子どもの 甲状腺 に拘る


六号通り診療所所長さんのブログより


甲状腺被曝検診における血液検査の必要性を考える [科学検証]

それでは今日の話題です。

先日こんなニュースがありました。

【福島県の子ども10人、甲状腺機能に変化 信州大病院調査】
【認定NPO法人日本チェルノブイリ連帯基金(JCF)と
信大病院(ともに松本市)が、
福島県内の子ども130人を対象に今夏行った健康調査で、
10人(7.7%)の甲状腺機能に変化がみられ、
経過観察が必要と診断されたことが3日分かった。
福島第1原発との関連性は明確ではない。
旧ソ連チェルノブイリ原発事故(1986年)の被災地では
事故から数年後に小児甲状腺がんが急増しており、
JCFは今後も継続的に検査が受けられるよう支援してゆく方針だ。】

長野市に滞在していた福島県のお子さんに、
血液と尿検査とを行なったところ、
そのうちの10人に、
病的とまでは言えない、
軽度の甲状腺の異常が見付かった、
という報告です。

その一方で、10月9日には、
こんな報道もありました。

【福島第1原発事故 福島県、
18歳以下の約36万人対象に甲状腺の内部被ばく検査開始】
【東京電力福島第1原発の事故を受け、
福島県は、18歳以下のおよそ36万人を対象に、
9日から、甲状腺の内部被ばくの検査を始めた。
検査が行われている福島市の福島県立医大病院には、
計画的避難区域の飯館村などから避難した住民が訪れている。】

福島県が主導して、
県民の18歳以下の全員に、
甲状腺の内部被ばくの検査が開始された、
というのです。
その原資には税金が湯水の如く使われます。

この2つの記事を並べて読むと、
何となく疑問が生じます。

甲状腺の被ばくの検査は、
福島県で18歳以下の全員に順次行なわれる予定の筈です。
当然長野市に一時的に滞在していたお子さんも、
希望をすればその検査が受けられる道理です。

それならば何故、
わざわざ当該のNPO法人は、
別個に甲状腺の血液と尿の検査を行なったのでしょうか?

これは、
福島県と国が行なっている検査では、
甲状腺の超音波検査と問診のみが行なわれ、
血液検査や尿検査は含まれてはいないからです。


その判断は果たして妥当なものでしょうか?

最初に僕の考える結論を言えば、
それは
どのような目的で検査を行なうのかによるので、
どちらが正しいとは、
一概に言い切れない問題
です。

以下、その点について順次ご説明します。

診療所に甲状腺の病気がないか心配だ、というご訴えの患者さんが訪れ、
診察をさせて頂いた上で、
その心配が妥当だと判断した場合、
患者さんのご同意が得られれば、
僕は
甲状腺の血液の検査と、
甲状腺の超音波の検査とを、
必ず同時に行ないます。


その理由はそれぞれの検査の目的が異なり、
かつ両者を比較することにより、
甲状腺の病気の存在を、
より正確に診断することが出来るからです。


血液の検査では、
血液の
甲状腺ホルモンの数値と、
甲状腺刺激ホルモンの数値とを測定し、
必要に応じてサイログロブリンという、
甲状腺の組織内で作られる蛋白質の数値と、
自己抗体と呼ばれる、
バセドウ病や橋本病の診断のための検査を追加します


ただ、これを必ず全て測定する、
という訳ではなく、
患者さんの症状や超音波検査の結果を照らし合わせて、
必要な検査をその中からチョイスする、
という方法を取ります。


超音波検査は、
甲状腺の病気の診断において、
最も有用性の高い検査で、
まず甲状腺の大きさを測定することが出来、
それから甲状腺の中に、
癌を含めたしこりが、
存在するかどうかが確認出来ます。

機械の精度にもよりますが、
概ね1~2ミリ程度の大きさのしこりまで、
検出が可能です。

超音波検査で分かることはそれだけではなく、
甲状腺の内部のエコーレベルを、
詳細に観察することと、
ドップラーという手法で
甲状腺内の血流の信号を見ることにより、
橋本病や亜急性甲状腺炎、バセドウ病といった、
甲状腺の病気がありそうかどうかについて、
ある程度の当たりを付けることが出来ます。

従って、
超音波検査で橋本病の存在が疑われれば、
より詳細な橋本病の自己抗体の検査を追加する、
というような方法により、
無駄なく必要不可欠な血液検査を、
施行することが可能となるのです。


血液検査の中では、
甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンは、
セットで必ず測るべきもので、
これにより甲状腺機能が概ね把握出来ます。


自己抗体の検査は、
バセドウ病や橋本病が、
疑われたら検査を追加します。

サイログロブリンは、
正直血液検査としては、
その意義はそれほど大きくなく、
超音波検査が出来ない時に、
その不充分な代用品として、
行なうような意味合いのものです。


この検査は甲状腺に大きなしこりがあれば、
概ね上昇しますが、
小さなしこりでは上昇せず、
バセドウ病のような機能亢進症でも、
同じように上昇するので、
癌マーカーとしての意義は薄いのです。

福島県の検診は、
報道による限り
山下俊一先生の主導によるもので、
問診と超音波検査のみが施行され、
血液検査は超音波検査でしこりが見付かった場合に限って、
二次検査として検討される、
と発表されています。


つまり、この意味合いは、
記事には「内部被ばく検査」と書かれてはいますが、
実際には甲状腺の中にしこりがあるかどうか、
それのみを検査することが、
今回の検診の実態だ、
ということになります。

放射性ヨードの内部被曝により、
起こり得る異常として想定されるのは、
甲状腺癌の将来的な発症と、
甲状腺の破壊による、甲状腺機能低下症です。

ただ、甲状腺癌はチェルノブイリ原発事故後の検証により、
低線量の被曝でもお子さんには発症し得る
という知見があるので、
こうした検診が税金で施行されているのですが、
甲状腺機能低下症については、
より高線量の被曝により生じる
ことが、
ほぼ明らかになっていて、
そうした被曝をした人は、
今回の原発事故では存在しない、
という判断から、
甲状腺機能低下症の検診は、
不要である、というのが、
山下先生のご判断なのだと推察します。

一方で最初の記事にあるNPO法人は、
超音波検診だけでは不充分である、
という立場に立って、
血液検査と尿検査を行なっているのです。

尿検査で一体何を測定しているのかは、
正直よく分かりません。
測定して意味のあるものとすれば、
尿中のヨードくらいでしょうか。

その検査結果に関しては、
130人の測定において、
7人で甲状腺刺激ホルモンが基準値を上回り、
1人が甲状腺ホルモン値が基準値を下回り、
2人がサイログロブリン濃度が基準値を上回った、
と記載されています。
それでいて、甲状腺機能低下症はなかった、
という表現になっているので、
基準値からの逸脱は、
極軽度であった、
という判断が出来そうです。

サイログロブリンの上昇については、
超音波検査の方が余程意味があるので、
福島県の検査を受けて頂いた方が、
ずっと良いのです。

このNPO法人の調査は、
主に被曝による甲状腺の機能異常のチェックのため、
経時的な甲状腺機能の検査が必要なのではないか、
という観点に立っています。

一方で山下先生は「血液検査は必要ない」との立場で、
最初の記事の紙面を読むと、
その理由は、
「検査をすれば一定の頻度で基準値から外れる値が出るが、
比較対象となる健康な子どものデータがない」
ということなどであると書かれています。

これが記者の取材に対するコメントなのか、
何処かにその理由の文書のようなものが存在するのか、
そうした点は定かでないのですが、
もし本当にこうした発言をされているのだとすれば、
これはフェアではない、
と僕は思います。

勿論36万人の小児の甲状腺機能を測定して、
その対照として比較するべき、
健常者のデータがあるのか、
と言われれば、
そんなものが存在しないことは、
事実だと思います。

しかし、検査会社のデータなどから、
ある程度のデータを抽出して、
比較検証することは不可能ではありませんし、
福島県内全域で検査をするとすれば、
当然被曝の多い地域と少ない地域が存在するのですから、
その両者で比較を行えば、
被曝の影響をある程度科学的に検証することは可能です。

「比較対象する正常データがない」
という言い方をするなら、
超音波検査はどうなのでしょうか?

健康なお子さんの甲状腺の超音波検査など、
特殊な場合以外は行わないのですから、
それこそ「健康な対照群のデータ」など、
存在はしない筈です。

つまり、これはそんな理由で行わないのではなく、
もっと別の理由があるのです。
最初に挙げたように、
甲状腺機能低下症はより高線量の被曝で、
通常は生じる現象の筈ですから、
それを理由にした方が、
より的確ではなかったのかと思います。
勿論、これはお話を聞いた記者の方が知識不足で、
先生のお考えを部分的に引用したという、
可能性もあると思います。

ただし、
これは一種の大規模な前向きコホート研究なのですから、
データは多い方が当然良いのです。
血液も採取した方が、
その時点では役に立たなくとも、
血清を凍結保存しておけば、
後から色々な検証が可能となるのです。
仮に10年後に甲状腺癌が見付かれば、
そのお子さんの以前の血液が保存されていることは、
大きな意味を持つのです。
その未来の時点では、
検証可能な遺伝子マーカーのようなものも、
発見されている可能性があるからです。

それをしないのは、
福島県のお子さんに、
将来的にどのような影響が、
生じる可能性があるのか、
そのトータルな影響を考え、
お子さんを守ろうという視点が、
国と福島県にはあまりない、
ということを示しているように、
僕には思えます。

「放射線の人体に対する影響は、
広島の原爆とチェルノブイリの原発事故の検証で、
完全に証明されているので、
それ以外の影響を考慮する必要はない」
という趣旨のことを、
知的な方が真顔で言われることがあるので、
非常に悲しくなるのですが、
そんなことは勿論なく、
放射線の身体に対する影響には、
未だに不明の点が多く存在するのです。


チェルノブイリ後の小児甲状腺癌の増加も、
その当初は、
「そんなことは有り得ない」
と言われたのです。

従って、チェルノブイリの知見以外のことは、
金輪際起こることはない、
という立場に立てば、
超音波検査のみを施行すれば、
必要にして十分と言えますが、
いやいやそれ以外の異常が起こる可能性も皆無でない、
という立場に立てば、
血液や尿の検体を、
被曝地で早い時期に採取し保存しておくことは、
大いに意味のあることなのです。

ただ、もう1つの問題はそのために必要なコストです。

昨日の新聞によると、
1年で2億5千万円の税金が、
この検診等の原資として確保されているそうです。

記事によれば福島県立医大を中心として、
県内各地を今後は巡回するような形で、
超音波検査が行なわれるという方針のようですが、
当初の対象者は5000人弱と書かれています。

頚部の超音波検査の保険点数は350点です。
これは概ね3500円に相当します。
仮に1万人に検査を保険でするとすれば、
その費用は検査代としては、
3500万円ということになります。
しかし、絶対にそれだけで済むということはなさそうです。

果たして検診の費用として、
どれだけの税金が、
何処に流れ込むことになるのでしょうか?

福島県の検診に血液検査の含まれない理由には、
当然それに伴うコストの問題も絡んでいると思われます。

ただ、その前提として、
この検診にどれだけのお金が実際に掛かるのか、
それをもっと節約する方法はないのか、
何処かの誰かがそれで不労所得を手に入れたり、
これ幸いと赤字を補填したりすることはないのか、
そうした点にも僕達は、
もっと厳しい目を向けるべきなのではないでしょうか?

1年に2億5千万円という予算は、
こうした検診としては巨額のものです。
それが本当に将来のお子さんの健康被害の、
予測と予防のために役立つものなのか、
もっと厳しい検証が必要のように、
僕には思えてなりません。

これはメディアの方に、
是非監視して頂きたい点です。

最後に自分のお子さんの被曝について、
ご心配をされている親御さんに僕の言いたいことは、
仮に県や国の指示以外に血液の採取を行なうとすれば、
重要なことはその検体を保存しておくことだ、
ということです。
その検査の主体がNPO法人であれ、
大学や研究機関であれ、
検査会社であれ、
それが最も重要なことで、かつまた、
最も実現の難しいことです。
しかし、たとえば癌センターが旗振りをするような、
大規模な臨床研究では、
当然そうしたことをしているのです。
検体は保存され、
何か新たな知見があれば、
その時に以前の検体が使用されるのです。
やりっぱなしではあまり意味はなく、
今分かることは知れているのです。
しかし、検体を保存しておけば、
将来的に役立つ可能性が高いのです。
ですから、皆さんは是非そうした主張をするべきです。
ただ、残念ながら診療所では検体の保存は出来ず、
検査会社は決してそうしたことはしてくれないので、
非常に無念なことですが、
その点で僕が皆さんのお役に立てることはないのです。

今日は甲状腺の内部被ばく検診の、
検査項目について考えました。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。 



それでは今日の話題です。

昨日の放射性ヨードの被曝と、
甲状腺機能との関連に絡んで、
小児の甲状腺機能について、
まとめておきたいと思います。

山下俊一先生が、
「健康な子供の甲状腺機能のデータはない」
という意味合いのことをご発言されたと、
報道の中に書かれていたので、
先生が言われるのだからそうなのだろうけれど、
一体子供の甲状腺機能と大人のそれとの間には、
どのような違いがあり、
それはどの程度まで分かっていることなのだろう、
と素朴に疑問に思ったのです。

甲状腺機能という場合には、
血液の甲状腺ホルモンである、
T3とT4という数値と、
甲状腺刺激ホルモンで脳の下垂体から分泌される、
TSHという数値を測定するのが一般的です。

甲状腺ホルモンの測定には、
その全体を測る方法と、
遊離ホルモンと言って、
蛋白と結合していない部分のみを測る方法があり、
現在では遊離ホルモンを測る方法が主流です。

総ホルモンの数値は、
ホルモンと結合する蛋白質であるTBGという物質の変動により

増減してしまうからです。

たとえば、妊娠中にはTBGが増加するので、
見掛け上総甲状腺ホルモンの数値は上昇しますが、
実際にはこれは甲状腺機能亢進症ではありません。

ただ、僕が師事していた先生は、
この遊離ホルモンの測定はあまり当てにならない、
という見解を持っていて、
専ら総ホルモンとTBGを併せて測定していました。

実際、遊離ホルモンの数値が、
理屈に合わないことは結構あって、
そうして時には総ホルモンの方が、
参考になることが多いのです。

それで僕はケースバイケースで、
両者の検査を使い分けています。

さて、甲状腺ホルモンは身体の代謝と成長において、
欠くことの出来ない作用を持ちますが、
一方でその測定値は、
成長ホルモンのような、
特徴的な年齢による変動を示しません。

唯一ダイナミックな変化をするのは、
赤ちゃんがオギャーと生まれた出生直後で、
この時には甲状腺刺激ホルモンが、
一時的に急上昇することにより、
ホルモン値が急激に上昇します。

通常のコントロールが、
外れた状態になるのです。

この変化は出生後数時間で始まり、
出生24時間後にピークに達し、
その後数週間で、
その数値はほぼ平常に戻ります。

T3とT4の数値は、T4に関しては5歳までは、成人よりやや高めの数値を取り、
T3に関しては10代前半までは、成人より25%ほど高い数値を取る、

と海外の教科書には記載があります。

この間甲状腺刺激ホルモンの数値は、必ずしも年齢による変動を示さないので、
どの程度のホルモン値で、甲状腺刺激ホルモンが抑えられるのか、
という身体の調整機能が、お子さんの時期には若干異なっている可能性がある、
という言い方は出来るのではないかと思います。


ただ、これは遊離のホルモンではなく、
総ホルモンのデータです。

遊離のT4の数値に関しては、
あまりクリアな記載が見付かりません。

日本人の書いた文献に、
新生児期と乳幼児期には、
遊離T4は高めの数値を取る、
という記載がありましたが、
どのくらい高いのか、
と言う点については、
あやふやにしか書かれていません。

ただ、現実には新生児期を除いては、
成人の数値を指標として、
甲状腺機能の評価がなされているのは事実です。

従って、若干の上昇はあっても、
それが臨床的に問題になるほどではなく、
甲状腺刺激ホルモンの数値に関しては、
成人とほぼ同様に扱って、
大きな問題は生じない、
と考えて良いのではないかと思います。

放射性ヨードの内部被曝との関連で言うと、
問題となるのは甲状腺機能低下症ですから、
これは甲状腺刺激ホルモンの数値を第一の指標として、
経過を見れば通常は問題のない筈で、
確かに健康なお子さんについての、
明確なデータがないことは事実ですが、
それだからといって、
測ること自体に意味がない、
という論法は、
少し強引に過ぎるのではないか、
と僕は思います

ただ、被曝検診という観点から言うと、
乳幼児期の血液検査は、
その安全性の面からも慎重であるべきで、
仮に今後行なうとしても、
新生児スクリーニングの、
ろ紙法を改良したような方法を検討するなど、
非侵襲的な方法を基本として、
無用な負担をお子さんに与えないように、
慎重な姿勢が必要なのではないかと考えます。


今日は小児の甲状腺機能についての話でした。

それでは今日はこのくらいで。

今日が皆さんにとっていい日でありますように。

石原がお送りしました。 








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