2011年11月22日火曜日

アーバンプレッパーさんのブログより

行政の安価な労働力として使われる除染ボランティア

環境省の細野大臣が福島県伊達市で、住民といっしょになって除染活動に精を出している姿が、これでもかというくらい報道されているのですが、これと機を一にして環境省が除染ボランティアを募集し始めました。

すでに応募者が福島市や伊達市に入って除染作業を始めています。
その現状について藍原寛子氏の現地レポートしています。

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videonew.com 11月18日(金)収録:
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今週は、全国から公募した市民による除染ボランティアの現状と課題について。

福島県内の北部(県北地方)の福島市と伊達市では、10月の下旬から、広く一般公募した市民による除染が行われています。

先週に入ってから、環境省がホームページで福島市、伊達市のボランティアの募集を始めて、まさに国と一体となって、ボランティアの除染作業への参加を呼びかけています。

これは11月11、12日の土日に行われた福島市大波地区での除染活動の報告です。

この福島市大波地区は、特定避難勧奨地区の指定が検討された区域で、福島市内でも特に放射線量の高い地域になっています。

福島市で除染作業ができるのは、雪が降り始める12月中旬までで、それまでに少しでも除染を進めようということで、毎週土日、除染ボランティアによる作業が行われることになります。

1日あたり50人までという参加枠があって、環境省の呼びかけに対して、ほぼ毎回、定員が埋まっています。
これは大波地区だけで50人ということです。

首都圏をはじめ西日本からも、会社員、主婦、企業内ボランティア・チーム、原子力関連の仕事をリタイアした人など、さまざまな人がボランティアとして、自費で大波地区に駆けつけました。

募集の中心は環境省ですが、ボランティアの受け付け窓口は、福島市の場合なら福島市社会福祉協議会、伊達市の場合なら、コープふくしまという別な団体が受付に対応し、除染の実作業の段階になってから実施主体は福島市にバトンタッチされるという流れになっています。

除染活動は、福島市、伊達市が中心で、ボランティアの活動自体は、福島市が進めているふるさと除染計画という全体的な計画の一部として行われています。

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福島市大波地区。田園風景が広がる。

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専門官から除染についての注意事項が説明される。
「呼吸によって肺の中に吸い込む、これが最も危険です」。

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真剣に聞くボランティアの人たち

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支給されるみのは、マスク、線量計、手袋、手ぬぐい。
こんな薄っぺらなマスクでは内部被曝を防げない。

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個人線量計(外部被曝の積算量しか計れない)

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業者が民家の周囲の土を除去した後に新しい土を入れる作業

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家の裏山の斜面に積もった落ち葉を手で取り除く

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危険行為!側溝に手を入れて落ち葉を取り除く(本来は、やらない)

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民家1軒を簡易除染しただけでトラック一台分のゴミ

今回、ボランティアの助けを借りて除染を行ったこの家の主、山岸さんは、
「大波地区も高齢化が進んで、若い人たちが子供をつれて避難してしまったので、人手がなくなっている。
老夫婦たった二人では除染は難しいので、ボランティアの人たちに感謝している」と話しています。

このボランティア活動に参加した人たちの中には、福島県からいったんは避難したものの、何か郷土のために役に立ちたいという思いで、土日だけ福島に戻っている人たちもいるようです。
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佐藤三男課長:
「今の福島県の現状では、ボランティアのみなさんのご協力がないとスムーズに除染できません。
そのために、全国に募集をかけて集っていただいています。

ボランティアに方たちには、一人ずつ積算線量計を身に着けていただいています。
年間で1ミリシーベルトに達しない形で、活動をお願いしています。

ただ、福島県に限らず、ボランティアの方々のお住まいになっている環境からも自然放射線を受けていると思われるので、放射線被曝の最終的な管理はボランティアの方々のほうにお任せするしかないという状況です」。
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ボランティアに参加しながら、ボランティア活動の実状についてリサーチをしている国際協力NGOセンター(JANIC)の竹内俊之氏は、日曜日、ここ大波地区の除染ボランティア活動の状況をリサーチした後、このように語っています。

「NPO活動は安価な行政サービスになってはいけない。

今、福島市で行われていることは、まさにそれで、ボランティアの人たちの善意を利用するようなかたちで、安価な行政サービスを提供することになっている。

そういう点で、行政が出てくることに疑問を感じている人たちがいる。

少なくとも、ボランティアとは本人たちの自由意志に基づくものであり、自然発生的に問題解決のニーズを自分たちで見つけ出すというものであるはず。

それが、行政、国の呼びかけで行うというのは、いったい何なんだろうと今回は感じた」。


今回の福島市大波地区の除染ボランティアも、当然のことながら無償行為。
なんら労働契約、雇用契約を結ばない人たちに除染作業をやってもらうことが、果たして妥当なことなのか、という議論が地元からも上がっているといいます。

福島市の募集情報によると、軽作業が中心ということになっていますが、実際に藍原氏が現場を取材してみると、土砂を入れたり、崖の斜面を登って落ち葉を手で払い落としたり、側溝に手を入れて濡れた落ち葉を手ですくったり、というようなかなり危険な作業も入っていたといいます。

被曝防護の点で、福島市は、ちゃんとボランティアに対して対策を講じているのでしょうか。
市の側は、一応の、というか最低限の被曝防護策は取っていたようです。

ただ、福島市の防災専門官が「絶対に作業中はマスクを取らないように」と念押ししていたように、呼気から放射性物質を肺に吸い込まないよう注意を呼びかけていたにしては、ボランティアに支給されたマスクは花粉症防護用という、いささか頼りないもの。
それを重ねて使ってください、ということらしい。

もっと防塵性の高いマスクが提供されてしかるべき、という疑問は残る。

また、帽子の代わりに頭に巻く手ぬぐいが支給されていた。

ボランティアの人たちは、福島市に来る前にホームページをよく読んでいて、除染作業を終えた後は、集会所のような場所でちゃんと着替えて帰っていったようたです。
(そのまま電車やバスに乗って帰ってしまうと、隣の席に座った人が危険に晒されることになる。また家族も被曝させてしまう)

7マイクロシーベルトという被曝環境では、少しでも風が強かったりすると洋服に放射性物質が付着するでしょうから、そのまま着替えずに帰るなどということは、あってはならないことです。
このあたりはボランティアの人たちも心得ていたようです。

作業を終えると個人線量計を返却して、作業中に浴びた累積線量(外部被曝のみ)が記されたカードが渡されます。
そのデータは福島市のほうでも記録され、何度も除染ボランティアに参加する人は、いままでの積算量の総計を知ることができるというわけです。

ただし、個人線量計は、その都度回収するので、作業後の被曝線量を知ることはできません。

作業後、しっかり着替えたものの、体のどこかに放射性物質が付着していて気がつかなかった。
あるいは、着替えた衣服を洗濯機にかけて何度も洗ったものの、除染はできておらず、そのまま着衣してしまうことによって被曝してしまう、いったことが出てくるわけです。

それはボランティア個人個人の自己責任で管理してください、ということになっています。

「積算線量計は回収せずに、そのままボランティアに与えてしまうことはできないのか」という質問に、福島市側は、「やっと確保した100台なので、そのまま提供してしまうと、次のボランティアの人たちが線量を計測できなくなってしまう」という理由で、その都度回収している、とのこと。

今回、福島市大波地区のボランティアに参加した人たちは、20歳台から50、60歳台までと幅広い年齢層の人たち。
参加者50人を2グループに分けて、2軒の住宅を除染した。作業時間は2~3時間。

【除染ボランティア参加者募集のお知らせ(1)】
を細かく読むと、除染ボランティアは、被曝リスクも自分たちで引き受けさせられるという、完全な自己責任が前提となっています。

昼食、飲み物持参、救急的な絆創膏、塗り薬、消毒液も持参。
その上、福島市社会福祉協議会は、除染作業中の怪我や事故に備えて、ボランティア保険に加入するよう勧めています。

う~ん、少しおかしいぞ、福島市。それとも、相変わらずなのか。

除染ボランティアは誰のためにやっているのか

JANICの竹内さんの見方は、福島市の事前説明にあったような軽作業とはいえず、実際に一定のリスクを伴う作業もやらされているのに、自治体側は、ボランティアを単なる労働力、人足と考えているのではないかと疑義を呈しています。

この危険な作業は、そもそも行政がやるべきではないかと。

ボランティアは、自分たちで社会貢献をしたいという発露から、自らニーズ求めて参加するという性質のものであるのに、上に行政がいて、下にボランティアがいて、という三角形のヒエラルキーの中に組み込まれてしまっている、ということに対して危惧しているのです。

これは、行政が主導して(最低限の)のものしか提供せず、労働力だけよこせ、と言っているようなもので、実質上は、地域の人たちの役に立とうというよりは、行政にボランティアしたことになってしまっているのです。

本来は行政とボランティア・グループは、イコール・パートナーであるはずが、行政が上に立ってしまっている。
もし、そこに行政の人が参加していたとしても、その人は、ちゃんと給料をもらい、単に業務できているだけですから。

残念だったのは、福島の人たちを応援したい、純粋に地域住民の人たちを応援したい、という思いで来ているのに、除染作業が終ったあと、町会長が来て挨拶しただけ。

地元の人たちに、現在の暮らしぶりについて尋ねたり、意見交換する場が用意されず、終ったら、「ごくろうさん」という態度はどんなものか。

ボランティアの人たちが、実際に汗をかいて作業を行い、地元の人たちと会話し、住民たちの本当の苦労をダイレクトに伝えることによって、ボランティアは横断的に広がっていくのです。

それを行政が出てきて縦軸に再構成してしまっているのです。
ボランティアの強さは、あくまでも横に広がっていく力です。

どうしても行政は、情報を隠す(というほどでないにしても、住民とわずかの意見交換をさせない)、という方向に行ってしまうのです。

私は、霞ヶ関ビル近くにある全社協(全国社会福祉協議会)に入って、ほんの短い期間だったのですが、仕事をしたことがあります。
そのとき感じたことは「この組織は、いったい何をやっている組織なんだろう」ということです。

ほとんど動きがないのです。職員は静止した状態でパソコンに向かったまま。内部は水を打ったように静か。

せっかく福島復興のために全力で支援活動をやっているのに、水をさすようなことはしたくないのですが、どうも社協はボランティアということがよく分かっていないようなのです。

社協は、とにかくボランティアを募ることに多大な勢力を傾けています。
そして、それを管理しようとする方向に行っています。

ここに出ているように、縦の線でボランティアを捉えているから、そうした思考になってしまうのです。

福島の子供たちに年間20ミリシーベルト被曝を許容するように国に要求したのは地元福島県でした。
そして、今回、環境省に除染ボランティアの募集をしてくれるように要請したのも福島県です。

細野大臣の「住民といっしょになっての除染活動」も、その伏線と考えると、いやらしいパフォーマンスと映ってしまうのです。

社会福祉協議会のやるべきことは、除染に関係する専門知識を持ったリタイアした人など、幅広い人材を蓄積してある豊富な名簿から選び出し、ボランティアの要望に応じて、指導員として派遣したり、側面サポートに徹するべきではないのか。

ボランティアが十分な活動ができるように、必要な支援をすることであり、またボランティア自身も、気軽に社協に要望を出したり、提案できるような仕組みをつくることが重要です。

むろん環境省のホームページを使って、一般から除染ボランティアの募集をかける際も、各NPO団体からの要望の下に行われるべきなのです。

どうも、これは間違っています。

なぜかというと、ボランティアの自発性が国や自治体に吸い取られてしまっているからです。
ボランティアの底力は、純粋な社会貢献への欲求の発露です。

行政が関与しないところで、草の根で活動するからこそ、全国の人たちの共感を呼び起こし、それが全国的な広がりになっていくのですから。

どうも、この除染活動には、急に得体の分らない団体が雨後の筍のように湧いて出てきて、とても気味が悪いのです。

大量被曝してしまったために、一生、結婚しないと決めたフクシマの神風作業員のことを書きました。
その作業員は、彼女に自分が致命的な量を被曝したことを告げられないでいる、と言います。

この青年は、正直に彼女に話せば、自分との結婚を諦めないだろう。しかし、不幸になるだろう、と言っています。
それで、どのようにして自分を諦めさせるか考えていると。

そのカミカゼ原発作業員は、他の原発作業員の健康を気遣って、ちゃんとした保険制度に入れさせてあげて欲しいと訴えています。

私は、除染ボランティアを志願する人たちは、“ゆるやかな”カミカゼだと思います。
こうした人たちは、自分でボランティア保険に入らなければ、作業で被曝しても何の補償もないのです。

オウム事件をきっかけにマスコミに登場した江川紹子が、除染ボランティアをもっと大々的に募集して、福島県の除染に当たらせるべきだ、とtwitterで呼びかけたことが大きな波紋を呼んでいます。

彼女はジャーナリストでありながら、ボランティア精神の社会的な波及ということが分かっていないようです。
どうも、環境省や福島県が求めているように、単なる労働力としてしかボランティアを考えていないようです。

こうした、人たちがいろいろなメディアを利用して、とんでもない勘違い発言を繰り返しているために、JANICの竹内氏が心配しているように、日本のボランティアは危機に瀕しているのです。

それより何より、除染ボランティアに対して今のような手薄な放射線防護対策しか行わないのであれば、確実に健康被害は広がっていくでしょう。

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