「原発冷温停止宣言」海外反応は
産経新聞 12月18日(日)7時55分配信
野田佳彦首相が16日、東京電力福島第1原子力発電所の冷温停止を宣言したことについて、米国、欧州、中国のメディアや専門家は一定の評価を与える一方、厳しい見方も示した。
世界最多の原発を抱える米国のナイズ国務副長官は「回復への重要なステップで非常に喜ばしい」と述べ、日本政府や関係者の努力を評価。今後の廃炉や放射性物質の除去作業を支援するため、米企業を参加させたい意向を日本政府に伝えたことを明らかにした。米原発の監督機関である原子力規制委員会(NRC)のヤツコ委員長も18日に来日し、現地を視察する。
一方、ウォールストリート・ジャーナル紙(電子版)も「原発の安定化に向けた一里塚だ」と評価したが、「進展の足取りはおぼつかなく、莫大(ばくだい)な問題が残されている」と指摘。ニューヨーク・タイムズ紙(同)も農業の復興や食品の安全確保には困難が続くとの見方を示した。
また、AP通信は冷温停止宣言そのものについても、「科学的というよりはむしろ政治的な判断に基づいたものであるとの批判を招いている」と指摘した。
1993~99年に国際原子力機関(IAEA)の事務次長を務めたスイスの原子力工学専門家、ブルーノ・ペロード氏は産経新聞の取材に、「冷温停止状態の定義があいまいだ。少なくとも核分裂連鎖反応が止まったというだけで、核分裂生成物はすぐに取り除けず、核燃料のエネルギーも残ったままだ」と解説した。
事故後の対応については「複数の原子炉が同時に制御不能となり最初の1~2カ月は混乱したが、その後は政府も東電もよくやったと思う。事故を免れた福島第2原発は安全対策を強化すべきだ」と提言した。
一方、日本産生鮮食品や宮城、福島など10都県の食品の輸入規制を続けている中国では、16日の野田首相の記者会見を中国中央テレビが生中継し、「日本の放射能災害処理計画の一里塚」と評したメディアもあった。
しかし国営新華社通信は「事故対策の進展を国内外にアピールするためのもの」などとする日本国内の報道を引用。日本政府の対応に冷ややかな目を向け、輸入規制を続ける中国政府の対応を正当化するかのようなトーンに終始した。(ワシントン 柿内公輔、ロンドン 木村正人、北京 川越一)
2011年12月19日月曜日
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