一〇月三一日、日越政府は「ベトナムの原子力発電所建設に係る協力」に関する文書を取り交わした。
菅直人前首相のトップセールスで原子炉二基の建設に合意したのが昨年。(1)事業化調査、(2)融資、(3)安全・先進的な技術の提供、(4)人材育成、(5)使用済み燃料及び廃棄物管理、(6)燃料供給の六分野で協力を行なうとしたが、福島第一原発の事故後は協議が止まった。
ところが、野田佳彦首相は合意を見直すどころか、原子力の平和的利用や原子力損害賠償に関する法整備、事業地決定、環境影響評価をベトナム政府が行なう約束を取りつけ、国内外からの批判を浴びている。「原発いらない全国の女たちアクション」は原発輸出方針の転換、実施中の実行可能性調査の打ち切りなどを求める署名を一日で六六〇〇筆以上集め、枝野幸男経済産業相らに提出した。
ベトナムの隣国、タイからも続々と異論が届いた。「東北タイ資源・環境ネットワーク」は、「日本政府と東京電力の責任ある行動を待ちわびている最中に原子力技術を確約することは、恥ずべき行為」であると断じた。タイにも一七カ所の原子力発電所計画があり、ベトナムと国境を接しているので他人事ではない。「原子力監視ネットワーク」は「日本政府の行動は、ベトナム周辺国の国民に対するテロ計画にも匹敵する」との批判を野田首相に送った。
メコン川流域を対象に活動する環境NGOメコン・ウォッチの松本悟顧問は、「今回事故を起こした福島第一原発の一号機と二号機は、一九六〇年代に米国輸出入銀行の融資で建設された。米国の原発輸出政策で建設され、四十数年後に大惨事を引き起こしたわけです」と驚くべき事実を指摘する。
松本氏は「ベトナムへの原発輸出にはおそらく国際協力銀行の融資が充てられる。米国でさえスリーマイル島の事故で政策を大転換させたのに」と呆れている。
(まさのあつこ・ジャーナリスト、週間金曜日11月11日号)
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