児玉龍彦氏 

【東京大学アイソトープ総合センター長 ・児玉龍彦氏】
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(放射線が)遺伝子を傷つけるということは、昔の考え方と今日では、ヒトゲノムが読まれてから一変するような状態になっています。

今朝も、このミュンヘンの教授と話していたんですけれども、この結果は、ミュンヘン、ウクライナのグループが6月のアメリカ学士院の会報に発表しているものなんですが、チェルノブイリの甲状腺ガン、子供は甲状腺ガンが多く発症するんですが、いままで私どもが国会で申し上げたときに、レット遺伝子というのが活性化していると申し上げました。

ところが子供の甲状腺ガンでも、一般的にレット遺伝子は活性化していますから、チェルノブイリに特徴的なものはわかっていませんでした。

ところがミュンヘンのグループは、このゲノムの全体の配列の中での変異を見ることによって、チェルノブイリで起こっている甲状腺ガンの約4割の子供に染色体の7番が3つになっている。

これ、今、クリーブランドにいらっしゃる田中均という先生が、2007年に切断後にパリンドローム増幅ということで説明されている遺伝子の変異の格好でありまして、放射線などによって遺伝子が切られますと、切れた後に一部、遺伝子が重複して、2コピーになってしまう。もう一個に遺伝子が1コピーで、合計3コピーになってしまうという現象が知られています。

チェルノブイリの子供の甲状腺ガンのサンプルというものを分析しますと、非常に特徴的な7・9・11という領域が、このようにコピー数が3つなっているということが見つけられました。いっぽう、これは染色体の2番ですが、こちらに関しては普通の2個しかないということが示されています。

そうしますと、昔はゲノムという染色体がよくわからないので、低線量の被爆なんかというのは確率論的で、たとえば低線量であれば、放射線がぶつかっても、それを修復する機構があるんだ、というようなことがいろいろ言われたりしてきました。

しかしながら、今のゲノム科学で見ますと、DNAの切断が起こると一定の率で、パリンドローム変異が起こり、それが原因となって遺伝子が活性化される。それに続いてレット遺伝子が活性化されて、さらにそれから10年とか20年とか経つと、もう一個の遺伝子が変異を起こしてガン化するというメカニズムが、かなり決定論的なメカニズムとして分かるようになってきている。

それで、放射線の内部被曝というのを理解するのに、人間で経過がもっともよく取られておりますのは、α線のトロトラストによる肝障害であります。

これは、ドイツで1980年代から使われていた造影剤で、日本でも1930年代から使われてきた、まあ医薬品による薬害でありまして、第一段階でP53という遺伝子を保護する遺伝子がやられてしまうということで、この場合は、実際に使ったのがいつかがわかっておりますから、何年ぐらいでα線の障害が起こるかということがよく分っているのです。

そうしますとドイツ人でも20年、日本人でも20年ということで、最初にトロトラストを使って放射線の障害で実際にガン化が起こるのは、20年の年月がかかるということであります。

それで、α線の核種を飲んでも大丈夫ということが言われますが、これはほとんどネズミ、イヌのような寿命が2年から10年の動物で行われている動物の場合です。2年から10年の実験では、このように20年以降、人間で起こる放射線障害というのは、わからないのは自明のことでありまして、我々が内部被爆を問題にするときは、人間での被爆を問題にしなければいけません。

もうひとつ注意すべきことは、このトロトラストは肝臓に集まって肝臓で障害を起こします。さきほど申し上げたチェルノブイリの甲状腺ガンは、ヨウ素が非常に大きな原因と考えられていますが、ヨウ素の場合は甲状腺に集まって甲状腺ガンをつくっていきます。

それで、今までの低線量被爆の議論の中で、一部に考え方の違いがありまして、疫学とか統計学から見て厳密な証拠が必要だという議論がありますが、誤解の無いように申し上げたいのは、疫学とか統計学というのは、ひとつの経過が終った後に、そこから見て原因を探るという学問的作業であります。

それで甲状腺ガンの場合も、この問題が如実に顕れまして、実は91年ごろに甲状腺ガンが増えてきているということを、ウクライナ、ベラルーシの医師が報告したときに、ロシア、日本、アメリカの学者は、疫学的に明らかでないから、はっきりしたことは言えないということを言っていました。

それが実際にコンセンサスとなったのは、2005年、要するに4000人と言われる甲状腺ガン、15名の子供の死亡例が出た後に、初めて疫学とか統計学とかでコンセンサスになるということが生まれています。

それで、今、我々が福島原発事故の後で考えなければならないのは、この21世紀に生きている我々は、もっとこれから起こるいろいろな障害や事態をシミュレーションとするということを積極的に行って、それでこの事態に対処するということが非常に大事だと思っています。

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