資源エネルギー庁があっさり認めた「東電に返済義務はない」--復興増税を国民に押し付けながら銀行と株主を守ろうとする野田政権


長谷川幸洋「ニュースの深層」より
東京電力の賠償問題について、私は先週のコラム
東電はタダでもらえる『抜け道の資金ルート』がある」と書いた。
そう書きながらも、話は法律の解釈をめぐる重要な論点を含んでいるので
「経済産業省所管の法律に詳しい関係者によれば」
という若干の留保を置いたつもりだった。
ところが、留保はまったく必要なかった。
その後、当事者である経産省・資源エネルギー庁の電力ガス事業部政策課
に確認したところ、あっさり認めたのだ。
東電には、
本当に政府が税金で用意した「タダで使える抜け道の資金ルート」があった。
これまで民主党政権は菅直人前首相のときから、
国民に対して
東電には徹底したリストラを求めて国民負担を最小化する」と説明してきた。
加えて「東電に税金を投入することはない」とも明言してきた。
これは、まったくデタラメである。
資源エネ庁への取材を通じて新たに判明した論点を含めて、
東電賠償問題の第5弾をお伝えする。

東電は返済する必要がないカネを政府から受け取れる

賠償問題の枠組みづくりをめぐっては、
金融機関の意を受けた経産省が当初、
賠償費用を賄うために税金投入を求めていたが、
財務省が税金による東電救済案に強く反対し、
最終的に国が賠償資金を一時的に立て替え払いするものの、
東電が後で分割返済する案で決着した経緯がある。
ところが実際に成立した法律をみると、驚いたことに、
東電は後で返済する必要がない資金を
国から受け取れるという内容の条文がしっかり書きこまれていたのだ。
それは原子力損害賠償支援機構法の第51条と第68条である。

〈 政府は著しく大規模な原子力損害の発生その他の事情に照らし、

機構の業務を適正かつ確実に実施するために
十分な負担金の額を定めるとしたならば、
電気の安定供給その他の事業の円滑な運営に支障をきたし、
または利用者に著しい負担を及ぼす過大な額の負担金を定めることとなり、
国民生活および国民経済に重大な支障を生ずる恐れがある
と認められる場合に限り、機構に対し必要な資金を交付することができる 〉
(第68条、同)
〈 政府は機構が特別資金援助に係る資金交付を行う場合、
国債が交付されてもなお資金不足が生じるおそれがあるとき、
予算で定める額の範囲内において、機構に対して必要な資金を交付できる 〉
(第51条。一部略)


ようするに51条は
「政府が交付した国債だけで資金が足りなければ、現金も機構にあげますよ」
という規定である。
68条は
「東電が後で返済に充てる負担金が重荷になったら(その結果、機構が資金不足になったら)政府は機構に必要な資金をあげますよ」
という規定である。
51条は機構が東電に資金援助をする前の段階で政府が機構に資金交付する規定であるのに対して、68条は機構が東電に資金援助した後、返済段階になって重荷になれば機構に資金交付するという規定である。事前と事後の違いと言ってもいい。

あっさり認めた担当者

問題は受け取った現金を後で機構は政府に返済するのかどうか。私は政府の原子力損害賠償支援機構担当室に見解を聞いてみた。
枝野幸男前官房長官が8月10日の会見で「担当室は内閣府に設置する」と発表していたので、初め内閣府に電話してみた。すると交換手が「担当室は経産省にあります」という。それで経産省に電話すると、電話は先の資源エネ庁・電力ガス事業部の政策課に回された。ここに担当室があった。
 長谷川: 51条と68条に基づく政府から機構への資金交付について、機構は後で政府に返済する義務はあるのか。
担当者: (即座に)ありません。
あまりにあっさり認めたので、いささか拍子抜けした。だが、それはそうなのだ。そんな返済規定は法律のどこにも記されていない。条文がすべてである。
これではっきりした。機構が政府に返済するのは、交付された国債を現金化した分だけである(第59条)。事前あるいは事後に現金で受け取った分について返済する必要はない。
すると、次の問題は東電が受け取った資金を機構に返済するかどうかになる。
カネは政府→機構→東電へと流れている。したがって、返済についても東電→機構→政府と流れなければショートしてしまう。東電が機構に返済しなければ、機構は政府に返済する原資がないのだ。



言い換えると、機構が国債を現金化して立て替えた分と初めから現金で渡した分を、東電はぜんぶ耳をそろえて返すのかという問題である。そこで聞いてみた。
長谷川: 国債を現金化した分について、機構はきっちり政府に返済する規定(第59条)になっている。だから東電もそれは返すのだろう。だが、現金で東電に渡した分はどうなるのか。東電はそれも返済するのか。
私は国債分と現金分をしっかり踏まえたうえで返済計画がたてられるものだ、とばかり思い込んでいた。ところが、そうではなかった。担当者の答えは思いがけないものだった。
担当者: 返済というのは、東電が機構に支払う特別負担金の話ですね。それは機構の運営委員会が決める枠組みになっている。その際、国債を現金化した分や現金で渡した分をきっちり分けて負担金額を決めるようにはなっていない。
長谷川: ということは、機構は国債分も現金分も東電に渡す場合があるけれど、返済の方はカネの出所と切り離して、まとめて機構が決めた特別負担金という形で支払う。そういう理解でよろしいか。
担当者: その通りです。
話の途中から合点がいった。つまり、こういうことだ。東電は「これだけが国債分、残りは現金分」などと機構に返済するわけではない。ぜんぶ一緒くたにして「特別負担金」を機構に支払う。法律はそういう「建てつけ」になっているのである。
言い換えると、政府→機構というカネの流れは国債と現金がしっかり区分けされているが、東電→機構の返済になると「特別負担金」というフィルターを通して「ごちゃ混ぜ」になる。しかも機構→政府の返済は国債分を返すと決まっているが、現金分は返す必要がないのである。

完済するまで125年かかる

これは巧妙なトリックと言っていい。
政府が機構を通して東電に出すカネは不足がないように、しっかり現金を手当てする。その一方、機構から返してもらうカネは国債分だけで、そもそも現金分は要求していない。これでは東電が機構に現金分まで返済するはずがないではないか。そのために特別負担金という「カネのろ過装置」が用意されていた。まさしく東電には「タダでもらえる資金ルート」があったのだ。
そもそも東電の特別負担金については、次のように定められている。
〈 特別負担金額は認定事業者の収支状況に照らし、電気の安定供給その他の原子炉の運転等に係る事業の円滑な運営の確保に支障を生じない限度において、認定事業者にできるだけ高額の負担を求める 〉(第52条、同)



つまり、東電が「電気の安定供給」や「事業の円滑な運営」に支障があると理由を挙げれば、いくらでも負担金の金額をまけてもらえるのである。
10月7日付けコラムで指摘したように、金額を決める機構の運営委員会が経産省・東電に都合がいい調査報告をまとめた当事者たちで構成されているのだから、初めから東電に厳しい結果になるわけもない。
調査報告がまとめた4兆5000億円の賠償負担に加えて、除染費用が前回コラムで指摘したように、少なくとも8兆円とみれば計12兆5000億円。当初、報じられたように東電の返済(特別負担金)が年1000億円程度とすれば、完済するのに125年かかる計算である。こんな話をだれが信用するだろうか。
こうして政府が決めた東電の賠償枠組みをあらためて検証してみると、国民負担の最小化という話は支援機構という官僚お得意のプレハブ住宅に交付国債と現金、それに特別負担金を仕掛けを埋め込むことで、東電に兆円単位の税金を流し込む「壮大なデタラメ」だった。
東電は政府から受け取った資金の相当部分を結局、返済しない。それは国民負担になる。野田佳彦政権は9兆円の復興増税を国民に押し付けながら、それ以上のカネを東電につぎ込んで銀行と株主を守ろうとしているのである。

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