2011年11月23日水曜日



対策 チェルノブイリ基に
−松本市では、給食で独自の放射能検査をしています。その状況は?
「原則として1キログラムあたり40ベクレルを超える食材は使わないようにしています。職員の発案で、ウクライナ、ベラルーシなど、チェルノブイリ原発 事故の被害を受けた国の基準と同等です。対象は東日本産の食材に限定し、表面の線量を測りベクレルに換算しています。これまで基準を超えた食材はありませ ん」
−国の暫定規制値についての考えは?
「放射性セシウムが人体に与える影響は、まだ分かっていない。それがみなさんに一番不安を与えていることです。大都市圏の人に『今の食品は大丈夫?』と 尋ねられます。生産者の立場ということもあるけれども、医学者としては基準は厳しいほどいい。せめて子どもや妊産婦にはもっと厳しくした基準を用いるべきです
「チェルノブイリ周辺では、事故から25年たち、小児の甲状腺がん以外にもさまざまな健康影響があることが報告され始めた。ベラルーシのバンダジェフス キー博士の論文では、子どもの血液データなどが詳細に記されている。低線量の被ばく(体内に平常時の数倍程度の放射能を持つ)でも造血系や免疫系などへの 影響があるとされています」
−それは国際放射線防護委員会(ICRP)が認めているデータではありませんね
「彼はゴメリ医科大の学長を務めていた病理学者で、論文の内容は大変しっかりしています。論文を書いた後、政府の方針に反することにより別の罪状で投獄 されました。また現地の産科医によると、早産や未熟児が増加している。危険をあおるのではなくて、事実としてこういうことがあるのです。今の段階で、ある特定の数値以下は安全だ、と言うことは難しい
−どんな対策が考えられるでしょう。
「結局はチェルノブイリでこれから何が起きるか、長期に見ていくしかない。今月、福島の人たちがチェルノブイリに行って調べたと聞いています。もっと早く行くべきでした。日本は先進国だというおごりがあったのかもしれない」
福島県の土壌汚染は深刻です。チェルノブイリ原発周辺と同等の汚染地域に現在も住民がいる。除染は机上で考えるほど簡単ではない。国策として、学童などに対し一定期間の集団移住を検討することも必要なのではと思います
福島第1原発の事故でまき散らされた放射能は、私たちにどんな影響をもたらすのか。身を守るためには何をすればいいのか。多くの人が抱く疑問や不安に対する答えを、各分野の専門家に求めた。
すげのや・あきら 1943年長野県生まれ。信州大医学部卒。同助教授を経て5年半、ベラルーシで甲状腺がん治療にあたる。2004年から現職。
2011年11月20日 中日新聞 朝刊

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