原発事故の後に甲状腺機能低下 群馬の院長調査  甲状腺機能の低下は、気力の低下や疲れやすさなどを招く

原発事故の後に甲状腺機能低下 群馬の院長調査2011年11月23日(水曜日)読売新聞

東京電力福島第一原発事故後、群馬県内で甲状腺疾患のある患者に、甲状腺機能低下傾向がみられると、宮下和也・宮下クリニック院長(同県高崎市)が22日、大阪市で開かれた日本甲状腺学会で発表した。
宮下院長は、同クリニックの患者のうち、甲状腺機能が正常な状態で安定し、薬の中断や変更がなく、ヨウ素の過剰摂取や妊娠・出産、花粉症など甲状腺機能に影響する他の要員もない1175人について、事故前と事故3か月以内の甲状腺ホルモン「フリーT4」と甲状腺刺激ホルモン「TSH」の変化を調べた。
その結果、
939人(80%)で、フリーT4が低下し、低下を補うために分泌されるTSHは上昇した。フリーT4の平均値は1.37から0.92へと平常下限まで低下、TSHの平均値は1.5から5.2と、正常上限の4を上回った。
宮下院長によると、甲状腺機能の低下は、気力の低下や疲れやすさなどを招くが、甲状腺がんの発症に結びつくものではない。「被曝量がわからないため、原発事故との関連は不明」と話している。


 ■ 内分泌の調節とは

 甲状腺の病気について述べる前に甲状腺などのホルモンを放出する(これを分泌といいます)働きのある器官について述べてみます。ホルモンを血液中に分泌する作用を内分泌といいます。
 内分泌の働きのある臓器と分泌されるホルモンの名称について主なものをあげてみましょう。
 これらのホルモンはそれぞれの臓器で独自に分泌が調節されているものと、脳からの命令で分泌が調節されているものとに区別することができます。一般に内分泌の病気という場合は、後者が主なものとなります。
 脳からの臓器への命令系統も複雑で、①一段階の命令系統をもつものと、②二段階の命令系統をもつものとに分けられます。甲状腺ホルモンや卵巣ホルモンなどは後者の二段階の命令系統により、それぞれ甲状腺や卵巣からのホルモン分泌が調節されています。
 二段階の命令系統としては;
視床下部からの命令ホルモン下垂体前葉
下垂体前葉からの命令ホルモンホルモンを分泌する臓器
(甲状腺、卵巣など)
甲状腺や卵巣甲状腺ホルモン
(T3、T4と呼ばれます)
卵巣ホルモンが血液中に分泌
**視床下部や下垂体前葉とは脳の一部分の名称で、いろいろなホルモン分泌や自律神経などを調節する司令室の役割を持っています。
 ここで大切なことは、脳からの命令ホルモンが多量に出れば甲状腺ホルモン(T3、T4)、卵巣ホルモンが多量に分泌され、命令ホルモンが少なくなれば甲状腺や卵巣からのホルモン分泌が少なくなる ということです。
 それでは命令ホルモンを無視して、甲状腺から勝手にホルモンが多量に分泌されたり、逆にホルモンが出なくなったときには命令ホルモンはどのように反応するでしょうか?
 甲状腺が命令ホルモンを無視して過剰にホルモンを産生するようになると、命令ホルモンは少しでもホルモンを減少させるべく、ごくわずかしか分泌されなくなります。逆に甲状腺や卵巣からホルモンが分泌されなくなると、命令ホルモンは過剰に分泌されて少しでも不足しているホルモンを補充しようとします。
 このように命令ホルモンの多少を正確に測定することは、甲状腺などのホルモン分泌の状態を知るために極めて重要な意味があります。
 女性の更年期と呼ばれる時期になると卵巣ホルモンが分泌されなくなるため、逆に脳からの命令ホルモンが過剰に分泌されることになります。更年期障害として知られるほてり、のぼせ、どうき、血圧の変動などは自律神経障害として理解されます。これらの症状は卵巣ホルモンが減少した結果、脳からの命令ホルモンが過剰に分泌されることと深い関係があります。卵巣への司令室と自律神経の司令室は脳内では隣接しており、卵巣への司令室が乱れると自律神経への司令室も不安定になりやすいためと理解されます。
 さて話を甲状腺にもどすことにしましょう。甲状腺では脳から2種類の命令ホルモン(2番目の命令ホルモンを甲状腺刺激ホルモン:TSHと呼びます)が放出され、甲状腺に作用して甲状腺ホルモン(T3、T4といいます)が分泌されます。
 甲状腺からのホルモンが勝手に過剰に分泌される病気は、甲状腺機能亢進症またはバセドウ病として知られています。反対に甲状腺からのホルモンが勝手に不足する病気は甲状腺機能低下症とか橋本病と呼ばれます。
甲状腺機能亢進症では:T3、T4 が過剰に分泌されるため、命令ホルモンTSHが減少
甲状腺機能低下症では:T3、T4 が減少するため、TSHが過剰に分泌される
ことが理解されると思います。このことは甲状腺の病気の診断のためにたいへん重要です。
 ■ 主な甲状腺機能の検査
 今までに述べてきたように甲状腺機能の血液検査では甲状腺ホルモン(T3、T4)と脳からの命令ホルモン(TSH)の2種類の検査が重要であることが分かると思います。甲状腺ホルモンは血中ではタンパク質に結合しているものとしないものとに分かれます。実際の甲状腺機能と関係が深いのは後者であり、タンパク質に結合していないという意味から、フリーT3、フリーT4と呼ばれ、ふつうはこちらが測定されます。
 一般に血中に存在するホルモンはごく微量なため直接測定することは困難でした。しかし放射線で標識した抗体をつくることにより(抗体は決まったホルモンとだけ結合できます)、血中のホルモンの量を正確に測定することが可能になりました(これをラジオイムノアッセイ法といいます)。

甲状腺機能亢進症(バセドウ病)では、フリーT3、フリーT4が高値、TSHが低値
甲状腺機能低下症(橋本病)では、フリーT3、フリーT4が低値、TSHが高値
 それではなぜ甲状腺からホルモンが過剰に分泌されたり、減少するのでしょうか?この原因として、甲状腺の内部で起こる一種のアレルギー反応(これを自己免疫反応といいます)が考えられています。アレルギー反応といってもダニや花粉症、食べ物アレルギーのような自然界の物質に対して起こるアレルギー反応とは異なり、甲状腺の内部で起こるアレルギー反応です。甲状腺の一部の構造物に対して抗体というタンパク質(自己抗体といいます)ができてきて、この抗体が甲状腺に対して破壊的に作用する結果、バセドウ病や橋本病が起こると考えられています。 
 現在これらの自己抗体は特定されていて、それらの自己抗体の検出はバセドウ病や橋本病の診断のために不可欠の検査となっています。しかしどうしてこのような自己抗体ができるようになったか明らかではありません。
TSH測定の意義
 TSHは下垂体前葉と呼ばれる脳の重要な部分から分泌される命令ホルモンの一つです。バセドウ病ではTSHが低値、橋本病では高値になることはすでに述べました。もしフリーT3、フリーT4が高値を示し、さらにTSHが高値を示した場合にはどのように解釈すべきでしょうか?この場合には、TSH自身が過剰に分泌されているか、さらに上位の視床下部からの命令ホルモンが過剰に分泌されている可能性が示唆されます。
 一般に内分泌疾患ではさまざまな命令ホルモンを測定したり、負荷試験を行ったりすることにより、パズルを解くように病気の本質を解き明かしていくことができます。
 一方、臨床的にはTSH測定はバセドウ病や橋本病の治療効果の目安となる点でも重要です。フリーT3、フリーT4は変動しやすいために治療効果の判定には必ずしも信頼できません。それに比してTSHは理論的にも薬剤効果判定に優れています。すなわちTSHが正常範囲に落ち着くように薬剤量を調節する必要があります。
 
 ■ 主な甲状腺の病気
 甲状腺の病気はさまざまありますが、日常の診療でもしばしば遭遇し決して珍しい病気ではありません。甲状腺の病気は女性が多数を占めています。自覚症状が少ないために甲状腺の検査のために受診されるよりも、他の病気で受診された際に偶然甲状腺の病気が発見されることが多いようです。また中学校などの健康診断の際に、注意して女子生徒の頚部をみていると甲状腺が腫れている(腫大といいます)のに気がつくことがあります。
 バセドウ病と呼ばれる甲状腺機能亢進症は若い女性に多く見られます。病気の発見の手がかりは正面からみた頚部の腫れが第一でしょう。自分で気がつくよりも、周囲の人に指摘されたり、別の原因で診療所を訪れた際に医師により指摘される場合が多いようです。甲状腺からホルモンが過剰に分泌されると、どうきを生じたり汗をかきやすくなったり、疲れやすくなります。体が常にほてった感じがするために、冬は過ごしやすく夏は苦手となります。甲状腺ホルモンが多いと脈が速くなるために、安静にしていても脈拍数が100近く、またはそれ以上あります。甲状腺が腫大している場合、安静にして脈を数えてみるとホルモンが過剰に出ているか容易に推測できます。中高年のバセドウ病ではこれらの症状よりも、イライラ感が強いとか急に脈が速くなる不整脈などで気がつかれることが多くなります。中高年になると男性でも多くみられるようになります。
 甲状腺機能低下症の診断は困難です。ほとんど自覚症状がないために長い間気がつかれずに放置されていることがあります。あるとしてもほとんどは体がだるい、疲れやすいなどのありふれた不定愁訴くらいです。血液検査をしてみると、コレステロールが上昇していたり、CK(CPK)という値が上昇していて、その時点ではじめて甲状腺機能低下症が疑われる場合が多いと思われます。中高年になるとからだのむくみを生じやすくなりますが、それでも放置しておくとある日急に心不全を生じて呼吸困難を生じてきます。急性心不全の場合には常に甲状腺機能をチェックする必要があります。
 甲状腺の腫大が認められ血液検査を行っても、甲状腺機能が正常という場合が多くあります。甲状腺の腫れ方も甲状腺全体が腫大しているものや一部だけが結節を作りしこりのようになっていることもあります。また無作為に甲状腺エコーを行うと、小さなしこりや袋状になっているものも多数みつかります。これらの中にはまれに悪性腫も含まれているために、ある程度以上の大きさのしこり様の結節やびまん性の腫大では注意深く検査や経過観察を行うことが必要です。
 比較的若い女性で甲状腺の一部が痛みを伴って腫大してくることがあります。亜急性甲状腺炎と診断されますが、ウィルス感染症が原因と推測されています。初期には甲状腺の破壊のためにホルモン過剰の状態を示しますが、徐々に正常化していきます。

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