4月2日に東京電力が発表された資料によると、
福島第一原発の2号機の温度計の一つが100度を突破している事がわかった。
資料では、その温度計は故障していない事が書いています。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu12_j/images/120402j0101.pdf
2012年4月8日日曜日
2012年4月7日土曜日
【 がんへの恐怖、そしてうつ病が蔓延する日本の避難民 】
[福島の原子力大災害]〈第3回〉
「もっと広範な徹底的な調査を行わない限り、今回の日本の大惨事の全貌は明らかにできない」
デア・シュピーゲル・オンライン(ドイツ) 2012年3月9日
▽ チェルノブイリからの教訓
メットラーやヴァイスのような放射線専門家の主張の根拠とするのは、チェルノブイリの大惨事の研究結果です。
2011年4月『原子放射線による影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)』は、チェルノブイリの大惨事に関する最新の研究結果を発表しました。
この報告書は事故当時、工場の敷地内で収束作業を行った50万人以上の作業員の検査に基づくものです。
この結果を約100万の住民の甲状 腺に蓄積された放射線量を比較しました。
チェルノブイリの大惨事が甲状腺ガン発症の直接原因となったとみられる子供と若者の数は、6,000人を超えました。
しかし、チェルノブイリでは他の種類の癌を引き起こしたという、決定的な証拠はありませんでした。
核戦争防止のための国際的な医師団(IPPNW)とグリーンピースは、ともにUNSCEARが発表したデータに疑いを抱き、もっと広範な徹底的な調査を行わない限り、今回の日本の大惨事の全貌は明らかにできないと、真っ向から批判しています。
そしてUNSCEAR内に4つのグループを設立すべきであるとしています。
1番目は福島第一原発でメルトダウンが発生した当時施設内にいた作業員と、一般と比較して明らかに大量被ばくしてしまった人々を調査する部門。
2番目は一般市民の被ばくの実態を調査する部門。
3番目は福島第一原発から放出された放射性物質の総量と、それがどこまで環境を汚染したのか、すべての資料をかき集め、実態を明らかにする部門。
4番目は入手したデータの信頼性について専門に検証する部門。
「データを検証し、評価することは最も重要なことであり、決定的手段を手に入れることにつながります。」とヴァイスも認めています。
今回の大惨事に対する日本政府の初期のあまりにひどい情報提供の在り方を見て、国連は透明性と独立性の確保に力を入れたい、と考えるようになりました。
今年5月にUNSCEARは最初のレポートを公開し、もう一つの大きなサマリーレポートは、2013年5月に予定されています。
UNSCEARは今年5月、この問題に関する最初の報告書を公表し、来年5月にはさらに詳しい報告書の公表を予定しています。
ところで世界の複数の専門家は、一つの重要な点について同じ意見を持っています。
すなわち、原子力大惨事による心理的な打撃は、被災者に放射線そのものよりも大きなリスクをもたらす、という事です。
チェルノブイリ事故の後、避難者の多くがストレスやうつ病、絶望感に苦しみ、同じような状況に追い込まれました。
食生活が粗末になり、喫煙やアルコール依存が高まり、結果的に癌のリスクを高めることになってしまいました。
看護師の松本さんもこの点には同意しています。
葛尾難民が抱える一番の問題は、今や放射線ではなく、体を動かす機会が極端に減ってしまったことです。
村民のほとんどは、大惨事の前には懸命に働いていた農民たちでした。
今、緊急避難施設にいて食生活をレトルト食品などに頼っている彼らは、かつては自分たちが育てた新鮮な野菜を食べていました。おかげでコレステロールの値や血糖値が上がる傾向にあります。
「すでに何人かの人がうつ病になってしまいました。」
松本さんがこう語り、さらに以下のようにつけ加えました。
ここにいる避難民の人々は、それに加えて職を失い、住んでいた家も失いました。
「いったいどうしたら、事態を改善できるのか、全く見当がつきません。」
〈完〉
http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,820314,00.html#ref=rss
[福島の原子力大災害]〈第3回〉
「もっと広範な徹底的な調査を行わない限り、今回の日本の大惨事の全貌は明らかにできない」
デア・シュピーゲル・オンライン(ドイツ) 2012年3月9日
▽ チェルノブイリからの教訓
メットラーやヴァイスのような放射線専門家の主張の根拠とするのは、チェルノブイリの大惨事の研究結果です。
2011年4月『原子放射線による影響に関する国連科学委員会(UNSCEAR)』は、チェルノブイリの大惨事に関する最新の研究結果を発表しました。
この報告書は事故当時、工場の敷地内で収束作業を行った50万人以上の作業員の検査に基づくものです。
この結果を約100万の住民の甲状 腺に蓄積された放射線量を比較しました。
チェルノブイリの大惨事が甲状腺ガン発症の直接原因となったとみられる子供と若者の数は、6,000人を超えました。
しかし、チェルノブイリでは他の種類の癌を引き起こしたという、決定的な証拠はありませんでした。
核戦争防止のための国際的な医師団(IPPNW)とグリーンピースは、ともにUNSCEARが発表したデータに疑いを抱き、もっと広範な徹底的な調査を行わない限り、今回の日本の大惨事の全貌は明らかにできないと、真っ向から批判しています。
そしてUNSCEAR内に4つのグループを設立すべきであるとしています。
1番目は福島第一原発でメルトダウンが発生した当時施設内にいた作業員と、一般と比較して明らかに大量被ばくしてしまった人々を調査する部門。
2番目は一般市民の被ばくの実態を調査する部門。
3番目は福島第一原発から放出された放射性物質の総量と、それがどこまで環境を汚染したのか、すべての資料をかき集め、実態を明らかにする部門。
4番目は入手したデータの信頼性について専門に検証する部門。
「データを検証し、評価することは最も重要なことであり、決定的手段を手に入れることにつながります。」とヴァイスも認めています。
今回の大惨事に対する日本政府の初期のあまりにひどい情報提供の在り方を見て、国連は透明性と独立性の確保に力を入れたい、と考えるようになりました。
今年5月にUNSCEARは最初のレポートを公開し、もう一つの大きなサマリーレポートは、2013年5月に予定されています。
UNSCEARは今年5月、この問題に関する最初の報告書を公表し、来年5月にはさらに詳しい報告書の公表を予定しています。
ところで世界の複数の専門家は、一つの重要な点について同じ意見を持っています。
すなわち、原子力大惨事による心理的な打撃は、被災者に放射線そのものよりも大きなリスクをもたらす、という事です。
チェルノブイリ事故の後、避難者の多くがストレスやうつ病、絶望感に苦しみ、同じような状況に追い込まれました。
食生活が粗末になり、喫煙やアルコール依存が高まり、結果的に癌のリスクを高めることになってしまいました。
看護師の松本さんもこの点には同意しています。
葛尾難民が抱える一番の問題は、今や放射線ではなく、体を動かす機会が極端に減ってしまったことです。
村民のほとんどは、大惨事の前には懸命に働いていた農民たちでした。
今、緊急避難施設にいて食生活をレトルト食品などに頼っている彼らは、かつては自分たちが育てた新鮮な野菜を食べていました。おかげでコレステロールの値や血糖値が上がる傾向にあります。
「すでに何人かの人がうつ病になってしまいました。」
松本さんがこう語り、さらに以下のようにつけ加えました。
ここにいる避難民の人々は、それに加えて職を失い、住んでいた家も失いました。
「いったいどうしたら、事態を改善できるのか、全く見当がつきません。」
〈完〉
http://www.spiegel.de/international/world/0,1518,820314,00.html#ref=rss
昨年6月、テレビで原発事故についてコメントする大学教授たちに8億円もの「原発マネー」が流れ込んでいることを明らかにしたジャーナリスト・佐々木奎一氏と本誌取材班は、再び情報公開請求と直撃取材によって、「新たな原発マネー」の存在を掴んだ。原発・電力会社、ゼネコン関連などの資金提供元から、1億2647万6693円ものカネが、津波や活断層を研究・評価する学会(社団法人・土木学会の「原子力土木委員会」委員の大学教授たち)に流れていたのだ。
「奨学寄付金」「受託研究」「共同研究」などの名目でカネが流れた研究者たちは、その事実についてどう答えるのか? 以下は、その回答である。
●前川宏一(東京大学大学院工学系研究科教授)=奨学寄附金1519万円
「規則に基づいて適正に受け入れ、会計規定に基づき適正な執行を行なっている」
「規則に基づいて適正に受け入れ、会計規定に基づき適正な執行を行なっている」
●堀井秀之(東京大学大学院工学系研究科教授)=受託研究1000万円、共同研究150万円
「規則に基づいて適正に受け入れ、会計規定に基づき適正な執行を行なっている」
「規則に基づいて適正に受け入れ、会計規定に基づき適正な執行を行なっている」
●田中和広(山口大学大学院理工学研究科教授)=奨学寄附金200万円
「奨学寄附金は火山の研究のためのもので、(提供元は)九電の子会社だが、原発という意識はなかった。原子力土木委員会には、最初に1回出ただけで具体的には活動していない」
「奨学寄附金は火山の研究のためのもので、(提供元は)九電の子会社だが、原発という意識はなかった。原子力土木委員会には、最初に1回出ただけで具体的には活動していない」
●谷和夫(横浜国立大学理工学部教授)=奨学寄附金530万円、共同研究(不明)
「共同研究は原発に関係あるものとないものと両方ある。津波評価部会は、個別のサイトの評価結果は示していないし、自分は原子力産業から資金提供を受けていない」
「共同研究は原発に関係あるものとないものと両方ある。津波評価部会は、個別のサイトの評価結果は示していないし、自分は原子力産業から資金提供を受けていない」
●丸山久一(長岡技術科学大学工学部教授)=奨学寄附金100万円
「寄附金は、実験・調査に関わる諸経費(機器の購入、材料の購入、旅費、文献購入費等)、研究補助をしてくれる学生への謝金等に使われる。専門はコンクリート工学なので、その観点から委員会の議論に加わっている。2002年2月の『原子力発電所の津波評価技術』には一切関わっていない。研究者、技術者として、自分で築いてきた内容、感覚に背いてまで発言することは、これまでなかったし、今後もないと思う」
「寄附金は、実験・調査に関わる諸経費(機器の購入、材料の購入、旅費、文献購入費等)、研究補助をしてくれる学生への謝金等に使われる。専門はコンクリート工学なので、その観点から委員会の議論に加わっている。2002年2月の『原子力発電所の津波評価技術』には一切関わっていない。研究者、技術者として、自分で築いてきた内容、感覚に背いてまで発言することは、これまでなかったし、今後もないと思う」
●山崎晴雄(首都大学東京都市環境学部教授)=奨学寄附金330万円、受託研究1297万4843円
「取材はお断わりする」
「取材はお断わりする」
●大西有三(京都大学副学長、元工学部教授)=共同研究3150万円、受託研究1212万4350円
(締め切りまでに回答なし)
(締め切りまでに回答なし)
●米山望(京都大学防災研究所准教授)=奨学寄附金540万円、共同研究1225万7500円、受託研究63万円
「原子力土木委員会の委員への就任は2011年6月であり、奨学寄附金等はすべて水力発電に関するもの」
「原子力土木委員会の委員への就任は2011年6月であり、奨学寄附金等はすべて水力発電に関するもの」
●宮川豊章(京都大学大学院工学研究科教授)=奨学寄附金700万円、共同研究630万円
「奨学寄附金は実験費用等に使った。共同研究、受託研究は全て原発とは関係のない研究。津波が専門ではないし、学会の委員会で発言がお金の出し手に対して甘くなるようなことはない。そちらの定義する原子力産業には、大きな違和感がある。大きな組織の関係ない他部署から、受託研究や奨学寄附金をいただいている。
「奨学寄附金は実験費用等に使った。共同研究、受託研究は全て原発とは関係のない研究。津波が専門ではないし、学会の委員会で発言がお金の出し手に対して甘くなるようなことはない。そちらの定義する原子力産業には、大きな違和感がある。大きな組織の関係ない他部署から、受託研究や奨学寄附金をいただいている。
津波想定を議論したのは私が委員になる前だが、当時の工学の最先端の成果であったと考えている。技術のレベルが未熟だったかもしれないという忸怩たる思いはあるが、責任問題とは違う次元の話だと考える」
※SAPIO2012年4月4日号http://www.news-postseven.com/archives/20120403_95943.html
福島の36地点でストロンチウム
ストロンチウム、462兆ベクレルが海に流出2011年12月18日
試算は東電などが発表した資料をもとに行った。
4月に2号機、5月に3号機から流出した放射能汚染水については、流出源である両号機の建屋内のたまり水に含まれる放射性ストロンチウムの濃度を、流出した水の体積にかけて算出。これらに、今月4日に流出が確認された処理水に含まれていたと見られるストロンチウムの量を足し合わせた。大気から海への降下量は含まれていない。
東電は4~5月に海に流出した汚染水中の放射性ヨウ素とセシウムの総量を推定約4720兆ベクレルと発表した。ストロンチウムの量はその約1割に相当する。
2012年4月5日(木)、小出裕章氏が、毎日放送「たね蒔きジャーナル」に出演。ストロンチウム汚染水が12トン海に漏れたことについて言及しています。
▼20120405 たね蒔きジャーナル 京都大学原子炉実験所助教 小出裕章
=====(文字おこし、続き)
※「藤村官房長官「地元の同意は前提条件にならない」ーー「事故が身を以って教えてくれている。それを学べない政治家たちだとすれば落選させるしかない」小出裕章 4/5(1)」からの続きです。
千葉「はい。…では次の質問、まいります。えーと次はですね。福島第一原発4号機の近くにあるパイプが外れて、高い濃度の放射性ストロンチウムを含む汚染水が漏れて、ほとんどが海に流れ出たと見られる、というニュースが入ってきました」
『東京電力福島第一原子力発電所で、5日朝、配管の接合部分が外れて高い濃度の放射性ストロンチウムを含む汚染水が漏れ出て、一部が海に流出したことを受けて、国の原子力安全・保安院は東京電力を厳重注意するとともに、配管の接合部分を総点検し再発防止策をとるよう指示しました。 ...』
小出「はい」
千葉「漏れた量は12トンということなんですが。ここちょっと、改めてお伺いしますが、このストロンチウムとはどんな物質、なんでしょうか」
小出「え…ウランが核分裂してできる時…の、代表的な核分裂生成物というのがいくつかありまして。」
千葉「はい」
小出「え…1つは、今わたしも含めて1番気にしているセシウム137という放射性物質なのですが。それとほとんど、等しい量ができる、というのが、ストロンチウム90という放射性物質でして」
千葉「はい」
小出「人体に対する危険度で言えば、セシウムの何倍かは高いと考えられている猛毒の放射性物質、です」
千葉「はい」
小出「ただし、揮発性が余り無い、ために、福島第一原子力発電所の事故でも、セシウムは大量に大気中に出てきたのですが、ストロンチウムは大気中には出てこなかった…のです。多分まあ割合で言えば1000分の1ぐらいしか大気中には出てこなかったと、思います。で、ただ、逆に、水には溶けやすい、し、え、なかなか水から捕捉しにくいという性質を持っていますので。え…水、をまあ今、浄化系というのを通して、セシウムを捕まえてはいるのですけれども。ストロンチウムはほとんど浄化もできないまま汚染水の中に、もど、残り続けてきてしまっているのです。え、それがまあ漏れてしまったと、いうことで。これからどんどん深刻な問題になると思います」
千葉「え…あの、今回、その、大部分が海へ流れ出したということなんですけれども」
小出「はい」
千葉「量も12トンということで、まあ、どんな影響が考えられますか」
小出「ええっと。実はこの、今、マスコミというかですね、今日の報道ではその12トンが漏れたから大変だということになってるわけですねえ」
千葉「ええ」
小出「もちろん私はそれは大変だと思いますし、え…循環冷却ということ、をやることの困難さを今、それ、今回のことが示したとも思うのですけれども。」
千葉「はい」
小出「実はもう、毎日、漏れているのです。」
千葉「う…」
小出「はい。福島第一原子力発電所の敷地の中には、かつて12万トンを超える汚染水が存在していると、言われていました」
千葉「ええ」
小出「それは原子炉建屋の地下であるとか、タービン建屋の地下であるとか、トレンチピット、立坑というところに溜まっているのですね」
千葉「はい」
小出「今現在もそうです。」
千葉「はい」
小出「で、ただし、そういう構造物というのは、コンクリートで出来ている、のです。」
小出「で、ただし、そういう構造物というのは、コンクリートで出来ている、のです。」
千葉「ええ」
小出「え…コンクリートというのは、必ずひび割れています。」
千葉「はい」
小出「漏れが無いコンクリートの構造物ってのはないわけで。もう、毎日毎日漏れている、のです。ですから私は去年の3月、事故が起きた直後から、コンクリートの構造物の中に溜まっている汚染水は、漏れのない安全な場所に移さなければいけないと、発言を続けてきました。」
千葉「はい。おっしゃってましたねえ」
小出「はい。で、それは、私のまあ頭に描いたのは、巨大タンカーを連れてきて、それにとにかく移す、というのがいいということで、発言をして。たね蒔きジャーナルの番組の中でも、何人かの政治家の人たちと話をさせていただきました」
千葉「ええ、ええ」
小出「そしてその政治家の方々は、皆さん、そうだ、って認めてくださって。え…それは政治の力でやる、とおっしゃってくださったのですけども。結局何も出来ないまま、汚染水がコンクリート構造物の中に放置され続けてきて、います。」
千葉「はい」
小出「もちろん、もう、毎日毎日漏れているということなの、です」
千葉「じゃあ、もうやっぱり根本的に、その、漏れないところに水を移さない限り、」
小出「はい」
千葉「ずうーっと水は漏れ続けるということな、わけですねえ」
小出「そうです。そうです。管理ができない状態で、漏れてきたし、これからも、漏れてしまうということです」
千葉「ふーん。じゃあ、こういう所で改めて12トン漏れたからって驚いている場合ではないわけですね」
小出「はい。そういうことです」
千葉「ふあー。わかりました。えー…今日もスタジオにですね、実は、たくさん質問メールも届いてますので、これを順番にお聞きしていきたいと思います。まずですね、大阪府にお住まいのラジオネームオルソンさんという方からのメールの質問です。この、汚染水漏れの問題なんですけども、入れ続けている冷却水に入浴剤のような色をつける染色剤を入れてみたら、漏れている場所がハッキリわかると思うんですが。そんなことをするととてつもなく危険な反応、例えば爆発したり、パイプが詰まったりとかする可能性が、あるのでしょうか、という質問なんですが」
小出「え…爆発はしたりすることはないと思いますけれども」
千葉「はい」
小出「多分漏れというのはそこらじゅうで漏れてますので」
千葉「ええ」
小出「染色したところで、んー、どこまで有効な手立てになるのかなと思いますし。え…まあ、東京電力の方では漏れというのをむしろ見つけたくないと思ってる、わけですね」
千葉「なるほど、はい」
小出「漏れてるなんてことは、ないと、むしろ彼らは言いたいわけですから。彼らとしては、そういう手段は嫌がるだろうと思います」
千葉「あーー…それでまあ、あの、危険というところはあんまり考えられないんだけど。」
小出「はい」
千葉「それが実現する可能性としては結構低そうな感じですね」
小出「でも、良い提案だと思いますので、東京電力にやらせたらいいと思います」
千葉「はい。続いてじゃあ、こちらの質問参ります。こちらは、ラジオネームぽんちさんという方ですね。神奈川県にお住まいの方です。え…食品の放射性物質の検査ですが。セシウムばかりの話が多いんですが。プルトニウム、ウラン、ストロンチウムなどの、その他の検査はなぜ話に持ち上がらないんでしょうか。という質問です」
小出「え…本当はやらなければいけない、のです。え…ただし、ストロンチウム、あるいはプルトニウムというものの分析というのは、セシウムの分析に比べて、はるかに手間がかかります」
千葉「はい」
小出「え…100倍、1000倍というぐらいに、手間暇がかかるという、そういう測定法ですので。え…今やってるセシウムと同じぐらいの、う……ん……厳密さというか」
千葉「はい」
小出「まあ、今でも厳密だと私は思いませんけれども。セシウムに匹敵するような測定をするということはなかなか難しいだろうと、思います。で、その上で、今も少し聞いていただきましたが、ストロンチウムという放射性物質は、セシウムよりも本来は危険ですけれども」
千葉「はい」
小出「でも、放出されてきた量が、圧倒的に少ないですので。私たち、の、被曝という意味で言えば、何よりもやはりセシウムに注意をしておかなければいけないと、私も思い、ます。え…プルトニウムもそうです。え…猛毒な放射性物質ですけれども。放出された量が、セシウムよりもはるかに少ないので。今は、とにかくセシウムに気をつけなければいけないと、いうことだと私は思います。え…でももちろん、測定はやったほうがいい、し、これから海洋が、海が汚れてきますので、その時にはストロンチウムが、むしろセシウムより問題になる可能性があると思います。え…しっかりと分析体制を作るべきだ、と思います」
千葉「うん…本来はもう測ったほうがいいもの」
小出「はい」
千葉「なんだけれども、そこまで手が回ってないってのが」
小出「そうです。はい」
千葉「現状だということですね」
小出「はい。おっしゃるとおりです」
千葉「はい。わかりました。」
小出「はい」
千葉「小出さんどうもありがとうございました」
近藤「ありがとうございました」
小出「ありがとうございました」
=====(文字おこし、ここまで)
福島の36地点でストロンチウム
福島県は6日、東京電力福島第1原発事故を受けて、県内55地点の土壌を調査したところ、県沿岸部、県中部の36地点で事故以前の濃度の平均値を上回る放射性ストロンチウムを検出したと発表した。原発事故の影響が考えられるが、県は人体に影響のないレベルとしている。
放射性ストロンチウムは骨にたまりやすく、体内に大量に取り込むとがんの原因となる恐れがある。米ソなどが大気圏内核実験を行っていた1970年代には国内でより
高濃度のストロンチウムが検出されたこともある。
高濃度のストロンチウムが検出されたこともある。
県によると、第1原発が立地する大熊町の1地点でストロンチウム90を1キログラムあたり80・8ベクレル、双葉町の1地点で同14・9ベクレルを検出した。34地点では濃度の平均値が2005年の測定値を上回った。
調査は昨年7~10月に実施。文部科学省も昨年、同様の調査結果を発表している。
横浜のストロンチウムと子供の守り方(緊急の2)
【放射能漏れ】汚染水、海に流出 福島第1、配管抜け ストロンチウムも
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120405/trd12040514060014-n1.htm
汚染水、海に流出 福島第1、配管抜け ストロンチウムも
東京電力は5日、福島第1原発にたまった汚染水を淡水化する装置と仮設タンクを結ぶ配管が抜け、高濃度の放射性ストロンチウムを含む汚染水約12トンが漏れたと発表した。
東電は、大部分が排水路を通じて海に流出したとみており、「海に流出させる事態となり、あらためておわびする」と謝罪した。
東電によると、漏れた汚染水には放射性セシウムも1立方センチ当たり16.7ベクレル含まれ、海につながる排水路の下流でもセシウムが検出された。東電はストロンチウムの濃度を調べている。
東電によると、5日午前1時5分ごろ、配管を流れる水の量が急上昇したため、装置を停止。
弁を閉めたところ漏れも止まった。配管が継ぎ目から抜けたことが原因という。
横浜でストロンチウムが検出され、多くの人が心配しています。
原子炉の中ではセシウムとストロンチウムが同じく6%程度できます。そして半減期もほぼ同じで30年。ベータ線をだし、おそらくは原子炉から吹き出すときには酸化物で、やがて水酸化物になり水に溶解していくというところまで似ています。さらには比重は3.5から4ぐらいですから何から何まで双子の兄弟と言ってよいでしょう。
ところがこれまではセシウムが何十万ベクレルという高濃度で発見されているのに、ストロンチウムはその100分の1にもなりませんでした。原子炉の中では同じようにでき、性質も似ているのになぜストロンチウムが観測されないのか? チェルノブイリの時にも10分の1はあったのになぜ無いのか? 本来ならあるべきストロンチウムが極微量しか検出されなかったことが問題だったのです。
すでに国民の多くは政府やマスコミが積極的に国民を守ろうと思っていないことを知っているので、政府が「なぜ、ストロンチウムは無いのか?」の説明をすることを期待していません。それより「おそらくは隠しているのだろう」と思っています。
10月初旬に横浜でストロンチウムが1キログラムあたり200ベクレル程度、測定されるようになりました。データの真偽はこれから少しずつはっきりしてくるでしょうが、「えっ!ストロンチウムが!」と驚かれていますが、普通なら「えっ!ストロンチウムが今頃、観測されたの?」という方が常識的でしょう。
・・・・・・・・・
まず、防御法ですが、セシウム137は青酸カリより桁違いに猛毒ですが、ストロンチウムも猛毒で骨に蓄積し白血病の原因となります。ただセシウムより蓄積するところが限定されているので、さっそく防御をしましょう。
人間の骨は主としてカルシウムでできていますが、毎日、少しずつ溶けて少しずつ食品からのカルシウムで骨を作り直しています。普通の生活をしている人は1日200ミリグラム、寝ている人は1日400ミリグラムのカルシウムが尿中にでます。そこで、カルシウムを少し余分にとっておけば、ストロンチウムは骨に入りにくくなります。
骨は本当はカルシウムを必要としているのですが、カルシウムがなければ仕方なくストロンチウムをカルシウムの代わりに使うので、まだ学問的にははっきりしていませんが、自衛策がなかなかない中、カルシウムを一緒にとっておくのが良いと考えられます。
でも、困ったことがあります。太平洋の静岡から北の小魚は汚染されていますし、牛乳は危険で飲むことができません。従って、カルシウムをとるのは、日本海側の小魚、四国、九州、沖縄、海外の小魚、そして海外からの乳製品ということになります。でも、カルシウムが多い豆類などがありますので、情報をよく交換してお子さんがカルシウム不足にならないようにしてください。
・・・・・・・・・(検出されない理由)・・・・・・・・・
おそらくは横浜ばかりではなく、神奈川、東京から岩手までかなりの濃度でストロンチウムがあると考えた方が良いでしょう。チェルノブイリでもそうでしたし、もともとの性質を考えても「セシウムあるところにストロンチウムあり」と考えるべきだからです。
では、なぜ今まで検出されなかったのでしょうか? 私はやや犯罪の臭いを感じます。というのは、セシウムは「機器」を使って「人間が操作しなくても」測定できるのですが、ストロンチウムは混合物からストロンチウムだけを取り出してから測定します。だから、その操作の時に「ストロンチウムを故意に捨てる」ということは容易なのです。
かつての日本人はこんな誠意のないことはしなかったのですが、最近の大人の男は平気でします。なにしろ福島や関東の野菜を売るために汚染されていない南の野菜を捨てさせているぐらいですから、何をやるか判りません。
ある時に専門家が「ストロンチウムは重たいので東京まで来ない」などと言っていましたが、科学的な間違いです。おそらくは「そう言えばテレビに出してあげる」と言われて、他人や子供の健康より自分のことを考えたと思います。
日本はダメになってしまったのですから、外国で生活するように自衛することです。それには、1)ストロンチウムはセシウムがあるところはある、2)カルシウムをとっておけばかなり防ぐことができる、と覚えて自衛してください。国、自治体、専門家、NHKは信用できません。
(平成23年10月13日)
武田邦彦
【放射能漏れ】汚染水、海に流出 福島第1、配管抜け ストロンチウムも
http://sankei.jp.msn.com/life/news/120405/trd12040514060014-n1.htm
汚染水、海に流出 福島第1、配管抜け ストロンチウムも
東京電力は5日、福島第1原発にたまった汚染水を淡水化する装置と仮設タンクを結ぶ配管が抜け、高濃度の放射性ストロンチウムを含む汚染水約12トンが漏れたと発表した。
東電は、大部分が排水路を通じて海に流出したとみており、「海に流出させる事態となり、あらためておわびする」と謝罪した。
東電によると、漏れた汚染水には放射性セシウムも1立方センチ当たり16.7ベクレル含まれ、海につながる排水路の下流でもセシウムが検出された。東電はストロンチウムの濃度を調べている。
東電によると、5日午前1時5分ごろ、配管を流れる水の量が急上昇したため、装置を停止。
弁を閉めたところ漏れも止まった。配管が継ぎ目から抜けたことが原因という。
坪倉正治 福島第一原発から23キロにある総合病院で働く血液内科医。住民と共に内部被曝について考える。
坪倉正治(つぼくら・まさはる)
東京大医科研医師(血液内科)、南相馬市立総合病院非常勤医。
週の半分は福島で医療支援に従事。
原発事故による内部被曝を心配する被災者の相談にも応じている。
東京大医科研医師(血液内科)、南相馬市立総合病院非常勤医。
週の半分は福島で医療支援に従事。
原発事故による内部被曝を心配する被災者の相談にも応じている。
福島原発から23キロで働いています
坪倉正治
こんにちは。
南相馬市立総合病院で非常勤内科医をしております、坪倉と申します。
南相馬市立総合病院で非常勤内科医をしております、坪倉と申します。
亀田総合病院で研修医を行った後、千葉と東京で血液内科医として働いておりました。被災地支援で去年の4月に浜通りに入ったのが最初で、外来診療を始めたのが去年の5月でしたが、7月にホールボディーカウンターが導入されたのがきっかけで、そちらのお手伝いもさせていただいております。
ホールボディーカウンターが導入されてから、まだ1年は経っておりませんが、この検査は実際の放射能量だけではなく、今後の生活の指針など様々なことを教えてくれました。その一方でわからないこと、内部被ばく検査自体の限界も明らかになってきました。
今までの検査の結果は、南相馬市のウェブサイトや、拙文を参考にしていただければと思います。
写真が、今現在市立病院で稼働しているキャンベラ社製、Fast Scanです。一日あたり110人のペースで検査が進んでいます。今日も多くの方が来院され、通常の外来の方々と重なり、一階は人でごった返していました。
出来る限り、今現場で何が問題となっているかをご紹介できればと思います。どうぞお手柔らかに、おつきあいください。
《編集部から》
坪倉医師は、福島の現状について積極的に語っていただいています。
坪倉医師は、福島の現状について積極的に語っていただいています。
ベクレル? or シーベルト?
坪倉正治
報道でよく耳にする放射能に関連した単位には、ベクレル(Bq)とシーベルト(Sv)があります。ベクレルは、放射能の量をあらわす単位。シーベルトは簡単にいうと、人間が被曝によって受ける影響の大きさをあらわす単位だと、ご存じの方も多いと思います。
ですが、その二つの関係となると、単純な換算でわかるものではありません。
例えば、ある場所で空間線量を測ったところ、0.2μSv/h(1時間当たり0.2μSv)という数字が出たとします。その値から、「原発事故後どれだけ余分に自分が外部被曝しているか?」と聞かれても正確に答えることは、実はできません。
単純に「0.2μSv/h×24時間×日数」と計算すればいいのでしょうか。これは正確ではないのです。なぜなら、事故直後は0.2μSv/hより空間線量が高かったからです。
外部被ばくを今までどれほど余分にしたのかを知るには、1カ所の空間線量をもとに計算したのでは不十分です。空間線量は時間ともに変化しますし、場所を移動したりすると、高かったり、低かったりするためです。たとえば、同じ家の中でも、空間線量のばらつきは大きいのです。
こうした問題は、内部被曝検査でも起きているのです。
さてここで、○×問題をしましょう。
問. | ホールボディーカウンターは実効線量(正確には、預託実効線量)をSv単位で実測するための装置である。 |
答えは×です。
ホールボディーカウンターは、その検査を行った際に、体内にどれほどの放射性物質が含まれているかを計測できる器械で、その単位はBqです。
言い換えると、「体内に今、どれだけのセシウムが存在するか」を計る器械です。事故直後に、どれだけ吸入していたのかを教えてくれる器械ではありません。
先ほどの空間線量の話と同じです。例えば、現在の体内に1000Bqセシウムがある場合、それが10日前に1100Bq食べてしまって、100Bq排出された結果なのか、数カ月前に10000Bq食べて9000Bq排泄された結果なのかを器械は教えてくれないのです。当然、後者の方が、カラダへの影響が大きく、Svの値が多くなります。
「いつ摂取したのか」。これを仮定して初めて、Svの値が計算できます。
事故直後ならまだしも、今現在セシウムが体内から検出される場合、2通りの可能性が考えられます。事故直後に主に吸入で摂取してしまったもの(急性被曝分)と、その後の生活で主に食品から摂取してしまっているもの(慢性被曝分)です。
今日、検査でセシウムが検出されても、昨日摂取したものなのか、事故直後の影響がまだ残っているのかを区別することは出来ません。
先日、福島県でホールボディーカウンターの計測結果が公表されました。いつも通り、1mSv以上か以下かで分けられています。ほとんどの報道も今までそのようにされてきました。
しかしながら、事故後1年経った今では、検出されたセシウムがいつ摂取したものかわからず、Sv値を正確に計算することが不可能です。実はSvの計算方法(仮定の置き方)が数種類あり、どのような仮定をおくかで、Svの値が2桁ぐらい変わってしまいます。
慢性被ばくがどれほどかを明確にするためにも、SvのみではなくBqでの検査結果を公表してほしいと思っています。
今日は南相馬市立総合病院で、東京大学の早野先生によるホールボディーカウンターの勉強会でした。いつもの早野先生節で素晴らしい勉強会でした。実は上記の○×問題、今日の勉強会で行ったテストの中の一問でした。写真はテスト中の風景です。早野先生と同じカメラで撮影しました。
参考リンク
ホールボディーカウンタによる内部被ばく検査について(福島県ホームページ)
遮蔽のでき具合が、能力を決める
坪倉正治
福島県内で稼働するホールボディーカウンターの性能を決める上で最も重要な要素は何でしょう?
その答えは、遮蔽(周りからの放射線をどれだけ遮断できるか)がいかにしっかりできているかです。
その答えは、遮蔽(周りからの放射線をどれだけ遮断できるか)がいかにしっかりできているかです。
ホールボディーカウンターは体内に存在する放射能量を測定します。体の近くに検出器を近づけて、体内からの放射線を測定しています。その際、体内からの放射線と、周りの環境から飛んでくる放射線の両方を拾ってしまいます。器械自体は周りの環境から飛んでくる放射線と、体内から発せられる放射線の区別ができません。検査後、専用のソフトウェアを用い、環境からの放射線の部分を引き算して、体内の放射能量を計算しています。
空間線量が高い場所(周りの環境に飛んでいる放射線が多い場所)で計測すると、この環境からの放射線の部分の引き算が難しくなります。相対的に小さい体内からの放射線の測定がやや不正確になってしまうのです(検出限界が高くなります)。
騒音の大きい場所で、小さい話し声を聞き分けるようなものです。空間線量が0.5μSv/hぐらいの場所だと、周りの環境からの放射線量が多すぎ(ノイズが強くなり過ぎ)て、今現在ターゲットにしているような放射能量の測定が厳しくなります。
当院でも当初は同様の問題が生じました。最初に使っていた椅子型のホールボディーカウンターは遮蔽が弱かったのです。バス型だったので院外に設置せざるを得ず、遮蔽板を下に引いたり横に置いたりしていたのですが、どうしても理想とするレベルまでの遮蔽に至りませんでした。器械の検出限界は数分の計測では4桁(1000~2000Bq/body)ぐらいを実現するのがやっとでした。それ以上の被ばくをしてしまっている方しか測定できない状況でした。
今現在の当院のキャンベラ社製のファストスキャンでは検出限界がセシウム137で250Bq/body程度、セシウム134で210~230Bq/body程度です。ファストスキャンが、これほどの性能を出すことが出来るのは、器械自体にしっかりした遮蔽が内蔵されていることが大きいです。第1回の写真の器械ですが、この器械の後ろ側のほとんどは遮蔽板によって作られています。今後、遮蔽のしっかりしていないタイプのホールボディーカウンターを導入する際は、設置の場所や遮蔽を十分に考慮する必要があります。
写真は、ウクライナのホールボディーカウンター専門施設に設置してある最も細かい量まで計測することが出来る器械です。5分の計測時間で約30Bq/bodyまでの細かい値まで計測が可能です。もちろん内蔵している検出器自体の性能もありますが、遮蔽がしっかりしていることが非常に重要です。
ただし、扉の開け閉めに1~2分かかります。僕自身も体験しましたが扉がしっかり閉まってしまうと、閉塞感が非常に強く、5分でも少し気持ち悪くなりました。もちろん現在のウクライナで、このレベルの器械がいたるところで稼働している訳ではありません。通常の検査は、今現在の我々の器械と同様レベルの器械が用いられており、細かく値を追う必要があると判別されたり、精密検査が必要と考えられたりする方にだけ、使用されているとのことでした。
また計測する時間が長くなればなるほど、細かい値まで計測できる訳ですが、当然計測できる人数が少なくなります。ゼロまで計ることはそもそもできません。食品検査と同様、まだどの程度の器械の性能を標準として計測して行くのかのコンセンサスがありません。福島県内には順次、ホールボディーカウンターの導入が進んでいますが、今後詰めて行かなければならないことがまだまだ山積みです。計測に携わる当事者が同じ方向をむき、健康を守るために努力して行くことが出来ればと思っています。
子どもの内部被曝を調べるのは難しい
坪倉正治
子供の方が大人に比べて放射線による感受性が高い。これは皆さん既にご存知のことだと思います。小さい子供の内部被曝の程度がいかほどなのか。検出されるとしても出来るだけ少なくあってほしい。我々医療者もそう思っています。しかしながら、今現在小さい子供に対する内部被曝検査には、大きな問題があります。体の小さい子供達を正確に計測できないという問題です。
そもそもホールボディーカウンターは、原発で従事できるような大人を対象にしており、小さい子供用には作られていません。当院の例で言いますと、キャンベラ社製ファストスキャンでは、130cmぐらいを下回ると途端に、カリウムの定量性が怪しくなります。説明書でも4歳以上は計測できますと書かれていますが、大人と同じぐらいの精度で計れているようには思えません。体の大きい小学生や中学生ぐらいなら全く問題ありませんが、乳児などはとてもじゃないですが計測できません。小さい子供に関しては、かなり大雑把にしか検出できないというのが現状です。
では、他の方法が無いのか? あります。その代表は尿検査です。しかしながら、尿検査にも大きな問題点が2つあります。1つ目は、朝の尿と夜の尿で濃さが違うということです。当然ですが、尿の濃さが倍になれば、例えばセシウムは倍の濃度で検出されます。そのときの尿の濃さに結果が左右されすぎてしまうのです。体内の放射能量と、尿中の放射能濃度が明確な比例関係に無い。計測の意味が全くない訳では決してありませんが、大雑把なスクリーニングの意味合いが強くなります。
2つ目は尿の量です。出来れば細かく尿中のセシウム量を計測したい。と考える訳ですが、その場合ある程度の尿量(少なくとも数百cc)が必要になります。しかしながら、これは大きな矛盾を抱えてしまっています。今困っているのは、体の小さい小児をホールボディーカウンターで計測できないことです。その体の小さい小児から、より多くの尿をためなければならないのです。体が大きくて、尿が十分ためることが出来る方の場合、尿をためられるかどうかは問題になりません。そのままホールボディーカウンターで計測すれば良いだけなのですから。
1歳では、20mlためるのも厳しいでしょう。実際、20mlでもきつい、10mlしか採れないが、何とか計測してほしいと頼まれたこともあります。値は出すことは出来るかもしれませんが、正確性には欠けます。それに加えて、そもそも小さい子供は、大人より代謝速度が早いため、体内の絶対量が大人に比べて少ない傾向があります。より少ない量を計測しなければならないのに、体が小さいため、計測自体が困難になってしまうのです。
今あり得る方法は、3つです。1つ目は、上記の尿検査またはホールボディーカウンターで、ある程度大雑把ではあるが、それには目をつぶって計測を続けるという方法です。尿検査は体内の放射能量と関連性が無く、計測はしないと発表した機関もありましたが、尿検査が大雑把だからといって全く意味が無いとは思いません。何も計らないよりはましです。
2つ目は、子供の代わりに母親を計測するという方法です。母親から内部被曝が検出されない場合、同じような生活をしている子供は、母親よりもさらに代謝が早く、食品摂取量も少ないので、放射能が検出されるとしてもさらに少ないだろうと考える方法です。一般的にはこの考え方が用いられていますが、実際の子供を計測していないという難点があります。
3つ目は、母親と一緒にホールボディーカウンターに入ってもらう方法です。メーカーはこれを推奨しています。母親と子供を一緒に計測したものから、母親の値を引き算するというものです。当院でも何度も試しましたが、正直なところ2人一緒に計ったカリウム量と、母親のみのカリウム量が体重に見合った値として検出されるかは微妙です。とり得る一つの方法だとは思いますが、小児の放射能量が正確に計れている印象もありません。やはりこれでも大雑把になります。
4つ目は、まだ実現していませんが、小児用の特別製ホールボディーカウンターを作る方法です。レストランで出てくる,小児用の椅子のような器械が作るわけです。ウクライナの技術者は作れますと言っていましたが、まだ現実にはなっていません。
今回は、小児測定時の問題点を紹介しました。最善の方法がどれかはわかりませんが、いずれにせよ、注意しながら継続的にチェックし、少なくとも大量の内部被曝をしていないことを確認して行くことが重要と考えています。
写真は大野病院から持ってきた、富士電機製のWBCです。
去年の8月から1カ月半、2500人の子供達を計測してくれました。
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