揺らぐ信頼 農家苦悩/福島米「安全宣言」後も汚染相次ぐ

焦点/揺らぐ信頼 農家苦悩/福島米「安全宣言」後も汚染相次ぐ

販売店の店頭に並ぶ会津産コシヒカリの新米。他産地のコメより安く販売しているが、売れ行きは振るわない=東京都西東京市の野口商店
デビュー早々、PR活動に支障が生じた福島県産米の新品種「天のつぶ」=福島市のスーパー
福島第1原発事故の放射能汚染に直面する福島県産米の苦境が深まっている。県の「安全宣言」を覆すかのように、県内各地のコメから国の暫定基準値(1キログラム当たり500ベクレル)を超す放射性セシウムが相次いで検出された。検査態勢をめぐる県の対応も後手に回り、消費者や米穀業者の不信感が高まる。風評被害は拡大し、ブランド復権の道を険しくさせている。(中島剛、菊地弘志)


<足元みられる>
「東京の取引先から中通りのコシヒカリを60キロにつき『ワンコイン(500円)下げろ』と言われた。足元を見られている」。郡山市の米穀卸で県米穀肥料協同組合理事長の梅本典夫さん(61)は明かす。
「明らかな風評被害だ。全国的に米価が上昇する中、業者は福島米を安く買おうとしている」。他県産に比べ価格は上げていないのに、梅本さんの会社が扱う福島米の出荷量は例年の7割程度だという。
福島県はことしコメを作付けした48市町村1174地点で放射性物質の抽出検査を実施。全地点で基準値を下回り、10月12日、安全宣言して新米の流通を全面解禁した。
ところが、約1カ月後の11月16日、福島市大波地区のコメから基準値を上回る630ベクレルのセシウムが検出されたことが地元農協の自主検査をきっかけに判明した。「大波ショック」と言われ、安全宣言の信頼性が揺らいだ。その後も伊達市霊山町小国地区、同市月舘町地区で基準値超えが相次いだ。


<検査やり直し>
抽出検査では限界があり、擦り抜けを許したとの声が高まり、県は微量でもセシウムの出た29市町村の農家2万5100戸を全戸調査する実質的な「やり直し」を余儀なくされた。
県産米は原発事故後、放射能汚染米の印象が付きまとい、安全宣言が出てもなお、売れ行き不振が予想されていたが、大波ショックで駄目を押された。
特に家庭向けの販売が苦戦している。全国に農産物直販の客を6万世帯持つ須賀川市の農業法人ジェイラップは個人客への発送が4割減少した。
同社は同市周辺の契約水田341カ所のコメを全て検査。平均検出値は3.1ベクレルと極めて低かった。精米後も30キロ入りで50袋ごとに抽出検査する念の入れようだったが、販売不振に歯止めをかけることはできなかった。
伊藤俊彦社長(54)は「あらゆる知見を動員して安全性を訴え、消費者の理解を待つしかない。県や市町村、農協が協力して県内全農家を検査しない限り風評被害は収まらない」と指摘する。
県の安全性のお墨付きに疑問符が付き、大消費地の首都圏の米穀関係者は批判の目を向ける。
「安全宣言後に基準値超えが続出では背信行為だ」。埼玉県の米穀店主(38)は昨年80トン扱った福島米の取引をやめた。「福島ナンバーのトラックが店に横付けしただけで『福島米をこっそり使っている』とうわさになる」とにべもない。
東京都西東京市で米穀店を営む野口晃さん(48)は迷った末、原発から遠い会津産コシヒカリだけを販売することを決めた。新潟、山形、兵庫産などのコシヒカリが1キロ500~800円台で店頭に並ぶ中、会津産は458円と例年の価格より50円程度低く売り出された。だが、売れ行きは昨年の半分だという。
野口さんは「国や県が信用されていないから安全と言われても消費者は安心しない。田んぼを一枚ずつ検査して、官公庁の食堂で使う『率先垂範』を示さないと、福島米離れは一層進む」と話している。


◎福島県産米「天のつぶ」/期待の新品種、逆風デビュー/東京試食会延期に


福島県産米から国の暫定基準値を超す放射性セシウムが相次いで検出された問題は、県産米のPR戦略にも影響を与えた。デビュー間もないオリジナルの新品種「天のつぶ」の試食会が延期になり、首都圏の卸業者が県産米の販売促進を支援するプロジェクトも動きがしぼみ、戦略の見直しを迫られている。


天のつぶの試食会は11月30日、東京都のホテルで卸業者や流通業者を招いて開かれるはずだった。しかし、基準値超えのコメが続出し、県と地元農協組織でつくる主催者の「ふくしま米需要拡大推進協議会」は「安全性の面で問題が出てきている」と延期を決めた。
年度内に仕切り直しするとしているが、日程は未定。このまま開催されない可能性もある。


<開発に15年>
天のつぶは県農業試験場が約15年かけて開発し、2010年に県の奨励品種となった。光沢があり、しっかりとした食感が持ち味。稲の丈が低くて倒れにくく、いもち病に強い。
主力のオリジナル品種のなかった福島県関係者が寄せる期待は大きく、業務用市場の主力品種に位置付ける。今年は販売初年度で、東日本大震災後は「復興のシンボル」の役目も担った。
試食会は新米の時期で、来年の本格生産を控えPRの絶好の場だった。県農協中央会農業対策部の小林利一監理役(60)は「安全を担保する態勢を整えた上でPRしないと、理解は得られない」と苦渋の決断で開催を見送った経緯を明かす。
今年は約180トンが収穫され、2キロ詰め(880円)の6万袋限定で出荷。11月8日からコープマートなど県内の3スーパーの店頭に並んだ。
福島市のコープマート方木田店によると、天のつぶは今のところ売れ行き好調という。ただ、売り場担当の鈴木卓さん(28)は「大々的にアピールするには、顧客に説明できる安全のお墨付きが必要になる」と話す。


<迷う関係者>
県は来年約4000トンの生産を目指しているが、販売動向を不安視する関係者から「思い切って数字を下げたらどうか」との声も出ている。
生産者と販売者が一体となって首都圏に福島県産米を売り込もうと、11月11日にスタートした「ふくしま米元気プロジェクト」も開始早々からつまずいた。
プロジェクトの取り組みとして首都圏の卸業者が11月下旬から、県産の新米を本格的に扱う予定だったが、セシウム問題で軒並み入荷を見合わせた。
専用の米袋で「ふくしま米」を売り込む予定もあるが、全農福島県本部米穀部は「県の再検査の推移を見てタイミングを判断したい」と予定通り行うかどうかを決めかねている。


<安全保証を>
首都圏側の受け皿となる全国米穀販売事業共済協同組合(東京)の木村良理事長(63)は「プロジェクトは福島県が安全性を保証するのが前提。福島米を支援したいが、今は動けない」と語る。
その上で「薬や特定の食品で同じ事態が起きたら全量回収だろう。コメだって同じはず。国と県はきちんと安全性を証明し、万一の際にすぐ回収できる仕組みを確立してほしい。生産者と一緒に、危機感を持って消費者の視点で議論すべきだ」と指摘している。


2011年12月03日土曜日

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