全体の症例
子供の症例
症例報告地域図
第一回報告書
症例収集期間 2011年10月21日〜11月10日
症例報告全体件数 192件
子供に関する症例報告件数 46件
症例分類全体件数 140件
子供に関する症例分類件数 49件
1.症例報告者の分布図
この図は、どのような地域に発症があるのかを確認する手がかりとして、報告者の居住地を反映した地図である。なお、報告者が避難移住している場合は、発症地を反映させた。また、全体の14%(192件中27件)に居住地の記載漏れがあったため、これに関しては地図上に反映されていないが、症状の類似性から、ほぼ全ての記載漏れは、報告のあったこれらの地域のいずれかに配分されるものと思われる。
赤の丸は福島原発で、周囲を100キロごとに600キロまで円で囲んだ。最も報告が多かったのが東京(59件)、ついで神奈川(24件)、そして埼玉(15件)千葉(11件)で、以下は10件以下の報告数である。。症例報告が多いと予想された福島周辺からの報告が少ない要因は、震災と原発事故、両方の被害のために通信手段さえ不十分なほど人々の生活は未だ不安定なためと思われ、かえって深刻な被害を伺わせている。また、円周内であれば、着色されていなくても、ホットスポットがあり症例を抱える人々がいるものと思われる。
放射能汚染地域が広域に渡るのは、事故の規模と同時に気象の影響も関係していると見られる。特に、事故後の風向と9月末に勢力の強い二つの台風が本州をほぼ停滞するかのようにゆっくりと北上した影響は大きい。
放射能汚染地域以外の予期せぬところからの症例報告は、食品も原因の一つである。政府が食品の汚染基準を引き上げたため、これまでよりはるかに高い汚染値の食品が蔓延しており、食の安全は確保することが困難な状況にある。
また政府は福島の汚染瓦礫を日本全国で廃棄処分させようとしており、こうした汚染瓦礫の拡散はわずかに残された安全な地域と健康な人々に放射能汚染による被害を新たにもたらすことが充分に懸念される。
従って、政府の対応から見ても、チェルノブイリのように事故地点から遠く離れればある程度の安全が確保される、という見方は今回の福島原発事故には当てはまらない。遠くにある症例が非常に深刻である、というケースも少なくない。また、チェルノブイリとの比較は「離れれば安全である」という意識を人々に持たせ、食品からの内部被曝に無頓着にさせる。
日々送られてくるこうした症例を分類している筆者の感覚では、症例の様子から、今回の福島原発による事故はチェルノブイリの少なくとも二倍から三倍の規模であり、福島原発から200キロから250キロの東京周辺がチェルノブイリとほぼ同等の汚染地帯、すなわち、福島原発の高濃度汚染地域を起点に、東約200キロ、西約400キロ、都合直径600キロの変則的な一体が汚染されていると受け止めている。
2.部位症状分類人体図およびグラフ
この図は報告者の症例の内容全てを分類し人体図にその件数とともに配置したものである。図を一目見ると分かるとおりに、ある特定の部位に発症が見られるのではなく、全身に思いつく限りの症状があると言って差し支えない。
先の1.症例報告者の分布図からは症状を抱える人々が広範囲に存在する、ということまた、この図の伝えていることは、どの地域の医療機関、どの専門分野の医療従事者にも「放射能汚染」という観点を診療に加える必要があり、専門医療分野を超えての連携がなければ症状の改善は望めない、ということである。
症状を抱える側は、自身が最も改善を優先したいとする症状の専門医や医療機関を訪ねる。体重減少や倦怠感、痺れがあったとしても、歯茎の出血を優先するのであれば、まず歯科である。ある人にとって、それは眼科や産婦人科、皮膚科かもしれない。一般に考えられるように、甲状腺専門医が放射能汚染による症状に関する見識が高い、ということではすまなくなってきている。
筆者が検証を繰り返した印象としては、この約半年の間に福島周辺100キロ圏内の高濃度汚染地域はでは無論、200キロ圏外では6才以下の幼児、高校生以下の児童、持病を抱える大人、といった抵抗力のない人々に発症がまずあったものと推測している。筆者は症例の発症についての具体的な報告は受けていないが、この間、放射能汚染の問題に取り組んでいる放射能防御プロジェクト木下黄太氏の元へは、原発事故後の無脳症児の堕胎の報告、また障害のある新生児の発生率の高さ、洗面器一杯もの吐血の症例などが個人や医療従事者から届けられている。また、今後6ヶ月間にはすべての症例が繰り上がりを見せ、より深刻化するとともに、汚染地域内の健常者および汚染地域外で食や放射の汚染に無関心だった人々の間にも体調の不良がみられ始めると予測する。来月には原発事故後の新生児達が出生するが、何らかの症例が現れるのではないかと考える。いずれにせよ症例の深刻さと発症範囲、拡大のスピードはチェルノブイリの比ではない。
症例の発症となる要因は、食品類からの摂取と大気中の汚染物質の皮膚や粘膜への付着の二種類に大別できる。一人あたりの症例平均は全体で3.96ヶ所、子供は3ヶ所であるが、中には一人で10ヶ所以上の報告もある。また、全体を見ても、子供だけを抽出しても皮膚、気管支といった皮膚、粘膜の症状がいづれもトップで、皮膚は湿疹、蕁麻疹、アレルギー、アトピーの悪化などがあり、粘膜は気管支、鼻、目、口の順である。
人々の意識の変化
避難移住と疎開
この間の出来事として、特に子供を抱える家庭などでの避難移住がはじまった。避難移住は6.7%(192件の内13件)である。移住先として選ばれたのは、大阪が圧倒的に多く、ついで兵庫、その他、大分、山梨西部、山口、沖縄、福岡が挙げられる。
移住に関して非常に気になる報告として、一件のみであるが、茨城から愛知に避難し、愛知の家屋の線量が茨城のそれより高く、茨城に戻った、という報告があった。350キロから450キロは汚染とそうでない地域とが混在し、またホットスポットも場所によってはあるのではないかと思われる。こうした場所は、人々の判断が微妙で安全とそうでないとの認識が混在している。個人的には、アトピーなどの持病がある場合、移転先の放射線量の事前確認も500キロ圏内であれば必要と感じている。
移住による症例の回復は症例の度合いにもよる。従って、できるだけ早く避難移住することが重要である。移住先で発症が見られる、また、症例の重さによっては、避難移住ですら回復が望まれにくい。
避難移住の際の特に車両の持ち込みは、報告にもあるが移住先で再発症の引き金となるばかりでなく、クリーンゾーンの確保を難しくする。衣類の持ち込みも、ダンボールを開けた途端に咳が再発した、という報告が挙がっている。
疎開に関しては、疎開先では症状の回復、改善が望まれるものの、舞い戻って再発する件数はほぼ100%である。疎開は体力、精神面においても現地では効果的であるが完治につながるとは言えない。疎開が避難移住へのステップとしてあることが望ましいと思える。中には、疎開を繰り返し、経済的にも、精神的にも非常に消耗するケースも見られる。
受診
報告のうち30%(192件の内58件)が症状あるいは不定愁訴のために医療機関を訪れている。この中には、定期健診も含まれる。中には、受診によって改善した例もある一方で、一時回復し再発したケース、回復に結びつかないケースもある。また、複数の症状を抱えるためにほとんどが複数の専門医を訪れる傾向がある。
避難移住にしろ、受診にしろ、人々の意識は放射能汚染を理解することから、実際の行動へと緩やかに変化してきていると言える。
「みんなのカルテ」について
「みんなのカルテ」は、「放射能汚染によると思われる体調変化の記録」を目的に2011年10月21日より、福島原発事故後の症状、不定愁訴を収集分類し、リアルタイムで放射能汚染による体調の変化を公開している世界でも類を見ないウエッブサイトです。
収集方法は投稿掲示板を利用し、投稿条件として、本人および家族に関する報告のみを受け付けています。このカルテで収集された内容は、「みんなのカルテ保管庫」に移動され、全てにカルテ番号が付けられ、地域ごと、症例ごとに閲覧できるよう、細かなラベル分類が行われます。また、子供だけの症例をこの保管庫から抽出した「こどものカルテ」では、子供の症例のみを見ることができます。
この「みんなのカルテ」の目的は、原発事故後の「あきらかに何かがおかしい」と感じる方の声を集め、ある時期を境に同時多発的に特徴的な症状が派生していることを理解できるようにすること、その全体像と関連を把握できるよう改ざんのない症状のデータベースとして誰もが公に共通認識を持てる環境を整えること、にあります。
みなさんからの症例は、毎月11日に集計され、月末にレポートとして報告書されます。
また、放射能汚染による症状への理解と医療の改善のために下記の活動を行なっています。
1 プレスならびに医療関係者のみなさまへのレポートの配布(月一回)
2 インターネットを通じた海外へのデータの公開(2011年11月末より)
「みんなのカルテ」は今回の放射能汚染の問題について、国内だけの問題であるとは捉えていません。多くの放射能が大気、海洋に拡散していることは間違いない事実として大変重く受け止めています。そのため、みなさんの症例を海外の機関、研究者の方々にも共有できるよう公開し、日本のみなさんだけでなく、チェルノブイリやスリーマイル、世界各地の放射能汚染による不定愁訴や症状に苦しむ方々への理解と医療環境が一刻も早く整うよう願っています。
みんなのカルテ
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