2011年11月26日土曜日

原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない。したがって東電は除染に責任をもたない。

放射能はだれのものか。この夏、それが裁判所で争われた。
8月、福島第一原発から約45km離れた、二本松市の 「サンフィールド二本松ゴルフ倶楽部」 が東京電力に、汚染の除去を求めて仮処分を東京地裁に申し立てた。

――事故のあと、ゴルフコースからは毎時2~3マイクロシーベルトの高い放射線量が検出されるようになり、営業に障害がでている。責任者の東電が除染をすべきである。

対する東電は、こう主張した。 

――原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない。したがって東電は除染に責任をもたない。 

答弁書で東電は放射能物質を「もともと無主物であったと考えるのが実態に即している」としている。 無主物とは、ただよう霧や、海で泳ぐ魚のように、だれのものでもない、という意味だ。つまり、東電としては、飛び散った放射性物質を所有しているとは考えていない。したがって検出された放射性物質は責任者がいない、と主張する。 

さらに答弁書は続ける。 

「所有権を観念し得るとしても、 既にその放射性物質はゴルフ場の土地に附合しているはずである。つまり、債務者 (東電) が放射性物質を所有しているわけではない」 

飛び散ってしまった放射性物質は、もう他人の土地にくっついたのだから、自分たちのものではない。そんな主張だ。 

決定は10月31日に下された。裁判所は東電に除染を求めたゴルフ場の訴えを退けた。

ゴルフ場の代表取締役、山根勉 (61)は、東電の「無主物」という言葉に腹がおさまらない。 
「そんな理屈が世間で通りますか。 無責任きわまりない。従業員は全員、耳を疑いました。」 
7月に開催予定だった「福島オープンゴルフ」の予選会もなくなってしまった。
通常は3万人のお客でにぎわっているはずだった。
地元の従業員17人全員も9月いっぱいで退職してもらった。 
「東北地方でも3本の指に入るコ ースといわれているんです。本当に悔しい。除染さえしてもらえれぱ、いつでも営業できるのに」 
東電は「個別の事案には回答できない」 (広報部) と取材に応じていない。


ソース
朝日新聞(2011/11/24) プロメテウスの罠 無主物の責任(1)


無主物〔むしゅぶつ〕239条


野生の鳥獣、魚介類 など、現に所有者のいない動産を無主物といいます。
無主物は原則 所有者の意思で占有した者が所有権を取得します。このことを無主物先占といいます。
無主の不動産は国庫に帰属する為 無主物ではありません。

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