2012年1月26日木曜日

班目春樹 という 輩。

ドイツ語好きの化学者のメモさんのブログより



今回の東北地方太平洋沖大地震と、それに続く大津波による福島第一原発の被害は、単に大規模自然災害の凄まじさを見せつけただけでなく、電力会社の原子力発電所事業は国策民営なのだということを再認識させた

政府・省庁傘下には、原子力関係の委員会や審議会、そしてそのまた下部組織のワーキンググループが多数ある。
そのうち内閣府には、原子力委員会と原子力安全委員会があり、毎週のように会議が行われている。
www.aec.go.jp/ (原子力委員会)
www.nsc.go.jp/index.htm (原子力安全委員会)

私は原子力委員会の方ばかりチェックしていて、原子力安全委員会については手薄だった。
今朝、原子力安全委員会のサイトを見ていたら、委員長がなんと、不適切発言で有名な班目春樹・東大教授だった。
東大工学研究科原子力専攻の教員一覧と班目(まだらめ)教授の研究室HP、そして教員紹介文は次の通り(略歴でも明らかなように、現・東芝で勤務経験あり)。www.nuclear.jp/cgi-bin/tokai/staff.cgi
www.nuclear.jp/~madarame/ (4月4日時点でアクセス不能
www.t.u-tokyo.ac.jp/faculty/t_meibo/84824218.html

委員長就任は2010年4月21日付で、その日の第27回臨時会議で報告があった。
委員互選による選出とのことだが、どういう点で班目教授が適任なのか、その選考理由などは明かされていない。
www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2010/genan027/index.html
www.nsc.go.jp/anzen/shidai/genan2010/genan027/siryo1.pdf

この日の速記録を読むと、班目教授は、新委員就任と同時に新委員長に任命されて少々当惑しているように思えたが、これまでも様々な委員会・審議会で委員長を経験しているので、政府・省庁とのコネを最大限に活用することだろう。
www.nsc.go.jp/anzen/soki/soki2010/genan_so27.pdf

【それでは、最初にちょっと新任の挨拶をさせていただきます。
私の場合は、新任の委員ということと、委員長ということと、両方ということになります。実は私は30代の前半から通産省の顧問会のメンバーになりまして、それから安全規制行政のお手伝いというのは長くしてございます。ただ 、これはずっと一次行政庁のお手伝いで、実は安全委員会のお手伝いというのは今まで1回もやったことはございません。そういう意味では、ぜひ各委員のご協力を得まして、この委員長の職責を何とか果たしていきた いと思いますので、どうかご協力のほどよろしくお願い申し上げます。】


バカ正直なのか謙遜なのか、こんなことで内閣に助言する委員長として適任なのだろうか。
「これまでの経験を生かしてリーダーシップを発揮する」 とでも宣言してほしかった。

こんな班目委員長だが、首相官邸で開催されている原子力災害対策本部に、ほぼ毎日出席している

解説によれば、原子力安全委員会の設立には法的根拠があり、強い権限が付与されていると紹介されている。

【…原子力を安全に利用するための国による規制は、直接的には経済産業省、文部科学省等の行政機関によって行われていますが、原子力安全委員会は、これらから独立した中立的な立場で、国による安全規制についての基本的な考え方を決定し、行政機関ならびに事業者を指導する役割を担っています。このため、内閣総理大臣を通じた関係行政機関への勧告権を有するなど、通常の審議会にはない強い権限を持っています。 】

私が心配なのは、この斑目委員長は、これまでの不適切発言が批判されているため、変な助言を内閣にしているのではないか、ということである。
「通常の審議会にはない強い権限を持っている」 のに、班目委員長が会見をしないのは、不適切発言を警戒しているのか。
この班目教授は、柏崎・刈羽原発が被害を受けた中越沖地震の後に、通産省の委員会で委員長を経験している。
中越沖地震における原子力施設に関する調査・対策委員会
www.meti.go.jp/committee/gizi_8/9.html#meti0004442

ところが過去の発言などから、委員長として不適切であると、原子力資料情報室が抗議していた。
しかしこの抗議を無視し、最後まで委員長の職を続けた。
cnic.jp/modules/news/article.php

『六ヶ所村ラプソディ』 班目春樹教授発言」 の一部を掲載しておくので、どんな人物なのか考えてほしい。

【…
だって、例えばですね、原子力発電所を設計した時には、応力腐食割れ、SCCなんてのは知らなかったんです
だけど、あの、まだいろんなそういうわかんないことがあるから、あの、えーと、安全率っていうかですね、余裕をたーくさんもって、でその余裕に収まるだろうなーと思って始めてるわけですよ。
そしたら、SCCが出てきちゃった。
で、チェックしてみたら、まあこれはこのへんなんか収まって良かった、良かった。
今まで、良かった良かったで、きてます。
ただし、良かったじゃないシナリオもあるでしょうねって言われると思うんですよ。
その時は、原子力発電所止まっちゃいますね。
原子力発電に対して、安心する日なんかきませんよせめて信頼して欲しいと思いますけど。
安心なんかできるわけないじゃないですか、あんな不気味なの

最後の処分地の話は、最後は結局お金でしょ
あの、どうしても、その、えーと、みんなが受け入れてくれないっていうんだったら、じゃ、おたくには、今までこれこれっていってたけど2倍払いましょ。それでも手を挙げないんだったら、5倍払いましょ。10倍払いましょ。どっかで国民が納得することがでてきますよ。】

中立な立場と言っている原子力安全委員会の委員長が、上記のような不適切発言をしているだけではなく、原発推進派の東芝で勤務していた経歴は、私の懸念を増幅させる要因にしかならない。

官邸から出てきた班目委員長をどこかのメディアがつかまえて、何か発言を引き出してほしいものだ。

追記(3月21日):
東京電力に対しては、柏崎・刈羽原発の立地自治体から、3月20日に要請文が届いた。
原子力安全委員会では今後、東京電力の対応策について審議することになるだろう。
www.tepco.co.jp/cc/press/11032004-j.html

【…
そうしたなか、本日、新潟県、柏崎市、刈羽村より、東北地方太平洋地震による原子力災害を踏まえ、当社に対して柏崎刈羽原子力発電所の安全対策等について、抜本的な見直しを行い、万全の対応をとることを求める要請文書を受領いたしました。

当社は、このご要請を真摯に受け止め、今後、柏崎刈羽原子力発電所の安全対策について、万全の対応をとるべく、速やかに検討を進めてまいります。】

リスクを考えるときは、その発生率の大小だけではなく、被害の大きさを考慮する。
リスク・危険性の話は、これまで何度も言われていることなので、特に新しいことでも、独自の意見でもない。
ゼロトレランス(許容度ゼロ・絶対反対)という意見もあるが、コストを度外視して電力料金倍増でもよければ、達成できるかもしれない。

また、「週刊金曜日」(3月18日号)では、石橋名誉教授にインタビューしているので、その一部を引用しておこう。
www.kinyobi.co.jp/backnum/tokushu/tokushu_kiji.php

【「既存の原発の震災リスクを総点検して、リスクが高い順に段階的に閉鎖・縮小するプログラムを考えることです。…
地震列島の日本で電力を大幅に原発に頼るのは、電力安定供給の点でも非常に危険な選択。野放図な電力消費を抑制し、自然エネルギーの活用拡大を含む分散型発電システムの構築こそ目指すべきです」】

追記(3月26日):
「週刊金曜日」(3月25日号)では、「原発震災」 の特集を組んでいる。
班目委員長の名前は出てこないが、東京電力と政府の委員会の対応が批判されている。

また、22日の参議院予算委員会に呼ばれた班目委員長は、福島みずほ議員の質問に対して、「想定外だった。反省している。謝罪する気はある。」 などと答えている。
正式な議事録はまだ公開されていないが、既に様々なブログやツイッターなどで紹介されている。

ちなみに、班目委員長の年頭所感を引用しておこう。
ここでも地震対策に触れているが、耐震性のことばかりで、津波のことは一言もない。
www.nsc.go.jp/info/20110106.html


【…原子力安全委員会といたしましては、今後も原子力施設の耐震安全性評価は重要課題だと考えており、全力で取り組んで参ります。この場をお借りして、審議をお願いしている耐震安全性評価特別委員会や試験研究炉耐震安全性検討委員会の先生方に、感謝の意を表したいと存じます。

…それは対話の重視です。対話による相互理解を基盤にしてこそ、原子力安全は堅固となるのです。ここで言う対話には、事業者と一般市民、規制側の者と一般市民の対話も含みますが、特に大切なのは、事業者同士の対話、規制側の者同士の対話、そして事業者と規制側の者の対話です。もちろん、監督される者と監督する者とが馴れ合ってはいけません。立場の違いはわきまえなければなりません。しかし考えてみると、事業者も規制側の者も、原子力安全を強く願っているという点では同じで、両者は決して対立関係にあるわけではありません。

原子力安全委員会の取組み全般に対し、皆様からどしどしご意見をいただければ幸いです

最後になりますが、平成23年は、我が国はもちろん世界中において原子力安全がしっかり確保される年であることを祈念し、年頭の所感とさせていただきます。】

追記(3月27日):
26日に班目委員長は、「魚を食べても大丈夫」 と発言した。
朝日新聞の記事は次の通り。
www.asahi.com/special/10005/TKY201103260409.html

【福島第一原発事故の影響で、原発からの排水が基準の千倍を超すなど、周辺海域で放射能汚染が深刻化している。これに対し、原子力安全委員会=班目(まだらめ)春樹委員長=は26日、「放射性物質は海では希釈、拡散される」として、人が魚を食べてもまず心配はない、との見方を示した。

海洋生物への影響について、原子力安全委員会は26日、「排水口付近では濃度が高いが、魚介類に取り込まれるまでに潮流に流されて拡散、希釈される。さらにヨウ素は半減期が8日と短いため、人が食べるまでには相当低減していると考えられる」とした。

一方で、財団法人海洋生物環境研究所の御園生(みそのう)淳研究参与(環境放射能)によると、濃度が高いと魚類が取り込んだ放射性物質が体内で最大で海水の30~50倍の濃度まで蓄積されることもあるという。半減期が30年のセシウムは心配が残るという。「2~4カ月で魚に影響が出ることもある。継続的な広域の調査が必要。消費者や漁業者の安心にもつながる」と指摘した。】

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