東電の手に余る事態=米原子力規制委員会の日本調査団トップ
Japan Real Time
米原子力規制当局のベテランスタッフ、チャック・カスト氏は2011年3月16日、日本に降り立った。福島第1原発の現状を把握し、その問題解決を手助けするという極めて難しい任務を負っていた。
米原子力規制委員会(NRC)の本部と現場スタッフとの電話会議の内容が21日、公表されたが、その中で主役を演じていたのがカスト氏だ。
東京に派遣されたNRC調査団を統括していたカスト氏は、ほぼ寝る間もなく、しばしば厳しいコメントを交えながら上司に東京電力の初動対応に関する報告を行った。
「東電の手には負えない状態だ。東電の手に余る事態だ」と、カスト氏は米国時間3月16日遅くにこう述べた。
カスト氏とその他米当局者は、使用済み燃料プールに自衛隊ヘリで注水するという東電の初期の試みを、最初から成功の見込みはなかったと批判した。米国時間3月17日、カスト氏は本部に「彼らのようにやみくもに解決策を講じるようなことはしたくない」と述べた。
カスト氏は、福島第1原発4号機の燃料プールの水がなくなり、放射性物質が放出される公算が大きいと繰り返し主張し、米政府が原発から50マイル(約80キロメートル)圏を避難区域に指定する上で中心的役割を果たした。
カスト氏は21日にジャパン・リアル・タイムの取材に応じ、燃料プールの水位を示す証拠として日本が唯一提示できたのは、日本サイドが引き渡しを拒んだビデオの静止画数枚だけだったと語った。静止画は燃料プールに水が光っていることを示すもののようであったが、カスト氏は納得できなかった。
「わたしは『見えない』と言ったし、実際に見えなかった」と、カスト氏は当時を思い出しながらインタビューでこう述べた。カスト氏は、燃料プールが破壊されているようみえる米国側が示した証拠の方をより信頼していた。
会議記録の中でカスト氏は「私はプールには水がないと一段と確信している。職を賭してもいい」と述べている。
最終的に日本は燃料プールには常時水があったとの結論を出した。カスト氏はその点に関して部分的に認めたものの、4号機の問題は東電がとらえているよりもずっと深刻であった可能性があると今も考えていると語った。
「結果はまだ分からない。燃料を取り出してみるまでは、何が起こっていたかは判断できない」とカスト氏は述べた。
また、燃料プールの損傷への懸念を生じさせる原因となった3月15日の4号機建屋の爆発についても、3号機の水素漏れを原因とする東電の説に疑問を呈した。
「わたしからしてみれば依然証拠がない」と、カスト氏は述べ、4号機の燃料棒の損傷が爆発の引き金となった可能性もあるとした。
カスト氏は、事故発生から10日目以降の東電の対応については、はるかに高い評価を示した。米国側は3月22日ごろからは日本政府の高官級当局者と日々の会議で連絡を取り合えるようになった。
カスト氏によると、NRC調査団は日本の事故収束に向けたロードマップ(工程表)作りを手助けし、そのおかげで、ようやく昨年12月に冷温停止状態を宣言できるまでに至った。
「彼らは一時は打ちのめされ立ち上がれないような状態だったが、再び立ち上がり、歩いたり、走り回ったりし始めた」と、カスト氏は述べた。
カスト氏は、数回にわたる短期間の帰国を除いて、2月2日まで日本に常駐し、国際原子力機関(IAEA)による日本の原子炉に対する「ストレステスト(耐性評価)」の評価を手伝った。カスト氏は先日、NRCのトップ職の1つ、リージョンIIIのシカゴ在勤の行政官に任命された。
カスト氏は今回の経験から次の教訓を学んだ。
「トップとできるだけ早く話をすること」
「トップとできるだけ早く話をすること」
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