2011年10月9日日曜日

WEB書籍『原発と放射線 第3版』 真実を知り、自分の身は自分で守るしかない




真実を知り、自分の身は自分で守るしかない


 放射能に汚染された町も見た目は平穏ないつもの風景ですが、
見えない小さな銃弾に子供たちの小さな体は悲鳴をあげています。
このままなら数年後に犠牲になる子供と悲しむ親が確実に増えます。
子供たちを放射能の危険から守れるのは大人だけです。

 放射線など専門家以外は知らなくても困らない時の方が
幸せでした。
でも私たちは放射線と関わらずには暮らせなくなりました。
それなのに、政府と学者は本当のことさえ話さない。
政府と学者もいつかは良心に目覚めるでしょう。
こんなマスコミの報道もいつかは正されるでしょう。
しかし、それは大きく被害が広がった後です。
待っていたら手遅れなのです。

 前半では放射線についてやさしく分かりやすく説明します。
科学が苦手でも理解できます。必要な数字もわずかです。
後半では自治体などの今の社会の現状について具体的に説明します。
放射線の知識を身に付け、政府や自治体の現状を知れば、
マスコミとネットの情報の真偽も判断できるようになります。

 第3版で全面改訂、Appendixも追加しました。
有益な情報を充実させて更に分かりやすくなりました。
子供たちの未来のために全国のパパママに贈ります。


 文中のリンクは動画や参考資料です。

 Twitter       @nakayamamikio
 ブログ(Approaches) http://approaches.blog135.fc2.com/



【前半】

情報戦争


 今の『日本はひとつ』ではありません。
日本で起きていることは情報戦争なのです。
しかも、国民の生命、子供たちの未来がかかっています。
すぐ影響があれば人は警戒できますが
放射線の影響は5年後10年後です。
だから安全と言われれば信じてしまい、
危険と言われても実感できません。
しかし子供たちにとって、
5年後10年後は人生の大切な時期なのです。

 ただちに健康に影響はないと言う政治家たちがいます。
ガンの死亡率が多少増加しても影響がないという学者もいます。
本当なのでしょうか。
予防接種の注射器と針の使い回しによる
肝炎感染、薬害肝炎、水俣病、血液製剤による薬害エイズ
を思い出してください。
どれも当初から危険性が指摘されていたのに政府は
長期間放置し続けました。

 一部の良識ある学者以外は、学者たちも政府に加担し続け、
テレビと新聞などのマスメディアも被害が拡大するまで
報道を避けてきました。
やっと報道されるようになった時には、
どれも多くの犠牲者が出た後でした。
社会問題になることが遅れたことで、
それまでの期間に関連企業は損失を逃れて
利益を得ることができました。
問題になった時には当時の政治家や経営者などの責任者は
すでにその立場にいませんでした。
犠牲者はいつも立場の弱い一般国民です。
このままなら原発事故による被害も同じ道を歩みます。
しかも被害はかつてないほどに大きくなる可能性があります。

問題になった時には

 政府・東電・学者の情報を
無批判に垂れ流すマスメディアに対しての
良識ある市民の戦いは子供たちを守るための戦いです。
まるで戦時中のような状況です。
過去と決定的に違うことは、
市民にはネットメディアという武器があることです。
基本的な知識を身につけて、
情報を判断し、
子供たちを守る行動が必要です。


知識で子供を守る


 専門的なコメントをする人の多くは原子力と放射線の研究者です。原子力と放射線の研究で生活してきた人たちだからかもしれませんが
原発推進の立場からの発言が多く、
あまりに安全性を強調しすぎています。

 多くの人が
子供のために真剣に放射線を学び市民科学者に育っています。
専門外の人もこの状況を何とか打開しようと
必死に学んで行動しています。
しかし、
ほとんどの原子力学者と放射線医療学者には
その切実な声に真摯に耳を傾ける気持ちを感じられません。

 市民の心配を素人の戯言のように扱う。
他分野の人の意見には、専門外だからと耳も貸さない。
そして
「原発は原子力の専門家に任せておけ、
医療は医療の専門家に任せておけ、
知らないくせに口を出すな」
、まるでそんな裸の王様の言葉が聞こえてくるようです。

 でも現実は正反対です。
私たちは彼らがあてにならないから困っているのです。
今まで絶対安全だと言っていた原発で大事故が起きたのに、
原子力学者は現実を直視せず、事故の収束さえできない。
放射線医療学者たちは、
日本全国の
水と空気、
海と大地
に深刻な放射汚染が広がっているのにそれを防ごうともしない。
そして原発は安全だ、放射能は安全だと宣伝する

 これでは多くの国民が疑心暗鬼になるのも当然です。
このままでは誰もが食べ物と水、空気と土壌に不安を感じつつも、
危険の有無が判断できず、適切な行動がとれません。
原発事故は今も被害が進行中で予断を許さない状態です。
それなのに正確な情報が控えられています。
風評という言葉も独り歩きしていて
本当に安全でない場合にそれを言うことさえも
風評扱いされています。
正確な情報とそれを判断する知識をもとに
危険を避けるからこそ安全になるのであって、
安易に安全だと思うことは逆に危険な結果を生みます。

 マスコミは、
政府の言う風評被害をそのまま無批判に使っています。
本当の加害者は別にいるのに
心配して買わない消費者を加害者のように扱い、
被害者は生産者だけのように思わせることで、
本来ならば協力し合うべき両者を分断させているのです。
でも実際に起きていることは放射能被害です。
被害者である生産者と消費者は共に手をつないで、
加害者である東電と政府に、
被害補償と放射能拡散の防止、
暫定基準の見直しを求めて、
子供たちを守りましょう。

 私は原子力の研究者ではありませんが、
だからこそ客観的に見えることがあります。
物理学を専門として学んだので
原子力を含めて自然科学全般に詳しく、
大学では、生活者の視点で文系の学生に物理学を教えています。
自然科学は技術者や研究者のためのものではありません。
全ての人の生活に密接に関連しています。
ここでは自然科学が得意でない人にも分かりやすいように、
放射線の本質を端的に説明します


原発は必要か


 電力需要をまかなうには原発は必要だとされて
その数は増え続けてきました。
1988年、忌野清志郎はSUMMER TIME BLUESで
『37個も建っている原子力発電所がまだ増える』と歌っています。23年後の今54個です。
将来、原発を減らしたい、なくしたいと思うなら
節電することも必要です。
そうすれば、やがて原発をすべて止めても大丈夫になるでしょう。
そのためには技術も必要ですが技術だけではできません。
本気での節電が必要なのです。
すでに4月時点で関東は節電で昨年の70%、
今の少ない供給能力でもその80%しか使わなくなっています。

 街も店も無駄に明るすぎると感じるようになりました。
工場の機械に電気は必須ですが、
そんなに店や家庭が明るい必要があるでしょうか。
そんなにデパートや電車のエアコンを
強くする必要があるでしょうか。
昼間に駅のホームに照明が必要でしょうか。
節電とは、
何を使って何を控えるのかという
優先度をみんなで考えて実行し続けることです。
今こそ日本全国で節電に真剣に取り組み、
国民全体で原発とエネルギー問題を考え直す時期です。

 以前から多くの原発では度重なる放射能漏えい事故が起こり、
そのたびに隠ぺいが繰り返されてきました。
今回の事故でも国民の生命に関わる重要な情報が
政府と東電によって隠されて多くの人たちが
不本意な被曝をさせられました。
東東北と関東の5千万人が放射能の深刻な影響を受けて、
4カ月過ぎた7月になっても原発は事故当時の200万分の1、
それでも240億ベクレルもの放射能を毎日撒き続けています。

 私たち大人は
原発という人類史上最悪の欠陥商品を作ってしまったのです。
そして何の罪もない子供たちを犠牲にしています

 5月23日の参議院行政監視委員会は
テレビ放送されませんでしたが、Ustreamで生中継されました。
京大の小出裕章氏、
芝浦工大の後藤政志氏、
神戸大の石橋克彦氏、
ソフトバンクの孫正義氏が出席して
日本の将来にとって重要な話し合いがされました。

 その中で石橋氏は
「日本列島は地球上でもっとも原発建設に適さない場所」
「日本の原発は地震付原発」
「原発、たかが発電所です。
発電をするために何もこんな危ない物を頑張って
運転することはない」
「大津波をかぶる恐れのあるような場所で原発を運転すること自体、
正気の沙汰ではない」
と述べています。
原発作業員も被曝と隣り合わせで
被曝基準を厳しくすると仕事にならない。
原発そのものが非人間的な発電所だったのです。
このような良識ある学者の声を無視し続けた結果が今の悲劇です。
ぜひ後でご覧ください。

2011.5.23参議院行政監視委員会http://www.ustream.tv/recorded/14906087

 原発は地震でも安全に設計されていて、
万が一でも安全停止できると信じ込まされてきました。
でも現実には10万人以上が故郷を失い、
半径20km圏内だけでも6百平方kmが住めなくなりました。
さらに東北と関東の広大な大地、豊かな海も汚染されました。

 それなのに今まで絶対安全だとしてきた原子力学者は
誰も責任を取りません。
それどころか原子力学者の東工大の澤田哲生氏は7月に
「世界一の技術力と運営力をさらに磨け」
という記事をVoiceに掲載し、
「ホットスポットは低いレベル同士間での比較」、
「メルトダウンは空騒ぎである」
と述べています。
安全だと断言していて、いざ実際に事故が起きたら開き直りです。
技術だけが問題ではなく、関わる人間こそ問題です。
原子力学者の技術力も人間性もこの程度なのです。

 これほどの大事故が起きても、
東電と政府は真実を隠して国民に大量の被曝をさせて、
医師と学者たちは100ミリシーベルは安心だと公言し、
放射線は健康に良いと言う学者さえいます。
彼らの説が間違いで数年後に被害が出ても
彼らは責任を取る気はありません。

 より信頼性の高い原発を作ろうという人たちがいますが、
実際に爆発したのに、
『より信頼性の高い』
などとよく言えるものだとあきれます。
これだけの事故を起こしても平然としている原子力学者、
原子力安全保安院、東電、政府など、
自分たちの失敗の反省すらできない人たちに、
値段の高い原発なら安心だと言われても、
まったく信用できません。これこそ更なる利権です。

 本当に放射能が安全で安心なら、
格納容器のないローコスト原発でも作れば安上がりです。
近くに原子力学者、医療学者、政治家が住むかもしれません。 
 参考に、下記は孫氏の記者会見

 参考に、下記は孫氏の記者会見

 フリージャーナリスト上杉隆氏による原発事故報告


放射線とは何か


 原子は小さくて見えませんが、
私たちのまわりの物質はすべて
水素や酸素、炭素などの92種類の小さな原子が
大量に集まってできています。
原子は互いにつながって、
水やビタミン、生命を担うDNAなどの多様な分子になります。
通常、原子は安定しているので別の原子になりません。
普通は水素が酸素になることはないのです。
しかし原子力発電所では原子の種類を変化させることで、
原子の持つ力である原子力を利用して
大量のエネルギーを作り出すことができます。
その時に
『放射性物質』
と呼ばれる不安定な原子が多量に生成されます。
放射性物質が原子炉の中に閉じ込められている場合は安全ですが、
今は原子炉の外に大量に漏れています。

 不安定な原子の集まりである放射性物質は、
高速で飛ぶ銃弾のようなものを発射してから
別の安定な原子に変わります。
この時に飛ぶ銃弾が『放射線』です。
小さい原子一つ一つの全てに銃弾が入っているので、
たとえほんのわずかな量の放射性物質であっても、
そこから発射されるタマ(放射線)は
数千億をはるかに超える膨大な数になります。
ものすごい数のタマが適当な方向に次々と飛び出すのです。

 すなわち放射性物質とは、
タマが入っているのに引き金がゆるんでいて勝手にタマが発射される壊れた拳銃が大量に集まっているようなものなのです。各原子に仕込まれているタマの数は、放射性物質の種類によって1つの場合もあるし2つなどの場合もあります。このタマこそが放射線で、タマの種類には4種類あります。小さい順で、ガンマ線、ベータ線、中性子線、一番大きいのがアルファ線と呼ばれています。大きいタマの方が危険なのですが、小さなタマでも強力なエネルギーを持っているので、ガンマ線だからといって安心なわけではありません。なおレントゲンで使うX線は、出方が違うだけでガンマ線と同じものです。どのタマも材料は電子など、どこにでもあるものですので、止まってしまえば全く安全で何の影響もありません。放射性物質も、仕込まれたタマをすべて発射してしまった後は安全な物質に変わります。

 『放射性物質』の原子たちは、そのタマ(放射線)をいつ発射するのか。その時期の目安が『半減期』です。半減期の間に全体の半分の原子がタマを発射し終わるのです。それは自宅でポップコーンを作る様子に似ています。トウモロコシが徐々に破裂して半減期の間に半数がポップコーンになって、まだ残り半分はまだトウモロコシのままで残りはその後に破裂します。ただしポップコーンと少し違うのは、その後は半分の半分の半分といつまでも続くことです。まだタマを発射していない放射性物質は半減期の2倍の期間で4分の1になり、3倍の期間でさらに半分の8分の1まで減ります。半減期の10倍の時間で千分の1になります。

 さらに放射性物質の平均寿命というものがあります。放射性物質はさっさとタマを発射するのもあり、遅くなってから発射するのもあります。そしてタマを発射し終わると安全な物質に変わり放射性物質ではなくなります。安全な物質に変わるまでの平均期間を平均寿命といい、数学的に平均寿命は半減期の1.4倍です。

 セシウム137の半減期は30年、セシウム134の半減期は2年です。ヨウ素131は半減期が8日と言われていますが、実際はヨウ素は2つのタマを持っているので、半減期8日で最初のタマを発射してからもまだ不安定な状態が続き、その後に2個目のタマを半減期12日で出します。危険なのはその時に飛びだす放射線というタマに体が当たってしまうことなのです。

 放射性物質が放射線を出すことや、放射性物質が持つそのような能力を『放射能』と呼ぶことがあります。本書でも時々、放射能の用語を使うことがあります。


暗算で年間のミリシーベルト


 放射線が健康被害に与える影響は計算で出ますが、発ガンの増加率も広島原爆や原発事故、原発作業の犠牲者のデータを基にしているので精度は十分ではないのです。例えば0.55%発ガンと計算できても、実際は0.5%かもしれないし0.6%かもしれないのです。良心的な学者でも放射線のベクレルやシーベルトを考える時に難しい理論を使った細かい数字を示しがちです。専門家しか知らなくていいのならそれでいいのですが今は国民みんなが知らなければいけない状況です。

 みんなが知りたいことは、普段の環境と食生活の安全性を自分で判断するための基本的で分かやすい情報です。それに私たちは放射線量を管理されて生活しているわけではありません。ですから、細かすぎる数値はあまり意味がありません。だから日常生活では暗算ですぐ分かる概算が役立ちます。

 まず大切なことは放射線の健康被害への影響を示すための用語の意味を知ることです。覚えることは少しです。放射線量にはシーベルト(Sv)という単位を使います。括弧内のSvは短く省略して書く時の方法です。1シーベルトの1000分の1を1ミリシーベルト(mSv)と呼び、さらに1ミリシーベルトの1000分の1を1マイクロシーベルト(μSv)と呼びます。小さな量を示すミリとマイクロを短く書くためにはmとμの記号を使います。

 GrやCPMにも惑わされずさっさとμSvに換算します。Grはグレイと読み、中性子線とアルファ線では5倍~20倍の計算をしますが、今心配なガンマ線とベータ線の場合にはグレイはシーベルトとまったく同じです。意地悪くnGrと書いてあることもありますが、nはナノと読み1000nGrが1マイクログレイ(μGr)なのです。だから、200nGrなら0.2マイクログレイ(μGr)です。すなわち0.2マイクロシーベルトとなります。CPMは120で割れば概算できます。例えば、600CPMなら5μSvです。

 報道される各地の放射線も線量計で測る数値も、1時間あたりの数値がマイクロシーベルトで示されます。安全性の判断には1年間の数値が必要です。1年は365日×24時間で約1万時間なので1万倍すればいいのです。しかしミリはマイクロの1000倍なので、下記の簡単な暗算で1年のミリシーベルトになります。

 1時間のマイクロシーベルトの数字を10倍すれば、1年間のミリシーベルトが概算できるのです。例えば、1時間3マイクロシーベルトなら数字を10倍すれば、1年間30ミリシーベルトとなります。1時間0.5マイクロなら、10倍して年5ミリシーベルトになります。

 放射線量を知るには個人で線量計を持たなくても、自治体や市民団体がデータをネット公開しています。


放射線と健康被害


 銃弾のような放射線は体の細胞にあるDNAを傷つけます。でも当たる数が少なければ、健康には影響がありません。自然界にも放射線はあります。太陽からは光だけでなく放射線も来ます。身の回りの自然にも微量ですが、放射性物質が含まれています。しかし、自然界にある放射線の量なら危険ではありません。

 原子の大きさはとても小さいので、1ミクロン程度の小さな埃の中にも約1兆個の原子があります。だからわずかな放射性物質から大量なタマが発射されます。

 大人の体は約60兆の細胞からできています。もしも、放射性物質から出た大量な放射線が体に当たり、60兆個の細胞すべてを傷つける場合を考えてみます。ちょっと恐ろしい感じですが、すべての細胞を平均1回傷つけてしまう放射線量が1ミリシーベルトなのです。

でも実は年1~2ミリシーベルト程度の放射線は私たちが日常生活で浴びている自然放射線なのです。1年間に1ミリシーベルトの放射線を全身で平均して浴びても、それぞれの細胞は年1回しか傷つきません。2ミリシーベルトだとしても年2回なので修復に6カ月もの余裕があります。私たちの自然治癒能力によって、自然放射線によるダメージは問題なく修復されます。

 でも自然放射線の10倍や100倍も浴びたら細胞は修復できなくなることがあります。一般に5ミリを超えた辺りからリスクは高くなります。年1ミリでも全身に平均にではなく体の一部に集中して浴びれば、特定の細胞だけ何十回も傷つくので修復が困難になります。

 また、浴びる量は同じでも、放射線は長期間で少しずつ浴びることと、短期間でまとめて浴びことは同じではありません。例えば毎日1回づつ1年間、腕を手でたたき続けると合計365回で普通は大丈夫ですが、365回連続で腕をたたいたらケガをします。放射線もこれと同じで、ダメージの間隔が長ければ自然治癒できても連続でダメージを受けると修復できなくなります。

 もう一つ大事なことがあります。細胞にあるDNAは2本のペアで出来ているので、1本だけの損傷なら修復できる可能性は非常に大きいです。しかし短期間に大量の放射線を浴びてしまうと、偶然に2本のペアが両方とも同時に損傷してしまうことがあります。この場合、修復が難しくなって発ガンのリスクが高まります。

 以上のことから、たとえ1ミリシーベルトでも短期間で一気に浴びれば、1時間0.1マイクロシーベルトの割合で年間合計1ミリシーベルト浴びることとは比較にならないほどDNAが傷つきます。もし年間100ミリシーベルもの放射線を浴びればDNAへのダメージはかなり大きく、ガンになる可能性が高くなります。そして発病時期は多くの場合、5年後や10年後です。


外部被曝と内部被曝


 原発事故で放射性物質が広範囲にばら撒かれ、今では地面や食べ物、飲み水にも放射性物質が含まれるようになってしまい、私たちは大気中以外からも放射線を浴びるようになりました。健康被害とは体が受けた放射線の総量で決まります。大気中や地面の放射性物質から放射線を浴びることが外部被曝です。吸い込んだり食べたりした放射性物質が体外に排出されるまでの間に体内から浴びるのが内部被曝です。内部被曝は発射された全ての放射線が至近距離で体内から当たるので健康への影響が大きくなります。

 風が吹けば地上の放射性物質は土埃とともに舞い上がり肺に吸い込まれます。特に子供は背が低いので大人より多く吸い込みます。肺に入った放射性物質は容易には排出されないので肺ガンの原因になります。また放射性物質の種類によっては筋肉や甲状腺など体の様々な場所に蓄積され、その部分の発ガンの原因になります。例えば子供の場合、放射性ヨウ素は甲状腺ガンの原因になります。

 国民の外部被曝と内部被曝を防ぐためには、汚染を特定の地域に封じ込めて拡散を防ぐことが基本です。例えば20km圏内で特に汚染がひどい原発敷地内に保管施設を作って運ぶ案が思いつきます。すなわち放射性物質を元々あった場所に返す方法です。

 しかし国は逆に、汚染を日本中にばら撒いて薄めようとしています。国交省はわざわざセシウム入りの汚染汚泥をコンクートの材料にするように業界に圧力をかけて全国の建築物を汚染させ、農林水産省は汚染汚泥を肥料にして全国のきれいな農地にばら撒かせています。瓦礫の汚染も日本中に広げられています。

 Appendixの『A.人為的な放射能拡散』で放射能拡散の全貌が分かります。

 さらに全国の子供の給食には意図的に東北と関東の食材が使われています。そして横浜の小学生は国の暫定基準の8倍を超える牛肉を食べさせられてしまいました。子供にはできるだけ安全な食べ物、安全な環境を与えるべきなのに、日本では子供たちをあえて被曝させる行為が国家的に平然と行われています。

 それでも保護者たちの声に押されて一部自治体は、不条理な国と県には従わず子供を守るという勇敢な決断をしました。子供を犠牲にする政府の指導に従うことよりも子供たちの安全を優先して給食を仕入れることにしたのです。

 福島県郡山市では子供たちの安全を心配して校庭の表土の除去を行いました。福島市が国と福島県の言いなりになって校庭の汚染を放置している中で、保護者に押されて、同じ市内でも良識ある学校は独自判断で放射能汚染表土の除去が行われています。しかし郡山市の学校も福島市の学校も汚染表土の処分場が決まらずに困っています。せっかく除去した汚染表土なのに、それを子供たちがいる学校の隅に置くなどという馬鹿な選択肢などあるはずはないのです。

 また広島大の田中万也氏と近畿大の山崎秀夫氏は「上下入替は有効」との研究をしています。そこまでして学校内に汚染土を置くことはありません。これでは子供の安全を配慮しているようにみせかけて、まるで汚染表土を子供に押し付けるための研究と同じです。山崎氏は「汚染土を別の地域に捨てるのは困難。他に方法はない」としています。これでは、みんなが嫌がるから子供に犠牲を押し付ける、弱い者いじめです。

 全国のパパママが真剣に子供たちの外部被曝と内部被曝を最小に抑えたいと望んでいても、国と自治体と学者は、それとは反対のことをしています。ですから、まずは知識と行動力で自己防衛するしかありません。


ミリシーベルトは被害者数



 ミリシーベルトの数字を見て危険性を判断できるようになれば、これからは断片的な報道に振り回されることなく自分で考えられるようになります。通常の自然界と同程度の放射線量なら問題ないので心配することはありませんが、それ以上ではミリシーベルトとは放射線が健康に与える影響です。

 端的に言えば『年間何ミリシーベルトという数値は、被曝した大人1万人のうちで発ガンする人数の増加』なのです。例えば100ミリなら1万人で100人発ガンします。発ガンによる死亡数は、低い被曝では治療で助かることがあるので死亡率は50%、高い被曝では100%になります。低い被曝とは一般には低線量被曝と呼ばれる100ミリシーベルト以下を言います。低線量被曝とはすごく高くはないという意味であり、実際は安全ではありません。

 そして100ミリシーベルトを超える放射線では、すぐに具合が悪くなるなどの短期的な影響も出てきます。250ミリシーベルトで白血球減少、1000ミリシーベルトで急性放射線障害などです。高線量被曝では、年5千ミリシーベルトを被曝すれば1万人につき5千人が発ガンします。高線量での発ガン後の死亡率は100%なので、5千人全員が死亡します。倍の1万ミリシーベルトならだれも助かりません。

 しかし100ミリシーベルト以下では短期的な影響がないのをいいことに『ただちに健康に影響はありません』と発言する政府を支えているのが、産科婦人科、小児科、放射線医療科の医師です。学会・医会の正式見解で一般国民100ミリ、乳児5ミリ、妊婦100ミリは安全としています。しかし自分たちの労働環境は放射線を扱う時には線量計を身につけて、妊婦は2ミリ以内で女性も安心して働けるのです。

 Appendixの『B.子供を守らない医者』に詳細。

 年100ミリは低線量なので1万人につき発ガンが100人(1%)で発ガン死亡は半数の50人(0.5%)増加します。すでに放射能汚染が広がっている東北と関東の人口は1万人の5千倍で5千万人もいるのです。もし年100ミリシーベルトの被曝をしたら発ガンは100人の5千倍で50万人となり25万人が死亡します。年20ミリの場合には1万人につき発ガンが20人で死亡が10人ですが、これも被曝者が5千万人なら発ガン10万人、死亡5万人です。政府基準で全国が汚染されたら被害者はその2倍を超えます。

 しかも上記は大人の場合です。子供の場合は成長過程で細胞が急速に増えるので大人よりも放射線の影響を大きく受けます。そのため子供の発ガン率への影響は大人の比ではありません。年齢にもよりますが、子供の発ガン率は大人の5倍近くになり、特に女児は男児の2倍近くの影響を受けます、胎児は妊娠の時期によってはさらに大きな影響を受けます。ですから子供たちを考えると被害者数はさらに膨らむのです。


暗算でベクレルと被曝量の換算


 食品の安全性についての政府の基準値は諸外国と異なっており、その名の通り暫定的に決めた暫定基準値なのです。そのために食品の安全性の不安が払しょくできず、生産者も消費者もみんな困っています。

 政府の暫定基準値は放射性セシウムでは500ベクレル/kgですが、これは1kgにつき500ベクレルという意味です。放射性ヨウ素は2000ベクレル/kgです。でも一般には1kgもの肉や野菜は食べないので、何グラム食べるかによって少しだけ計算します。例えば500ベクレル/kgの肉を100g食べる場合、分量は1kgの1割なので50ベクレルとなります。

 ベクレルの数値は1秒に飛び出すタマ(放射線)の個数を示しています。体内から当たるタマの総数は放射性物質の半減期と体外に排出されるまでの期間によります。1時間なら3600秒なので3600倍、1年間ならさらに1万倍のタマ(放射線)を体内から撃たれます。毎日の食事から取り込んだ放射性物質は体内に蓄積して排出までの間にさまざまな体内の場所を攻撃します。しかしこれもあまりに少なければ、自然界の放射性物質と同程度で心配はありません。

 食品が安全かどうかはベクレルをミリシーベルトにして判断します。ベクレルとミリシーベルトは暗算で簡単に相互に概算できます。ヨウ素なら一食のベクレルを50で割り、セシウムの場合はセシウム134とセシウム137の比率次第で50もしくは100で割れば年間のミリシーベルトです。安全サイドでは50を使います。

 この計算は本来は一食のベクレルからマイクロシーベルトを出す方法ですが、同じ食事を1年続けた場合の被曝量の方が食生活を判断できます。3食×365日が約千倍なので結果的にマイクロがミリになります。

 例えば500ベクレル/kgのセシウム入り牛肉200gを食べると、1kgの2割なので一食100ベクレルです。100を50で割ると2なので、この食生活は厳しくみて年間2ミリシーベルト相当の食事と概算されます。100で割ると小さめな数値として年間1ミリシーベルト相当の内部被曝に相当する食生活と概算されます。すなわちセシウム100ベクレルは年間1~2ミリです。

 逆に、食品摂取の許容被曝量のミリシーベルトからベクレルを出すには年間のミリシーベルトをヨウ素なら50倍、セシウムは慎重に考えて50倍するとベクレルが出ます。緩めで考えるなら100倍してください。

 例えば、食べ物の内部被曝を年間2ミリシーベト以内に抑えるためには、セシウムの場合は、安全サイドで50倍して一食100ベクレル以下の食事が必要だと分かります。100倍にすると200ベクレルです。すなわち一食のセシウムは100~200ベクレル以下です。

 各食品のベクレルとミリシーベルトが暗算できれば、次章の安全基準値を使って自分で判断ができます。

 ヨウ素131、セシウム134、セシウム137の中で、半減期8日のヨウ素131の影響は少なくなりますが、セシウムに関しては半減期30年のセシウム137だけでなくて、半減期2年のセシウム134も心配されています。半減期が短いのでセシウム134は5年~6年後には無くなりますが、それまでは注意が必要です。

 これからは自分たちの食べ物の安全性は自分たちで判断するしかないのです。なお内部被曝の健康被害はまだ不明なことも多いですし大気や地面からの外部被曝や、吸い込んだ粉塵による内部被曝もあります。なお内部被曝のことになると自然界の放射性カリウムを持ち出してセシウムは安心だという学者がいますが、ごまかしです。このことについて関心のある方には、Appendixの『C.カリウムの嘘』が役立ちます。

 以下に暗算方法の理由ついて説明します。特に気になる方以外は読み飛ばしてください。

 セシウム137は100で割ると1年間のミリシーベルトになりますが、セシウム134は50で割ると1年間のミリになります。一般にセシウム134とセシウム137の合計で数値が示されることが多く、各々の比率も明確でありません。5~6年後にセシウム134はなくなるはずですが、それまでは、慎重に考えて概算値は50がいいです。その後ならば安心して100が使えます。

 正確にはヨウ素は概算値の1.2倍、セシウム137は1.4倍です。セシウム134は概算値が正確です。例えば100ベクレルのヨウ素は50で割ると2ミリですが正確には2.4ミリです。100ベクレルのセシウム137は100で割ると1ミリですが正確には1.4ミリです。 (根拠 ヨウ素:2.2μSv、セシウム137:1.3μSv、セシウム134:1.9μSv、それぞれに×3食×365)


放射線の安全基準値


 世界の放射線量の平均値は2.4ミリシーベルトですが、日本は自然界からの放射線が年間1~2ミリシーベルトで平均は約1.5ミリシーベルトでした。世界の平均より1ミリも低かったのです。 自然界からの放射線とは元々自然にあるもので大気中、食べ物、大地、宇宙からの放射線があります。そして大気中の放射線は半分程度です。

 図は放射線科学センターの資料から抜粋した自然放射線の世界平均です。


 日本の大気中の平均値は原発事故以前には1時間0.05マイクロシーベルト(年0.5ミリ相当)で、空気のきれいな国だったのです。今は放射能汚染が全国に広がり、10倍100倍でも驚かなくなってしましました。 このままいったら風の谷のナウシカの実写版のようで怖くなります。右の図は文部科学省の資料による、原発事故前の都道府県別の自然放射線です。
 

 日本の年間1.5ミリの自然放射線は大気0.4ミリ、食べ物0.4ミリ、大地と宇宙0.7ミリですが、計算の簡易化のため大気0.5ミリ、食べ物0.5ミリとします。 長い間、私たちが暮らしてきた自然界の放射線量が1~2ミリなので、自然界から以外の放射線が年間で1ミリシーベルト以内なら自然界の放射線と足しても合計で2~3ミリ程度で大差ないことから、今の法律では一般国民の放射線の基準値を年間1ミリシーベルトとしています。これは法律であり、たとえ原発事故があっても、自然界から以外の放射線で一般国民に対して1ミリを超える被曝をさせてはいけないのです。

 自然界以外での一般国民の放射線の安全基準は、放射能に汚染された大地、大気、食べ物すべての影響の合計で年間1ミリシーベルト以下と決まっています。年間1ミリシーベルトを一生浴びた場合に生涯100ミリシーベルト程度になります。これが国民の安全を守るための基本であり放射線の安全基準値なのです。


暫定基準と安全性


 政府の基準は経済や社会的影響を優先して決めた暫定基準であり、安全基準ではないことに注意が必要です。まず国民全員の被曝量の暫定基準を安全基準値の20倍から100倍と定め、子供20ミリシーベルト大人100ミリシーベルトと決めました。


飲み物と食べ物の暫定基準は右の図です。飲み物はWHO基準の10倍以上で原発排水の基準さえ超えています。食べ物はセシウムがコーデックス基準の5倍、ヨウ素は20倍です。3月11日以前の日本ならば自国の輸入規制さえパスしない数値です。


 図の出典は@kingo999さんの下記ホームページです。
  http://kingo999.web.fc2.com/kizyun.html

 政府と地方自治体は子供たちの命を犠牲にしてまでも、経済の方を重視しているのです。他国にも敬遠され、緩い基準は経済的にも逆効果になっています。この基準さえパスすれば基準値ぎりぎりの食品も流通するので国産へ不安が増しています。世界各国との基準の比較で緩いと言われる米国などの例が引き合いに出されことがありますが、現実に原発事故で多くの食品が汚染されている日本とは状況が異なります。

 このままでは安全な食べ物さえも売れなくなってしまい生産者も困っています。無策な政府の暫定基準と、従順なだけの地方自治体の判断は、政府と東電以外だれも幸せにしません。適正な基準にすれば消費者と生産者が安心できるし国民の安全と日本の経済にとっても有益です。でも、政府と多くの自治体はそんな事さえ考えられないほどに能力が低下しています。解決するためには生産者と消費者が共に協力して、適正な基準を要求していくしかありません。

 原発事故の影響による放射線の増加量は法律の安全基準に従って年間1ミリまでなら安心です。ただしこれは外部被曝だけではなく内部被曝の影響も考えた放射線量です。土埃を肺に吸いこむことは配慮せずに、仮に外部被曝と内部被曝でそれぞれ半々と考えると、0.5ミリが大気の増加分、0.5ミリが食べ物の増加分になります。

 日本で、これからも安全に暮らすための生活環境を考えてみましょう。大気の放射線は自然界0.5ミリ+原発由来0.5ミリを合計して年間約1ミリなら安全です。これは1時間0.1マイクロシーベルトの大気に相当します。食べ物の放射線も自然界0.5ミリ+原発由来0.5ミリで年間約1ミリシーベルトなら安全です。セシウムで食べ物の1ミリシーベルトは、セシウム134が多いかもしれないと慎重になるならば50倍にして一食50ベクレルの食生活に相当します。

 年1ミリ~5ミリの範囲でのリスクについては判断が難しいですが、年5ミリシーベルトが放射線管理区域と原発労働者の労災認定に相当することから、被曝量が年5ミリを超えるとリスクが高まると考えられます。

 少し慎重に考えて自然界と合計で5ミリとまでとしてみます。自然界は2ミリシーベルト程度なので、この場合の原発由来は年3ミリになります。それを半分ずつ割り振って大気中1.5ミリ、食べ物1.5ミリとします。 その場合は大気は自然0.5ミリ+原発1.5ミリで年間2ミリシーベルト。すなわち1時間0.2マイクロシーベルトです。食べ物は自然0.5ミリ+原発1.5ミリで年間2ミリシーベルト。セシウムでの安全サイドの計算は50倍で一食100ベクレルの食生活となります。

 内部被曝でカリウムの話を持ち出す学者がいます。それに騙されないために、第3版で『C.カリウムの嘘』を追記しました。Appendixも読んでみてください。


外部被曝と安全性


 東北と関東では日頃から大気の放射線量の情報を入手して自己管理するとともに食生活への注意が必要です。少しくらいは多くても問題はありませんので、あまりに神経質になりすぎる必要はありません。ただし子供の食べ物には気をつけてください。

 大気中の放射線については、各自治体の情報と、群馬大学早川由紀夫氏作成の放射能汚染地図が参考になります。


 図の出典は『早川由紀夫の火山ブログ』です。

 早川由紀夫氏の地図は全体的な傾向を見るのにとても役に立ちます。ただし実際には同じ地域内でも線量にはばらつきがあり、線量の低い場所とホットスポットと呼ばれる局地的に線量が高い場所があります。地元の線量を知るためには、特に個人的に線量計を買う必要はなく、普通は自治体や市民団体などが測定しているデータをネットで入手すれば十分です。もし線量計を購入する場合には製品によって精度にばらつきがあるので事前によく調べてからの方がいいです。

 大気中の放射線量が分かったら『暗算で年間のミリシーベルト』で暗算します。例えば1時間0.2マイクロシーベルトなら数字を10倍して年間2ミリとなります。これで自分の住んでいる地域の安全性を判断することができます。いずれにしても食べ物からの内部被曝には注意してください。また今せっかく汚染が低くても、汚染肥料やコンクリ、汚泥によって汚染が進む可能性があるので自治体と企業の対応にも注視が必要です。

 線量が1時間1マイクロシーベルト以下の場合には、下記の分かりやすい簡単な方法で安全性をおおよそ判断できます。どのような対策が有効かも分かります。まずは自分の地域の1時間当たりの線量を調べて、その数値が事故前の0.05マイクロシーベルトとほとんど同じか0.1未満なら緑、0.1~0.2程度は青、0.25以上を黄、0.5以上を赤と色分けします。

 緑と青でしたら外部被曝は年2ミリ以下なので外部被曝はそれほど心配ありません。むしろ、食品などからの内部被曝を注意することの方が効果的です。

 黄ですと外部被曝だけで年2.5ミリ以上となりますので、内部被曝を加えると年5ミリを超える可能性があります。そのため自宅や学校、公園など子供たちがよく行くところの線量が高いならば除染が効果的です。ただし安易な除染は要注意です。特に除染の際に、土埃を吸うことのないように細心の注意が必要です。

 赤の地域は外部被曝だけで年間5ミリシーベルトを超える可能性があります。これは一般の人の立ち入りが制限される放射線管理区域(年間5.2ミリ以上)となります。さらに原発労働者の労災認定(年間5ミリ以上の被曝での白血病発症)に相当する被曝量です。それでも、現在の政府は法律を無視して現状を放置していますので、自己防衛をするしかありません。もし可能ならば子供については一時避難も選択肢に入れて検討することが必要です。

 原発事故後の福島原発の収束もできず、国民に大人100ミリ子供20ミリを強引に許容し、大気中放射能汚染の垂れ流し、海洋汚染、土壌汚染の放置、汚染汚泥のコンクリートへの利用、食べ物の暫定基準など、日本の政府と自治体の対応はあまりにも無知で怠惰です。関西や九州にも放射能汚染はばら撒かれ続けているので、東北と関東だけでなく、近々日本全国が同じ状況になるのも時間の問題です。

 ところで雨が降った時に放射線が高くなることを気にする人が増えてきました。でも普通の雨での空間線量上昇は自然現象なので安心です。健康に影響ありません。自然界のラドンから次々と生まれる半減期20分のビスマスが空気中にいつもあって、別名ラドン娘と呼ばれています。これは大気中の自然放射線で日本では0.05マイクロシーベルト程度です。空気中のビスマスが雨に含まれて落ちてくるので、大気の放射線は一時的に0.05マイクロシーベルト程度、上昇します。半減期20分のビスマスは1時間で10分の1になりますので、雨がやんで1時間後に線量は下がります。

 3月21日に東北と関東に大量のセシウム雨が降りました。その結果広大な地域が汚染され、各地にホットスポットが出来ました。このように放射性セシウムが含まれる雨が降ってしまった場合には、雨がやんだ後も線量は下がらなくなります。なぜなら半減期がセシウム134は2年、セシウム137は30年もあるからです。


医療と原発作業者


 治療のための診断で使うCTスキャンや放射線治療については病気のリスクとの比較で実施されるものです。健康な人を切ることは許されませんが手術でおなかを切るのは病気を放っておく方が危険だから許されていることと同じです。なお医療行為の放射線量は体の場所にもよりますがレントゲン検査が1回0.1ミリシーベルト、CTスキャンは1回5ミリシーベルト程度です。

 医療と原発を比較する学者には騙されないでください。放射線治療は病気を直すためであり、CTスキャンや胃のレントゲンによる診断のリスクがあっても、治療や病気の早期発見という遥かに大きい利益があるのです。これを医療行為の特例といいます。しかも放射線量も管理しながら行われています。

 原発の作業者の基準は一般国民とは違います。作業者は年間20ミリシーベルトを基本として、5年間100ミリシーベルト以下(年間20ミリシーベルト相当)かつ年間最大50ミリシーベルトを超えないことになっています。ただし原発事故の緊急時には特例として年間100ミリシーベルトとなっています。すなわち作業者は測定器をつけて細心の注意をはらいつつ、仕事としてリスクを背負って危険な作業をしているのです。

 女性職員は少し厳しくして3ヵ月で5ミリシーベルト以下(年間20ミリシーベルト相当)かつ妊娠期間は1ミリシーベルトが基準となっています。また、東電で働いていても一般社員の基準は一般国民と同じ年間1ミリシーベルトです。このことからも現在の一般国民に年20ミリ、年100ミリが異常だと分かります。

 実際に、原発作業関係の東電女性2名が3ヵ月5ミリシーベルト超えて厳重注意を受けました。これは女性作業者の基準の年20ミリ相当を超えたからです。5月25日には原発作業者でない東電社員が一般人の被曝限度(年間1ミリシーベルト)の3倍の3ミリを被曝して東電が原子力安全保安院から測定器とマスクの不備で厳重注意されました。これは一般国民の基準1ミリを超えたからです。作業者以外に、年1ミリを超える被曝をさせるのは法律違反なのです。

 浜岡原発勤務だった嶋橋伸之さんは作業者の一般の基準を正しく守り81年から8年間勤務して合計50ミリシーベルトの放射線を被曝した結果、慢性骨髄性白血病により29才で死亡しています(94年労災認定)。原発作業者にはこのような人が大勢います。命を削ってまでする危険な仕事が日常的に行われている。こんな原発作業者の扱いに非人間的な面を感じます。その母親が今回の原発事故で子供の20ミリ撤回を訴えています。『年7㍉シーベルトの被曝で息子を失った母』の声を聞いてください。



確率と統計の違い


 なぜ市民と作業者は基準が違うことが許されているのでしょうか。もちろん作業者は危険覚悟でしているという面もありますが、確率と統計の違いがあるのです。

 たとえば、このままでは余命が短い重い病気の人がいて手術の成功確率95%だったとしたら、それほど心配ないと安心しつつ危険を承知で手術を受けるでしょう。原発の作業者が年間20ミリシーベルト浴びるとして発ガン率は0.2%です。確かに危険な作業だが確率的に99.8%は安全なのです。年間100ミリシーベルト浴びるとして、発ガン率は1%だから、もちろん危険覚悟ですが確率的に99%は安全なのです。

 それでもこんなに危険なのに、作業者の基準を厳しくすると原発での作業ができないのです。原発とはなんと非人間的な場所なのでしょうか。

 政府と多くの学者たちは、発ガンの確率が小さいから一般市民も年間100ミリシーベルトまでは安全だと言います。しかし、これは悪質なごまかしです。

 人を対象として確率で考えられるのはサンプルが少ないときだけです。多くの人が被曝した時は統計になるのです。被曝が原因の発ガン率1%の場合に、確率的には発ガンしない確率99%なので、作業者たちはほとんどの場合は誰も病気にならないかもしれません。

 でも被曝者が10万人いたら、統計的に1000人程度の市民や子供たちは必ず重い病気になるのです。人間が多いときは『確率』ではなくて『統計』になるのです。『確率』では安全かも知れなくても、『統計』では必ず犠牲者が出るということです。

 人間はサイコロではありません。一人一人が大事な命なのです。不特定多数への非日常的な被曝を放置することは、まるで戦時中の空爆時に、あなたに当たる確率は少ないから安全で安心だと言って、多くの市民を降り注ぐ爆弾と銃弾の中に出させることと同じです。安全・安心を強調することは国民を危険にさらすことになります。

 しかも、学者や政府は、将来多く人たちが発ガンに苦しんでも何の責任も取ることはないでしょう。なぜなら1万1千人が発ガンで苦しみ、統計的に1万人が被曝で千人が普通の発ガンだとしても、一人一人を個別に考えると、誰が被曝と関係のない普通の発ガンで、誰が原発の被曝による発ガンかを区別することは困難だからです。そもそも医師も政治家も学者も責任を取る気など、まったくあるようには見えません。しかも問題が顕在化する5年後や10年後に、その多くはすでに責任ある立場にはいません。


政府決定と怠惰な自治体


 現場作業員の年間100ミリシーベルトは緊急事態でだけ認められているきわめて危険な値なのに、政府は急遽その値を特別に250ミリシーベルトに上げることを決めました。その新基準に従って、すでに100ミリシーベルト以上浴びている28名の社員にさらに作業を続けさせることを決めた東京電力幹部、それを擁護する学者たち。福島原発では派遣、下請も含め多くの人が今も危険な作業を続けています。

 さらに現場作業員の数値を上げるだけでなく、全国民を作業者と同じ扱いにすることにしました。一般国民の安全基準は年間1ミリシーベルト以下が法律であるのに、政府自らが国の法律に違反する決定をしたのです。その決定とは(1)平常時で年間1ミリシーベルト以下ですが、今は(2)緊急事態時なので年間20~100ミリシーベルトを超えない、(3)事故収束後の復旧期は年間1~20ミリシーベルトを超えない、(4)子供に限っては緊急事態でも事故収束後と同じ扱いとして年間1~20ミリシーベルトとします。この決定は1億3千万の全国民に対しての政府決定です。この決定は国民の安全性をまったく無視して、ただ避難などの社会的影響を考えて決められたものなのです。

 「~を超えない」は「~以下」のことです。20~100ミリ以下とは努力目標の20ミリを併記しておくことで低い数値に見せかけているだけです。本当の政府決定は、100ミリ以下なのです。子供1~20ミリ以下も、1ミリは努力目標でしかなく本当は20ミリ以下です。

 この数値をよく見ると、子供の20ミリは通常時に原発作業者が危険覚悟で作業する基準と同じ、大人の100ミリは緊急事故での原発作業者の命がけの基準と同じです。政府は全国民に対して大人100ミリ、子供20ミリでしか責任を取らないのです。

 このような決定をICRP(国際放射線防護委員会)の権威を利用して安心させ、学者の権威を利用して安全ですとウソをつきます。そもそも各国政府の決定はICRPには縛られません。各国が独自で判断することなのです。チェルノブイリでさえ年間1ミリシーベルト以上の可能性があるなら自分の意志で「避難する権利」、年間5ミリシーベルト以上の可能性がある地区は「移住する義務」だったのです。

 子供の発ガン率は大人の5倍程度ですので、子供の20ミリは大人の100ミリと同じ被害があります。すなわち緊急時の上記決定は、実質的に全国民100ミリに相当します。

 緊急時といいつつ、すでに事故後6ヵ月以上過ぎています。あと半年なのか数年続くのかも分かりません。事故収束後の復旧期には、さらに数年から数十年もの間、20ミリまでの被曝を国民に押し付けるのです。

 政府決定に地方自治体は従います。遠い関西や四国、九州も他人事ではありません。汚染は日本中に人為的に広げられています。しかも近くに原発もあり、明日は我が身かもしれないのです。

 東電社員が一般人の被曝限度の年1ミリを超える被曝をして測定器とマスクの不備で厳重注意される一方で、国民は100ミリまで許容、子供は20ミリなのです。安全ならばなぜ東電社員が厳重注意されるのでしょうか。国民に対してこんな扱いが許されるのでしょうか。そもそも子供の原発作業者などいません。

 政府決定は結局、『年間1ミリシーベルトが基準値ですが、事故のため国民を特別に緊急事故時の原発作業者と同等にします。子供たちも含まれています。今は緊急事態ですから年間100ミリ以下なので国民の99%は安全です。子供は発ガン率が5倍ほど高いので5分の1の20ミリにしました。国民1億人のうち最大で発ガンは100万人、死亡者は50万人です。事故収束後は20ミリ以下なので毎年20万人までしか被害者は出ません。国家の健康に影響を及ぼすことはありません。各自が発ガンしない確率は99%なので安全です』ということです。国民を守る政府の決定とは思えません。まるで恐怖のSF映画。現実とは思えない光景です。

 福島市の保護者たちの声に対して、ようやく5月27日に文科省は1ミリを目指すとの文書を発表しました。しかし、もともと努力目標としての1ミリとなっていて、上限の20ミリも変更しないのですから実は何も変わっていません。まさに役人のごまかしでしかありません。しかも実際にすることは1時間1マイクロ以上の学校の除染についての財政支援でしかありません。時間1マイクロとは年10ミリ相当ですので、子供の健康を害して、法律にも違反しています。しかも内部被曝も考慮せず、取り除いた汚染表土は校庭の隅に山積みのままです。さらに問題なのは大人100ミリです。なぜなら大人と子供の数値を分けても子供は大人と暮らしているからです。ですから健康を守る基準は大人も子供も1ミリ以外はあり得ないのです。

 下記リンクは、福島県に『放射能低減とアドバイサー交代』を求める保護者たちです。国民の税金で働いているのに国民の命をないがしろにしている政府。県民の税金で働いているのに市民のために考えることも学ぶこともせず政府の指示でしか動けない行政です。

 福島県との交渉

 後半の章で詳しく述べますが、全国の他の自治体も同じようなことをしています。ぜひ後半も読んでください。子供たちを守るために何が必要なのかを考えるヒントになるはずです。
 

放射線と世界


 約46億年前に地球が生まれました。その頃は今より遥かに多くの放射性物質が地上にあり、宇宙からも大量の放射線が降り注いでいました。地球は生物にとって危険な場所であり、とても生命が繁栄できるような環境ではなかったのです。

 しかし幸いなことに、地上の放射性物質は半減期ごとに減少を続け地上は安全な場所に変わっていきました。上空では地磁気の出現によりオーロラを作るバンアレン帯が形成され、さらにオゾン層も出来たことで宇宙から地球に降り注ぐ放射線も大幅に減リました。そして自然界にはわずかな放射線だけが残りました。このような幸運に恵まれたおかげで今のように地上に多様な生命が繁栄することができたのです。

 他の動物より少しだけ頭がいい生物である人間は、より大量の電力欲しさに原子力発電所を作りました。原子炉内では放射性物質を燃料として消費するだけでなく、新たに大量の放射性物質が生成されます。何か起きても必ず安全に停止する、絶対に原発外には漏らさないとの約束をして40年以上の間、原子炉内で放射性物質を作り続けてきたのです。

 原発の中で作り出される放射性物質は放射性ヨウ素と放射性セシウムだけではありません。プルトニウムやストロンチウム、他にも数えきれないほどの種類の放射性物質が大量に原発で作られます。それらの呼び名は放射性xxと言います。このxxにいろいろな言葉が入り、どれも危険な放射性物質です。半減期も数日から長いもので数億年もあります。そしてひとたび原発の外に漏れれば放射能は生命を攻撃します。

 福島原発事故でばら撒かれた量はまだ2%程度であり、それだけでも広島原爆50個程度になります。さらに原子炉内にはその50倍もの放射性物質があります。たかが電力のために福島原発だけでも広島原爆の数千倍を超える放射性物質があり、日本全国54基の原発を合計すると広島原発の何十万倍を超える量になります。

 もし、日本の原発内の放射性物質がすべて外に出てしまったら、それだけでも地球上の生命をすべて滅ぼすほどの量なのです。それなのに世界中には日本の約10倍の原発があり、今も世界の放射性物質の量は原子炉の中で増え続けているのです。すでに今回の事故で、海に垂れ流した桁違いに膨大な放射能によって、多くの海洋生物が苦しみ死んでしまいました。原発とは人間の傲りが作り出したあまりにも愚かな自爆装置なのです。

 放射能は、人も犬も、猫も鳥も、魚も植物も、地球数十億年の歴史で誕生した貴重な一つ一つの生命を傷つけていきます。しかも電力のためだけでなく、その根底には原発利権という目の前にぶら下げられた人参があります。お金のために、子供たちの命を、地上の生命さえも消し去ろうとしているのです。

 絶対に原発外には漏らさないということも、何か起きても必ず安全に停止できるということもウソだったと分かった今、すべての原発はこれ以上の放射性物質を増やす前に停止するしかないのです。原発問題は温暖化問題などとは比較にならないほどに、はるかに大きな全世界的な環境問題です。世界から見れば日本は放射性物質を海と大気にばら撒く環境汚染国家、それどころか環境テロ国家なのかもしれません。


何が危険なのか


 放射性物質が10分の1になるのには半減期の3倍以上の期間が必要です。原子炉で作られた放射性物質が10分の1になるためには半減期2年のセシウム134で7年、半減期30のセシウム137なら100年かかります。もっと長い放射性物質もあります。

 地上に降り積もった放射性物質で被曝し、大気からも浴び、風で舞い上がった放射性物質を吸い込んで肺に入ればさらに危険性です。水道水や食べ物の放射性物質で内部被曝をします。テレビと新聞では大気中は安心だとか、食べ物の汚染は政府の基準値以下なので心配ないとか、母乳からの放射線も微量だから大丈夫だとか、土壌の汚染もまだ安全ですと報道します。でも体への影響はそれらすべての合計なのです。いったい、誰がその合計を測れるのでしょうか。

 危険なのは500ベクレルという暫定基準だけではありません。横浜市の給食での暫定基準8倍超のセシウム牛のように汚染されていても測定さえされずに流通するのもあるのです。これだけ大変な状況なのに、毎日の食品や食材にはベクレルの表示もありません。

 原子炉の中には他にもストロンチウムやプルトニウムなど、数えきれないほどのさまざまな危険な放射性物質があります。その福島原発は6カ月以上過ぎても、海と大気中に放射能を撒き散らかし続けていて、まだ復興計画さえ立てられない深刻な惨状です。

 私たち大人の大多数は、つい最近まで原発は安全安心という神話を信じて原発推進の政府を支持し続けて結果的には原発に賛成してきたのですから、今の状況に責任の一端がありますが、でも子供たちには何の罪もありません。放射線による影響が大人と比較にならないほど大きい子供を犠牲にしてはいけません。


何が安全なのか


 放射性物質は、ヒ素や有機水銀のような毒物とはまったく違います。有機水銀は自分のそばにあっても、それだけでは何の危険もありません。食べたりしなければいいだけです。でも放射性物質が自分のそばにがあったら、それを食べなくても放射線を浴びます。食べたり吸い込んだりすれば体内で放射線を出します。

 一方、毒物の有機水銀はいつまでも危険ですが、放射性物質は放射線を出した後は安全な物質に変わります。放射線もその時にさえ当たらなければ安全なのです。すなわち、放射性物質は放射線を発射し終わった後に、安全なものに変わります。発射された放射線も止まった後は安全なものに変わります。危険なのは飛んでいる放射線に当たることだけなのです。

 放射線量が1時間10マイクロシーベルト以上なら、すぐ退避したほうが安全です。1時間1マイクロシーベルト以上が続いているなら一時的にでも離れて様子を見た方が安全です。少なくとも子供や乳幼児だけでも退避させることです。故郷を離れざるを得なかった人たち子供たちは大変な苦しみです。でもいつしか原発からの放射性物質の漏れが止れば故郷の放射性物質は時間とともに減っていきます。きっといつか帰れます。

 放射性物質を含んだ食べ物をできるだけ食べない方がいいというのは風評ではありません。被災地を経済的に助けることは大切ですが、それとは別問題なのです。あえてみんなで放射性物質を食べてこれ以上被曝することはないのです。ただし問題は放射線を浴びる総量ですので、あまりにも微量な場合や時々の外食まで過剰に心配することはありません。正しい情報で冷静に判断することが必要なのです。

 子供は背が小さくて地面から位置が低いので、風が強かったり、空気と土の汚染が高いなら子供にマスクを着用させましょう。土埃がたつなら運動会に参加しない。少なくとも子供にはできるだけ安全な食べ物を与えてください。子供の食べ物には特に気を配る。給食が心配ならお弁当にする。母乳から放射線物質が検出されたら乳児に与えない。もし微量だから安心だと放射性物質の含んだ食べ物を子供に与え続ければ、将来、親自身が自分のしたことを後悔します。

 安易に安全と安心を信じてしまうことは危険です。正しい情報をもとに判断するからこそ安全なのです。自治体と学校には線量の測定と公開、給食や除染などを働きかけるましょう。たとえ一人でも勇気を出して意見を言うことです。みんなの声が集まれば、やがて学校も変わり自治体や国も変わることもあります。もう、自分たちの安全は自分たちで守るしかないのです。

 今はあまりにもひどすぎです。だから上が変わるのを待っていたら子供たちは犠牲になってしまいます。政府が間違っているなら自治体は従わなければいいのです。自治体が間違っているなら学校は従わなければいいのです。そして私たちは、学校が間違っているなら従わなければいいのです。

 各自治体や学校に要望をしながらも、変わるのを待っていては間に合わないからです。子供を守るためには、自己防衛が一番です。今はこの方法しかないのです。もう政府や自治体に頼るだけでは子供を守れません。




【後半】

そんなに「安全」なのか


 最近はセシウム肥料が気になります。腐葉土も心配です。セシウム入りセメントが不安で新築のビルやマンションも気がかりです。国は次々と新しい手を繰り出し、不動産業や建設業に大打撃を与えるのを承知の上でセシウムを混ぜるようにセメント業界に圧力をかけ、全国の農地が汚染されるのを承知で肥料にまでセシウムを混ぜさせます。公園や宅地にも撒いています。

 国民や県民市民より偉いと勘違いしている政治家がいます。国民と専門外の人を馬鹿にしている原子力と放射線医療の学者がいます。上からの指示に言いなりの職員がいます。

 放射性物質に汚染された基準値内の食べ物、測定さえしていない食材がそんなに安全だと言うのなら、政治家、安全安心学者、国家公務員と地方公務員が消費すればいいのです。国会と霞が関、地方自治体の食堂は汚染された食材だけを使えばいい。議員、官僚は自宅でも消費すべきです。しかし国民に押し付けたり子供に給食で食べさせることは許せません。

 セシウム汚染汚泥を肥料に入れても、コンクリートに入れても安全だと言うなら、政治家、官僚、安全安心学者こそが大量に受入れるべきです。国会、霞が関、議員宿舎などの敷地と建物に使えばいい。政治家、官僚、安全安心学者の自宅にも。特に国交省は汚染コンクリートを大量に消費してください。私たちはセシウム肥料もセシウムマンションもまっぴらです。

Appendixの『A.人為的な放射能拡散』も、ぜひ読んでください。


国民を守らない政府


 政府は福島原発が爆発した時に、放射能汚染の予測データを公開するとパニックになるとして情報公開を3週間も遅らせました。すぐ公開していたら住民が自分の判断で一時的にでもまずは退避でき、初期の大量の被曝を防げたのです。国民の安全と安心が何よりも大切なのです。早期公開と3週間後の公開のどちらが国民にとってリスクが高かったのかは自明です。

 福島原発の事故はレベル7で、大量に漏れたのが爆発の直後数日間だったということが発表されたのは、事故後1ヵ月も過ぎてからです。しかもテレビでは放射性物質はチェルノブイリの10分の1だからたいした事故ではないかのような報道をします。チェルノブイリでは広島原爆500個程度の放射性物質がばらまかれましたので10分の1なら原爆50個分です。さらに海に流れた放射性物質の量も算入されていないのです。

 海に流出した膨大な放射性物質は無視できる量ではありません。魚介類の汚染など世界中への影響が懸念されています。さらに原発内には外部に漏れた量の何百倍もの放射性物質があり、大気中と海に大量の放射性物質が漏れ続けています。

 国民を大気と地上から被曝させるだけでなく、食品も暫定基準以下だからどんどん食べてくださいと政府は勧めています。生産者の被害を消費者が食べることで救済するのは、生産者のモラルと消費者の健康を犠牲にして、東電を守っているだけです。

 生産者も消費者もともに被害者であり、責任を取るのは加害者である東電と政府なのです。しかも給食の食材と牛乳を使って全国の子供たちに強制的に体内被曝させています。これは正気の沙汰ではありません。弱い者いじめどころではなく、国民を守るべき政府が何も罪のない子供の命まで脅かしているのです。

山下俊一氏はインターネットで一般公開している放射線医療科学のeラーニング講座『チェルノブイリ原発事故と甲状腺がん』 で研究成果としてチェルノブイリ原発事故後20年過ぎても多くの人が後遺症に苦しんでいること、食べ物や飲み物からの内部被曝によって事故後10年をピークにして事故当時15歳未満の子供たちの甲状腺ガンが激増したと明言しています。

 チェルノブイリ原発事故と甲状腺がん

 当時の被害地域の汚染を、今の福島原発の文科省公式資料『文部科学省及び米国エネルギー省航空機による 航空機モニタリング 』のページ3(別紙1)の図と比べると福島原発周辺に相当しています。

 文部科学省 航空機モニタリング

 今の状況で国民が自己防衛を怠れば、原発による人災は地震と津波による天災をはるかに超える恐れがあります。政府が子供たちを疎開もさせず、安全だと言い続ける理由なぜなのでしょうか。東電を守るために被害者の補償をしたくないからなのか。それとも汚染が危険だと知っていると「故意」になり、知らなければ「過失」か「無罪」になるからでしょうか。

 政府は子供の被曝を増やしているのに、なぜか学校の先生たちはおとなしい。原発を作った自民党は関係ないふりして、この時期に原子力を守る会を作る。どの政党も党利党略ばかりで、どこにまともな政治家がいるのだろうか。


住民を守らない自治体


 事故当時しばらくの間は地上20メートル位にある放射線モニタリングポストで測定している自治体が多かったが、その後の住民の要望によって1メートルなど、人々の生活にあった高さでの測定がされるようになってきた。適切に測定した情報と、その公開こそが安全と安心につながるのです。

 野菜は測定前に土、埃などを流水で十分洗浄した後に測っているのはしかたないにしても、土壌の放射線を地表ではなくて地中の値を測定するのはどうなのでしょうか。魚の放射線を皮と内臓を取り除いて刺身のようにして測定していることを知っている人はどれほどいるのでしょうか。市民を守るための自治体なのだから、少なくても、消費者に測定方法を周知させてほしい。これでは皮のついた塩焼きの焼き魚を食べられるかどうかも判断できません。

 一時期、静岡県、神奈川、埼玉、栃木では荒茶の放射能検査をしないことを発表しました。後に消費者の反対で見直しもされましたが、できれば測りたくないという気持ちが丸見えです。消費者を無視して売れるとでも思っていたのでしょうか。

 食べ物も飲み物も暫定基準は濃度です。ですから、基準超えの食べ物も飲み物も他と産地のものと混ぜて薄めれば基準値内になります。そのためなのか、最近はいろいろな食品でブレンドが急増しています。

 放射能汚染は大人のせいなのに、自治体は学校給食の不安や校庭と公園の汚染を放置し住環境の汚染を増やして子供たちに犠牲を強いています。農作物や海産物についてのやり方も疑問だらけです。たとえ一部の人の要求で決めたにせよ、検査拒否などを決めた自治体もあります。良識ある農家はそんな自治体に対して断固抗議して撤回を要求すべきです。

 福島県は100ミリシーベルトが安全だという学者ばかり呼び、住民の被曝量を増やし続けてきました。さらにその学者の一人の長崎大学の山下俊一氏を福島県立医科大学の特命教授に就任させ、さらに県の放射線リスク管理アドバイザーにしました。そんな県知事と自治体には県民は守れません。福島大学の教員グループも放射線値での公平でない情報操作への是正の要求を下記で提言しています。

 福島大学および県は低線量被曝リスクに慎重な立場を

 東京都は5月東京都広報で『年間10万マイクロシーベルト(=100ミリシーベルト)以下では健康に影響を及ぼすことはありません』と明記して、都民1000万人に配布しました。政府からの指示をそのまま上位下達するような自治体は住民を守れません。

 横浜市の林文子市長は給食検査についての市民の要望を無視し続け、その結果、暫定基準の8倍を超えた汚染牛肉を給食で小学生に食べさせました。

 その後9月10日に、牛肉は8倍を超えて汚染されていたが、基準超え牛肉625kg相当、すなわち、基準値10倍超え汚染牛を62.5kg食べてもリスクは増えないと述べた放射線特集号を300万人市民に配布したのです。横浜市の不手際についての反省もなく、心配する親御さんの気持ちを踏みにじる行為です。子供の放射線への感受性も無視しています。なによりも子供たちを守る姿勢が全く感じられません。まるで市民への挑戦状です。これについて下記の抗議のメールをしました。

 横浜市へのメール

 横浜市 放射線特集号

 子供は国の宝なのに、多くの自治体は住民を守ることより政府に従うことを選んでいる。そんな自治体の指示を何も考えずに守る学校、学校の指示に従うだけの先生には子供のことなど頭にない。上の指示に従うだけの人には、市民も子供も守れません。

 若い頃は高い志を持っていたはずなのに、既得権にしがみつくうちに、志も心も失ってしまったのでしょうか。彼らも哀れな人たちですが、私たちがその犠牲になることはまっぴらです。トップダウンだけではこれからの社会は良くならないのです。自治体と学校に頼っていては子供を危険にさらすばかりで安全など守れません。


子供を危険にさらす学者


 安全なのは年間1ミリシーベルトで生涯100ミリです。でも多くの学者が、生涯100ミリと、短期的な症状が出ない100ミリ、国が緊急時の国民の基準と決めた年100ミリ、この紛らわしさも利用して、『ただちに健康への影響は無い』、『年間100ミリシーベルトまでは安全』と言います。

 そして山下俊一氏は事故当時、福島で子供たちは「外で遊んでいいです。心配ありません」と県民に被曝防護の軽視を講演しました。彼のような放射線医療学者は大勢います。そして事故後に福島で同じような話をしたのです。しかし前の章で紹介した山下俊一氏のeラーニング講座でも分かりますが、安全だと言っている学者も実は放射能の危険性をよく知っています。

 避難が遅れている飯舘村の住民に対して、わざわざ飯舘村に来てまで放射線は安全だと語り、手を洗えば安心などと言う他の学者もいました。下記の動画は2時間ですが1時40分の所からわずか20分間を聞くだけで学者と飯舘村の真実が分かります。

 飯舘村

 山下俊一氏が福島県二本松市で講演した時の質疑応答において、以下の動画の4分のところで『子供への影響は分からない。調べるために県民を今後調査する。国のせいだ、私のせいではない』、25分で『安全でなく、安心してもらいたい』と言っています。それでも彼だけを責めるわけにはいきません。同じような学者は他にも山のように大勢いるからです。そして実は彼らの発言は医学界の学会・医会の公式見解なのです。

 福島県二本松市の講演

 Appendix『B.子供を守らない医者』をご覧ください。これを読めば医師と学会医会の状況が分かります。以下で、よく使われる簡単な嘘をあばいていきます。

 原発による被曝とCTスキャンなどの医療と比較する学者がいますが、放射線治療は病気を直すためであり、CTスキャンやレントゲンによる診断のリスクがあっても、治療や病気の早期発見という利益があるのです。これは医療行為だけに許された特殊性です。医療と比較するような学者の詭弁に騙されてはいけません。

 放射線をタバコと比較する学者もいますが、前提が間違っています。大人は自分の意思で吸っているので、本人の意思に関係なく危険にさらされる原発被曝と比較できるわけがありません。それに乳幼児、子供はタバコを吸わないのです。まともな親なら副流煙を心配して子供のそばでタバコを吸ったりもしません。

 日本人の多くはガンで死ぬから、被曝で発ガンの死亡率が0.5%上がっても影響ないと言う学者もいます。まず一生涯の死因を持ち出すこと自身が詐欺的です。たしかに生涯での死因でのガンの割合は30%ですが、実際はガンの発症率は長年ほとんど変わっていません。他の病気が減って日本人が長生きになり、その結果、生涯の死因でのガンの比率が増えたのです。私たちが心配しているのは、一生涯での死因ではありません。発ガン率が増えれば、本来ならば健康に成長しているはずの10年後が来ない若者や子供が増えます。

 広島だって今では住めるから放射線はそんなに怖くないという学者すらいます。今の広島が安全なのは当たり前です。しかし、原爆投下時に助かった人たちも、その後、多くがガンに侵されて数年後に死んでいった。かろうじて生き残っても、長年、後遺症に苦しんだ。投下直後に広島を訪れた人たちも空気中や雨、土壌からの多量の放射線を浴びて病に倒れたのです。

 Appendix『C.カリウムの嘘』も後で読んでください。学者は巧みな手口としてカリウム技を生み出しました。

 被曝をおさえることが大切なのに、文科省も学者も安全で安心と繰り返し、学者は被災地でマスクをする必要もないとまで言う。そしてマスコミは政府の発表を垂れ流す。医師や学者は、CTスキャン、タバコ、生涯死因、カリウム、ホルミシス効果を使い国民を欺きます。まるで政府・学者・マスコミが三位一体となって、国民と子供たちを被曝させようとしているようです。

 実は、研究者にとって被曝による発ガン率は広島原爆の犠牲者や原発事故と原発作業者の犠牲者のデータを基にしているので統計データとしては少なく、その精度は十分ではありません。すごくいやな言い方だが、安全安心だと言ってできるだけ多くの人に無防備にさせて多く人間に被曝させれば『よい研究』ができます。

 そしてさっそく、放射線の研究機関で作る「放射線影響研究機関協議会」が発足し、福島県民全員を今後数十年間ずっと、転居者も調べて被曝の影響を長期的に調べる健康調査研究が始まりました。

 知識や学問は人を救うためにあるのです。本来なら原子力学者と放射線医療学者の役目はこれ以上の被害が出ることを未然に防ぐことです。人間性を捨て、研究成果にしか興味ない人には学者の資格などありません。保身のためや、都合のいい知識をひけらかすために学者をしているなら、そんなくだらない仕事はやめたらいい。人間性の欠けた学問は誰の役にも立たず、それどころか国民と子供の命を犠牲にする悪行です。

 ホルミシス効果によって1ミリシーベルト以下の放射線は浴びた方が体に良いという学者もいます。でも、もうホルミシス効果を持ち出す学者にはもう騙されない。

 Appendixに『D.ホルミシス効果の嘘』があります。


原発利権としてのマスコミ


 ジャーナリズムの役割は自らが真実を掘り下げて調べ、報道することです。でも現実には、テレビも新聞もその役目を忘れ、政府、東電、原子力学者、放射線医療学者の発表や発言をそのまま垂れ流しているだけです。しかも、テレビはいわゆる『権威のある』ウソつき学者ばかりを出す。ニュースのようなバラエティ番組では何も知らない芸能人がコメントし、公平性を装った対立的意見の議論も垂れ流すだけなので国民は混乱する。マスコミは起こった事故や事実を伝えているようにみえますが、報道しているのは都合のいい真実だけで、伝えたくない情報には固く口を閉ざしています。

 だからテレビと新聞しか見ない市民は本当のことが分からない。この国家的な危機の中で、マスコミは、かつての戦時中の大本営発表と何も変わっていません。

 唯一、戦時中との違いはお金にも動かされていることです。東電のCMを流している民放では、原発事故に対しての公平な報道ができません。このままでは、薬害エイズの時と同じように、真実を伝える時はすでに手遅れになって被害が出た後です。後出しの公式発表を待つのではなく、今まさに進行中の真実を自力で取材して伝えるべきで、後になって言われても国民にとっては遅いのです。

 政府も自治体も実はネットには様々な情報を公開しています。日本が発表しない放射能汚染でもドイツ気象庁などはネットで早くから公開していました。たとえドイツ語が分からなくてもウェブなら一括翻訳がすぐできます。多くの良識ある専門家がホームページに記事を書いています。Ustreamではテレビでは流さない情報、編集されていない生の情報を得られます。でも、どれほどネットに情報があっても高齢者や子供など、多くの人たちは新聞とテレビからしか情報を得ていません。

 ネットが使えても、高いメディアリテラシーがなければ正しい情報を選び出すことができません。テレビにもウソの情報や隠している情報があると知らない人たちは、専門家の学者がテレビで話せばそのまま信じてしまうことも致し方ないことです。

 テレビの影響はあまりに大きく、その報道姿勢を変えさせない限り市民の安全は守れません。マスメディアの責任は重く、最低でも国民の生命の安全を第一に考えるのが役割なのに、国民の方を向かずに大本営政府と大スポンサー、東電の方ばかり向いているマスコミには、誇りと勇気のある人は残っていないのでしょうか。

 もうテレビや新聞が編集した情報だけでは本当のことは分からないのです。真実は報道さえもされません。参議院での良識ある学者の意見も報道せず、二本松市での県民の切実な声も報道しません。巻末の『おすすめリンク』には有益は映像や資料があります。

 テレビ俳優の山本太郎氏が原発に反対するようなことを言えばドラマを降板させられ、テレビ朝日「モーニングバード」で5月22日に他の出演者が基準値以内の野菜について美味しそうですねと言う中で長島一茂氏が「俺は食べない。安全かどうかはっきりわからないものをカメラの前で食べて視聴者に安全だというメッセージを送りたくない。これを食べて本当に農家のためになりますか」と言えば完全に無視されます。

 NHK「あさイチ」で5月26日に室井佑月氏が「福島の子供は地産地消で福島産の野菜を食べさせられていて、体の中からも被曝している」、「基準値ギリギリのものを、食べさせなくてもいいじゃないか」と、生放送で勇気ある発言しても、NHKアナウンサーは「福島の野菜は基準値以下だから」「市場に並んでいるものは安全なものだけだから」と言うのです。

 後追いでマスコミも少しずつは報道するようになりましたが、それでもマスコミが話題に出すまで待っていては手遅れになります。フジテレビが5月29日「Mr.サンデー」で政府の放射能予測「SPEEDI」の情報隠しと放射能汚染のひどい飯舘村のことを問題にしていましたが、いまさら報道してもそれこそ遅いのです。

 飯舘村の住民が不安を抱えていたその時期にフジテレビでは100ミリシーベルは安全だ、放射能は怖くないという学者を出演させて安心安全デマを報道していたのです。マスコミがこんなにも情けない状況だからこそ、私たち一人一人が正しい知識を持ち、自分の判断で行動することが大切です。


エッセイを書くにあたって


 私は理系の技術・開発者として20年間情報通信にかかわり技術で社会を変えてきました。その後、研究・教育者としてメディアリテラシー、ビジネス、情報技術、物理学などを教え、新しい時代に活躍する若者を育ててきました。

 原発はどちらかというと推進派でしたが、3月11日から考えが変わり始めました。社会にはいろいろな悲しいことが起こります。私が生まれる前にあった戦争、子供のころの水俣病、多くの公害、その後の薬害エイズ、薬害肝炎などがあり、同世代の多くの人たち、私より若い人たちも犠牲になりました。しかし今回の事故では、このままなら将来起こることは分かっているのです。だからこそ、もし自分が何もしないで被害が広がるのを眺めていたら、後で絶対に後悔する気がしました。

 義援金をしても何か物足りない気持ちが残りました。テレビでは連日、学者の間違った情報を流し続けていました。これでは真実が報道されるのは水俣病の時と同じように大きな被害が出た後になります。少しでも早く、少しで多くの人が本当のことを知って子供たちの身を守ってほしいと思い、政府と学者とマスコミの間違いを示しながら放射線について分かりやすく説明したエッセイを4月半ばに書きました。

 真実を書いても被災者には何も伝わりません。そこで追加の義援金のつもりで思い切ってGoogleに意見広告を出しました。学者や政治家、自治体、マスコミの人が良心に目覚めることも期待しました。かつて情報通信の開発に携わっていてよかった、今がネットワークが発達した社会で良かったと実感しました。もし今でも情報ネットワークがなかったら、私たちは昔と同じように多くの犠牲が出るまで本当のことを知ることさえできません。市民が互いにつながりあうこともできません。

 今まで技術者、教育者として未来を作るという信念で仕事をしてきました。ドラマの龍馬伝に感動し、JIN -仁- に共感するのもそのためです。このエッセイで報道としてのテレビを批判していますがテレビ全部を否定してはいません。部門が違うからなのか製作者の信念を感じるいいドラマがたくさんあります。

 でも私たちが手にしたネットメディアは、もう実質的にはマスメディアと政府を凌いでいます。網の目状の膨大な人のつながりだからこそ見えてくる真実があるのです。マスコミの報道は周りの流れが変わると後追いで転身しますが、その源流を作るは私たちが手にしたネットメディアなのです。


みんなが動き出している


 今では、同じ気持ちを持っている全国のお母さん、お父さん、教員、学生、福島県民、政治家、マスコミ関係者たちとツイッターでつながっています。危機を真剣に考えているたくさんの人たちがいます。フォローしてくれている議員も、子供のために真剣に活動しています。

 ツイッターを通して浜岡原発運転停止の署名活動をしていく中で5月14日には念願の停止が実現できました。子供20ミリシーベルト基準撤回の署名の呼びかけにも今も多くの方々が賛同してくれています。東電CMと安全神話の学者についての放送局への抗議メール、低い位置でのモニタリングポスト設置の市議への要望もしました。自分にできることを続けているだけですが、私自身もみなさんからたくさんの力をいただいき、感謝しています。各自がそれぞれの立場で自分ができるやり方でしていくことが子供たちを守ります。

 放送局の各HPに意見欄や問合せ欄があったので、5月8日に民放にネットから『東京電力から多額の金をもらいCMを流し続ける限り、テレビ局はまともな報道機関として役割ははたせない。東京電力のCMを流すのをやめなさい』と送りました。

 NHKと民放には『放射線は安全だとか100mSvまで安心などと平気で言う学者を出すのをやめなさい。最低でも国民の生命の安全を第一に考えるのがマスメディアの役割です』と抗議しました。NHKから受付メールが来ただけです。民放からは受付メールも来ません。でも他からも多くの声があったか、その後のNHKの放送を見ていると5月26日に室井佑月さんに発言させるなど変わってきた点もあると感じます。

 首相官邸と鳩山前総理には『そんなに安全ならば国民に押し付けず自分たちで受入れてください。文科大臣自宅と文科省敷地、国会と首相官邸と霞が関、議員自宅で汚染土と瓦礫を受入れ、汚染汚泥コンクリートも消費しましょう。安全なので運搬も問題ありません』とのメッセージを送りました。もちろん、何の返事もありません。

 与党の衆参議員数名に『空気・土・食物の適切な測定と情報公開、福島市も校庭表土除去の実施、汚染汚泥でコンクリートを作るという国交省指導の撤回、汚染した校庭表土と瓦礫や汚泥は拡散せずに原発20km以内の原発敷地などに運ぶことについての要望』をしました。それに対しては衆議院議員から要望に応えるべく頑張るとの回答をもらいました。もちろん与党の中にも良識のある議員はいるのです。

 フォロアーの一人である横浜市民は、学校給食に汚染食材を使わないよう要望する署名を集めて 市議会に請願書 を提出しました。柏市のお母さんたちは学校の放射線量の適切な測定と公開を求めて『子供を放射能汚染から守る運動』を始めました。

 あるお父さんは、学校の先生から、その先生が子供達にマスクを着けさせようとしたところ市の方から「茨城の空気が汚染されていると宣言するようなもので公立学校として不適切だからやめるように」と指導があったと聞いて嘆き、その後に市役所の担当課長に電話して 適切な対処 を要望しました。

 それぞれの立場でそれぞれのやり方で子供を守ろうとしているのです。子供は国民みんなの宝です。その子供たちを守るためにみんなが動き出しているのです。


おわりに


 今の日本は自分の研究と保身にしか興味がないだめな学者と専門家の多くが政府と官僚の下に集結して、子供たちを犠牲にしています。良識ある人が排除され、まともなブレインのいなくなった政府、官僚、自治体はもうメルトダウンしているのです。これでは民主主義とは名ばかりで、まるで江戸末期の幕府のようです。なんでこんな国なんだろうと思います。でもあきらめてしまってはダメです。それぞれが自分のできることをしていくしかありません。

 いまだに、政府を信じている人がいます。自治体の言う通りに行動する人がいます。まだ原発が必要だと思っている人がいます。自分は関係ないと思っている人もいます。そのほとんどは、本当のことを知らないだけです。知らないならしかたない、できないならしかたない。でも今は情報社会です。知ることができる。知ったからには何もしないわけにはいかないのです。知識を持っている人たち、本当のことが分かった人たちは、それを多くの人に伝えることができます。行政から住民への間違った指示、学者を鵜呑みにした自治体HPを訂正させることもできます。正しいことは必ず広がっていきます。

 やり方はそれぞれ違っても、各自がそれぞれの立場で出来ることをしていけば、社会も人も必ず変わります。子供たちを守ってあげられるのは私たち大人だけです。子供たちの笑顔であふれる日本、みんながこの国に生まれて良かったと思える日本にするために。




【Appendix】

A.人為的な放射能拡散


国の放射能拡散に加担する自治体と企業


 原発事故は福島原発の周辺に高濃度の放射性物質を降らせ、東東北と関東全域に大量の放射性物質をばら撒いた。今、多くの国民が日本の未来と子供たちの健康に不安を感じている。

 国民の健康を守り日本経済を立て直すためには、ばら撒かれた放射性物質を集めて濃縮し、封じ込めて拡散を防ぐことしかない。しかし現実は違っている。国と自治体は人為的に放射能に汚染された汚染瓦礫や汚染汚泥を全国で焼却して大気を汚し、山林に埋めて森を汚し、埋立をして海を汚し、肥料にして農地を汚し、宅地と公園とコンクリにして住環境を汚し、日本全国に汚染を広げている。

 多くの国民はこの事実さえも知らず、知っている人も反対をしない。戦時中と同じように、日本人は国からの指示に対して思考停止してしまうのだろうか。もしそうだとしても、今それを変えなければ私たちは大切な子供たちさえ守れない。


国は保管施設の建設を怠り、自治体に汚染を押し付けてばら撒かせる


 国がいつまでも放射性物質の長期保管施設建設の責務を怠り、遮蔽施設も仮処分場もすべてを各自治体に押し付けている。1kg当たり10万ベクレル超の汚染汚泥は遮蔽施設内で保管し、8千ベクレル超は処分場での仮置きとしていた。そして8千ベクレル以下なら、さまざまな方法で人為的に環境にばら撒くことを認めていた。しかしその8千ベクレルが10万ベクレルに変わるので、今後は汚染が10倍以上になる。

 自治体で置く場所が不足してきたことを表向きの理由にして、国は自治体のことを考慮しているふりをする。でも実際は国が保管施設の建設を怠っていることこそが本当の理由である。多くの自治体は地域住民を軽視して国の指導に従う。自治体は国の出先機関ではない。国の指示に従うだけの自治体など、存在意義もない。地方自治体の知事と市長は気づいてほしい。地域住民の生命と健康を犠牲にしてまで国に従わなければならないことなど、どこにもない。国が自治体に押し付けたからといって、自治体が放射性物質を拡散して住民に被害を押し付けるなどあってはならないことだ。


放射能汚染を人為的に拡散する国


 以下に示すように、国の各省庁が担当分野で人為的な放射能拡散に寄与している。環境省は環境を汚染し、農林水産省は農地と農作物を汚染し、国土交通省は住環境を汚染し、文部科学省は子供を被曝から守らない。世界中でこんな国が日本の他にあるだろうか。自然環境と国民の健康を犠牲にして、農業も漁業も観光産業も衰退させ、日本経済を潰す愚策である。

 国(環境省)は1kg当たり8千ベクレル以下を山林や海に埋立としていた。しかし8月末に埋立基準を10万ベクレルに大幅に引き上げる方針を決めた。自然豊かな山林と海に恵まれている日本なのに、これではますます日本中の海と山林の汚染は進み、海の幸と山を幸も汚して、食への不安はさらに高まるだろう。

 国(農林水産省)は汚染された地域の農地には1000ベクレル以下、全国の一般農地に200ベクレル以下の汚染汚泥は肥料として流通することを認めた。1000ベクレルの理由は汚染が高い地域の「放射性セシウム濃度を上昇させない」、200ベクレルの理由は「事故前の農地土壌の放射性セシウムの濃度範囲」としているが実際は事故前の日本のほとんどの農地は10ベクレル以下だ。しかも肥料業者がこの基準に違反しても自主管理で罰則なしだ。

 農水省 肥料に利用する汚染汚泥

 汚染地域に高汚染肥料を使えば農地の汚染濃度はなかなか下がらなくなる。さらに200ベクレル汚染肥料は全国に流通する。10ベクレル以下の農地で半減期30年の放射性セシウム肥料を毎年使えば、安全な地域の農地は年々汚染濃度が高まる。しかも放射性セシウムだけで判断しているから、骨に蓄積し骨肉腫を起こすストロンチウムなどは未測定。他にどんな放射性物質が入っていても国は責任をとらない。

 国(国土交通省)は100ベクレル以下をセメント、宅地造成、公園で使うように指導している。子供たちが遊ぶ公園も、国民が生活を営む宅地を意図的に放射能汚染させるのだ。なぜ街を故意に汚すのか。放射性物質を埋めたセシウム公園で子供を遊ばせたいと思うだろうか。だれが放射性物質入りのセメントで作られたセシウムマンションに住みたいと思うのか。

 政府からセメント協会への要請文

 横浜市セシウム埋立

 国(文部科学省)は、せっかく除染した校庭の汚染表土さえも自治体まかせにしている。


汚れた大地をきれいにして汚染汚泥が生まれた


 汚染瓦礫、汚染汚泥、汚染焼却灰といった廃棄物の処分には全国の自治体が頭を悩ませている。汚染汚泥はたまる一方だ。そしてやがて、国に従順な自治体は住民を無視して、国に従って地元の汚染拡大に手を染める。

 国と自治体は何も分かっていない。彼らは何をおびえているのだ。愛する日本を守りたくないのか。汚染汚泥は『風の谷のナウシカ』での『腐海』なのだ。ナウシカなら「汚染汚泥は毒を出すけど実は人間が汚した世界をきれいにしている。汚染汚泥は大地の毒を取り込んでくれた」と言うだろう。

 原発が全国に放射性物質をばら撒いた。その放射能で汚された大地を雨水が洗い流してくれる。大地をきれいにして雨水、下水を通して処理場に集まったのが汚染汚泥だ。人が汚した大地をきれいにして汚染汚泥が生まれたのだ。人間たち、動物たち、すべての生き物が少しでも安全に暮らせるようにと、自然の力が除染してくれた。

 それなのに、国と、その国に従順なだけの自治体はせっかく集まった汚染物質を意図的に拡散する。焼却し、山林などに埋め、公園や宅地に使い、肥料にして農地に撒き、コンクリートにして街中に撒く。庭掃除で集めたゴミの処理に困って、ゴミをまた庭に撒くことは愚か者のやることだが、今の日本はそれと同じことをしている。しかも撒いている物はただのゴミではない。原発事故を1次災害とすると、今、起きていることは人為的かつ意図的に行われている2次災害である。


解決策は放射性物質の拡散防止と封じ込め


 解決策は放射性物質の拡散防止と封じ込めだけだ。汚染汚泥や汚染瓦礫をできるだけ放射性物質を濃縮して、安全な施設に長期保管する。その施設は国の責任で早急に準備する。それこそが、国民の健康被害を防ぎ、日本経済を立て直す道筋である。事故から6カ月も過ぎて放射性物質の長期保管施設の建設に未着手なのは明らかに国の怠慢だ。

 保管場所は例えば原発敷地内かもしれない。いずれにしても放射性物質を閉じ込める巨大な長期保管施設を地下などに建設し、これから何百年も国家の責任で安全に保管することが必要だ。それができるまでは自治体と企業は国の拡散に一切加担してはいけない。そして私たちは、自治体と企業が汚染を拡散することを許してはいけない。人為的に祖国を汚すという愚かな行為はもう終わりにしよう。


国の放射能拡散に自治体と企業は従うな


 国は自分の怠慢を棚に上げて、自治体と企業に不当な圧力をかけている。例えば国はセメント業界に汚染汚泥を安定的に受入れてセメント原料に利用することを要請した。セメント協会はそれを承諾した。

 セメント協会HPで『放射性物質が検出された下水汚泥のセメント原料の利用について皆様のご理解を』としている。何が『ご理解を』だ。企業が最も重視すべきは顧客であり、国ではない。セメント業界の顧客は建設業界と不動産業界であり、さらにその顧客である消費者だ。建設業界の新築マンションの売行きに大きな影響を与え、国民が居住空間で床、壁、天井から被ばくする大問題である。各業界は顧客重視を前面に、国の不当な圧力を断固拒否すべきだ。

 セメント協会 放射性物質のセメント利用

 自治体も同様である。国に自治体が従い、自治体に住民が従うだけでは、あまりにも時代遅れだ。そんなやり方ではこの国家的な危機を乗り越えることはできない。国は自治体の支配者ではない。県知事市長は県民市民の支配者ではない。県民市民のために県知事市長がいて、自治体のために国があるという当たり前のことが忘れられている。これからの時代は、国に従順なだけの自治体には住民を守れない。全国の自治体と企業がこのまま国からの上意下達で行動したら危機を乗り切るどころか、逆に深刻さを増してしまう。日本全国で本格化がすすむ放射能拡散は人災だ。

 暫定基準でも不安だが基準を超えても方法がある。基準は濃度だから、高濃度の汚染汚泥と汚染灰も他と混ぜて薄めれば利用できる。混ぜて薄めることで、もっとたくさん放射能物質を日本中にばら撒いている。これは基準の抜け道を使った悪行だ。

 放射能保管施設の建設を意図的に怠る国が、自分たちの責任を軽くみせるために、自治体と企業に「焼却しろ。地元に埋めろ。公園と宅地に撒け。肥料とコンクリに使え」ということをなかば強制的に要請する。だからといって国民を二の次にしてそれに従う企業と自治体の頭は空っぽだ。良心は傷まないのか。自治体と企業の顧客はいったい誰なのか考えればいい。分かったら自治体と企業は今すぐに国の要請を拒否しよう。

 国の顧客は自治体であり、そして国民である。自治体の顧客は地域住民である。そして企業の顧客も結局は国民である。地域住民の声、全国のパパママの切実な声で時代遅れの全国の自治体と、時代遅れの企業を目覚めさせよう。目覚めた自治体と企業は国を変える力になる。自治体と企業は、顧客の声に耳を傾けて、いっしょに子供たちを守ろう。自らの責務を果たさず放射能拡散という愚策を進める国に、今こそ全国の自治体と企業は反旗をひるがえす時だ。


B.子供を守らない医師


放射線医療の医師


 政府の原子力災害専門家8名は放射線医療の医師たちである。通常時の原発労働者の基準を超える年間100ミリ低線量被曝を安全と言って福島県民の被曝防護を軽視している人たちと、6月27日から県民200万の被曝量と発癌率の世界初の長期研究する人たちは、同じ人である。

 しかもその一人の山下俊一氏は7月に福島県立医科大学副学長にも就任し、9月1日に朝日がん大賞を受賞した。『東京電力福島第一原発事故の現地で、原爆医療とチェルノブイリの実績をもとに、低線量慢性放射線被曝による発がんリスクの評価と長期にわたる県民健康管理プロジェクトに携わり、健康リスクの有無を調査研究すると同時に、新たな放射線医療科学の世界拠点と体制づくりの中心的存在として、注目』されたことが授賞理由である。

 彼は事故当時「福島は世界中に知れわたる。有名になっちゃいました」、「ピンチはチャンス」と発言し、子供たちは「外で遊んでいいです。心配ありません」と県民の被曝防護の軽視を講演した。下記がその動画です。

 山下俊一 福島講演

 そして、まさに政府と福島県知事の協力で、自作自演とも言える世界注目の200万人研究を実現し、『低線量被曝の発がんリスクの評価と県民健康管理、健康リスクの有無の研究』で『世界に注目された』ことが朝日がん大賞の受賞の理由である。

 山下氏のような医者は他にいくらでもいる。自治体の講演会は唐木英明氏など被曝容認医師が担当してる。市民の要望を無視し続けた結果、政府の暫定基準の8倍も超えた汚染牛を給食で子供たちに食べさせた横浜市の9月5日の講演会「知ろう、学ぼう、放射線」に唐木氏が来て被曝安全の講演をした。その後配布の放射線特集号に記事を書いている。

 横浜市 放射線特集号

 その中で相変わらず100mSvでの1%発ガン増加のリスクは喫煙より小さい、日本人の3割は癌で死ぬ、という、使い古された詭弁を繰り返しました。

 子供のタバコは禁止ですし、直ちに影響はないからと子供に吸わせる親はいません。親たちは子供に受動喫煙もさせないように努力しています。

 本当に1%は小さいのでしょうか。横浜市民の内で大人300万の1%は3万人です、子供60万の5%は3万人です。

 一生涯の死因で癌が多いのは日本人が長生きだからです。私たちは若者や子供たちの5年後10年後を心配しているのです。しかも子供が放射線への感受性が高いことの配慮もありません。

 なぜ彼らは今の事態をもっと真剣に考えることができないのでしょうか。なぜ子供たちを守ろうとしないのでしょうか。そのことについて以下に分かりやすく述べます。本質が見えてしまえば、その理由が分かってきます。


放射線医療の医師と政府の癒着


 現在、政府が国家の政策として積極的にばら撒き続ける、汚染した瓦礫、汚泥、灰、腐葉土、肥料、コンクリに囲まれて私たち国民が暮らし、そして汚染した肉、野菜、米を食べさせられています。政府がこのような政策を実行している背景には政府の原子力災害専門家グループがいます。政府の原子力災害専門家は以下の8名で全員が放射線医療専門医師です。

遠藤啓吾 京都医療科学大学学長(社)日本医学放射線学会副理事長
神谷研二 福島県立医大学副学長、広島大原爆放射線医科学研究所長
児玉和紀 (財)放射線影響研究所 主席研究員
酒井一夫 (独)放射線医学総合研究所 放射線防護研究センター長
佐々木康人(社)日本アイソトープ協会常務理事
長瀧重信  長崎大学名誉教授(元(財)放射線影響研究所理事長)
前川和彦 東京大学名誉教授((独)放射線医学総合研究所緊急被ばく
     ネットワーク会議委員長、放射線事故医療研究会代表幹事)
山下俊一 福島県立医科大学副学長、長崎大大学院教授

 そして日本の放射線医療学会と医師たちは、日本国民が年100mSvを被曝することを容認しています。医学放射線学会は年100ミリ以下の影響は小さいとし、内部被曝の特別扱い不要だと公言しています。山下氏、唐木氏たち大勢の学者の原点はここにあります。学会は国民に対して年間100ミリまで安心だと言っているのです。だからこそ政府は安心して放射性物質のばら撒き政策を続けるのです。政府のばら撒き政策とその実行を、日本の放射線医療の医師たちが正当化しているのです。

 医学放射線学会 原子力災害に伴う被曝

 上記リンクの資料には低線量の放射線影響の項で100ミリには年間という文字はありません。書き忘れでしょうか。生涯100ミリなら安全な値です。ひょっとしてこの記載方法は、後で問題が起きたときにでも巧みに言い逃れができるためなのかな、とも思ってしまいます。

 100mSvは安全だと言って住民に被曝防護を軽視させておいて、一方で全福島県民200万人対象の健康調査を始めるなど、どう考えても間違っています。本当に安全なら健康調査などする必要はないのです。実は危険性があるから健康調査をする。そして国は、1千億円を被曝防護に使わずに、被曝調査に使う。

 そして、今まで安全と言ってきた医師たちも、最近は、自分たちの責任問題を心配して、よく分からないとか、発ガンの明確な証拠はないと言うようになったのです。


産婦人科と小児科の罪


 放射線医療の医師だけが問題なのではありません。妊婦と胎児の産科婦人科、乳児と子供の小児科、ガン治療の放射線医療科のすべてが問題なのです。放射線医療、産科婦人科、新生児小児科の医師の学会・医会は下記「母乳中放射性物質濃度等に関する調査」で乳児の摂取限度を年5mSvとして、セシウム検出の母乳は授乳に影響ないとしています。

 「母乳中放射性物質濃度等に関する調査」Q&A

 産婦人科医会は福島原発事故による妊婦への影響について下記で『100ミリシーベルト以下では被害はありません』、『胎芽・胎児への影響は妊娠週数と被曝線量によりますが妊娠初期でも100ミリシーベルト以下の被曝は問題はありません』と明言している。子供を守る小児科や産婦人科の言うことでしょうか。

 産婦人科医会 (福島原発事故による妊婦・授乳婦への影響)



自分だけは守る医師


 国民には年100mSvは安心と公言している放射線医師たちは、実は自分たちに関しては細心の注意を図っているのです。放射線科専門医会のホームページには、『医療関係者の線量限度は5年間100ミリ、妊婦2ミリ。実際は年1ミリ、女性0.2ミリ以下だから安心です』と述べています。

 放射線専門医会 (医療従事者の妊娠と放射線防護)

 こんなことが許されるのでしょか。医療従事者は、放射線を扱う時には線量計を身につけ、法律に従って妊娠から出産までに管理して2ミリシーベルト以内だから女性も安心して働けるとしているのに、その医者たちは、こともあろうに一般の国民に対しては100ミリで安心ですと宣言し、乳児は5ミリ、妊婦も100ミリで安心としているのです。


予防と治療


 医師の役目は予防あっての治療です。患者欲しさに歯磨き不要と言う歯医者はいないのです。それなのに一般国民の日常生活での年間の被曝量について、放射線医療科は大人100ミリと子供20ミリを容認し、小児科は乳児の内部被曝だけで5ミリを容認、産婦人科は妊婦に対しても100ミリ浴びても問題なしと表明するなど、まさに正気の沙汰ではありません。被曝被害者である妊婦、胎児、乳児、子供たちは、医師の治療対象であるガン患者と一致しますが、そんなことさえ想像してしまいます。

 医師が国民に被曝防護の軽視を表明して病人を増やすことに加担するなど人道的にあり得ません。この分野のまともな医師は、直ちに学会医会に撤回要求すべきです。


人としての医師になれ


 物についての理論は容易に実験できるので信頼性は高いですが人間に関することの信頼性は低いのです。ではいったい、何人が年100mSv浴びて健康だったのでしょうか。もちろんそんな実験はないのです。臨床試験の結果もないのに安全デマで国民を危険にさらしてそれでも医者でしょうか。そんなに安全だと信じるなら、その理論を支持する多くの医師たちが自分たち治験実験台にして臨床試験してから言えばいいのです。

 自分たち医療関係者は年2ミリで安全で、国民には発ガンの証拠がないから安心だと言うのは人間としても科学者としても失格です。政府と自治体の安全宣伝要員に成り下がった医師たちは、心をあらためて人間としての良識を取り戻すべきです。


C.カリウムの嘘


カリウム技


 最近、カリウムを持ち出す学者・医者が増えている。国民を馬鹿にしたくだらない悪知恵だ。タバコやCTスキャンなどとの比較のウソは、広く知れわたってしまった。タバコなら子供は吸わないし、CTスキャンは医療行為ですよね、と市民に簡単に反論されるようになった。

 そこで編み出したのが、カリウム技である。普段食べている食品に含まれているカリウムには放射能がある。放射能を怖がっていたらバナナも食べられない、と言う。これなら市民にあまり知られていないし、結構数字が出てくるので国民を煙に巻きやすい。しかも食べ物に含まれていることで内部被曝について国民を安心させ、原発の批判も減らせるので政府と利害が一致する。


カリウムとは何なのか


 医師や学者は国民にわざと難しく話し、セシウムは怖くないと信じさせるために、自分たちにとって都合のいい部分の事実だけを巧妙に利用する。このようなやり方は詐欺師と同様の手口である。

 まずカリウムについての知識を分かりやすく説明します。正直に素直に説明すれば、実は簡単なのです。

 昔から人は生命を維持するために食べ物からカリウムを摂取してきた。体内で利用されたカリウムは尿により排出される。そして生物は体内のカリウム濃度をほぼ一定に保つ機能を持っている。

 自然界のカリウムの0.01%、すなわち1万分の1は放射性カリウム40である。これをK40とも呼ぶ。

 カリウム40の物理的半減期は13億年であるため、自然界のカリウムに含まれる割合の0.01%という数字は昔から変わっていない。私たちは長い間、そういう環境の中で暮らしてきました。

 大人は一日に平均して3.3gのカリウムを摂取する。この3.3gに1万分の1だけ含まれているカリウム40の放射線量は100ベクレルである。そしてカリウムの100ベクレルは人体には0.6マイクロシーベルトの影響を与える。1年間の被曝量は1年365日なので、0.6マイクロ×365=0.2ミリシーベルトの被曝をしていることになります。


カリウム40


 私たちは自然にあるカリウムから年間0.2ミリシーベルトの被曝をしている。ただ、これだけである。しかし、これだけでは国民を欺けないので、巧みな手段が講じられている。その対策には、もう少し知識が必要です。

 人間が摂取した放射性物質の半分の量が体外に排出されるまでの期間は生物学的半減期と呼ばれていて、カリウムの場合にそれは30日である。では摂取したカリウムが体外に排出されるまでの平均期間の何日かというと実は30日よりも若干長くなる。この期間は放射性物質の生物学的平均寿命と呼ばれていて数学的に1.4倍と決まっている。すなわち生物学的平均寿命=生物学的半減期×1.4で、カリウムが体外に排出される平均期間は30×1.4=約40日となる。この40日という数字という数字が、だまされないために重要な数字となる。

 すなわち、ある日に食べた100ベクレルのカリウム40は排出するまでの平均40日間に0.6マイクロシーベルトの影響を体に与えるということです。その100ベクレルを毎日摂取する結果、年間では0.6マイクロ×365日=0.2ミリシーベルトとなる。

 下記に1日の摂取量から被曝量0.6μSvを導く方法を示す。参考情報ですので読み飛ばしてください。
 ・ 100ベクレルからは毎秒100個の放射線が出る
 ・ 1日では 100×3600秒×24時間=864万個
 ・ 排出までの40日で   864億×40=3.5億個
 ・ 体内の放射線1個は約100個の細胞を傷つける
   傷つく細胞は 3.5億×100=350億
 ・ これは大人の細胞60兆個の350億÷60兆=0.06%
 ・ 1ミリシーベルトで60兆個の細胞が平均1回傷つく
   0.06%が傷つくから 1mSv × 0.06%=0.6μSv

 体内に蓄積されているカリウム40についても知っておこう。摂取したカリウムは平均して40日間体内にあるので、すなわち41日前に摂取したカリウムはすでに排出されていると考えてよい。すなわち体内にはいつも、過去40日分のカリウムが蓄積していることになる。すなわち、1日に100ベクレルを摂取しているので、体内に蓄積している総量は100×40=4千ベクレルである。毎日100ベクレルを摂取して同量の100を排出して、体内は4千ベクレルで一定に保たれている。

 被曝量を体内に蓄積している4千ベクレルからも0.2ミリシーベルトを導くこともできる。これは100ベクレル摂取からの被曝を別の見方で出しただけである。

 下記に体内蓄積量から年0.2ミリシーベルトを導く方法を示す。参考情報なので読み飛ばしてください。
 ・ 体内の4000ベクレルから毎秒400個の放射線が出る
 ・ 1年で 4000×3600×24×365=1200億個
 ・ 傷つく細胞は   1200億×100=12兆個
 ・ 大人の細胞60兆個の 12兆÷60兆=20%
 ・ 1mSv × 20%=0.2ミリシーベルト


安全なカリウム


 世界では自然界から年間に2.4ミリシーベルトの自然放射線を浴びている。日本では1.5ミリシーベルトである。空気中から0.4ミリ、食べ物から0.4ミリ、その他は大地と宇宙からです。年1ミリシーベルトとは私たちの細胞60兆個が平均して1年間に1回被曝する放射線です。小さな傷が自然に治ることと同じで、私たちの細胞は年2~3回程度の傷は問題なく治します。これが年間2~3ミリシーベルトに相当します。

 私たちは毎日カリウムを摂取しても同量が排出されて、体内のカリウムの量は一定に保たれています。そのカリウムの0.01%のカリウム40の量も一定なのです。そして自然のカリウムに含まれているカリウム40からの被曝は0.2ミリシーベルトであり、これは上記に示した食べ物の0.4ミリの一部であり、含まれている値です。


カリウム詐欺師


 どのようにして国民を欺くのだろうか。例えばこんなことを言う『食品には放射性カリウム40が含まれていて毎日平均100Bqも摂取している。しかも体内に放射性カリウムが4000ベクレルもある。だから放射性セシウム500ベクレル/kgなど心配ない。それに一食で1kgも食べないからセシウムは少ない。そんなに心配ならカリウムを多く含んでいるバナナも食べられない』

 国民が知らないのをいいことに、政府寄りの医師と学者はこんな陳腐な理屈で国民を欺く。彼らは本当のことを知っているくせに知識を巧みに組み立てて嘘を作り上げる。これではまるで詐欺師と同じ手口である。

 セシウムが心配だという人にカリウムを持ち出した時点で変な話である。以下にこの嘘を分かりやすく示す。君らの嘘はもうお見通しだと言ってやろうではないか。


嘘を暴く


 まず嘘を暴くには、細かいことにこだわる前に、根本的なことを抑えることが大切です。

 カリウム40はもともと自然界にあり人類はそれに適応してきました。私たちは毎日カリウム40を100ベクレル摂取していて、体内に4千ベクレルを蓄積して、健康に暮らしてきました。だからカリウムは問題ない。

 カリウムとセシウムが体内に与える影響は同じではない。被曝量が違います。体外に排出されるまでの期間も体内に蓄積する量も違います。

 カリウムは自然放射線の内の0.2ミリシーベルトで、摂取量と同量のカリウムが排出され体内の蓄積量が一定に保たれるので、バナナを食べても大丈夫です。

 カリウムを100ベクレル摂取することと、体内に4千ベクレル蓄積していることは同じことです。実際は同じことを違う側面で見ているだけなので、両方の影響は足されません。それなのに、まるで100ベクレル摂取と4千ベクレル蓄積の両方からの影響が足されているかのような説明をすることで、カリウムからの被曝を多く思わせています。

 また体内蓄積量の4000ベクレルという数字を出すことで食べ物に含まれるセシウムの500ベクレルという数字を小さく見せようとしている。正しく比較をするなら500ベクレルを食べた場合のセシウム蓄積量と比べる必要があります。500ベクレルのセシウム134を毎日食べればセシウムは7万ベクレル体内に蓄積します。


放射線の復習


 まずは放射線について復習します。先ほど、小さな傷が自然に治ることと同じで、細胞は年2~3回程度の傷は問題なく治すと述べました。すなわち年間2~3ミリシーベルトです。しかし、同じところを毎週傷つけていたら腫瘍などになることがあるのと同じで、年に10ミリや100ミリの放射線を浴びれば細胞は年10回、100回傷つけられてしまいます。しかも実際は全身の細胞が平均的に被曝するとは限らず、内部被曝の場合は特定の内臓などに被曝が集中するのでより危険性は増します。そのため外部被曝だけでも年5.2ミリを超える地域は放射線管理区域とすることが決められているのです。


カリウムとセシウムは違う

 同じベクレル数でもカリウムとセシウムは体に与える被曝量は違います。しかし嘘をつく人はこの事実には触れません。だからベクレルだけで比較してセシウムが安全なように見せることは嘘です。カリウムに比べてセシウムは2倍から3倍の被曝をします。具体的には100ベクレルのカリウム40は0.6マイクロシーベルですが、セシウム137は1.3マイクロシーベルト、セシウム134は1.9マイクロシーベルトの被曝をします。

 すなわち毎日100ベクレル摂取しているカリウム40からは年間0.2ミリという安全な被曝しかしませんが、毎日100ベクレルの摂取するのが、セシウム137だと2倍の0.4ミリシーベルト、セシウム134だと3倍の0.6ミリシーベルトも被曝してしまいます。もし2種類が同じ比率で混在しているなら平均0.5ミリになり、カリウムの2.5倍の被曝をします。

 この理由は生物学的半減期の違いにあります。カリウム40が30日であるのに対して、セシウム137は約70日、セシウム134は約100日あります。

 すなわち生体内にいる平均期間はその1.4倍なので、セシウム137は100日、セシウム134は140日にもなります。ですから毎日100ベクレル摂取するカリウム40が体内に4千ベクレルあるといいますが、同じ量をセシウム137を摂取すれば100×100日で 1万ベクレルも体内に蓄積されます。もしセシウム134ならば100×140日で1万4千ベクレルも体内に蓄積するのです。それなのにこのことを彼らは語りません。例えば基準値ぎりぎりの500ベクレルの食べ物を毎日1kg食べると1万4千ベクレルの5倍になって、7万ベクレルのセシウム134が体内に蓄積します。

 さらに生命はセシウムをカリウムと間違え、ストロンチウムをカルシウムと間違えて体内に取り込みます。このことの意味することはとても怖いことなのです。自然界のカリウムに含まれている放射性カリウム40の比率は0.01%で1万分の1です。ですから体内に生命活動に必要なカリウムは、この安全な比率でしか放射性物質を含んでいません。しかし生命はセシウムをカリウムと間違えるので、体内のカリウムに含まれる放射性物質の率を1万分の1以上に上昇してしまいます。

 自然界以外からの被曝として法律で定められているのは1ミリシーベルトです。これを仮に内部被曝と外部被曝半々としてそれぞれ0.5ミリとすると、先ほどのことが示していることは、セシウムを1日100ベクレル、1食33ベクレル摂取するだけで0.5ミリシーベルトに達してしまうということです。今の政府の食べ物の暫定基準の1kgあたり500ベクレルですので、33ベクレルは1食66gに相当します。例えば1食660g食べれば、1日のセシウムを摂取1000ベクレルとなり5ミリシーベルトも内部被曝するのです。


D.ホルミシス効果の嘘


ネズミとツバメ


 BSのNHKドキュメンタリー「被曝の森はいま」で、線量低下後にチェルノブイリ汚染区域に移り住んだツバメは繁殖できずに腫瘍と異常で次々と死んでしまった。しかしネズミは生きのびて繁殖することができた。

 そこで放射線を浴びたことのない実験用マウスを45日間、汚染地域に置いて被曝させた。もう一つのグループのマウスは汚染されていいない地域において実験が行われた。その後、両方のグループのマウスに大量の放射線を浴びさせた場合、事前に汚染地域に置かれて被曝していたマウスの方がDNAの損傷が少なかったことが分かった。そのためネズミは放射線に強く、低線量が体にいいとされるホルミシス効果があるのではと紹介されていた。


ホルミシス効果は仮説

 ホルミシス効果が人間でも成り立つとして、年間100ミリシーベルトの低線量被曝が体に良いという医者・学者が大勢いる。それは本当なのだろうか。

 ところで7月27日の衆議院厚生労働委員会はテレビ中継されなかった。その後もほんど報道されていないが、ネットの衆議院TVネットで見ることだけができる。今でも下記で委員会の全体を見ることができる。2時間40分に及ぶが、初めの1時間はおすすめである。この動画の32分から始まる質疑応答において、山口和之議員が人間も放射線を浴びると健康になるという低線量被曝のホルミシス効果について質問をした。

 衆議院TV (7月27日の衆議院厚生労働委員会)

 放射線医学総合研究所の明石真言氏は『動物の実験ではホルミシス効果は認められる。人間については確かな科学的エビデンスはない』と答えている。

 東京大学児玉龍彦氏は『放射線は短期的にはさまざまな効果をもたらす。しかしこういう状態を長期的に続けると慢性炎症という状態になり、ガンになったり、さまざまな病気の原因になる』と答えている。

 京都大学の今中哲二氏は『生物が何らかの応答をしている。自然放射線をカットするとゾウリムシの増殖が減る』ので自然放射線の有効性を語っている。

 すなわちホルミシス効果は小動物のなどの動物実験においての現象であり、少なくとも人間に対してのホルミシス効果は単なる仮説でしかない。


小動物とホルミシス効果

 人間も他の生物のように2ミリシーベルト程度の自然放射線には適応して生きている。だから自然放射線が何らかの役目をしているという今中氏のゾウリムシの実験については意味があるかもしれないが、今中氏自身も言っているように、しょせんはゾウリムシである。もちろん人間はゾウリムシと同列には扱えない。

 明石氏も低線量健康説は動物実験であり、人間での証拠はないと言っている。自然放射線の10倍、100倍という低線量被曝についてはるネズミ等の小動物の実験結果が人間で成り立つと考えられない。しかし証拠もないのに人間での低線量が健康によいと学者と医師がいる。低線量被曝のリスクを軽視する発言をすれば、安心する国民が増えて大勢が被曝する。そうすれば人間にホルミシス効果があるかどうかが検証できるだろうが、国民は医師の実験台ではない。


動物と人間との違い

 私たちは原発汚染で食べ物から内部被曝を受けている。特に肺への内部被曝は体への影響が特に大きくて深刻である。でもホルミシス効果を示す動物実験は外部被曝であり、内部被曝は考慮していない。

 動物実験では早く結果を出したいので寿命の短い小動物を使用する。しかし生物学的な寿命が小動物と人間では決定的に違っている。人は成人になるのに20年もかかり、寿命は80年もある。しかし、ネズミは生後1カ月で大人になり子を産むことができるようになる。そして寿命はわずか2年しかない。

 人が被曝の影響でガンを発症するのは多くは5~10年後である。ネズミが同じく5年後に発ガンするとしても、寿命2年のネズミに5年後はない。

 大人になるまでの期間の差も大きい。人間の子供の被曝について、私たち大人は子供の5年後、10年後を心配している。すなわち成人前に病気になってしまう可能性が高まるからだ。でもわずか1カ月で大人になってしまうネズミにはそのリスクはない。

 もし生き物の細胞の強さがほぼ同じなら生理的寿命が短い方が放射能に有利である。大人になるのに20年もかかり寿命の長い人間はもっとも不利である。小動物も種によって生理的寿命が異なる。ネズミ2年、ツバメ15年である。チェルノブイリの放射能汚染地帯でネズミは繁殖して子孫を残してつづけているが、寿命15年と長いツバメは次々と子孫を残せずに死んでいったことも納得できる。


無責任な学者

 科学の理論とは経験則ですので実験次第で理論も変わります。だから健康理論も日々変わっています。昨日まで健康にいいものが、今日からは悪いと言われることも起きます。トランス脂肪酸もいい例です。

 人間は長い間、外部被曝と内部被曝の総計として年間1~2ミリシーベルト程度の自然放射線の中で、それに適用して暮らしてきました。ですから自然放射線程度の被曝は体に自然な刺激として人間の体が利用しているかもしれません。ですから年2ミリーベルト程度ならば体にいいという可能性は十分にあります。でも人間が今までの暮らしの10倍、100倍の放射線を浴びて体にいいなど信じがたいことです。それでも十分な実験結果があれば信じるに値するのですが、重要なポイントは実は人間にとって年100mSvの被曝が健康にいいという証拠は何もないということです。

 100mSv浴びてセシウムとプルトニウム食べて平気とか健康になるという学者や医師たちは信じる説を言うだけで自分自身で試すこともなく、汚染されていない安全な場所でプルトニウムも食べずに暮らしています。

 ホルミシス効果が人間でも成り立つのだと本気で考えているのなら、やはり自分たち自身を治験実験台にして臨床試験してみればいいのではないでしょうか。これほど多くの医師と学者がホルミシス効果の正当性を語っているのですから、みんなが治験の実験台になれば実験精度も上がります。

 国民は原発事故によって深刻な被曝被害をこうむっている。それなのに国民に背を向け、原発への批判をそらそうとする政府に好都合な理論を、あたかも人間でも実証済みであるかのように偽る。志はどこに行ってしまったのろう。何のために、その仕事をしているのだ。人の心と良識あってこその学者研究者ではないのか。




著者
  中山幹夫
略歴
  神田外語大学 教授
専門
  情報通信、eビジネス、eラーニング、物理学  他


原発と放射線

2011年 4月19日 初版発行
2011年 6月10日 第2版発行
2011年10月 5日 第3版発行


改版履歴

第2版 本文追加『原発利権としてのマスコミ』~『おわりに』
第3版 本文全面改訂、Appendix新規



本書関連のホームページ

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原子と放射線(原子の仕組み:少し専門的ですが参考までに)
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