がある。


(2)食物中の自然放射線量

 大地や海水中に含まれる自然放射性物質は、野菜や魚などに吸収され食べ物を通して体内に取り込まれる。

 食物摂取により体内に取り込まれた放射性物質からの放射線の量は、1年間に約0.35mSvになる。

 代表的な食品中のカリウム40含有量(ベクレル/kg)を以下に示す。

 <食品中のカリウム40含有量(ベクレル/kg)>
  ・干し昆布    2000
  ・干し椎茸     700
  ・お茶         600
  ・ドライミルク    200
  ・生ワカメ      200
  ・ホウレン草     200
  ・牛肉         100
  ・魚           100
  ・牛乳          50
  ・米            30
  ・食パン        30
  ・ワイン         30
  ・ビール        10
  ・清酒          1

 想像していた以上の自然放射能(カリウム40)を摂取していることにビックリする。カリウム40は主に筋肉に蓄積されている。

 日本のセシウムの暫定基準値は飲料水・牛乳・乳製品で200ベクレル/kg、野菜・穀類・魚肉などは500ベクレル/kgとなっている。

 現在市場に流通している食品のセシウム含有量は、検出限界(10~20ベクレル/kg)以下となっている。

 原発事故後、セシウムに汚染された食品を摂取しているので放射能被曝のリスクは人工セシウム分だけ増加していることとなる。

 農地を除染しセシウムフリーにすれば被曝障害リスク(癌発生)は減少するが、莫大や費用や時間を必要とし現実的ではない。

 被曝障害リスク(癌発生)を軽減するには定期的癌検診の受診と早期発見・治療、緑黄色野菜や果物主体の防護食を摂取することが必要としている。

 次回の放射線と食べ物(2)では高放射線量を被曝した原爆被爆者の実態とDNA損傷について報告する(2012年2月6日)。



放射能汚染対策(13):放射線と食べ物(2)


 印西市文化ホールで開催された講演会「放射線と食べ物」の続きである。放射線と食べ物(2)では原爆被爆者の放射線障害と放射線によるDNA損傷について報告する。


3.原爆被爆者の放射線障害

 広島(ウラニウム爆弾)、長崎(プルトニウム爆弾)の被爆者20万人のうち投下から66年経過した現存者8万6千500人の追跡調査結果が報告された。
 
 原爆投下時に亡くなった多くの方は、火傷が原因とされる。これまで被爆者には年2回の無料検診が行われてきた。

 現存者8万6、500人の追跡調査で
 ①野菜・果物の摂取量の多い被爆者は脳卒中死も低く、一般日本人より長寿である
 ②約20mSvを被曝した7、400人の癌死亡率は低い
 ③現在多くの被爆者施設には100歳を超える超高齢者が生存している(最高113歳)
 ④低レベル被爆者の子は死産、先天性異常、新生児死亡率、癌発生比率が一般平均より低い
などが明らかとなっている。

 原爆被爆者の全固形癌のリスクは、「緑黄色野菜や果物」を十分摂取すれば下げることが出来ることが確認された。

 年2回の検診で癌などの早期発見と治療を施してきたのが、一般日本人より長寿となっている原因としている。

 自治体が実施している日本人の癌検診受診率は10%程度と低い。「定期癌検診による早期発見と治療」が重要で、早期なら延命が可能となることを示している。

 また癌になり易い遺伝子を持っている人でも、生活習慣で長寿命になれる。さらに放射線のリスクよりも「喫煙や飲酒のリスク」の方が大きいことを国民は気付いて欲しいと語る。


4.放射線によるDNA損傷と修復

 一般に発癌は化学物質による強い発癌要因が大きな原因ではなく、日常の生活習慣の積み重ねが、癌に繋がって行くと言われている。

 喫煙や飲酒、ストレス、栄養や睡眠不足、環境汚染、食品添加物、電磁波などの要因が長年蓄積することにより、細胞が「活性酸素(ラジカル)」に曝され発癌する。

 放射線によるDNA損傷は、放射線がDNAを直接損傷する場合と放射線の水への照射で生成した活性酸素(ラジカル)がDNAを損傷する2通りある。

 活性酸素(ラジカル)は細胞のエネルギー代謝で生成し、1日に2万か所の塩基損傷、5万カ所の1本鎖切断、10カ所の2本鎖切断を起している。

 一方1Gy(グレイ)放射線エネルギーでは、300カ所の塩基損傷、1,000カ所所の1本鎖切断、30カ所の2本鎖切断を起す。

 活性酸素(ラジカル)にはビタミンA、C、E、抗酸化剤などが作用し不活性化している。また損傷DNAは修復されるシステムが備わっている。

 「DNAは傷ついても修復される」ことが重要である。葉酸はDNAの生成や修復に大きく関与する栄養素で多くの食品に含まれている水溶性ビタミンである。

 DNAは常に損傷を受けるが、修復システムにより修復されている。DNA修復システムに異常が発生すると、遺伝子に変異が蓄積し、発癌や老化の原因となる。

 修復システムがより重要となる。次回の放射線と食べ物(3)では放射線リスク低減方法について報告する(2012年2月7日作成)



放射能汚染対策(14):放射線と食べ物(3)


 放射線と食べ物(3)では放射線リスクの低減方法について報告する。

5.放射線リスク低減方法
 放射線被曝リスクを低減する方法としては、①出来るだけ被曝を浴びない、②浴びてしまった放射能障害を防ぐ二つの方法が考えられる。

(1)放射線被曝量の低減

 普段の生活をしていても自然界から放射線を受けている。これに加え人工放射線(CTや胃検診のX線、原発事故のセシウムなど)を浴びて生活している。

 自然放射線の被曝量(世界平均)は宇宙0.35(0.3)、大地0.4(0.34)、食物0.35(0.35)、大気1.3(0.45)の合計で年間2.4(1.45)mSvとされている。( )内は日本の推定値。

 1回の胸部X線CTで6.8mSv、集団検診の胸部撮影は0.3mSv、胃部では4.1mSvの被曝を受ける。そして今回の原発事故によるセシウム汚染が加わる。

 自然放射線の被曝低減方法としては
 ・宇宙:飛行機に乗らない(東京~ニューヨーク往復で0.2mSv増加)
 ・大地:少ない地域に居住する
 ・食物:昆布、椎茸、ワカメなど摂取を制限する
 ・大気:ラドン濃度は木造13、コンクリート23ベクレル/m3
 ・喫煙:禁煙にする(1日20本の喫煙で年間0.1~0.2mSv増加)
 ・1年間に浴びる放射線量:(神奈川0.81(最低)、岐阜1.19mSv(最高))
などが考えるが、禁煙以外は難しいのが実態である。

 人工放射線の被曝低減方法としては
 ・医療:X線検査を控える
 ・大地や食物:大地のセシウム汚染の除染、食品のセシウム濃度低減
などが考えられる。

 政府も放射性セシウムが毎時0.23マイクロシーベルト以上が検出された地域を除染する、1キログラム当たり8千ベクレルを超えた下水道の汚泥や焼却灰は、国が処理する指定廃棄物とすることを定めた
年間5mSvの食品暫定基準を1mSv(生涯100mSv)に変える検討をしている。飲料水は500から10ベクレル/kg、野菜・穀類は500から50ベクレル/kgの新基準値になるとされる。


(2)放射能障害を防ぐ方法
 
 通常、人が生活していて浴びる放射線量(世界平均)は年2~3mSv。国際宇宙ステーションでは1日に1mSvの放射線を浴びる。

 講師は宇宙食(防護食)の栄養素組成に放射能障害を防ぐ方法があると主張する。宇宙食と日本人の食事摂取基準栄養素の差異を以下に示す。

               1日の栄養摂取量
 
               宇宙飛行士         日本人の基準(30~49歳男性)
  ・カルシウム(mg)    1、000~1、200        550~650 
  ・ビタミンD(μg)       20                 5
  ・葉酸(μg)         400                  240
  ・ビタミンC(μg)          200                  200
  ・ビタミンE(μg)           20                    7
  ・カロテノイド(μg)  12、000                 7、200~10、200

 宇宙飛行食はビタミンA、E、D、葉酸、カルシウムがたくさん摂取出来るような献立となっている。放射能障害で生じる活性酸素の不活性化や損傷DNAの修復に使われる。

 欧州の地中海地方は石造建築が多く自然放射能も多いが、平均寿命も高い。緑黄色野菜の多い地中海料理も長寿命の一因と考えられる。

 米国は1998年から穀類への法的葉酸強化を始める。穀類100gに葉酸が140μgの割合で添加されている。

 この結果、脳卒中死亡率が大幅に減少した。さらに大腸癌、肺癌、乳癌なども減少している。米国の成果を受け、現在では60カ国が穀類への葉酸強化をしている。

 埼玉県坂戸市では、平成18年から認知症や脳梗塞等の予防に効果がある葉酸を1日400μg摂取する「さかど葉酸プロジェクト」を進めている(食事摂取基準は240μg)。

 国保医療費の上昇率が近隣他市と比較し、かなり抑えられている。被保険者1人当たりの介護給付費も県下で最低で、4年連続で減少している。

 放射能障害を防ぐには、「ビタミンA、E、D、葉酸、カルシウム」をたくさん摂取するような防護食を常食すれば効果がある。

 定期的な癌検診による早期発見と治療、及び「緑黄色野菜や果物」を十分摂取することで、自然放射能や原発事故で飛散した放射性セシウムの被曝リスクを軽減出来るとしている。
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(3)感想

 過去の放射線障害の事実を明らかにし、自然放射能と人工放射能を一緒にして放射線障害リスクに対処すべきと訴えている。説得力がある。

 被曝リスクを低減する方法に緑黄色野菜や果物にあることにビックリすると共に、家庭菜園を続ける励みにもなった。

 太陽と大地の恵みである野菜や果物には、生物のDNAや細胞などの修復をつかさどる栄養素がたくさん含まれている。

 地で採れる野菜の摂取運動を進め、成人病や認知症、放射線障害などの予防に繋げたいものである(2012年2月8日作成)。


(4)参考データ
 ・葉酸の多い食品
酵母、焼き海苔、わかめ、うなぎ、たたみいわし、青のり、枝豆、モロヘイヤ、きなこ、大豆、パセリ、ほうれん草、あさつき、春菊、アスパラガス、あおさ、酒かす、昆布、お茶、アマランサス、サニーレタス、ブロッコリー。

 ・緑黄色野菜
アサツキ、葉ネギ、ワケギ、リーキ、ニラ、グリーンアスパラガス、ホウレンソウ、フダンソウ、オカヒジキ、ツルムラサキ、タイサイ、広島菜、大阪シロナ、キョウナ、ノザワナ、コマツナ、ナバナ、日野菜、カブの葉、タカナ、カラシナ、チンゲンサイ、メキャベツ、ブロッコリー、ダイコンの葉、ウォータークレス、タラの芽、サヤインゲン、サヤエンドウ、ササゲ、オクラ、ニンジン、パセリー、ミツバ、アシタバ、シソ、ヨウサイ、トマト、ピーマン、トウガラシの葉、カボチャ、シュンギク


















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