警戒区域に1人住み続ける男性、福島県富岡町

  • 2011年12月14日 13:00 発信地:福島
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【12月14日 AFP】松村直登(Naoto Matsumura)さん(52)は、頭がどうかしていると言われ続けてきた。「僕はきちがいではない」と言って微笑む。

 松村さんは福島県富岡町で農業を営んできた。東京電力福島第1原子力発電所に近いこの町が警戒区域(半径20キロ圏内)に指定された時、ほかの町民たちは全員避難したが、松村さんは避難を拒んだ。今でもこの町にたった1人で住み続けている。

 警戒区域の立ち入りは原則禁止だが、松村さんは根負けした関係当局から自由な出入りの許可を勝ち取ることができた。

■大のタバコ好き

 警戒区域の外側にある福島県郡山市でAFPの取材に応じた松村さん。電気のない厳しい生活を自らに強いているにもかかわらず、極めて元気そうだ。高レベルの放射能を浴び続けている危険性については認識しているが、タバコを切らすことの方が怖いと言って笑った。

「僕は今タバコをやめたら、多分病気になってしまう」
 
 定期的に車で町の外に出向き、食料やタバコを調達している。

 近所の人々は避難の際に自家用車や発電機用の燃料を提供してくれたが、寒さが一段と増す中、それらの燃料だけで持ちこたられるとは到底思えない。近くの町で購入した燃料を1日あたりの分量を決めて注意深く使っている。

 目下の一番の心配は残された動物たちのことだ。多くの住民たちは、パニックの中、家畜やペットをかえりみる余裕がなかった。

 かくして、ネコ100匹、イヌ数十匹のほか、数百の牛・豚・ニワトリが置き去りにされ、寒さをしのぐ場所も食べ物もない中で冬を迎えることとなった。

■動物たちの餌やりが日課

 辺りが真っ暗になる夜7時には寝て、日の出と共に起床する。飼い主を失ったイヌたちに伴われながら、半日をかけて動物たちに餌をやるのが日課だ。

「この動物たちには人が必要だ。今持っている食料だけじゃ、12月の終わりまでに切れてしまい、十分じゃない。この子たち(動物)の食べ物とシェルターが必要。政府が面倒をみるべきなのに、僕だけがこの子たちの面倒をみているんだ」

 町民たちが根こそぎいなくなってから9か月がたった今も、動物の死骸を見た時のショックは変わらないと言う。

「僕はたくさんの動物たちが死んでいるところをこの目で見てきた。病気と飢えと苦境で死なされた動物たちがいっぱいいた。例えば、人間に顔にロープを巻かれたままどんどん大きくなり、ロープが食い込んで肉がはみ出て血だらけになった子牛を見た。かわいそうだ」 

 ある日、友人から、自宅の鳥かごの中に残してきた20羽のカナリヤを放すよう頼まれた。だが既に手遅れで、カナリヤたちは冷たくなっていた。

 政府か東京電力は動物の死骸を回収しに来るべきだと松村さんは考えている。だが、得られる回答はいつも同じだ。

「すみません。(原発から)20キロ圏内では何もできません」

■何を責めるべきか

 外の世界との連絡手段は携帯電話のみ。寂しくはないと言う。妻とは10年前に別れ、成人した子供たちは埼玉県に住んでいる。子供からは避難するようせっつかれるが、聞く耳を持たない。

「僕は落ち込まない。一人で生きるのに慣れてきた」

 畑の作物は汚染されているため、主にコメと缶詰を食べている。栄養バランス的に好ましくないことは承知の上だ。

「日本のマスコミが、私を馬鹿扱いしている。例えば、僕が放射能で汚染されたキノコを食べているとかと書いた。でも、実際はそれを拾って研究者に渡してあげただけ。僕はきちがいではない」

 松村さんは、富岡町の将来は明るいものではないと考えている。警戒区域に指定された他の町もろとも、地図上から消える日がやがて来るのではないかと。

 そして、何を責めるべきなのかは十分に分かっている。

「原発の再起動をみたくない。(原子力発電所が)無くなってほしい」

(c)AFP/Nathalie-Kyoko Stucky

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