2012年1月5日木曜日

学校給食による内部被曝 を 考える

日刊SPA!【給食の放射能測定】日刊SPA!
子供たちの内部被曝を心配する母親たちの声を受けて、学校給食の放射能測定を独自に行う自治体が続出している。測定器の性能や測定方法、対象となる食材、検出限界値などは自治体によってそれぞれ異なる。さらに、長野県松本市や茨城県常総市のように、国の暫定基準値500Bq/kgよりも低い独自の基準値を設ける自治体も現れた。

◆国の「暫定基準値」以下では安心していられない!
給食
川口市の南平学校給食センター。市内にはここを含めて3か所の給食センターがあり、副食(パンやご飯、牛乳以外のおかず類)を作って中学校や小学校に届けている。食材の仕入れ先は全市共通
11月2日から学校給食の放射能測定を始めたばかりの、埼玉県川口市・南平学校給食センター。入り口近くにつくられた小さな「放射能測定室」には、ノートパソコンと円柱形の測定器が並んでいた。

「給食の放射能測定のため、人員を2人増員し、ベラルーシ製の測定器(約130万円)を3台入れました。保護者の不安を少しでも解消したい」と、川口市教育委員会の国島善夫給食係長は説明する。

「高い数値が出た場合、子供たちの口に入る前に対応しなければならない。そのため、1週間の献立を見て、できるだけ前日までに主要食材の検査をしています」

放射能測定器
ベラルーシのアトムテックス社製の測定器で測定する川口市の職員。一見軽そうに見える機械だが、放射線を遮断するため鉛が使われており、125kgと非常に重たい
測り方を実際に見せてもらった。まず、給食のおかずに使うチンゲン菜を細かく刻み、専用の容器に入れて重さを量る。分厚い鉛で覆われた測定器の中へ容器を入れて測定開始。そして待つこと約30分、結果が出た。ヨウ素131とセシウム137はゼロ、セシウム134は「6.83Bq/kg以下、誤差は100%以上」。

「検出限界が20Bq/kgなので、それ以下だと正確な数値がわからないんです」(国島氏)

それでも、国の暫定基準値500Bq/kgよりはずっと低い。このサンプリング検査によって、汚染度の高い食材をハネるのには効果があるだろう。しかし、何Bq/kg以上で使用を中止するのかと聞くと「まだ決まっていない」という。これから運用しつつ対応策を決めていくとのことだ。

子供たちの内部被曝を心配する母親たちの声を受けて、学校給食の放射能測定を独自に行う自治体が続出している。測定器の性能や測定方法、対象となる食材、検出限界値などは自治体によってそれぞれ異なる。さらに、長野県松本市や茨城県常総市のように、国の暫定基準値500Bq/kgよりも低い独自の基準値を設ける自治体も現れた。

◆最も気にするべきなのは内部被曝の積算量

埼玉県川口市と同様に国の暫定基準値以下でも、給食での使用を中止したのが神奈川県横浜市。10月11日から、小学校1校の給食で使用する全食材(十数種類)の検査を前日に行っているが、その直後の10月12日、乾シイタケから350Bq/kgという高い数値が検出されたのだ。
※【埼玉県川口市の場合】⇒http://nikkan-spa.jp/95221

「その乾シイタケは『八宝菜』と『秋味ごはん』に使われる予定でしたが、シイタケを抜いて出しました。しかし、食材によっては抜いてしまうと成り立たない献立もあります。その場合は、数値が判明してから翌朝までの間に献立変更することを考えています」(横浜市教育委員会・清水文子課長)

しかし横浜市は、10月3日に12.2Bq/kgが検出されたマイタケはそのまま給食に出している。

「ホームページでも発表しましたが、問題はありませんでした」(同)と言うが、こちらも「高めの数値が出た場合、流通経路を調べたうえで総合的に判断したい」とのことで、まだ明確なガイドラインはないようだ。

そんななかで、独自の基準値を設ける自治体も現れ始めた。長野県松本市が40Bq/kg、茨城県常総市が30Bq/kg。前者はウクライナと同じ基準を採用、後者は導入した測定器の検出限界値をそのまま独自の基準値としている。一体、どのくらいが妥当な基準値なのだろうか?

東大大学院の早野龍五教授がインターネットで「給食から何Bq/kgが検出されたら弁当に切り替えるか」とアンケートをとったところ2日間で7000件の回答があり、そのほとんどが「1、5、10Bq/kg」に集中した。
(⇒http://nikkan-spa.jp/95220/111122_genshi_5)

何Bqで弁当?早野教授は「子供には1Bqでも内部被曝させたくない、というのは心情的には理解できます。しかし、だからといってセシウムを全く取り込まずに生活するというのも無理な話。大事なのは、長期的な内部被曝量の積算です。現在、多くの自治体が導入している簡易検査機は検出限界値が高く、精度も低い。例えば、検出限界値が30Bq/kgの場合、それ以上の数値が1回検出されるより、29Bq/kgを知らずに毎日摂取するといったケースのほうが深刻です」

そこで、早野教授は「1食分の給食を丸ごとミキサーにかけて、1週間(5日分)ごとにまとめ、ゲルマニウム検出器で精密測定する」という方法を提案している。
早野龍五教授
早野龍五教授
この方式を取り入れているのが神奈川県横須賀市。検出限界値は0.5~0.7Bq/kgと、非常に低い数値まで測定できる。海老名市も同様の方法を導入した。

「横須賀市のように検査機関に外注すれば、自前でやるよりも正確に、しかも1週間分の測定が1万5000円程度でできます。負担が少なくてすむので、自治体としても導入しやすいでしょう。事後ではありますが、子供たちが実際に摂取してきたセシウムの積算量がわかりますし、高い数値が出た場合に原因を追究して対策をとることができる。汚染度の高い食材のサンプリング検査に加えて、この『給食丸ごとミキサー検査』を行うのがいちばん効率的です」


子供たちの内部被曝を心配する母親たちの声を受けて、学校給食の放射能測定を独自に行う自治体が続出している。測定器の性能や測定方法、対象となる食材、検出限界値などは自治体によってそれぞれ異なる。さらに、長野県松本市や茨城県常総市のように、国の暫定基準値500Bq/kgよりも低い独自の基準値を設ける自治体も現れた。

◆風評被害は測定結果を公表してこそ抑えられる

東大・早野龍五教授は「福島県をはじめ空間線量の高い地域ほど、給食による内部被曝量を厳密に測定しなければならない」と主張する。

福島市が川口市と同じベラルーシ製測定器を導入、11月1日から測定を始めたものの、首都圏に比べて福島県内自治体の動きは鈍い。例えば福島県伊達市は、「国や県の適切な管理のもとに流通している食材を給食に使用しています」と、独自検査については慎重だ。市長も「風評被害に苦しむ生産者に対する思いも共有していかなければならない」と語っている。

これに対して「まったく逆」と早野教授は語る。「測定した結果を公表することによってこそ、風評被害も抑えられる。そのことで住民の信頼を得られ、有効な内部被曝対策にも繋がるのです」


<給食の放射能測定を行う自治体の例>
●福島市(福島県)
ベラルーシ製の放射能測定器4台を導入。小中学校と特別支援学校計73校の食材3~6品を測定。給食センターは週1回、単独給食実施校は月2回程度。

●川口市(埼玉県)
福島市と同様の測定器(130万円)を3台購入。全小中学校71校を対象に使用量の多い食材3~6品目を南平学校給食センターで前日検査。検出限界値は20Bq/kg。

●つくば市(茨城県)
2つの学校給食センターで毎日、使用食材2~3品目を前日に測定。公立保育所分も測定。日立アロカメディカル製測定システムを導入。検出限界値は30Bq/kg。

●栗原市(宮城県)
使用食材と調理後の給食をガンマ線スペクトロメーターで測定。検出限界値は10Bq/kg。結果は2週間ごとに公表。さらに台数を増やし市民向けの出張測定を計画。

●常総市(茨城県)
小中学校19校と市立・私立の保育施設11か所が対象。日立アロカメディカル製測定システムを導入し、毎日1品を測定。検出限界値30Bq/kgを市独自の規制値に。

●横浜市(神奈川県)
小学校1校を対象に使用予定の全食材を毎日、前日に検査。牛乳・パン・コメは横浜市衛生研究所、それ以外は2つの検査機関に委託。検出限界値は3Bq/kg。

●横須賀市(神奈川県)
小学児童への提供食1食分を、1週間(5日分)ごとに検査機関で事後測定。月1回、3品目ずつの事前サンプリング測定も実施中。検出限界値は1Bq/kg前後。

【早野龍五教授】
東京大学大学院理学研究科。’52年生まれ、専門は素粒子原子核物理学。反陽子ヘリウム原子の研究で’08年度仁科記念賞、’09年中日文化賞を受賞 
⇒学校給食を放射能測定する自治体リスト に続く
http://nikkan-spa.jp/107479

【早野龍五教授】
東京大学大学院理学研究科。’52年生まれ、専門は素粒子原子核物理学。反陽子ヘリウム原子の研究で’08年度仁科記念賞、’09年中日文化賞を受賞

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