1959年、岸内閣のもとで科学技術庁(現:文部科学省)によって原発事故による損害額が『国家予算の2倍以上』にのぼると試算されていたことが、40年後の1999年に判明し、国会に報告書(242ページ)が提出されていた。 (1999年当時の政権は自・自・公連立の小渕内閣)
(1999年6月16日 / 毎日新聞記事より引用)
※記事中の損害予測金額は、1959年当時の国家予算がベースなので現在に換算すれば約200兆円となる。
原発事故損害試算 国家予算の倍 3兆7000億円
否定続けた科技庁 40年ぶり国会提出
日本の原子力発電開始に先立ち、1959年に専門の学者らによってまとめられた原発事故による損害額を試算した報告書の全文が今月初め、40年ぶりに国会に提出されていたことが分かった。当時の国の年間予算の2倍以上に当たる3兆7000億円もの被害が予測されていたが、同庁は61年に損害額を3分の1以下に抑えた要約だけを提出し、その後は事故の想定の調査を委託した事まで否定してきた。
報告書は「大型原子炉の事故の理論的可能性および公衆損害学に関する試算」と題する文書で、原発事故発生時の損害賠償制度を定めた減移植損害の賠償に関する法律の制定(61年)に向け、科技庁が社団法人・日本原子力産業会議に委託して作成した。全文の要約(18ページ)の後に「付録A~G]が続き、計242ページで構成されている。
出力50万キロワットの発電所から2%の放射能が漏れた場合(放出量は約1000万キュリーで、チェルノーブイリ事故の3分の1以下に当たる)との想定で、損害額を試算している。
要約では最大の損害額を「一兆円をこえる」と書いてあるだけだが、「付録G」には当時の国の一般会計1兆7000億円の2倍に当たる「3兆7000億円」と明記されている。
人的被害を1~4級までランク付け、治療費、慰謝料の額など具体的な試算結果が盛り込まれている。
科技庁は61年4月、衆議院科学技術対策特別委に要約部分だけを出した。89年3月の参議院科学特別委では、当時の原子力局長が原発事故の被害予測をした事自体を否定していた。
しかし、昨年夏ごろから全文が有ることが一部で伝えられ、今年4月27日と5月27日の参院経済・産業委員会でも追及された。
有馬朗人科技庁長官は「今後は原子力基本法の民主・自主・公開の3原則に従って十分公開していく」と約束し、今月2日に全文が各党に届けられた。
【福井 博孝 (毎日新聞)】
被害総額は「国家予算の2倍」
・・・政府はいまから40年近く前に、すでに最悪の状況を想定しながら、われわれに隠し続けていたのだ。ここに、「大型原子炉の事故の理論的可能性及び公衆損害額に関する試算」と題する、244ページにも及ぶ1冊の(秘)文書がある。
1960年、科学技術庁が原発事故が起きた場合の被害規模の試算を原子力産業会議に委託。東海村に建設することになっていた出力16.6万kWの「東海1号炉」をモデルにして作成されたものだ。
その衝撃的な内容を紹介しよう。
まず、東海村から2%(1000万キュリー)の放射能が漏れた場合、つまりチェルノブイリ事故の30分の1の規模の事故が発生した場合の災害について、このデータは恐るべき地獄絵を描いている。
〈晴れていて大気より地表の温度のほうが低く、したがって空気の入れ替えがないときには、死者は720人を越え、5000人が障害を起こし、400万人が被曝手帳をもらう被害が出る。被害の総額は1兆円になる〉
雨や雪が降った場合は、被害はさらに甚大になる。
〈疎開しなければならない人は1800万人。放射能をかぶる農地が15万km2に及び、被害額は3兆7000億円に達すると思われる〉
1960年当時の国家予算は1兆6000億円程度。つまり、一度、原発事故が起きれば国家予算の2倍にも及ぶ被害が出るとデータは語っているのである。当時の岸(信介)内閣は、その被害額に色を失い、データを(秘)扱いにしたという。もちろん,当時に比べて東海村から都内近郊にかけての人口は急増しているから、死者も720人程度では到底収まるまい。
このような最悪のシナリオを想定していながら、国内初の臨界事故という国家危機に際して無為無策だったばかりか、国民には一言も知らせなかったことは国家的な“犯罪行為”といえる。
40年間隠蔽されていた報告書が作成された当時は、日本には原子力発電所は実験用のもの以外は存在していなかったわけだが、あくまでこの試算は、東海村から2%の放射能が漏れた場合、つまりチェルノブイリ事故の30分の1の規模の事故が発生した場合の災害を想定して、損害額が『国家予算の2倍以上』と算出している。
現在の我が国の予算レベルでは2倍で200兆円となり、今回の福島原発事故の規模にあてはめて試算し直せば、さらに想像を絶する損害額となる。
この報告書が当時発表されていたら、原発は建設できなかったのではないか?
そして、それが秘密にされた結果、54基もの原発ができたあげく今回の破滅的不幸に至ったと言えないだろうか。
報告書の存在を知っているはずの政治家も官僚もマスコミも学者も、皆黙っているが、この責任は一体誰が取るのか?
(10/06/2011 文責:編集人、参考Web記事:「原発事故損害試算」1999/06/17 )
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