坪倉正治 福島第一原発から23キロにある総合病院で働く血液内科医。住民と共に内部被曝について考える。

坪倉正治(つぼくら・まさはる)
東京大医科研医師(血液内科)、南相馬市立総合病院非常勤医。
週の半分は福島で医療支援に従事。
原発事故による内部被曝を心配する被災者の相談にも応じている。





福島原発から23キロで働いています
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坪倉正治
こんにちは。
南相馬市立総合病院で非常勤内科医をしております、坪倉と申します。
亀田総合病院で研修医を行った後、千葉と東京で血液内科医として働いておりました。被災地支援で去年の4月に浜通りに入ったのが最初で、外来診療を始めたのが去年の5月でしたが、7月にホールボディーカウンターが導入されたのがきっかけで、そちらのお手伝いもさせていただいております。
ホールボディーカウンターが導入されてから、まだ1年は経っておりませんが、この検査は実際の放射能量だけではなく、今後の生活の指針など様々なことを教えてくれました。その一方でわからないこと、内部被ばく検査自体の限界も明らかになってきました。
今までの検査の結果は、南相馬市のウェブサイトや、拙文を参考にしていただければと思います。
写真2
写真が、今現在市立病院で稼働しているキャンベラ社製、Fast Scanです。一日あたり110人のペースで検査が進んでいます。今日も多くの方が来院され、通常の外来の方々と重なり、一階は人でごった返していました。
出来る限り、今現場で何が問題となっているかをご紹介できればと思います。どうぞお手柔らかに、おつきあいください。
《編集部から》
坪倉医師は、福島の現状について積極的に語っていただいています。



ベクレル? or シーベルト?
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坪倉正治
報道でよく耳にする放射能に関連した単位には、ベクレルBq)とシーベルトSv)があります。ベクレルは、放射能の量をあらわす単位。シーベルトは簡単にいうと、人間が被曝によって受ける影響の大きさをあらわす単位だと、ご存じの方も多いと思います。
ですが、その二つの関係となると、単純な換算でわかるものではありません。
例えば、ある場所で空間線量を測ったところ、0.2μSv/h(1時間当たり0.2μSv)という数字が出たとします。その値から、「原発事故後どれだけ余分に自分が外部被曝しているか?」と聞かれても正確に答えることは、実はできません。
単純に「0.2μSv/h×24時間×日数」と計算すればいいのでしょうか。これは正確ではないのです。なぜなら、事故直後は0.2μSv/hより空間線量が高かったからです。
外部被ばくを今までどれほど余分にしたのかを知るには、1カ所の空間線量をもとに計算したのでは不十分です。空間線量は時間ともに変化しますし、場所を移動したりすると、高かったり、低かったりするためです。たとえば、同じ家の中でも、空間線量のばらつきは大きいのです。
こうした問題は、内部被曝検査でも起きているのです。
さてここで、○×問題をしましょう。
問.ホールボディーカウンターは実効線量(正確には、預託実効線量)をSv単位で実測するための装置である。
答えは×です。
ホールボディーカウンターは、その検査を行った際に、体内にどれほどの放射性物質が含まれているかを計測できる器械で、その単位はBqです。
言い換えると、「体内に今、どれだけのセシウムが存在するか」を計る器械です。事故直後に、どれだけ吸入していたのかを教えてくれる器械ではありません。
先ほどの空間線量の話と同じです。例えば、現在の体内に1000Bqセシウムがある場合、それが10日前に1100Bq食べてしまって、100Bq排出された結果なのか、数カ月前に10000Bq食べて9000Bq排泄された結果なのかを器械は教えてくれないのです。当然、後者の方が、カラダへの影響が大きく、Svの値が多くなります。
「いつ摂取したのか」。これを仮定して初めて、Svの値が計算できます。
事故直後ならまだしも、今現在セシウムが体内から検出される場合、2通りの可能性が考えられます。事故直後に主に吸入で摂取してしまったもの(急性被曝分)と、その後の生活で主に食品から摂取してしまっているもの(慢性被曝分)です。
今日、検査でセシウムが検出されても、昨日摂取したものなのか、事故直後の影響がまだ残っているのかを区別することは出来ません。
先日、福島県でホールボディーカウンターの計測結果が公表されました。いつも通り、1mSv以上か以下かで分けられています。ほとんどの報道も今までそのようにされてきました。
しかしながら、事故後1年経った今では、検出されたセシウムがいつ摂取したものかわからず、Sv値を正確に計算することが不可能です。実はSvの計算方法(仮定の置き方)が数種類あり、どのような仮定をおくかで、Svの値が2桁ぐらい変わってしまいます。
慢性被ばくがどれほどかを明確にするためにも、SvのみではなくBqでの検査結果を公表してほしいと思っています。
今日は南相馬市立総合病院で、東京大学の早野先生によるホールボディーカウンターの勉強会でした。いつもの早野先生節で素晴らしい勉強会でした。実は上記の○×問題、今日の勉強会で行ったテストの中の一問でした。写真はテスト中の風景です。早野先生と同じカメラで撮影しました。
写真1
遮蔽のでき具合が、能力を決める
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坪倉正治
福島県内で稼働するホールボディーカウンターの性能を決める上で最も重要な要素は何でしょう?
その答えは、遮蔽(周りからの放射線をどれだけ遮断できるか)がいかにしっかりできているかです。
ホールボディーカウンターは体内に存在する放射能量を測定します。体の近くに検出器を近づけて、体内からの放射線を測定しています。その際、体内からの放射線と、周りの環境から飛んでくる放射線の両方を拾ってしまいます。器械自体は周りの環境から飛んでくる放射線と、体内から発せられる放射線の区別ができません。検査後、専用のソフトウェアを用い、環境からの放射線の部分を引き算して、体内の放射能量を計算しています。
空間線量が高い場所(周りの環境に飛んでいる放射線が多い場所)で計測すると、この環境からの放射線の部分の引き算が難しくなります。相対的に小さい体内からの放射線の測定がやや不正確になってしまうのです(検出限界が高くなります)。
騒音の大きい場所で、小さい話し声を聞き分けるようなものです。空間線量が0.5μSv/hぐらいの場所だと、周りの環境からの放射線量が多すぎ(ノイズが強くなり過ぎ)て、今現在ターゲットにしているような放射能量の測定が厳しくなります。
当院でも当初は同様の問題が生じました。最初に使っていた椅子型のホールボディーカウンターは遮蔽が弱かったのです。バス型だったので院外に設置せざるを得ず、遮蔽板を下に引いたり横に置いたりしていたのですが、どうしても理想とするレベルまでの遮蔽に至りませんでした。器械の検出限界は数分の計測では4桁(1000~2000Bq/body)ぐらいを実現するのがやっとでした。それ以上の被ばくをしてしまっている方しか測定できない状況でした。
今現在の当院のキャンベラ社製のファストスキャンでは検出限界がセシウム137で250Bq/body程度、セシウム134で210~230Bq/body程度です。ファストスキャンが、これほどの性能を出すことが出来るのは、器械自体にしっかりした遮蔽が内蔵されていることが大きいです。第1回の写真の器械ですが、この器械の後ろ側のほとんどは遮蔽板によって作られています。今後、遮蔽のしっかりしていないタイプのホールボディーカウンターを導入する際は、設置の場所や遮蔽を十分に考慮する必要があります。
写真は、ウクライナのホールボディーカウンター専門施設に設置してある最も細かい量まで計測することが出来る器械です。5分の計測時間で約30Bq/bodyまでの細かい値まで計測が可能です。もちろん内蔵している検出器自体の性能もありますが、遮蔽がしっかりしていることが非常に重要です。
ただし、扉の開け閉めに1~2分かかります。僕自身も体験しましたが扉がしっかり閉まってしまうと、閉塞感が非常に強く、5分でも少し気持ち悪くなりました。もちろん現在のウクライナで、このレベルの器械がいたるところで稼働している訳ではありません。通常の検査は、今現在の我々の器械と同様レベルの器械が用いられており、細かく値を追う必要があると判別されたり、精密検査が必要と考えられたりする方にだけ、使用されているとのことでした。
また計測する時間が長くなればなるほど、細かい値まで計測できる訳ですが、当然計測できる人数が少なくなります。ゼロまで計ることはそもそもできません。食品検査と同様、まだどの程度の器械の性能を標準として計測して行くのかのコンセンサスがありません。福島県内には順次、ホールボディーカウンターの導入が進んでいますが、今後詰めて行かなければならないことがまだまだ山積みです。計測に携わる当事者が同じ方向をむき、健康を守るために努力して行くことが出来ればと思っています。


子どもの内部被曝を調べるのは難しい
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坪倉正治
子供の方が大人に比べて放射線による感受性が高い。これは皆さん既にご存知のことだと思います。小さい子供の内部被曝の程度がいかほどなのか。検出されるとしても出来るだけ少なくあってほしい。我々医療者もそう思っています。しかしながら、今現在小さい子供に対する内部被曝検査には、大きな問題があります。体の小さい子供達を正確に計測できないという問題です。
そもそもホールボディーカウンターは、原発で従事できるような大人を対象にしており、小さい子供用には作られていません。当院の例で言いますと、キャンベラ社製ファストスキャンでは、130cmぐらいを下回ると途端に、カリウムの定量性が怪しくなります。説明書でも4歳以上は計測できますと書かれていますが、大人と同じぐらいの精度で計れているようには思えません。体の大きい小学生や中学生ぐらいなら全く問題ありませんが、乳児などはとてもじゃないですが計測できません。小さい子供に関しては、かなり大雑把にしか検出できないというのが現状です。
では、他の方法が無いのか? あります。その代表は尿検査です。しかしながら、尿検査にも大きな問題点が2つあります。1つ目は、朝の尿と夜の尿で濃さが違うということです。当然ですが、尿の濃さが倍になれば、例えばセシウムは倍の濃度で検出されます。そのときの尿の濃さに結果が左右されすぎてしまうのです。体内の放射能量と、尿中の放射能濃度が明確な比例関係に無い。計測の意味が全くない訳では決してありませんが、大雑把なスクリーニングの意味合いが強くなります。
2つ目は尿の量です。出来れば細かく尿中のセシウム量を計測したい。と考える訳ですが、その場合ある程度の尿量(少なくとも数百cc)が必要になります。しかしながら、これは大きな矛盾を抱えてしまっています。今困っているのは、体の小さい小児をホールボディーカウンターで計測できないことです。その体の小さい小児から、より多くの尿をためなければならないのです。体が大きくて、尿が十分ためることが出来る方の場合、尿をためられるかどうかは問題になりません。そのままホールボディーカウンターで計測すれば良いだけなのですから。
1歳では、20mlためるのも厳しいでしょう。実際、20mlでもきつい、10mlしか採れないが、何とか計測してほしいと頼まれたこともあります。値は出すことは出来るかもしれませんが、正確性には欠けます。それに加えて、そもそも小さい子供は、大人より代謝速度が早いため、体内の絶対量が大人に比べて少ない傾向があります。より少ない量を計測しなければならないのに、体が小さいため、計測自体が困難になってしまうのです。
今あり得る方法は、3つです。1つ目は、上記の尿検査またはホールボディーカウンターで、ある程度大雑把ではあるが、それには目をつぶって計測を続けるという方法です。尿検査は体内の放射能量と関連性が無く、計測はしないと発表した機関もありましたが、尿検査が大雑把だからといって全く意味が無いとは思いません。何も計らないよりはましです。
2つ目は、子供の代わりに母親を計測するという方法です。母親から内部被曝が検出されない場合、同じような生活をしている子供は、母親よりもさらに代謝が早く、食品摂取量も少ないので、放射能が検出されるとしてもさらに少ないだろうと考える方法です。一般的にはこの考え方が用いられていますが、実際の子供を計測していないという難点があります。
3つ目は、母親と一緒にホールボディーカウンターに入ってもらう方法です。メーカーはこれを推奨しています。母親と子供を一緒に計測したものから、母親の値を引き算するというものです。当院でも何度も試しましたが、正直なところ2人一緒に計ったカリウム量と、母親のみのカリウム量が体重に見合った値として検出されるかは微妙です。とり得る一つの方法だとは思いますが、小児の放射能量が正確に計れている印象もありません。やはりこれでも大雑把になります。
4つ目は、まだ実現していませんが、小児用の特別製ホールボディーカウンターを作る方法です。レストランで出てくる,小児用の椅子のような器械が作るわけです。ウクライナの技術者は作れますと言っていましたが、まだ現実にはなっていません。
今回は、小児測定時の問題点を紹介しました。最善の方法がどれかはわかりませんが、いずれにせよ、注意しながら継続的にチェックし、少なくとも大量の内部被曝をしていないことを確認して行くことが重要と考えています。
写真は大野病院から持ってきた、富士電機製のWBCです。
去年の8月から1カ月半、2500人の子供達を計測してくれました。









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