松井英介氏 「低線量」内部被曝による健康障害 岐阜環境医学研究所所長 松井英介

「低線量」内部被曝による健康障害
岐阜環境医学研究所所長  松井英介

はじめに

去る 9 月 11・12 日、福島県立医科大学で開催された
 International Expert Symposium in Fukushima(国際専門家会議)は、
日本財団(会長:笹川陽平)が主催し、笹川記念保健協力財団、
福島県医師会、福島県立医科大学、および放射線医学総合研究所が共催し、
「放射線と健康リスク―世界の英知を結集し福島を考える」
なる謳い文句を掲げて、一般市民を締め出す形で開催されました。

この会議は、
「放射線は、にこにこ笑っている人には来ない。くよくよしている人に来る。」
という発言で顰蹙をかった山下俊一氏を中心に、
UNSCEAR(国連科学委員会)
・ICRP(国際放射線防護委員会)
・IAEA(国際原子力委員会)
・WHO(世界保健機関)など海外からのゲストを交え、
「最前線の研究者」を結集して開催されました。

しかし会議は、「年間100mSv 以下は大丈夫!」とする山下氏の発言に
お墨付きを与え、
「低線量」放射線による内部被曝を軽視する内容に終始しました。
一方、今年 4 月初めベルリンで開かれた
チェルノブイリ 25 周年国際会議では、チェルノブイリ原発事故によって
汚染されたベラルーシやウクライナなどで、がんや先天障害のほか
Ⅰ型糖尿病や白内障の患者が事故前に比べて増加している
深刻な現状が報告されました。

チェルノブイリ事故を上回る東電福島原発事故による自然生態系破壊を
経験した今、私たちはチェルノブイリを経験から学び、
福島県など汚染地域で今後発症するであろう
「低線量」放射線内部被曝による晩発障害から
子どものいのちと健康を守るため、できる限りの努力をしなければなりません。


第 1 章  東電原子力発電所事故と健康障害


(1)東電福島原発事故による健康障害

(a)内部被曝を無視した政府やマスメディアの報道

これからどうやって生きていこうか?
程度の差はあっても、今回の原発事故に遭遇して、
自分自身の人生や小さい子どもの将来について考えている方は
多いのではないでしょうか。
各地で行なわれている今回のできごとについての勉強会には、
主催者の予想を超える人びとが集まります。新入生歓迎の企画として、
あえて深刻なこのテーマを取り上げた学生たちもいます。
東京、大阪、名古屋などでは高校生や若者が呼びかけたデモに
多くのひとが参加しています。久しくなかったことです。
去る9月19日東京では、
6万人を超える集会とデモによる一大抗議行動が行われました。

一方、政府や東京電力職員や大学教授らは、テレビに登場して、
「直ちに健康への影響はない」などと繰り返しています。
厚生労働省のホーム・ページを見ると、

妊娠中の方、小さなお子さんをもつお母さんの、
放射線へのご心配にお答えします。~水と空気と食べ物の安心のために~

というタイトルのパンフレットを読むことができます。
そこには、母乳も水道水も空気も食べ物も、
心配せずに今までどおり与えてよいと書いてあります。

今回の原発事故がレベル 7 だと発表された後も、記述は変わっていません。

文部科学省は、
去る 4 月 19 日福島県下の幼・保育園、小中学校などで、
屋外の放射線測定値が一時間 3.8μSv以上になる場合、
校庭での活動を一日一時間以内に制限するよう通知しました。

これは
 ICRP の暫定基準値
・年間 20mSv までの目安をもとにしたものだとしています。

これに対して直ぐにドイツから鋭い批判がなされました。
年間 20mSv はドイツの原発労働者の基準です。
それを日本政府は子ども基準値としたのはなぜなのかと言うわけです。
この基準値をめぐっては、国の内外から引き続き抗議の声が上がりました。
日本政府はこれら抗議の世論に圧されて、年間 1mSv を表明するとともに、
除染キャンペーンを展開してきました。
ところが、除染によって 1mSv 以下にする目処が立たないと見たのか、
国の放射線審議会基本部会は、
平常時の一般住民の被曝線量限度を緩和し、
年1mSv から 20mSv 未満の間で
「中間目標」を設定する提言をまとめることを、2011 年 10月 6 日公表しました

さらに注意しなければならないのは、
この被曝線量限度がセシウム137 だけに関するもので、
ストロンチウム 90 や
プルトニウム 239 などその他の核種による被曝を考慮していない点です。


(b)「低線量」放射線内部被曝に基づく晩発障害のリスク

今回の事故報道に接して、私が一番奇妙に思うことは、
私たちの暮らす自然環境に放出された
放射線による内部被曝の危険性についてほとんど触れられないことです。

もうひとつの不思議は、
時を経て出てくる先天障害や白血病・がん・免疫異常・循環器疾患などの
晩発障害には、ほとんど触れられないことです。
もちろん急性障害がないわけではありません。
今こうしている間にも、いのちを削りながら事故を起こした原発の現場で
働いている何千人(何万人かもしれません)もの方々がいらっしゃいます。
無防備な状態で作業をしていて足の皮膚に火傷を負い、
放射線医学総合研究所に入院した作業員のことは報道されましたが、
高度に汚染された現場あるいは現場近くで働いているひとの
健康状態に私たちはもっと想いを馳せるべきだと思うのです。


(c)「低線量」放射線内部被曝による健康障害のメカニズム

外部被曝が
おもにガンマ線が外から(多くの場合短時間)身体を貫いたときの
影響であるのに対して、
内部被曝は、
身体の中に沈着したさまざまな放射性物質(核種)からくり返し長期間
にわたって照射される、おもにアルファ線とベータ線による健康影響です。
アルファ線やベータ線を出す核種の小さな粒が
沈着した部位のまわりの細胞にとって、
それらの線量は決して低線量ではありません
(「放射線は、可視光線と同様、距離の二乗に反比例して減弱する」)。

このことが、
内部被曝を外部被曝から明確に区別しなければならない理由です。
しかも、
アルファ線による細胞レベルの生体影響(分子の切断→DNA 障害)は
ガンマ線に比べると、桁外れに大きいのです。


ベータ線もガンマ線にくらべ非常に大きな DNA 障害を与えます。

ICRP は、
ガンマ線 1 に対してアルファ線に 20 という係数を与えていますが、

ベータ線はガンマ線を同じ 1 としています。

ICRP のアルファ線およびベータ線の健康影響は、
ともに著しい過小評価になっていると言わねばなりません。

1988 年に結成された ECRR(ヨーロッパ放射線リスク委員会)は、
「低線量」放射性物質による内部被曝がもたらす晩発障害
=さまざまな健康障害に警鐘を鳴らしました。
1997 年、一定レベル以下の「低線量」放射線廃棄物を
その他の産業廃棄物と同様に処理しても良いとするクリアランス制度が 
EU 議会に上程されようとしたとき、これにストップをかけたのがECRR です
(ちなみに日本では、クリアランス制度が国会で議決されてしまっています)。
この制度をめぐる激しい議論を経て、
ECRR は ICRP から独立した民間機関(ICRP も民間の期間です)として、
EU 議会で認知されました。
内部被曝を無視する日本政府は、
年 100  ミリシーベルト以下は健康障害なしとしています。
「低線量」であっても放射性物質の微小粒子が体内に留まった場合、
重篤な健康障害(DNA 障害)をもたらすとする ECRR のリスク曲線と
日本政府の折れ線と間が、
日本政府と東電が無視している健康影響リスクです(図 2-5)。



4
(d)生態系の中で生きる

私たちは、空気なしでは生きていけません。
私たちのからだは水でできているといっても過言ではありません。
私たちヒトの祖先である小さな生き物は、海で産まれた私たちの祖先は
海の水に近い環境を自らの身体の中に創ったと言われています。
私たちのからだの7割、乳児の場合は8割が、
海の水に近い組成をもった水です。
ナトリウムやカリウムなど塩分がバランスよく保たれた環境
=内部環境の中で私たちの細胞は生きています。

ホルモンの変動にあわせて微調整しながら、体温は一定に保たれています。

心臓は私たちがこの世に生を受けてからずっと
一定のリズムを刻み続けています。

このようないのちの恒常性に支えられて、私たちは、今ここにいます。
そして、私たちは、植物とは違って、ほかの生きもののいのちを
自らのからだに取り込むことなしに、生きていくことができないのです。
今回の事故は、あらためて、私に自分自身のいのちと
まわりのいのちの関わりを考えさせてくれました。
大量の放射性物質を海に放出するとき、あるひとはこう言いました。
海の水で薄まるから、大丈夫!」。
そのひとは、海には生き物がいっぱいいることを忘れていたのかもしれません。
放射性物質をプランクトンが取り込み、それを小さな魚が食べ、
その小さな魚を大きな魚が食べる。
生態系の中でこのような食物連鎖を繰り返すうちに、
放射性物質がだんだん濃くなること、生態系濃縮をご存知なかったのでしょう。

陸上でも同じです。
乳牛は空気を吸って生きています。
空気が汚染されれば、汚染物資を空気とともに肺の中に取り込みます。
できるだけ自然な条件で育てようとしている畜産農家の乳牛は、
アメリカ産の配合飼料ばかり食べているわけではありません。
外に出て草を食べます。土も食べます
草や土が汚染されていれば、それも一緒にからだの中に取り込みます。
茨城産の牛乳からセシウムが検出されたのは、そのためでした。

今回の事故の後、放射性物質は、風の向きによっては
数百キロ離れたところまで運ばれました(図1)。

群馬産の野菜からセシウム137が検出されたのは、風や雲と一緒に運ばれ、
土の上に降り積もり、地下水にも浸透していたセシウムの小さな粒を
野菜が自らの体内に取り込んだ結果でした。

放射線は距離の二乗に反比例して弱くなるから、
福島から200kmも離れた東京は大丈夫と言ったひとがいましたが、
雤雲とともに運ばれてきた放射性物質を含んだ水道水を飲んだ場合、
それはすぐ側にあるのです。

細胞の間に留まった放射性物質の小さな粒子は、距離が近いだけに、
まわりの細胞とDNAに照射される放射線の強さは半端ではないのです。

胎児や小さな子どもは、細胞分裂の速度が速く、
代謝もおとなよりははるかに活発です。

体重あたりでみると、甲状腺に取り込むヨウ素131の量もずっと多いのです。

カリウムはナトリウムなどとともに重要な電解質ですが、
カリウムと似た化学的性質をもったセシウム137の影響は、
子どもにとってずっと深刻だと考えなければなりません。
体重や皮膚の性状、内臓の大きさなどが人間に最も近いとされる
ブタの臓器を使って、
セシウムの体内分布を調べた木村真三氏
(元放射線医学総合研究所研究員)によれば、
セシウム137は心臓と腎臓に最も高濃度に集積していました。
腎臓は排泄臓器ですから水溶性のセシウム137が集中するわけですが、
24時間休みなく働き続ける心臓が
カリウムと類似の挙動を示すセシウム137を高濃度に取り込んでいた
という事実は注目すべき事柄です。

私たち人間の驕りで、放射性物質を不法にばらまき、
いのちといのちを育む生態系を破壊した結果、
子どもたちの健やかな成長は、著しく損なわれたと評価しなければなりません。


6

(e)放射線から身体を守る

放射線から身体を守るには、
放射性物質を身体の中に取り込まないようにすることにつきます。
とくに小さな子どもや赤ちゃんをおなかにかかえたお母さん、
授乳中のお母さんには、特別の配慮が必要です。
早く汚染されたところから避難することが必要です。
それも、個人的ではなく、幼稚園や保育園、小中学校が丸ごと移動できるよう、国と自治体に働きかける必要があります。
受け入れ先では、
子どもたちが安心して暮らし勉強できる環境を整えるべきです。
呼吸とともに肺から吸い込んだり、母乳や牛乳、
水や食べ物とともに消化管から取り込んだ放射性物質の小さな粒は、
身体の中のいろいろな場所で放射線を出しつづけます。

このように、何回も繰り返し長期間にわたって、
ごく近いところから放射線を浴びる内部被曝を、
外からごく短い時間放射線を浴びる胸部X線検査や胃透視検査などの
外部被曝から区別して、健康影響を考えることが大切です。

放射性物質の小さな粒のまわりの細胞にとって、内部被曝の影響は、
外部被曝と比べるとケタ違いに大きいことを、
子どもにも教えないといけません。

ヨウ素131は、甲状腺に集中的に取り込まれます。
これを防ぐにはあらかじめ安定型のヨウ素剤を飲んでおくことによって、
ヨウ素131の侵入をかなり防げます。
14歳以下の子どもでは発がんのリスクが高いので、有効です。
しかしこれはヨウ素131に限ったことで、
セシウム137やストロンチウムなどに有効な薬はありません。
土に降り積もったセシウム137をナタネの栽培することによって、
浄化しようとする試みがありますが、
水に溶けない化合物になったセシウム137が40%ほどあります。
ナタネは不溶性のものを取り込まないので除去は難しく、
セシウム137の半減期は約30年ですから、なかなか厄介です。

人間の身体の中でも、不溶性の核種はいつまでも留まるので、
それによる健康影響はより大きいのです。
マスクをすることによって粒の大きなものはある程度防げますが、
小さなものは細気管支から肺まで入り込みます。
細菌やヴィールスと違って、野菜や魚の身体に取り込まれた
放射性物質の微粒子は、熱を加えても消毒はできません。

放射性物質を浴びた父親の精子を介して、
あるいは母親の卵子を介して次の世代に障害が現れることは、
世界各地に実例があります。

今回の核(原子力)事故で自然界に放出された放射性物質の量は、
人類史上例を見ないものであると考えられます。

その意味でも世界中から注目されていますが、
1930 年代から1940 年代の無差別皆殺し戦争以来の
深刻なできごとだと考えるべきではないでしょうか。

これから気の遠くなるほど長くつづく放射線による健康影響をどうするのか。
どのように生きていけば良いのか。
子どもたちを交えて、私たち一人ひとりの生き方の問題として、
議論を深めて行きたいものです。
7

第 2 章  郡山市における放射線による晩発障害の予測
―チェルノブイリ原発事故に学ぶ

福島県郡山市の環境放射線汚染度と近似の汚染が確認されている
ベラルーシやウクライナなどチェルノブイリ原発事故汚染地域における
健康障害調査データから、
郡山市で今後発症するであろう種々の健康障害=晩発障害を予測します。

(1)チェルノブイリ原発事故
1986 年 4 月 26 日ソビエト連邦(現ウクライナ)の
チェルノブイリ原子力発電所 4 号炉で起きた人類史上最悪の事故です。
後に定められた国際原子力事象評価尺度のレベル 7 とされました。
今回の福島原発事故もそれと同じレベル 7 と評価されました。
当初ソ連政府は、この事故を隠しましたが、
事故翌日の 27 日にスウェーデンのフォルスマルク原発で
この事故による放射性物質が検出され、世界中が知るところとなったため、
28 日に公開に踏み切りました。ソ連政府が近くに住む住民の避難措置を、
直ぐにとらなかったため、住民は大量の放射性物質を浴びることになりました。
5 月 3 日には日本でも、雤水から放射性物質が検出されました。
ソ連政府は炉心内への鉛の大量投入、液体窒素を使って炉心を周囲から
冷やす処理を行ない、
5 月 6 日までに大規模な放射性物質の漏出は止まったと発表しました。
事故から一ヶ月後までに原発から 30km以内の住民 11 万 6 千人は、
全員避難を余儀なくされました。しかし、留まった人もありました。
本橋成一さんのドキュメンタリー映画「アレクセイと泉」は、
故郷に住み続けることにした年寄りたちとひとりの若者・アレクセイの物語です
そして、もうひとりの主人公が、汚染されていない数百年前の水が
こんこんと湧き出る泉なのです。高濃度の汚染は、ウクライナだけでなく、
ベラルーシやロシアにも拡がり、多くの健康被害をもたらしました。
事故を起こした 4 号炉をコンクリートで封じ込めるために(石棺)、
延べ 80 万人もの人びとが、国内だけでなく外国からも動員され、
この人びとからも健康障害が多発しました。


舞台となる〈泉〉は、1986年4月26日に起こったチェルノブイリ原発(旧ソ連・現ウクライナ共和国)の爆発事故で被災した、
ベラルーシ共和国東南部にある小さな村ブジシチェにある。
この村の学校跡からも、畑からも、森からも、採集されるキノコからも放射能が検出されるが、
不思議なことに、この〈泉〉からは検出されない。
「なぜって?それは百年前の水だからさ」と、村人たちは自慢そうに答える。
この百年、人間は何の豊かさを求めてきたのだろう。
《水の惑星=地球》の強い意志のようにこんこんと湧く〈泉〉は、私たちに"本当の豊かさとは何か"を静謐に語りかける。

(2)東電福島第一原発事故による自然環境汚染と晩発障害

東電福島第一原発事故によってひろく福島県の自然環境を汚染した
各種放射性物質の総量はチェルノブイリ事故のそれを超えるとされています。
IAEA への報告書:
放出量の試算値をご参照ください(図 2)。
セシウム 137(物理的半減期 30.0 年)1.5×10 16 Bq と、
ストロンチウム 90(物理的半減期 29.9 年)1.4×10 14 Bq を比較すると、
セシウム 137 に比べてストロンチウム 90 の放出量は約 100 分の 1 です
しかし、
ストロンチウム 90 の健康リスクは、セシウム 137 の約 300 倍もあるので、
決して無視できる値ではありません。
また、
プルトニウム 239(物理的半減期 24065 年)3.2×10 09 Bq と、
セシウム 137 やストロンチウム 90 に比べると、放出量は数桁少ないのですが、
物理的半減期は 2 万 4 千年と長く、
自然生態系や人体内での積算線量も高くなります。
図2:2011 年 3 月 16 日までの大気中への放射性物質放出量試算値
(2011  年 6  月 6  日公表  原子力安全・保安院  IAEA  報告書資料より)


9
さらに、
プルトニウム 239 が出すアルファ線の体内局所でのイオン化作用は強力で、
水の分子やタンパク質の分子を高率に切断するため、
DNA に修復不可能なキズをつける頻度が高いのです。
これが先天障害や悪性腫瘍、
さらに免疫不全や
Ⅰ型糖尿病、
心臓循環器疾患など晩発障害の原因となります。
量が総体的に少ないからとして、
人間が創り出した最強の毒物を無視することは許されません

(3)郡山市における放射線による晩発障害の予測
高いのです。これが先天障害や悪性腫瘍、さらに免疫不全やⅠ型糖尿病、心臓循環器疾患など晩発障害の原因となります。量が総体的に尐ないからとして、人間が創り出した最強の毒物を無視することは許されません。


10

2011 年8 月30 日に文部科学省が発表した福島県内各地の
土壌汚染度調査の結果
(甲50号証「土壌の核種分析結果(セシウム134、137)について」)を見ると、
深刻な汚染が確認できます。

郡山市内では118  ヶ所の測定を行っていますが、
その単純平均値はセシウム137  の濃度で99.7kBq/m 2です。
これは、2.7Ci / km 2  に相当します。

また、今回原告となった14名の子どもたちが通学している
七つの学校周辺のセシウム137測定値の平均値は、
189.768kBq/m2=5.13Ci/km 2、5Ci/km 2  以上となっています。

ウクライナの放射能汚染定義および年間被ばく線量と1時間当たりの線量率は、オレグ・ナスビット、今中哲二:「ウクライナでの事故への法的取り組み」今中哲二編「チェルノブイリ事故による放射能災害―国際共同研究報告書」【技術と人間 1998年出版】P.48の表1を参考にしました。

これらの値をもとに、福島県郡山市において今後予想される放射性物質の
内部被曝によるさまざまな晩発障害を、
チェルノブイリ原発事故によって深刻な放射性物質による汚染と、
それによるさまざまな晩発障害を背負いつつある
ベラルーシやウクライナにおける調査・研究結果から予想します。
比較検討のために、参照した調査・研究結果は、
チェルノブイリ事故 25 周年記念国際会議で紹介された 
Annals  of  the  New  York  Academy  of Sciences   Volume1181
(Dirctor and Executive Editor Douglas Braaten)の論文集から引用します。

(4)チェルノブイリ事故 25 周年記念国際会議で示された研究結果をもとにした推定チェルノブイリ事故 25 周年を記念して、2011 年 4 月 6 日から 8 日までドイツのベルリンで国際会議が開かれました。その会議のプログラムとレジュメなどは、次の website で読むことができます。http://www.strahlentelex.de/tschernobylkongress-gss2011.htmhttp://www.strahlentelex.de/Abstractband_GSS_2011.pdf
http://www.strahlentelex.de/Yablokov%20Chernobyl%20book.pdf
上記国際会議で紹介された、 Annals  of  the  New  York  Academy  of  
Sciences Volume1181(Dirctor and Executive Editor Douglas Braaten)
の論文集から、
この間にウクライナやベラルーシで確認された先天障害やがん、
その他の疾患のデータのいくつかを引用し、
郡山市において今後予想される
放射性物質の内部被曝によるさまざまな晩発障害を推定します。

(a)先天障害の増加
まず、ベラルーシからの先天障害に関するレポートです。
表 5.68 と表 5.69 をみてください。表 5.69 は表 5.68 から抜粋したものです。

高濃度汚染地域[  A.Heavily  contaminated  districts:  >5Ci/km2]で
生きて産まれた新生児1000 人の中に、
事故の前には 4.08 だった先天障害が
事故後の 1987 年から 88 年には 7.82と倍近くに増えています。
また、低濃度汚染地域[B.Less contaminated districts: <1Ci/km2] においても、
尐し遅れて、
事故の前には 4.36 だったものが 
1990 年から 2004 年には 8.00に増加しています。ともに統計学的に有意です。
とくに高度汚染地域[  A.Heavily contaminated districts: >5Ci/km2]
のデータは、福島県郡山市の 7 つの学校の子どもたちが
今後背負うであろう健康障害を予想する上で、
きわめて重要なものだと評価しなければなりません。
さらに低濃度汚染地域[B.Less contaminated districts:<1Ci/km2]のデータは、郡山市のより低濃度汚染地域においても、
先天障害の増加を予想させるという意味で、きわめて重要です。




11
http://www.strahlentelex.de/Abstractband_GSS_2011.pdf
http://www.strahlentelex.de/Yablokov%20Chernobyl%20book.pdf
上記国際会議で紹介された、 Annals  of  the  New  York  Academy  of  Sciences Volume1181(Dirctor and Executive Editor Douglas Braaten)
の論文集から、
この間にウクライナやベラルーシで確認された先天障害やがん、
その他の疾患のデータのいくつかを引用し、
郡山市において今後予想される放射性物質の内部被曝による
さまざまな晩発障害を推定します。

表 5.68 には、先天障害が疾病別にリストアップされ、
出生 1,000 人当たりの数が示されています。
疾病別リストは上から、
全先天障害患者数、
無脳児、
脊椎ヘルニア、
多指症、
ダウン症、
多重先天障害、
新生児死産児全体に占める先天障害児の比率を示しています。
高濃度汚染地域[  A.Heavily  contaminated  districts:  >5Ci/km2] 、
低濃度汚染地域[B.Less contaminated districts:<1Ci/km2]ともに、
原発事故後先天障害発症数・率が増加しています。



図 5.15 は、脚や腕や胴体の先天障害を背負った子どもたちです。

12
contaminated districts:<1Ci/km2]ともに、
原発事故後先天障害発症数・率が増加しています。
図 5.15 は、脚や腕や胴体の先天障害を背負った子どもたちです。
表 5.72 は、ベラルーシで公式に登録された出生 1,000 人当たりの
先天障害児数を、セシウム 137 による汚染のレベル別年代別に
比較したものです。
クリーンとされている 1Ci/km 2未満の汚染レベルにおいても、
チェルノブイリ原発事故前 1982-1985 年の 4.72 に比し、
事故後 1987-1992 年では 5.85 人と先天障害児数の増加が見られました。
郡山市の汚染レベルに相当する 15Ci/km 2 の汚染レベルにおいては、
先天障害児数の増加はより顕著でした。
全ての汚染レベルにおいて、チェルノブイリ原発事故前後の違いが有意でした。


(b)悪性腫瘍の多発
つぎにがんのデータです。
まず表 6.1 をご覧ください。
この表は、チェルノブイリ事故以前と以後の
人口 10 万人対がん発症数の推移を、
ベラルーシのゴメル州とモギレフ州の、
それぞれセシウム 137 による汚染度合いの異なる
 3 地域別に比較したデータです。
それぞれの地域の 15 Ci/km2 以上ならびに
 5~15 Ci/km2 の汚染地域において、
1986 年以降がんの発症が有意に増加していることが、示されています。
さらにモギレフ州においては、5 Ci/km2 以下の地域においても、
原発事故後がんの発症数が事故前の 248.8 から 306.2 へと
有意に高くなっていることが示されています。
前述のとおり、福島県郡山市の債権者の子どもたちが通う学校周辺では
平均汚染度は5Ci/km2 以上であり、
ゴメル州とモギレフ州の 5 Ci/km2 以下汚染地域において、
がん発症が有意に増加していることを示すこのデータは、
今後債権者の子どもたちにがんが多発するリスクを予想させるもので、
きわめて重要なものだと評価しなければなりません。




岐阜環境医学研究所 松井英介
































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