平成13年11月1日
経 済 産 業 省
原子力安全・保安院
放射性廃棄物規制課
経 済 産 業 省
原子力安全・保安院
放射性廃棄物規制課
平成13年10月4日に日本原子力発電㈱から核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律第38条第1項に基づき東海発電所の解体届の提出(平成13年10月31日に記載事項の一部補正)があったところ、当省においてその内容を審査した結果、同法第38条第2項の規定に基づく措置を命ずる必要がないと判断し、その旨を本日、日本原子力発電㈱に通知した。
解体届の概要、審査内容は以下のとおりである。
Ⅰ.解体届概要
今回は、全体計画と安全貯蔵及び先行解体(その1)の詳細計画が提出された。
1.全体計画
(1)工程- ①廃止措置の開始日及び完了期日
平成13年12月4日着手、平成30年3月完了予定。
②工程の分割
- 安全貯蔵工程(平成13年12月~平成23年3月)
汚染の程度が高い原子炉本体、生体遮へい体等を隔離し、安全貯蔵を行い減衰を待つ。 - 先行解体工程
作業スペース確保等のため、安全貯蔵期間中に安全貯蔵対象範囲外の設備を順次解体撤去。安全貯蔵期間は約10年に及ぶため、2期に分けて実施。
イ)先行解体(その1)工程(平成13年12月~平成18年3月)
ロ)先行解体(その2)工程(平成18年4月~平成23年3月) - 解体撤去工程(平成23年4月~平成30年3月)
原子炉本体、生体遮へい体の解体撤去等を実施した後、各建屋を解体撤去。
- 安全貯蔵工程(平成13年12月~平成23年3月)
- (2)核燃料物質及び放射性廃棄物の処分
- ①核燃料物質の処分
使用済燃料は、平成13年6月に再処理委託先の英国BNFLへの搬出完了。新燃料は、平成10年12月にBFNLへの引き渡しを完了。
②放射性廃棄物の処分
- 放射性固体廃棄物の処理処分
固体廃棄物約177,300トンのうち放射性固体廃棄物約63,400トン(付随廃棄物を含まず)。
放射性固体廃棄物は、埋設処分することとし、解体撤去工程着手前までに、処分先を確定。また、確定できない場合は解体撤去工程に着手せず、あらかじめ解体届を変更して安全貯蔵期間を延長する。
- 放射性固体廃棄物の処理処分
- (3)安全性の評価
- 既存技術を適用して廃止措置を実施した場合を想定して、平常時及び事故時の周辺公衆の被ばく評価を実施。
- 2.詳細計画
(1)安全貯蔵工程 - ①工事内容
- 安全貯蔵工程の開始日及び完了期日
平成13年12月4日着手、平成23年3月完了予定。 - 実施工事
安全貯蔵措置、炉内構造物のサンプル調査。
サンプル調査により、数百グラム程度の放射性廃棄物が発生するが、それらは、区分に応じて分別し、解体撤去工程まで保管。解体撤去工程にて埋設処分。 - 安全貯蔵工程の開始日及び完了期日
- (2)先行解体工程(その1)
- ①工事内容
- 先行解体(その1)工程の開始日及び完了期日
平成13年12月4日着手、平成18年3月完了予定。 - 実施工事
使用済燃料冷却池洗浄・排水工事、タービン建屋領域コンクリートサンプル採取、油タンク等残さ処理工事、補機冷却水設備等改造工事、電源設備変更工事、タービン建屋領域機器解体工事、原子炉サービス建屋領域機器解体工事、燃料取扱建屋領域機器解体工事、燃料取替機等解体工事。
- 放射性気体・液体廃棄物の処理処分
既設の設備を用いて処理処分。 - 放射性固体廃棄物の処理処分
固体廃棄物約11,200トンのうち放射性固体廃棄物約2,670トン(付随廃棄物を含む)。
放射性固体廃棄物は、切断後、ドラム缶又は鉄箱に封入し、既設ドラム貯蔵庫又は固体廃棄物貯蔵庫A,Bに、解体撤去工程まで保管。解体撤去工程にて埋設処分。
具体的に決定された工事方法に基づき、平常時及び事故時の周辺公衆への被ばく評価を実施。 - 先行解体(その1)工程の開始日及び完了期日
- Ⅱ.解体届の審査
昭和60年12月19日原子力安全委員会決定「原子炉施設の解体に係る安全確保の基本的考え方-JPDRの解体に当たって-」(平成13年8月6日「原子炉施設の解体に係る安全確保の基本的考え方」に一部改訂)及び国際原子力機関(IAEA)の安全基準文書を参照し、平成13年8月2日にとりまとめられた総合エネルギー調査会原子力安全・保安部会廃止措置安全小委員会報告書「実用発電用原子炉施設の廃止措置に係る安全確保及び安全規制の考え方について」を基に審査を行った。 審査結果の概要は、以下のとおり。
1.全体計画
(1)廃止措置の対象施設 - 東海第二発電所との共用施設を除く東海発電所の全ての建屋及び設備が対象となっている。
対象施設については、実測データ等に基づき、放射化及び汚染の評価を行っている。 - (2)完了目標
- 汚染のない建屋の地下部及び基礎を除く全ての施設を解体撤去し、放射性廃棄物を全て撤去し、敷地は汚染の状況を確認した上で管理区域を解除して東海第二発電所の周辺監視区域として継続管理する計画となっている。
- (3)工程
- 工事開始から約17年で廃止措置を完了させる計画となっている。
原子炉本体等の汚染の程度が比較的高い設備に着目して安全貯蔵工程を設定し、その後解体撤去工程を実施する計画となっている。
また、先行解体は次の点に留意している。
① 他の設備への悪影響を防止する工法(爆破工法の不採用等)を採用。 ② 廃止措置を安全に実施する上で必要な設備を維持し、設備毎の点検頻度を規定。 ③ 先行解体(その1)工程及び先行解体(その2)工程の完了時には、内部に汚染を有する設備の開口部を閉止、放射性固体廃棄物を保管施設に保管、施設の汚染状況に応じ管理区域を設定。 ④ 先行解体工程における放射性固体廃棄物は、既設の貯蔵施設に保管可能。 ⑤ 先行解体を行っても放射性物質の放出量総量が有意に増加しない。 ⑥ 先行解体に要する資金は、総費用の約927億円中約147億円であり、十分な資金が残存。 - (4)核燃料物質及び放射性廃棄物の処分の方法
- 核燃料物質については、既に搬出済みである。
発生する放射性廃棄物は、処理、保管、処分し得る計画となっている。 - (5)安全性の評価
- 平常時評価については、原子力安全委員会が定めた指針類で規定された評価方法を参考にして実施されている。放射性気体廃棄物及び放射性液体廃棄物の放出に伴う周辺公衆の実効線量は、約8μSv/年であり、周辺公衆の線量限度である1mSv/年を十分下回るとともに運転中の周辺公衆の被ばく線量の評価結果である約19μSv/年を下回っている。また、スカイシャイン線及び直接線による周辺公衆の線量評価結果は、約3μGy/年であり、運転中の評価結果である約15μGy/年を下回っている。
事故時評価については、原子力安全委員会が定めた指針類で規定された評価方法を参考にして実施されている。被ばくが最大となるのは、原子炉建屋換気設備のフィルタ破損事故で、その値は約9μSvであり、周辺公衆に著しい被ばくのリスクを与えないもの(運転時の目安である5mSvを下回っている)となっている。
従事者の総被ばく線量は、約3.3人・Svとなっている。 - (6)資金計画
- 廃止措置に要する費用(解体工事費及び解体廃棄物処理処分費)は、約927億円。全額自己資金により賄う計画となっている。なお、このうち約519億円は原子力発電施設解体引当金として既に積立てられている。
- (7)品質保証
- 運転中と同様に原子力発電所の品質保証指針(JEAG4101)に準拠する計画となっている。
2.詳細計画
(1)安全貯蔵工程- ①工事の方法
当初に原子炉本体に接続する配管の既設の弁等を全て閉止し、隔離する計画となっている。
炉内構造物のサンプル調査では、クリーンハウス、局所フィルタ、局所排風機を活用することにより施設内の汚染拡大防止を図る計画となっている。
工程中は、建屋、構築物、換気設備等の廃止措置を実施する安全に実施する上で必要な設備を維持する計画となっている。
②放射性廃棄物の処分の方法
安全貯蔵工程において発生する放射性固体廃棄物は、既設の保管施設に保管することとし、解体撤去工程にて処分する計画となっている。 - (2)先行解体(その1)工程
- ①工事の方法
比較的汚染レベルが高く、切断時の放射性粉じんの拡散が考えられる工事については、放射性粉じんの発生を極力抑制する工法の採用、クリーンハウス、局所フィルタ、局所排風機の活用、解体前の機器除染を講じ、放射性物質の施設外への拡散防止を図る計画となっている。
比較的線量レベルが高く、機器開放及び切断時の粉じん拡散が考えられる工事については、鉛遮へい板等を用い外部被ばく防止、クリーンハウス、局所フィルタ、局所排風機及びマスク等の防護具等を用い内部被ばく防止を図る計画となっている。
事故防止対策として、爆破工法を採用しないなど周辺設備への影響及び維持管理している設備への影響を避ける工事方法を採用する、また、地震・台風等の自然事象に備え、各建屋を維持する計画となっている。
工程期間中、廃止措置を安全に実施する上で必要な設備(建屋、構築物、換気設備等)を維持する計画となっている。
②放射性廃棄物の処分の方法
先行解体(その1)工程において発生する放射性気体廃棄物は、換気設備で処理し、排気筒又は排気口から放出する。その際、放射性物質濃度を測定監視し、法令に定める周辺監視区域外の濃度限度を超えないようにする計画となっている。
放射性液体廃棄物については、既設の放射性廃棄物処理設備で処理し、法令に定める周辺監視区域外の濃度限度より低いことを確認して放水口から放水する計画となっている。
放射性固体廃棄物のうち不燃性雑固体については、鉄箱に封入して解体撤去工程まで保管施設にて保管する計画となっている。可燃性雑固体については、ドラム缶に封入して解体撤去工程まで保管施設にて保管するか、又は既設固体廃棄物焼却設備で焼却した上で、焼却灰をドラム缶に封入して解体撤去工程まで保管施設にて保管する計画となっている。
③安全性の評価
平常時評価については、先行解体(その1)工程に係る詳細計画に基づき、全体計画で安全性の評価を実施しているとおりである(気体で約0.07μSv/年、液体で約2.0μSv/年)。
事故時評価については、先行解体(その1)工程で被ばくが最大となるのは、使用済燃料冷却池建屋換気設備のフィルタ破損事故で、その値は約0.08μSvとなっている。 - 以上により、全体計画及び詳細計画(安全貯蔵工程及び先行解体(その1)工程)は、核燃料物質、核燃料物質によって汚染された物及び原子炉による災害を防止する上で支障のないものと認められる。
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