傷害罪と暴行罪の違い
傷害罪と暴行罪の違い http://blog.livedoor.jp/let_it_be_taka/archives/26551066.html
(傷害) 第二百四条 人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
(暴行) 第二百八条 暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。
今日例の傷害で起訴された奈良のおばさんの初公判があったとのことで、こんなエントリーを書いてみることにしました。
さて傷害と暴行の違いですが、傷害のほうが重い罪だということを知っている人も多いと思います。条文に書いてあるように暴行を加えて傷害が発生すれば傷害罪、発生しなければ暴行罪となります。
まず傷害とは何かということですが、学説は大体3つに分かれており、A説:身体の完全性の侵害(例:体に傷を負わせる、髪を切る)B説:生理機能の障害(例:体に傷を負わせる、体調を悪化させる)C説:生理機能を障害しまたは身体の外形に重大な変化を生ぜしめること(AとBの折衷説)
学説ではC説が有力ですが、裁判所はB説をとっているとされています。この根拠としてよく引用されるのが、女性の髪の毛を根元から切る行為を傷害ではなく暴行とした判例です。(大判明治45年6月20日)髪の毛を切っただけでは生理機能は害さないと言ってます。ただし同じく女性の頭髪を根元から切断した事例で、こちらは判例ではなく裁判例ですが、傷害罪に当たると判示した例もあります。(東京地判昭和38年3月23日)前者の例は明治時代の大審院(戦前の最上級の裁判所)による判断なので、今の日本で女の人を丸坊主にするようなことをしたらもしかしたら傷害になるかもしれません。ただ判例は具体的な事件について判断したものなので、どのように切断したか、などで判決が変わることは十分考えられます。
そして暴行を加えなくとも傷害罪は成立します。毒を飲ませて下痢を起こさせたりとか、嫌がらせ電話をしつこくかけて精神障害を起こさせた事例で傷害罪を認めています。今回の奈良の事件は被害者が騒音のために不眠や頭痛、めまいを起こし、約1カ月の治療が必要と診断されたために傷害罪で起訴されたのですね。
次は暴行罪です。暴行の定義は"人の身体に向けられた有形力の行使"とされています。有形力が人に向けられてさえいれば足り、物理的に接触しなくてもかまいません。有形力には物理的な力以外に、光や音といったエネルギーも含まれます。暴行罪が適用された具体例としては、1.髪を根元から切る2.塩を振りかける3.石を投げたが当たらなかった4.狭い四畳半の部屋で抜き身の刀を振り回すなどなど。
ちなみに傷害罪と暴行罪の分かれ目は全治5日ぐらいだそうで。たとえ傷を負ってもごく軽微な場合は暴行罪で処理されるようです。
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