農地土壌中の放射性セシウムの移行について

今年の小麦のデータを、7/14までの分を「食品の放射線検査データ」のサイトで抽出したところ、全部で48件ありました。7/7迄の段階で調べた時は、1検体以外は全て数値が検出されていたのですが、7/14に福島県のデータが追加されたところ、なぜか「不検出」が6件も追加されてしまいました。

このそれぞれの数値と、各地の環境放射線データとは合致するかと思ったのですが、いくつかのポイントで合致していません。このことは早川先生のブログでも検証されています。早川先生の作成した(等値線を引いた)マップと土壌汚染データを合わせるとぴったりと傾向が合いますが、麦(大麦&小麦)のデータを合わせてもうまく合わない点がいくつかあります。

例えば、ひたちなか市の小麦(玄麦)の放射性セシウムの濃度は112Bq/kgですが、ひたちなか市は環境放射線データが茨城県の中でも高くない(0.18μSv/h)なのに、他の茨城県の小麦よりもかなり高く出ています。実はひたちなか市の二条大麦や六条大麦でも同じように異常な高い値がでているので、ひたちなか市の農地には市役所や市内の学校よりもずっと放射能が高いホットスポットのような所があるのではないか?ということを予想させます。この小麦のサンプルを取った土壌の放射性セシウムの濃度をぜひ測定して欲しいと思います。
それ以外にも、福島県のデータはなぜか低めに出ているような気がします。萩原さんの作図を参考にしてください。

次に、48件のデータを下記の方法・条件で移行係数を試算してみました。「6/8 Bq/kg→Bq/m2→μSv/hの変換についての簡単なまとめ」でご紹介したとおりです。

・市町村、あるいは同じ市町村の学校の環境放射線データ(μSv/h)を探してくる。
・μSv/h→Bq/m2の換算は、×282000で行う。(早野先生のツイートより)
・Bq/m2→Bq/kgの換算は、÷65で行う。これは文科省が深さ5cmの場合に示した換算式。

その結果、平均で玄麦の移行係数は0.062、最小値0(不検出)、最大値0.331(千葉県長南町)となりました。この記事の一番最後に計算に用いた数値を表で示します。なお、小麦のセシウムが不検出(ND)の場合は0としました。

・ひたちなか市の例で挙げたように、市役所や学校の環境放射線データをそのまま流用していいかどうかには議論の余地があると思いますが、それ以外にはデータがないので利用させてもらいます。
・また、換算法については、いくつかの係数が知られているようです。μSv/h→Bq/m2は×500000くらいの数値を使っている人もいます。また、Bq/m2→Bq/kgの換算は、深さ5cmならば÷65でいいのですが、最近は15cmに統一されたようなので、その場合はもう少し大きな数値で割るはずです(正確な数値がわかりません)。
どれを取るかによって、移行係数の絶対値は数倍ずれることはご了承下さい。ただし、この係数の差によるずれはせいぜい数倍です。

さて、こうやって移行係数をとりあえず算出してみたわけですが、「7/3 土壌中の放射能はどれだけ植物に移行するのか?」でも書いたように、移行係数というのは文献によっても100-1000倍の開きがあるのが普通です。従ってだいたいこの程度、ということがわかればいいくらいの目安だと考えておく必要があります。今算出した0.062という移行係数は、「安全研究センター 生物圏評価のための土壌から農作物への移行係数に関するデータベース」では穀類は0.0008ですので、むしろやや高いかな、と思いました。後編でも述べますが、玄米の移行係数が0.1というのはかなり高い設定と思います。


上記で今年の玄麦の移行係数をかなり乱暴なやり方ですが、試算してみました。実は、コメと小麦については、過去の核実験やチェルノブイリ事故における長期間の解析データが揃っています。それを参考にして、今年の小麦のデータの位置づけを考えることができるのです。それをこれからご紹介していきます。以下にご紹介するもので特に断りがなければ「わが国の米、小麦および土壌における90Srと137Cs濃度の長期モニタリングと変動解析」から引用しています。

まず、皆さんご存じの方も多いと思いますが、私たちが放射能にさらされたのは初めてではありません。1950-1960年代には下の図に示すように、米ソの核実験が地上で頻繁に行われましたし、1986年には有名なチェルノブイリの事故がありました。そして、放射性セシウムも1960年代にはかなりの量が降り注いでいました。

7/20核実験

これまでの核実験による降下物の影響を考える際、1960年代前半のように頻繁に降下物の影響を受けている場合(土壌からの影響もある)と、1986年のチェルノブイリによる突発的な事故による爆発の場合、それから1986年を除く1980年代以降の主に土壌からの吸い上げのみを考えればいい3つのパターンがあることがわかります。

年代降下物土壌(畑)土壌(水田)
1960年代前半約1000Bq/m230-50Bq/kg30-50Bq/kg
1986150Bq/m220Bq/kg   20Bq/kg  
1980年代以降<1Bq/m210-20Bq/kg10-20Bq/kg
7/22追記・訂正 畑の土壌の放射性セシウムのデータが間違っていたので訂正しました。畑も水田もほぼ同じです。

上の表において、土壌のデータはこのグラフから読み取っています。

7/20土壌Cs

今年の場合はどのパターンが一番近いかというと、3月に大量放出があり、それ以降の大量の放出はないことから考えると、季節的にもチェルノブイリのあった1986年が一番近いと思います。そこで、1986年の場合のデータを確認しながら小麦(玄麦)の移行係数を見ていきましょう。

7/20玄米玄麦Cs

1986年4月26日に起こったチェルノブイリ原発事故により、5月になってから日本にも放射性物質が飛んできました。麦の出穂に関係する3月から6月の降下物(Cs-137)の量は、地域によって差があるものの、おおざっぱに言って150Bq/m2程度でした(東京:179、仙台:158、つくば:135、大阪:80、秋田:431;本文中の記述より)。これを、先ほどのBq/m2→Bq/kgの換算式に入れると、150÷65=2.3で2.3Bq/kgになります。

これに対して、1986年には土壌に20Bq/kg程度の放射性セシウムがすでに積もっていたことが先ほどのグラフからわかります。ですから、土壌に降り積もった分としては、チェルノブイリによる土壌放射性セシウムの約10%にしかならなかったということです。Csの場合は何年も経つと植物が利用できる置換態が少なくなってしまいます。新しい降下物の方が植物は利用しやすいので多少プラスするにしても、土壌からの吸い上げ分(間接汚染)については、1986年は約10-15%程度の増加にしかならなかったはずです。

ここで上の玄米と玄麦の1986年のCs-137のデータを見てみます。コメの出穂時期にはチェルノブイリからの降下物は3-6月の1%以下になってしまったということなので、玄米は前年とほとんど変わりありません。ところが、玄麦のCs-137は、前年の0.05Bq/kg程度から一気に7Bq/kg程度にまで上昇しています。そしてまた翌年には0.05Bq/kg程度に低下していますので、玄麦はチェルノブイリからの降下物の影響を非常に大きく受けて、それが玄麦の放射性セシウムの濃度に影響していることが確認できました

さらに詳しく見ると、開花(出穂)の時期に近いかどうかでCs-137の取り込まれ方が違うことも明らかになりました。出穂の近かったつくばでは135Bq/m2の降下物に対して約8Bq/kg、立川では179Bq/m2の降下物に対して15.5Bq/kgです。比較的出穂まで時間があった札幌でも、79Bq/m2の降下物に対して2.5Bq/kgのCs-137が取り込まれています。このように、麦は降下物があると非常に取り込みやすいということがチェルノブイリの1986年の解析から明らかになりました。おおざっぱな計算で、全国平均で約150Bq/m2の降下物として、7Bq/kgのCs-137が玄麦に取り込まれたという事になります。

7/20麦出穂日

先ほどの計算をあてはめてみると、750Bq/m2の降下物で35Bq/kgのCs-137が玄麦に取り込まれることになります。しかし、一番下に示す表では、麦のどの産地も最低でも10000Bq/m2程度の降下物はあったことになりますが、麦の放射性セシウムはせいぜい100Bq/kgです。従って、1986年の計算よりも取り込まれる効率は1/10程度低いと考えないとつじつまが合いません。

2011年の福島では、大量の降下物があったのは3/15と3/21と言われています。ただし、この時の放射能は、雨で降下した以外はプルームという放射能の風に乗って低空を流れていっただけ(らしい)なので、チェルノブイリの時のような空から降ってくる状態とは、Cs-137の密度や接触時間なども違っているのでしょう。

また、移行係数で考えると、1986年は土壌のCs-137が20Bq/kgで、玄麦のCs-137が7Bq/kgとすると、移行係数は0.35となります。実際には土壌からの移行はほとんど寄与しておらず、直接汚染(葉や茎の地上部からの汚染)なのですが計算上はこういう数字になります。今年のお茶葉の場合と同じようなパターンだと思えばいいです。

ちなみに、1986年の玄米の移行係数は、土壌のCs-137が20Bq/kgで玄米のCs-137が0.14Bq/kg程度ですので、0.007となり、玄麦の移行係数の1/50程度ということになります。前年の1985年や1987年は、玄米の移行係数は玄麦の移行係数の3-5倍でした。

7/20チェルノブイリ麦

つまり、今までの話をまとめると上の図のようになります。1986年のチェルノブイリ事故の際は、小麦については土壌から吸収するよりも降下物の影響の方が圧倒的に大きかったということです。コメについては、コメの出穂時期にはほとんど降下物がなかったので、あまり降下物の影響を受けず、この年だけは玄麦>玄米になったということがわかります。

実は、今年の場合もほぼこれに近いパターンになるのではないかというのが私の予想です。その話は後編に書きたいと思います。今日はもう遅くなったので明日か、今週末にでも書く予定です。それまでにコメントがあれば必要に応じてこの前編も修正します。


最後に、今年の麦のCsのデータと移行係数を計算した結果を載せておきます。

7/20小麦表-1

先週から、今年のコメの放射性セシウム濃度の予測をする(私の予測を読んでいない方は「7/20 今年の米の放射性セシウムによる汚染具合を予想する!前編」をご覧ください)ためにいろいろな資料を確認していますが、その中に、今セシウム汚染牛肉で問題になっている稲わらの放射性セシウムの濃度というものがあります。500000Bq/kgなどというこれまで聞いたことがないような数値が飛び出してきたので、非常に不思議でした。福島県の飯舘村でさえ、水田の土壌の放射性セシウムは、ざっと20000Bq/kgですから、どう考えても土壌よりも濃い濃度になっているはずです。

非常に不思議だったのですが、この間のNHK「クローズアップ現代」でなぜ稲わらからこんなに高い放射性セシウムが検出されたのか、そのメカニズムを説明してくれていました。けっこう納得のいく説明でした。

今日は、稲わらの放射性セシウムについての話です。


クローズアップ現代の説明によると(リンク先の「動画を見る」をご覧ください)、稲は水分を吸い上げやすいように中空になっています。刈り取って乾燥させた稲は水分を吸い込む能力が高いのです。そこに放射性物質を大量に含んだ雨や雪が降ると、稲わらに吸収されます(下の図の丸がセシウムのイメージ)。水分が乾燥してもセシウムなどは稲わらに残るため、次に水たまりなどからセシウムを含んだ水を吸い上げると、さらに放射性セシウムの濃度の濃度が高くなります。これを何回も繰り返すことにより、通常では考えられないような高い放射性セシウムが検出されたということなのです。

7/27稲わらの図

ここで皆さんにご理解いただきたいことは次のことです。田んぼに生えている稲のわらの部分にこんなに高く放射性セシウムが蓄積することはありません。もしそういうことができるならば、巷でいわれているほど移行係数が高くないヒマワリの代わりに稲を土壌からのセシウムを除去するのに利用できます。(ヒマワリの話を読んでいない方はこちらを是非お読みください。「6/12 ヒマワリが土壌の放射性セシウムを除去という説の真偽を確認しました。」)

では、実際にどれくらいの放射性セシウムが検出されているのか、実例を見てみましょう。

岐阜県のHPの例ですが、宮城県から購入していた稲わらの放射性セシウムの濃度は

検出された放射性セシウム          3,700ベクレル/kg
牧草換算値※                     841 ベクレル/kg
牧草換算値に対する国の暫定許容値      300 ベクレル/kg
(測定分析機関: 岐阜県保健環境研究所)
※牧草換算値:国が示した暫定許容値と比較のため、稲わらの水分を12%と推定し、水分80%に補正を行った数値』

ということです。最初どういう計算をしているのか良くわからなかったのですが、3700Bq/kgというのは水分以外が88%です。水分80%に補正ということは水分以外を20%になるように計算するということです。88÷20=4.4なので、3700Bq/kg÷4.4=840.9Bq/kgで841Bq/kgという計算になります。

つまり、測定した乾燥稲わらの放射性セシウムの量を4.4で割って、それを牧草のセシウムの暫定許容値(300Bq/kg)と比較するということをやっているのです。

ここで稲わらの数値の読み方がわかったところで、宮城県のHPを見てみましょう。

7/27宮城稲わら1


数字が小さくて読みにくいかもしれませんが、これは宮城県の稲わらの放射性セシウムを測定しています。その際、測定データとしては放射性セシウムは2000~30000Bq/kg程度とばらつきがあるものの、かなり高めに出ています。その右側の数字で括弧つきなのが、補正値、つまり4.4で割った値です。この値を300Bq/kgと比較して許容値を超えているかどうかという判断をしています。

このような表記はどこの県のHPにも書いてありますし、メディアの報道も牧草換算で・・・と書いてあります。まず、「暫定許容値」という言い方なのですが、牧草の場合は人が直接食べるものでなく、主に牛に食べさせるものなので、基準値ではなく許容値という言い方をしています。牧草については、農水省のHPに書いてあります。まあ、これは言葉の使い方なのでいいとしましょう。

でも、なぜ4.4で割るのか?牧草の許容値の80%にあわせて計算しないといけないのか?ここには疑問があります。誰もこのことに疑問を呈していないようですが、あえて取り上げたいと思います。

これまで私のブログでは、お茶葉のセシウムについていろいろと取り上げてきました。静岡県のお茶の場合、生葉だと100Bq/kg程度しかないのに、荒茶にすると乾燥させるので4-5倍に濃縮されるため、500Bq/kg程度になって、暫定基準値の500Bq/kgを超えてしまいます。そこで、静岡県の川勝知事は二番茶の測定は荒茶(または製茶)ではなく、生葉で測定すべきだと主張していました。どちらで測定するべきかについては、農水省と厚労省でかなり議論があったようですが、結局厚労省の主張が通り、荒茶で流通するのであれば、荒茶で測定するべき、との理屈で乾燥した荒茶でも測定することになりました。

この決定に静岡県が反発、一時拒否をしましたが、結局これに応じました。その結果、一部の製茶から暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されました。このあたりは「6/15 静岡県のお茶の放射能騒動はまだ終わらない!」などに書いてあります。

今回の稲わらの話でも同じようなことが言えるはずです。乾燥した稲わらの測定データそのものと、それを4.4で割った水分量80%の換算値とどちらで基準値(この場合は許容値)と比較しますか?という問いかけに対し、お茶の時の理屈ならば、乾燥した稲わらで流通するのですから乾燥した稲わらで測定してそのデータを許容値と比較すべきです。お茶の場合は、実際にはほとんどのケースがお湯で抽出して薄めて飲むということがありましたので、実際に食べるときのことを考えれば製茶を基準にしなくてもいいのではないか?という主張はそれなりの理屈が通っていました。ただ、この時厚労省としては流通する形態が荒茶(製茶)ならば荒茶で測定すべき、という理論でした。

今回の稲わらは、流通も乾燥状態ですし、牛に与えるときも乾燥した状態で与えるはずです。ならば、わざわざ4.4で割って数字を小さくするのははおかしな話です。お茶の時の理屈と整合性がとれません。これを認めるならば、お茶の場合も荒茶での測定をしないでもよかったということになります。

おそらく、今回は完全に農水省の管轄で、農水省は前回も生葉で測るべきと主張していたようなので、稲わらについては農水省の考えが通ったのでしょう。ただし、牛肉になると厚労省が関与してきます。妙な縄張り意識ですね。

では、4.4で割って意味があったのでしょうか?秋田県のHPを見る限り、あまり意味がなかったようです。とはいえ、稲わらの放射性セシウム量が少ない登米市の488Bq/kgの場合、4.4で割ることで111Bq/kg換算になり、暫定許容値以下という判断になっています。このように許容値以上という判断をしなくてすんだ稲わらもあるようですが、実際には農水省の目論見?もあまり意味がありませんでした。

お茶の時にあれだけ物議を醸したのですから、乾燥させて測定して判断するのか、生の水分を含んでいる状態で基準値と比較するのか、整合性をとるべきだと思います。お茶と同じ考え方ならば、稲わらも4.4で割らずにそのまま許容値と比較するべきです。また、もしお茶の時の判断が間違っていたならば、今後は水分を含んでいるときに換算する、とするべきです。
こういうところでもしっかりと省庁間で連携して欲しいと思います。今後食品の暫定基準値も見直されるようですから、こういう部分の整合性をしっかりと取って欲しいと思います。

最後に、稲わらの牛への移行係数について補足しておきます。ある資料によると、牛への移行係数は0.096だそうです。また、牛肉のセシウム量(Bq/kg)は下記の式で計算できるそうです。

『飼料のセシウム濃度(Bq/kg)×飼料摂取量(kg/日)×移行係数(日/kg)=牛肉中のセシウム算定濃度(Bq/kg)
例を挙げると、200(Bq/kg)の飼料を14(kg/日)食べ続けた場合、セシウムの移行係数を0.096(日/kg)とすると 、200×14×0.096=269(Bq/kg)となり、牛肉中のセシウム濃度は、269(Bq/kg)と算定されます。 』




(1) 移行係数とは

5/27、農水省はHPに「農地土壌中の放射性セシウムの野菜類と果実類への移行について」というまとめを発表しました。

ここには、いろいろな作物についてこれまで発表されている文献データを調査し、それをまとめたものが記載されています。ここでの視点は、どういう作物は土壌中の放射性セシウムを取り込みやすいので注意しないといけないのか、ということでまとめられています。つまり、前回のヒマワリの時とは違い、放射性セシウムを取り込みにくい方が食べてもより安全だ、ということです。

でも、実は「6/12 ヒマワリが土壌の放射性セシウムを除去という説の真偽を確認しました。」で紹介したヒマワリやアマランサスと、これからご紹介するイモやキャベツなどは同じ「移行係数」という指標を見ています。土壌から放射性セシウムを除去しようとする場合には移行係数の高いものを選ぶべきだし、食べるものでは移行係数を以下に低くするか?という考え方をします。見方が違うので、同じ移行係数の使い方が高い方が望ましいか、低い方が望ましいか?ということが違ってくるだけなのだという事をご理解いただきたいと思います。
(なお、ここではストロンチウムは取り上げません。セシウムに絞った話にさせていただきます。)

それでは、農水省のHPに別添としてまとめられた表を見てみましょう。その前に、「移行係数」とは何か?ということをまず定義しておかないといけません。

移行係数=〔農作物中のセシウム137濃度(生鮮※、Bq/kg)〕/〔土壌中のセシウム137濃度(乾土、Bq/kg)〕

数式が出てきていきなりわけがわからなくなったかもしれませんが、そんなに難しいことではありません。

たとえば、ある土壌中の放射性セシウムの濃度が100Bq/kgとします。その土壌で育てたニンジンを生のまま(これは乾燥させないでということです)ミンチにして測定器にかけたら放射性セシウムの濃度が0.37Bq/kgだったとします。

その場合、移行係数は0.37/100=0.0037ということになります。

ここで、生のままと書いたのは、農水省が計算している移行係数では、農作物は全て生鮮状態のもので測定するという事になっているからです。文献などでは、乾燥させてその状態で測定しているものもあるのですが、国際原子力機関の報告書と「食品成分データベース(日本食品標準成分表2010)」の水分比を用いて「生鮮重当たり」の濃度に換算しています。

わかりやすい例でいうと、このブログではこれまでさんざんご紹介してきたように、お茶の葉の放射性セシウムの濃度を、生葉で測るのか、乾燥させた荒茶で測るのか、という違いです(「7/2 お茶からの放射能(放射性セシウム)検出について最終的なまとめ」参照)。お茶葉の場合は、乾燥させると5倍くらい放射性セシウムの濃度が上がりました。それぞれの作物について、その比率、すなわち水分含量が異なるので、その比率を計算してお茶でいう生葉の状態に合わせています。

それでは、農水省の出した移行係数を表にしましたので見てみましょう。

7/3農水省移行係数1

ここで、幾何平均値というのと算術平均値という言葉が出てきました。算術平均値というのは普通の平均値のことです。幾何平均値(データがn個あるとき、データ値の積のn累乗根)というのは、対象とするデータが1~10000のように大きくばらついているような時に用いる平均値の取り方です。このような場合は、単純に算術平均をとってしまうと、全く外れた値を平均としてしまう可能性があるため、幾何平均値が使われます。移行係数は、同じ植物を対象にしていても文献によって、あるいは土壌の条件によって100-1000倍のばらつきがあるものなので、この幾何平均値という平均の取り方は妥当だと思います。

また、それだけバラツキがあるため、最小値と最大値も掲載されています。この数値が発表された時、NHKなどは最大値で報道を行っていました。これもリスクを最大限にとって考えるということでは一つの方法だと思います。

でも、これを見てもよくわからない、という方がほとんどだと思います。ご心配なく。私も最初そうでしたから。

農水省のHPにあるまとめや、そのほかの文献、サイトなどから集めてきた情報を元に、もう少しかみ砕いて説明します。とはいえ、はっきりした結論が得られないのが今回のお話しなので、そこは予めご了承下さい

(2)移行係数というのはどれくらいのものなのか?

この係数がいったいどれくらいなのかは感覚としてもっておく必要があります。まず、定義から考えて、移行係数が1だとすると、土壌中のCsが全て作物中に移行してしまうことになります。そこまでは行かないだろうということは容易に想像がつきます。ではどれくらい?

下記の表は、IAEAが1982年にまとめた農作物への移行係数からとってきたものです(文献A)。NPKといった肥料にも使われるP(リン)の移行係数は1×10(0)=1、すなわち全てほぼ等濃度で移行するというデータに対し、Csは3×10(-2)=0.03、すなわち3%くらい3%くらいの濃度でしか移行しないということです。

7/9追記:移行係数は全量の何%という考え方とは違うというご指摘をいただきました。確かに移行係数は1を超える場合もあり得るので、表現を訂正しました。

7/3移行係数1

次の資料も、最後に出典を紹介する文献Aからとってきたものです。さきほどのIAEAの資料も含め、米国NRC、DOEなどのいくつかの資料から移行係数を抜き出してきてくれている貴重な資料です。ついでに他の元素も載っていましたので、比較のために掲載しておきます。C(炭素)は移行係数5という報告もあれば、0.001という報告もあり、どちらを信用していいか迷ってしまいますが、Cs(セシウム)については多くの報告がほぼ0.01前後で落ち着いています。

7/3移行係数2

ところが、Csの移行係数は全ての植物を平均してしまうと0.01前後なのか、と思うと、必ずしもそうではないところがややこしいところです。今回の農水省のデータでも、わざわざ

気候が日本の気候に近い地域で実施された圃場試験のデータに基づいて、野菜類17品目と果実類4品目について、セシウム137の土壌から農作物への移行係数の最小値、最大値、平均値を取りまとめました。』

と記載してあります。実は、文献Aや文献B(この二つの文献は最後に紹介します)のように網羅して調査した報告書がすでに存在するため、全体的なCsの移行係数を知りたければ、過去の報告書をあさってまとめれば済むだけのことです。ところが、移行係数というのは、最初に数千倍の幅があるといったように、土壌の性質によっても大きく異なります。ですから、アメリカやヨーロッパのデータをそのまま日本の土壌に当てはめるわけにはいかないようです。

一例を下記の比較から見てみましょう。これは文献Bからの抜粋で葉菜類についてまとめたものです。「日本のデータ」というのは、放医研の内田らが調べたデータです。「世界全体のデータ」というのは、文献Bでまとめるにあたって、IAEAなど日本以外のデータも含めてまとめたデータです。実はこの二つは100倍近く数字が違うのです。土壌の性質などが違うのでしょうね。

たとえば、キャベツ。

農水省の発表したデータ     0.00092
日本のデータ(放医研 内田ら) 0.00024
世界全体のデータ          0.016

日本のデータと世界全体のデータは100倍近く違いますが、福島の土壌に近いものとして農水省が選んだのは、やはり日本のデータ+αでした。日本のデータに近い数値になっています。

従って、絶対値については先ほど見てきたような、移行係数0.01~0.1という事が日本の土壌、特に福島近辺には当てはまらない可能性があります。ですから、絶対値で考えるのではなく、同じ表に並んでいるものの中でどれが移行係数が高くてどれが低いか、という程度の利用しかできないと考えておいた方が良さそうです。

そういう目で見ると、葉菜類については、ほうれん草は比較的移行係数が高いということが二つの表から読み取れます。ただし、農水省の発表したデータではそれほど高くありません。また、カラシナは農水省のデータでも、世界全体のデータでも非常に高いというデータが出ていますので、これは要注意といっていいと思います。

7/3移行係数4

次に葉菜以外の作物です。
ジャガイモを例にとります。

農水省の発表したデータ     0.011
日本のデータ(放医研 内田ら) 0.0009
世界全体のデータ          0.0078

こちらは、農水省のデータが一番移行係数が高い結果になっています。

ジャガイモとサツマイモについては、農水省のデータでは、最大値が0.13と0.36と非常に高かったために注意が必要とされましたが、全体の平均値としてそこまで高いわけではありませんでした。ただ、世界全体のデータで見ても、最大値は27とか38とか土壌中からかなり濃縮されるような結果も出ている事は確かなので、条件によっては移行係数が高くなる可能性があるということは注意しておいた方が良さそうです。

7/3移行係数5

(3) 結局どんなことが読み取れるのか?

データの幅がありすぎるため、明確な結論を得るのは難しい、というのが一つの結論ではありますが、それではご紹介する意味もなくなってしまうので、簡単にまとめていきます。農水省のHPに記載してあることも抜粋してご紹介します。

その前に、文献Bのまとめを抜粋してご紹介します。

ここでは、主に日本のデータが揃っている作物についてはそちらを優先して、全体としての移行係数を下記のようにまとめています。Csの場合のデータは以下の通りです。

米類  :0.0008
葉菜類 :0.0004
非葉菜類:0.0003

つまり、文献Bでは全体的には移行係数は0.0001~0.001だという結論を出しています。今日は触れませんでしたが、農水省は米の移行係数については4月の段階ですでに0.1という指標を出しています。ずいぶん違いますね。

7/3移行係数3

一方、農水省のHPにはまとめとして下記のようなことが書いてあります。これについてはこれまでにすでに説明しました。

『1.気候が日本の気候に近い地域で実施された圃場試験のデータに基づいて、野菜類17品目と果実類4品目について、セシウム137の土壌から農作物への移行係数の最小値、最大値、平均値を取りまとめました。最小値と最大値とが大きく異なる場合が多いため、平均値としては幾何平均値(データがn個あるとき、データ値の積のn累乗根)を用いました(メロン、ブドウを除く)。
2.イモ類を除く野菜類と果実類における移行係数の最大値は0.1未満、幾何平均値は0.05未満でした。
3.イモ類の移行係数の最大値は0.36と他の野菜より大きい値を示しましたが、幾何平均値は0.05未満であり他の野菜類と同程度でした。
4.キャベツとジャガイモについては、データが50程度存在したため、米の場合と同様の方法で指標値を算出したところ、キャベツで0.0078、ジャガイモで0.067でした。』

農水省の作成した表をもう一度よく見ると、次のような傾向があることが読み取れます。明確な傾向ではないので、参考程度にしてください。

・葉菜の中では、アブラナ科の作物が移行係数が高い傾向にある。特にカラシナは他にも高いというデータが出ているため、要注意。アブラナ科の作物は、ヒマワリのようにファイトレメディエーションを行おうとした場合でも移行係数が高い傾向が報告されていたので、このデータは正しい可能性があります。

・根菜類(ジャガイモ、サツマイモ、テンサイ)は移行係数が高い。これは他の統計でも同じような傾向が見られるので注意した方がいいかもしれない。

・果菜類は移行係数が低い。

・樹木類は移行係数が低い。これは、根が深いところにまで張っているということと関係があると思います。放射性セシウムは地中5cm程度までにしか浸透しないといわれているので、深いところに根を張る植物はあまり影響を受けないのだと思われます。



ということで、今回は明確な傾向が得られなかったのが残念です。土壌による移行係数の違いが大きすぎて、この程度の考察しかできないということなのです。前回のヒマワリについても、文献的には土壌での成績はあまりいいものではないが、福島の土壌ではどうなるかはやってみないとわからない、と書きました。それは今回ご紹介したように、その土地でのデータを出してみない限り確かなことは言えないからです。

ですが、今後もう少し突っ込んで移行係数の話は調べてみたいと思います。そのうちに福島でのデータも出てくることでしょう。次回がいつになるかわかりませんが、ご期待下さい。


この記事を書くにあたって参考にした資料:

(文献A) 環境パラメーターシリーズ 土壌から農作物への放射性物質の移行係数
http://www.rwmc.or.jp/library/other/file/kankyo1.pdf

(文献B) 安全研究センター 生物圏評価のための土壌から農作物への移行係数に関するデータベース
http://jolissrch-inter.tokai-sc.jaea.go.jp/pdfdata/JAEA-Data-Code-2009-003.pdf

東大理学部 有田研究室
http://metabolomics.jp/wiki/Doc:Radiation/Agriculture

日本土壌肥料学会HP
http://jssspn.jp/info/file/4012.pdf









農地土壌中の放射性セシウムの野菜類と果実類への移行について

農林水産省は、自治体や生産者の方々が、農作物の作付けや収穫物の検査の要否を検討する際の参考としていただくため、国内外の科学文献に基づいて、農地土壌中の放射性セシウムの野菜類及び果実類への移行係数を取りまとめましたので、お知らせします。
今後、新たに作付けされる農作物の収穫時における放射性セシウムの分析結果と栽培土壌中の放射性セシウム濃度の比較及び栽培試験を実施し、より実態を反映した移行係数を算出する予定です。

背景

  1. 福島第一原発事故によって大気中に放出された放射性物質による農作物への影響は、事故後しばらくの間放射性物質を含む降下物の付着が主たるものでした。その後、放射性物質の降下量が減少してきています。
  2. 一方、農作物の作付け前には耕起作業を必要としますが、これによって表層と下層の土壌が混合されるので、今後、食品安全の観点から、土壌に含まれる放射性物質が根から農作物に吸収されることに注目する必要があります。また、自治体や生産者が農作物の作付けや収穫物の検査の要否を検討する際の参考として、移行係数の情報が有用です。
  3. 4月8日に、水稲の作付けの可否の判断の参考として、土壌中のセシウム137の玄米への移行の指標(0.1)が発表されました。しかし、米の場合と異なり、我が国における野菜や果実における土壌からの放射性物質の移行についての科学データはあまり多くありません。
  4. そこで、国内外の科学文献を調査し、それらに記載されているデータに基づいてセシウム137の土壌から農作物への移行係数を取りまとめました。データの数が限られているため、あくまで参考値として活用してください。

結果(詳細については別添参照)

  1. 気候が日本の気候に近い地域で実施された圃場試験のデータに基づいて、野菜類17品目と果実類4品目について、セシウム137の土壌から農作物への移行係数の最小値、最大値、平均値を取りまとめました。最小値と最大値とが大きく異なる場合が多いため、平均値としては幾何平均値(データがn個あるとき、データ値の積のn累乗根)を用いました(メロン、ブドウを除く)。
  2. イモ類を除く野菜類と果実類における移行係数の最大値は0.1未満、幾何平均値は0.05未満でした。
  3. イモ類の移行係数の最大値は0.36と他の野菜より大きい値を示しましたが、幾何平均値は0.05未満であり他の野菜類と同程度でした。
  4. キャベツとジャガイモについては、データが50程度存在したため、米の場合と同様の方法で指標値を算出したところ、キャベツで0.0078、ジャガイモで0.067でした。

今後の方針

農林水産省は、より実態を反映した移行係数を得るため、自治体や試験研究機関と連携し、新たに作付けされる農作物の収穫時における放射性セシウムの分析結果と栽培土壌中の放射性セシウム濃度の比較や栽培試験を実施するなど、農地土壌中の放射性セシウムの実態や移行の程度に関するデータを収集・解析してまいります。
<添付資料>(添付ファイルは別ウィンドウで開きます。)
お問い合わせ先
消費・安全局農産安全管理課
担当者:秋元・青木
代表:03-3502-8111(内線4507)
ダイヤルイン:03-3592-0306
FAX:03-3580-8592

稲の作付前(4月)に行われた農地土壌の放射性物質濃度測定と梅雨前(6月)に日本学術会議の提案で行われた土壌濃度の測定を比較した。
農地土壌の単位はBq/kg、土壌濃度の単位はkBq/m2である。
この間の換算係数K=(Bq/kg)/(kBq/m2)は、
●土のセシウム濃度(5cm)Bq/kg⇔土壌濃度(5cm)kBq/m2のK=16.6
●水田のセシウム濃度(15cm)Bq/kg⇔土壌濃度(5cm)kBq/m2のK=16.6/3=5.53
●畑のセシウム濃度(30cm)Bq/kg⇔土壌濃度(5cm)kBq/m2のK=16.6/6=2.77
となる。
一般的な農法で作られた農作物のセシウム濃度を土壌濃度から推定する場合、上記の換算係数を掛けて農地土壌の放射性セシウム濃度を算出する必要がある。水田、畑の土は作付前に耕起、耕耘することによりセシウム濃度が薄くなっているからです。
農地土壌中の放射性セシウム濃度とそこで栽培された農作物中(可食部)の放射性セシウム濃度の比ですを表わすのに移行係数を用いる。
土壌中の放射性セシウム濃度が同じ場合、移行係数が大きい品目ほど、農作物中の放射性セシウム濃度が高くなる。
移行係数=農作物中のCs137濃度(生鮮*、Bq/㎏)/土壌中のCs137濃度(乾土*、Bq/㎏)
水田でも耕起しない栽培法、畑でも不耕起栽培がある。
タケノコ、お茶、ビワ、野生キノコ、山菜は勿論、不耕起である。
ニラ、ワケギ、ミョウガ等の野菜も土壌濃度(5cm)を使用すべきである。
15cm耕起する水田の換算係数は16.6ではなく5.53を使用する。
30cm耕耘する畑の換算係数は2.77を使用する。
それぞれの栽培法に合致した換算係数をかけて土壌のセシウム濃度を考えなければいけない。
4月以降、作付けした野菜は6倍に薄められた土で育てられ、新たなフォールアウトも無いのでほとんど放射性セシウムが検出されていません。
Photo●土壌濃度マップの作成に向けた土壌試料採取の方法
農地土壌の放射性物質調査における土壌の採取は、水田:深さ15 cm、畑地:深さ30 cmを1kg程度採り行われました。
大玉村の水田土壌中の放射性セシウム濃度は2011/04/01の時点で1408~3603Bq/kgであった。
大玉村の(Cs134+Cs137)の土壌濃度は6月6日~6月14日の時点で72~555kBq/m2であった。
土のセシウム濃度を示すのに単位がBq/kgとkBq/m2と異なっている。
大玉村の最大値555kBq/m2を換算してみる。
容量100ml、口内径50mm、径56mm、高さ68mm
試料採取面積はπ×5×5/4=19.6cm2
採取深さは5cm
土の容積比重を1.2g/cm3とする
試料の重量は19.6×5×1.2=118g
1cm2当たりセシウム濃度は555000/10000=55.5Bq/cm2
1kg当たりの放射性セシウム濃度は55.5×19.6/0.118=9218Bq/kg
555kBq/m2は9218Bq/kgとなる。
換算係数は9218/555=16.6となる。
3603Bq/kgは217kBq/m2となる。
ここまでは土壌深さ5cmで計測した場合の換算である。
水田土壌の採取は深さ15cmである。放射性セシウムがあるのは5cm以内であるから、
5cm以内の放射性セシウムは3603×(15/5)=10809Bq/kg
水田の放射性セシウム濃度3603Bq/kgは10809/16.6=651kBq/m2となる。
水田の放射性セシウム濃度(15cm)から土壌濃度(5cm)の換算係数は16.6/3=5.53 稲の作付け限界5000Bq/kgは5000/5.53=904kBq/m2となる。チェルノブイリの場合なら、 555-1480kBq/m2 強制(義務的)移住ゾーンに入る。
大玉村の畑の土壌中の放射性セシウム濃度は2011/04/01の時点で1636~7081Bq/kgであった。
畑の放射性セシウム濃度(30cm)から土壌濃度(5cm)の換算係数は16.6/6=2.77
畑の放射性セシウム濃度7081Bq/kgは7081/2.77=2556kBq/m2となる。
チェルノブイリの場合なら、1480kBq/m2を超えて、 強制避難ゾーンに入る。
農地は他の土壌より汚染が少ないように見せたいのか、土を耕さない耕作地はセシウム濃度は高いことを周知させなければならない。農水省は少し姑息ではないのか。
Photo_2
Cs137
_108
_cs134cs137●大玉村・二本松市・本宮市・須賀川市の(Cs134+Cs137)の土壌濃度と、農地土壌濃度の換算ができたので、お米の汚染について考える。
大玉村・二本松市・本宮市・須賀川市の(Cs134+Cs137)の土壌濃度と農地土壌濃度のエクセルのデータをアップしました。参照ください。
最大値で米の移行係数を無理やりに算出すると、
移行係数a=玄米の濃度Bq/kg/土壌濃度から15cm換算した最大値Bq/kg=61/5361=0.011
移行係数b=玄米の濃度Bq/kg/農地土壌の放射性物質濃度の最大値Bq/kg=61/4984=0.012
同じく平均値で米の移行係数を無理やりに算出すると、
移行係数a=玄米の濃度Bq/kg/土壌濃度から15cm換算した最大値Bq/kg=22.8/(251×5.53)=0.016
移行係数b=玄米の濃度Bq/kg/農地土壌の放射性物質濃度の最大値Bq/kg=22.8/2828=0.008となる。
Photo_3
Photo_4
Photo_5
Photo_6●左の図(水稲による137Csと90Sr の吸収率、玄米移行率および土壌から白米への移行係数」は、「tumu-tumu ツムラの掲示板」より入手しました。
http://tumu-tumu-tsumura.blog.so-net.ne.jp/2011-08-22 津村昭人のブログによれば、白米の移行係数は0.0026、玄米ならその2.6倍で0.0068との数値がありました。
放医研 内田らの文献では、玄米のCsの移行係数は、対数平均値8.0E-4、中央値6.0E-4、最小値1.1E-4、最大値1.4E-2である。
農水省の移行係数は学術的に出したものでは無いように思われる。米の規制値500Bq/kgは他の食品とのバランスで決まり、農地の汚染分布の激しさから規制の限界を5000Bq/kgとしたところから決めたものであろう。500/5000=0.1。主食である米がトマトやキャベツと同じであって良いわけがない。このブログの検討では、玄米の移行係数は0.01として今後の検討を進める。
玄米の濃度は100Bq/kgとして今後の検討を進める。
●玄米に含まれる白米と糠のCs137比率は0.35
精米率90%の白米1kgに含まれるCs137は100×0.35/0.9=38.9Bq/kg
精米率90%のヌカ1kgに含まれるCs137は100×(1-0.35)/(1-0.9)=650Bq/kg
ヌカは規制値500Bq/kgを越える。
Cs137_2
Photo_7食品による年齢別の内部被曝ベクレル(Bq)シーベルト(Sv)換算ツール」を使用して、白米による内部被曝(1年分)を計算してみます。
セシウム濃度=38.9Bq/kg、摂取量=60kg/年間とすると、
Cs-137濃度=20.4Bq/kg
Cs-134濃度=18.5Bq/kg
ICRP被曝量(μSv)は8~12歳で27.154μSv/年となる。
ECRR被曝量(μSv)は2~14歳で198.394μSv/年となる。
セシウム濃度(規制値)=500Bq/kg、摂取量=60kg/年間とすると、
ICRP被曝量(μSv)は8~12歳で226.280μSv/年となる。
ECRR被曝量(μSv)は2~14歳で1653.284μSv/年となる。
年1.65mSvは大きすぎる。セシウム濃度(規制値)=500Bq/kgは問題である。1歳児では年4.1mSvとなる。
2種類の係数で算出していますが,国際放射線防護委員会 (ICRP)と欧州放射線リスク委員会 (ECRR)の係数で出るSvは異なる単位ですので,単純に比較できません.
リスクはそれぞれ左図のようになります。
ICRP係数が国際標準です.古い時代に想定された係数で。内部被曝を軽視しているとの批判がある。
ECRR係数は最も内部被曝を重大に評価している係数です。環境保護系の団体がICRP批判のために設置した調査グループ。
セシウム濃度100Bq/kgの玄米を年60kg食べた時のECRR被曝量は2~14歳で200μSv/年となる。ICRP被曝量は8~12歳で27μSv/年となる。
特に子供に関しては、内部被曝を重視しているECRR被曝量で考えるべきと思います。規制値の500Bq/kgでは5倍の1mSv/年となる。
米だけで、公衆の年間被ばく線量限度になってしまう。
欧州放射線リスク委員会 (ECRR)については次回のブログで調べたいと考えています。
Bq_sv
Photo_8
Cs137k原子力環境整備センターの「土壌から農作物への放射性物質の移行係数」のレポートの中に、
「第3-8図 水稲のCs-137吸収に及ぼす各種塩添加の影響(p19)」に水稲の葉身、葉鞘、根のデータが有りました。
「第4-4表 水稲各器官のCS137濃度、およびK欠乏の影響(p32)」に玄米、白米、ヌカ、籾がら、稈、葉身、葉鞘のデータが有りました。
大玉村・二本松市・本宮市・須賀川市の早場米で見ると、米の放射性セッシウム濃度の最大は61Bq/kg 平成22年産水陸稲の収穫量によれば福島県では、玄米の収穫量は553kg/1000m2である。
玄米1kg当りのセシウム量は7100×61/100=4331Bq/kg
水田1m2当りのセシウム濃度を計算すると、
553/1000×4331=2395Bq/m2
水田の放射性セッシウム濃度の最大は969Kbq/m2であるから、
玄米、稲ワラ、籾ガラ、根をすべて持ち出しても、2395/969000=0.00247 0.25%しか水稲自身で除染できない。
玄米、稲ワラ、籾ガラだけなら0.25×860/7100=0.03%となる。水稲によるファイトレメディエーションは期待できない。
稲ワラ、籾ガラは持ち出さずに、従来通り、土づくりのために米を収穫した後に鋤きんだほうが微生物が増えて良いように思います。
セシウムの水田土壌への固着が強く2年目、3年目で2倍、3倍と強くなるとのデータもある。
山林から水田への放射性セシウムの移動を防ぐことが大切である。
玄米のセシウム汚染を100Bq/kgとすると、稲ワラ 600Bq/kgであり規制値(300Bq/kg)を超える。
米ヌカ 721Bq/kgあり規制値(500Bq/kg)を超える。
水田以外での利用は控えた方がよいと思います。バイオレメディエーションに期待したい。


進むコメのセシウム検査 規制値超えの可能性はゼロに近いが 消費者は?稲わらは?
  各地の早期出荷米の放射性セシウム(以下、単にセシウムと呼ぶ)検査結果が
続々と発表されている。
今までのところ、茨城県鉾田市、千葉県白井市・市川市、福島県二本松市・本宮市の玄米から、
それぞれキログラム当たり52ベクレル、47ベクレル(予備検査で。本検査では検出されず)、
46ベクレル、22ベクレル、12ベクレルの暫定規制値を大幅に下回るセシウムが
検出されただけである。
検査対象の大部分では検出されないか、
検出限界を下回っている。不安でたまらなかった農家が胸をなでおろす姿が目に浮かぶ。
しかし、この結果は私には当然のように思われる。
検査されたコメが生産された水田土壌のセシウム濃度が公表されていないから
確かなことは言えないが、これまで検査されたコメの生産地域の水田土壌セシウム濃度は、
恐らくは土壌1キログラム当たり1000ベクレル以下がほとんど、
髙くても2000ベクレル以下であったと思われる。
これは、先月末に農水省が発表した東北・関東6県の農地土壌放射性セシウム濃度マップの
同じく文科省が発表した福島第一原発から80キロ、100キロ、120キロの範囲の
地表面に沈着した放射性セシウムの濃度を示すマップ
ちなみに農水省調査のデータから農地土壌中のセシウム濃度別の調査地点数を示すと
下のとおりである。
水田土壌中の放射性セシウム濃度(ベクレル/kg)別地点数


999
10001999
20002999
30003999
40004999
5000
宮城県
14
0
0
0
0
0
福島県県北地方
3
14
13
7
3
0
同県中地方
11
10
5
3
0
0
同県南地方
8
1
0
0
0
0
同会津地方
26
1
0
0
0
0
同相双地方
17
12
2
5
3
24
同いわき
5
1
1
2
0
0
栃木県
20
4
0
1
0
0
群馬県
1
0
0
0
0
0
茨城県
15
0
0
0
0
0
千葉県
4
0
0
0
0
0
畑地(転換畑、樹園地含む)土壌中の放射性セシウム濃度(ベクレル/kg)別地点数


999
10001999
20002999
30003999
40004999
5000
宮城県
50
2
0
0
0
0
福島県県北地方
2
9
16
7
6
7
同県中地方
33
8
2
1
0
0
同県南地方
14
3
2
0
0
0
同会津地方
29
1
0
0
0
0
同相双地方
7
7
3
2
5
7
同いわき
7
0
0
0
0
1
栃木県
19
3
0
0
0
0
群馬県
12
0
0
0
0
0
茨城県
47
0
0
0
0
0
千葉県
26
0
0
0
0
0
  福島県県北地方(福島市、二本松市、伊達市、本宮市等)、県中地方(郡山市、須賀川市等)と原発に近い相双地方(相馬市、南相馬市、楢葉町、川内村、浪江町、葛尾村、新地町、飯舘村、いわき市の一部)を除けば、水田土壌のセシウム濃度が1000ベクレルを超えるところは極めて少ない。これ以外の地域で1000ベクレルを超える地点は、福島県南部、会津地方、宮城県南部、栃木県那須地方に僅かに見られるだけである。
 こうして、今までに検査されたコメのほとんどが1000ベクレル未満、一部が1000ベクレルを多少上回るセシウム濃度の水田で生産されたものと推測できる。
土壌から玄米へのセシウムの移行係数(土壌中のセシウムが玄米に移行する割合)を農水省が仮定するように0.1とすると、1000ベクレルの水田で生産される玄米からでも100ベクレル(白米ではそれよりずっと少ない)のセシウムが検出されるはずである。暫定規制値を下回るとはいえ、消費者は毎日安心して食べるわけにはいかない。しかし、これまで玄米から検出されたセシウムは最高でも50ベクレルを下回っている。多分、0.1という移行係数が過大なのだ。
植物は、土壌粒子に固着したセシウムが水に溶けださないかぎり、これを根から吸収できない。東京大学と福島県農業総合センターの研究者が行った福島県の水田・畑地土壌からの放射性物質の水への溶出試験によると、溶出率は20%、抽出を繰り返しても2回目以降の溶出はほとんどなかったという(福島県の水田および畑作土壌からの137Cs、134Csならびに131Iの溶出実験 [1464KB] ラジオアイソトープ、Vol.60 No.8 (2011))。これを一般化できるとすれば、1000ベクレルの水田土壌から稲が吸収できるのは、最大でも200ベクレルである。ところで、稲の中のセシウムの73%は稲わら に、白米、、ぬか、もみ殻、根にはそれぞれに7%、10%、7%、3%が分布 するといいうから(稲のセシウム 白米への移行わずか 分散割合を発表 畜産草地研究所 日本農業新聞 11.8.4)、1000ベクレルの土壌から玄米に移行するのは 最大限で200ベクレルの20%、40ベクレル(白米では14ベクレル=多分、検出限界ぎりぎり)程度ということになる。これで、現実の検査結果が十分に説明できるのではなかろうか。
こうした推定が信頼できるとすると、今後福島県北や栃木那須地方の2000ベクレルを超えるような地域のコメの検査が進むと、土壌のセシウム濃度に応じた次のような汚染度のコメが現れる可能性がある。

土壌のセシウム濃度
20002999
30003999
40004999
12500
玄米のセシウム濃度
80120
120160
160200
500
白米のセシウム濃度
2842
4256
5670
175
稲わらのセシウム濃度
292438
438584
584740
1825
現在稲作付けが制限されている原発周辺地域を除けば、暫定規制値を超えるコメが生産される可能性はゼロに近い。しかし、この暫定規制値は余りに高すぎるという批判がある。暫定規制値を下回るとはいえ、こうした土壌汚染地域のコメを消費者が受け入れるかどうかが問題だ。参考までに、稲わらに含まれる可能性のあるセシウムの濃度も示した。2000ベクレルを超える汚染土壌から生産される稲わらは、飼料として利用が可能な基準値(300べクレル)、肥料・土壌改良資材等としての利用が可能な基準値(400ベクレル)を超える可能性が大きい。これら地域の農家は、コメは 出荷できても、大量の放射性廃棄物(稲わら、もみ殻)を抱え込むことになりかねない。稲わらの検査体制と処分方法の確立が急務だ。

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