2011年12月2日金曜日

ガイガーFUKUSHIMA フクシマの新しい波

アーバンプレッパーさんのブログより
2タイプあるガイガーFUKUSHIMA。
国内・海外から3000人のボランティアが参加するプロジェクト
オール福島の「宗像ガイガーカウンター」発売の記事で、ガイガーFUKUSHIMAを取り上げましたが、いよいよ本格出荷の段階に入ったようです。


vidoenews.comの藍原氏の福島最新情報です。
300k.gif 
動画の視聴は上のボタンをクリック。


ガイガーFUKUSHIMAは、ひとつの大きなプロジェクトとして動いています。


放射能汚染と戦うということ、そして福島県民を救う趣旨のもとに、国内・海外から3000人のボランティアが集まって活動しています。
大半の人たちは、ネットを通じての参加ということのようですが、各分野、各専門の立場から寄せられるアイデアは実際に、このプロジェクトに大きな影響力を持っています。


ボランティアの人たちは、それぞれ本業を持っている人たちで、企業の技術者や大学の研究者などが多数参加しているとのこと。


彼らは、会社とは関係なく、一個人としてボランティアに参加しており、無償で自分の培ったノウハウを提供しています。
その広がりは、製品の開発面でけでなく、人的ネットワークにまで及んでいます。


その広がりのひとつ、オープン・ガイガー・プロジェクトというプロジェクト。


このプロジェクトでは、ガイガーFUKUSHIMAの設計図や基盤など公開しています。
少し勉強すれば、誰でもガイガー・カウンターが作れるようになるということ。


ケースのデザインといった感性に訴求する部分や、どんな機能を付加するか、といった製品性能に関することは、マーケティングの分野になりますが、このサイトは、ガイガーカウンターに慣れ親しもう、ということを目的にしているようです。


ガイガーFUKUSHIMAの周囲では、こうしたプロジェクトが派生的に生まれているのですが、長期ダラタラ被曝を運命付けれた日本人にとっては、どれも興味深いものです。
放射線、内部被曝については継続的に勉強しなければ、放射線防護の最善策を取ることはできません。
政府から発信されるどんな情報も、すでに色あせてしまいました。


キー・コンセプトは「オープン」


このプロジェクトのコアにある概念は、政府が、これまで情報を出してこなかったので、それなら一人一人がメディアとなって、放射線量の計測に関する情報を発信していこう、というもの。
ボランティアの人たち自身が、ある面では市民メディアの一単位と言えなくもありません。
彼らは、自分の情報発信手段を持っているからです。


実際的には、個々人がガイガーFUKUSHIMAを使って計測した放射線量をマッピングして、ウェブ上に上げていくとか、さまざまなプログラムをクラウド化して、誰でもそこにアクセスすれば、必要な情報が入手できるようにするとか、放射線から身を守るためのあらゆる情報をオープンにしていこうという思想が根底にあります。


発展系としては、中小企業のデータベースや、国内外のデータベースに相乗りするとか、ガイガーFUKUSHIMAの背景には大きな絵があります。


3000人のボランティア全体をオーガナイズしているのは、大学の研修者や企業の技術者たちです。
そのうちの3名が、このプロジェクトのキーパーソンになっています。


元、日立の関連会社で技術者をしていた宗像氏(テレジャパン)、斉藤社長(三和製作所)、郡山市の高校教員の渡辺氏の3名が中心。



宗像氏:

「外から見ると平常時に見える。ところが福島県内にいると戦争状態。
この両者のギャップのハザマで生活することを強いられている。
それを少しでも埋めるものが放射線計測器と考えている。

放射線という見えない敵と戦うということは、自分との戦い。
そのためのツールが放射線計測器。
こんなことは、とても個人レベルでできることではないが、幸い、3000人のボランティアの人たちが結集して大きな力として動いている」。
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斉藤氏:
「自分たちの家の放射線の管理をするのに、一回一回、ガイガーカウンターを借りに行くのは現実的ではない。
常に、自分のガイガーカウンターを持っていて、毎日、計測して、ときにとんでもない値が出れば、専門のところに依頼するなり、役所に連絡するなり、という形で使えるものでなければならない。
それには、自分たちが身に付けていることが必要。
一家に一台、安く購入できて、ある程度の精度の出るものであることが重要」。


ガイガーFUKUSHIMAで使われているGM管(右側/ウクライナ製)




ウクライナから、こうした形で入ってくる
ただし、ウクライナ製のガイガーミューラー管は、これまで発注を受けた分に使われているもので、12月から受注した分については、三和製作所で作られたものになる。
この段階で、本当の「純国産ガイガーカウンター」の誕生ということになる。



ですので、発注して、すでに手元に届いているガイガーFUKUSHIMAには、ウクライナ製のガイガーミューラー管が使われていることになります。
20111129-8.jpg 
福島市の北部通信。ここで基盤を作って、三和製作所で作られ
た純国産のガイガーミューラー管を搭載する実装作業を行う。






基盤を作るラインは、すでに稼動している




基盤の量産体制や実装のラインはできているが、GM管が大量生産できる状態にないので、日々、増えるオーダーを消化できないというのが現状。


ガイガーFUKUSHIMAの販売については、一切の中間マージンを省くことによって価格を下げているので、販売代理店は設けていません。
注文は、ネット販売のみ。


正規の販売窓口は特定非営利活動法人 営業支援隊だけです。


ところが、「ガイガーFUKUSHIMA」で検索すると、似たようなサイトがたくさん出てきます。
価格も、18800円のものが24000円になっていたり、いわゆる「せどり」のようなサイトが出てきていますので、お気をつけください。


保証は1年、部品の交換にも対応してくれるとのことですが、そうした「せどり」サイトから購入した場合は、保証が付くのかどうか不明です。
個人のサイドビジネスにしては、少し悪質です。


私の場合は、特定非営利活動法人 営業支援隊に10月中旬に注文を入れたのですが、届くのは12月中旬頃になるとのこと。
今から注文を入れても、おそらく最低でも2ヶ月待ちになると思われます。


それまで待てない方は、輸入物の他の機種でも、かなり値崩れしてきているのでお買い得だと思います。
4月に10万円以上していた機種が、在庫がだぶついているのか、2万円を切っています。
ただし、高い精度を期待していいのかどうかは賭けですので、すでに使っているユーザーの評判をよく読むことをお勧めします。


ガイガーFUKUSHIMAの精度は、JIS規格で決められている誤差の範囲内に収まっています。


私が関心を寄せているのは、ガイガーFUKUSHIMAが、どうのこうのというより、このプロジェクトが市場原理を飛び越えたところから生まれたという点です。


もう一度、それぞれの位置関係をおさらいすると、このようになります。


宗像氏は、福島県の人たちが放射能の危険を回避する方法は、多くの人たちが自前のガイガーカウンターを持つことによって、日常的に放射能を意識することが大切だと考えています。
どこのメーカーもやらないだろうから、それなら国産で作る以外にない、という理念先行の旗振り役をやっているのです。


その理念に賛同した人々が集って知恵を出し合い、多くのボランティアがボランティアを呼んで広がり続けているのが今。
その中には、本職の専門家や大学の研究者までいて、プロジェクトの裾野が広がってきた。


そのひとつがオープン・ガイガー・プロジェクト


実際の開発については、技術力の点で実績のある三和製作所がキー・デバイスである国産GM管の製造を担当し、基盤などのアセンブリ部品の開発と製造は北部通信という会社が受け持つ。


販売窓口はネット販売だけで、宗像氏のグループであるNPO法人の営業支援隊が担当する、という分業制。


販売窓口は、顧客の声を聞く唯一の窓口なので、宗像氏が担当し、次の商品開発につなげる。


宗像氏はアントレプレナーであり、同時にマーケティング・ディレクターであるということです。


将来像としては、細かいメッシュで放射線量を計測し、精度の高い放射能汚染マップを完成させようとしている外国人ボランティア組織のSafecastなどとパートナーシップを築き(すでに何らかの協力関係を結んでいるようです)、誰でも自由に、特定のスポットの現時点の放射線量を知ることができるようにしようというものなのでしょう。


プラットフォームとして、いろいろな情報を載せることができるようになりますから、ビジネスの可能性は、どんどん広がっていきます。


最大のネックは、将来、大きなIT投資が必要になったときに、大手企業などからの支援を受けることなしに、ボランティアで賄うことができるかどうか、という点です。


では、放射能マッピンクサイトにバナー広告を入れる?
いやいや、おそらく課金制を採用することになると思います。


たとえば、一ヶ月100~300円程度で、パソコンや携帯端末から何度でもサイトを閲覧することができるようになり、東北のあらゆる場所の放射線量を知ることができる、というような。


そうしたビジネスのフレームが目に見えるようです。


ネット上に主婦たちの総意による「暮しの手帳」ができる
その他の広がりとしては、三和製作所が太陽光パネルでの実績を持っているので、福島第一原発周辺の人が立ち入ることができないような場所に、太陽光発電のモニタリングポストを設置する計画とか、確かにガイガーFUKUSHIMAの背後には、広大な広がりがあることが分かります。


今は、「ふくいちライブカメラ」で福島第一原発の様子を見ることができますが、太陽光発電モニタリング・ポストで計測された線量を、誰でも携帯電話で確認できるようになる、というようなオープンな環境が必要なのです。


悪質な東電、死に体の政府が、そんなことをやるとは到底、思えません。
また、悪辣知事の佐藤雄平が、このプロジェクトを妨害しないとも限らないからです。
彼らは、子供を人質に取るような、信じられないくらい無知で悪心の輩ですから。


こうした妨害がなければ、そして福島第一原発の建屋が倒壊しなければ、という条件付きですが、福島で5年後、何が起こっているか、私にはよく見えるようなりました。


放射能の内部被曝を防ぐためには、最終的には、個人個人、あるいは家庭ごとに、あるいはご近所でお金を出し合って共同購入という形で、で食品検査用ベクレルモニターを保有するしかないと主張してきたのですが、すでに、このプロジェクトの延長線上には、安価なベクレルモニターの開発があるようです。


現在の食品検査用ベクレルモニターは、精度のいいものは500万円程度。検査する食材を細かく刻んでベクレルモニターにかける、というものですが、宗像プロジェクトで進めているのは、食材を刻む必要がなく、一般家庭でも購入できるくらい価格設定のものを開発中とのこと。


やはり、これも大量生産がポイントになります。
これが商品化されても、やはりガイガーFUKUSHIMAのように、何ヶ月待ちということになるでしょう。
材料の一括仕入れ、製造プロセスにおけるあらゆる作業を集約化させること、これが価格にダイレクトに反映されるからです。


こうした個人レベルで放射線量の計測が、日常的に行われるようになると、どんな世界が訪れるのでしょう。
イメージしてみましょう。


真っ先に、ベクレル検査をやっていない食品スーパーは、経営が立ち行かなくなる可能性があります。
実店舗を構える小売業のような立地商売では、いったん評判が立つと、それを消し去るのは難しくなります。


ただし、同じ立地商売といっても、ファーストフードや郊外型レストランのようなチェーン・システムによって広域展開している企業の場合は、各店舗で提供しているメニューは、セントラル・キッチンで半調理されたものですから、一店で風評が立つとダメージは計り知れません。


飲食店をチェーン展開しているたいていの企業は、使用している食材の生産地を表示していません。
しかし、顧客は、ちゃんと知っているのです。
これも競合他社との相対的な問題ですが、いつまでも、こうした顧客の利益に反することが続くわけがありません。
いずれ、売り上げは激減するでしょう。


これはサントリーのような大手と言われる飲料メーカーでも同様です。
食品関連の企業の意識は、まだまだ低いままです。
彼らが売っているものは、発展途上国の路上で売られているフルーツ・ジュースより危険かもしれません。


「分からなければ、売ってしまえ」という考えなら、長くはないでしょう。
今のうちに企業努力を始めてください。


一方で、一般市民、一般生活者の方でも、自然の発露が萌芽します。


「暮らしの手帳」という雑誌があります。


今の「暮らしの手帳」は、どんな内容なのか知りませんが、おそらく20~30年前は広告が入っていなかったものと思われます。
その当時の「暮らし手帳」は、文化的な生活をリードする最有力のオピニオン誌でした。(私は見たことはないのですが)


広告がない分、生活者の利益につながるような情報を取り上げ続けなければ雑誌は売れなくなります。
健康被害の可能性のある食材、アレルギーを引き起こす自然素材をうたい文句している石鹸などは、容赦なく酷評されます。
そして消費者の支持を失い、最悪、倒産の憂き目に遭うでしょう。
その段階がやってきます。


そうした評価を行うのは、感性の高い主婦です。
いわゆるヒーブという人たちなのですが、どうしたことか、途中で行政に取り込まれてしまって、力をなくしてしまいました。
行政や企業が出てくると、たちどろこにボランティアの力はそがれてしまいます。


各家庭に食品検査用ベクレルモニターが入り込むと、ネット上には、主婦が運営する「暮らしの手帳」が、必ずできます。
そのとき、食品メーカーの勢力図は塗り替えられるかもしれません。


その段階が迫っていることを企業側は理解すべきです。


食品メーカーや飲料メーカーの開発担当や営業担当は、毎朝、出社したらすぐにパソコンの電源を入れて、ネット版「暮らしの手帳」のサイトにどんな意見が寄せられているか確認することでしょう。
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今回で、ガイガーFUKUSHIMAに関する記事を書くのは三回目です。
誤解している閲覧者の方が少なからずおられるのですが、私はガイガーFUKUSHIMAを推奨しているわけではないのです。
ガイガーカウンターなど、自分の気に入った機種を買えばいいのです。


むしろ、ガイガーFUKUSHIMAの背後に控えているプロジェクトが、私には手に取るように分かるので、そこに焦点を当てて書いているのです。


それは繰り返しになりますが、多くの人たちが日常的に放射線量を計測するようになると、商品の開発・製造・流通の流れが、プロダクト・アウトからマーケット・インに変わる可能性があるのです。


これは平常時では起こりえない変化です。
それが起こる可能性が出てきたのです。


そして生活者の安全は、そこにかかっているのです。


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