2012年9月29日土曜日

近藤誠 放射線はわずかな線量でも、確率的に健康に影響を与える可能性があります。


http://smc-japan.org/?p=1627

近藤誠(こんどう・まこと)

慶応義塾大学医学部放射線科講師

1948年生まれ。東京都出身。
慶應義塾大学医学部卒。患者の権利法を作る会、医療事故調査会の世話人をつとめる。



テレビや新聞で報道されている被ばくに関する専門家のコメントに
100ミリシーベルトを基準として「これ以下の被ばくは問題ない」とするものが
多々見受けられますが、この表現には問題があるので、指摘します。

「広島、長崎のデータなどから100ミリシーベルト以下では
人体への悪影響がないことは分かっています」という記事がありました。

 確かに100ミリシーベルト以下の被ばくでは
火傷のような急性症状は出ません。
急性症状について言っているなら妥当な表現です。

 しかし、広島、長崎で被爆した人の追跡調査では
50ミリシーベルト以下の低線量被ばくでも発がんによる死亡増加を示唆する研究結果があります。
[文献1]


 放射線はわずかな線量でも、確率的に健康に影響を与える可能性があります。

 低線量被ばくについては、

日本を含む世界15カ国で40万人の原子力施設作業員の調査をしたレポートがありますが、


これによると、被ばく量が50ミリシーベルト以下でも

発がん率は上昇しています。

[文献2]


 また被ばく量が1シーベルト上がるごとに、
がんによる相対過剰死亡数が率にして0.97(97 %)増える計算です。

相対過剰死亡率の計算は若干難しいので、

結果だけ示しますと、

死亡統計により国民死亡の30 %ががんによる日本では、

10ミリシーベルトを被ばくすれば、がんの死亡率は30.3 %、

100ミリシーベルトの被ばくでは33 %になります。


 100ミリシーベルト以下は安全だとする説は、

ここ数年でほぼ間違いだとされるようになっています。

 人間は放射線被ばくだけで発がんするわけではありません。

 私は、「発がんバケツ」という考え方をします。


それぞれの人が容量に個人差のある発がんバケツを持っています。

放射線だけでなく、タバコや農薬など、いろんな発がんの原因があり、

それがバケツにだんだんとたまっていき、いっぱいになってあふれると発がんすると考えます。

 ある人のバケツが今どのくらい発がんの原因で満たされていたかで、


今回被ばくした量が同じでも、発がんする、しないに違いがでます。

ですから、放射線量による発がんの基準値を決めるのは難しいのです。

 たばこを吸う本数による発がんリスクも、

吸う本数や年齢、吸ってきた年月により変わり、計算が難しい。ですから、


放射線被ばくのリスクと喫煙による発がんのリスクを比較してより安全だということに疑問を感じます


 同じ記事中に

「100ミリシーベルトを被ばくしても、がんの危険性は0.5 %高くなるだけです。

そもそも、日本は世界一のがん大国です。

2人に1人が、がんになります。

つまり、もともとある50 %の危険性が、

100ミリシーベルトの被ばくによって、50.5 %になるということです。

たばこを吸う方が、よほど危険と言えます」とあります。


 0.5 %という数字は、

国際放射線防護委員会(ICRP)の2007年の勧告中にある、

1シーベルトあたりの危険率(5 %)に由来していると思います。

つまり1シーベルトで5 %ならば、その10分の1の100ミリシーベルトならば、

危険率は0.5%になるというわけです。


しかし、この数字は発がんリスク(がんになるリスク)ではなく、

がんで死ぬリスクです。

ここでは、2人に1人ががんになるというのは発がんの確率ですから、

ここに、危険率(がんで死ぬリスク)の0.5 %をプラスしているのは、

発がんリスクとがん死亡のリスクを混同していると考えられます。

 リスクを混同している上に、喫煙量も明示せずにたばこの方が危険と言っている。

 メディアの方は、こういう乱暴な議論に気をつけ、

科学的な根拠の誤用に気をつけていただきたいと思います。




参考文献

文献1:Brenner DJ, Doll R, Goodhead DT., et al. "Cancer risks attributable to low doses of 

ionizing radiation: assessing what we really know." Proc Natl Acad Sci U S A. (2003) Nov 

25;100(24):13761-6.【PubMed

文献2:Cardis E, Vrijheid M. Blettner M., et al. "Risk of cancer after low doses of ionising 

radiation: retrospective cohort study in 15 countries." BMJ (2005) 9;331(7508): 77【PubMed



他関連文献: Shuryak I, Sachs RK, Brenner DJ. "Cancer risks after radiation exposure in middle 

age."

 J Natl Cancer Inst. (2010) Nov 3;102(21):1628-36. 【PubMed



2012年9月27日木曜日

内部被曝の真実と尿検査 「低線量被曝でも危険」 児玉龍彦



内部被曝の真実と尿検査「低線量被曝でも危険」児玉龍彦  

内部被曝の真実と尿検査「低線量被曝でも危険」児玉龍彦


低線量被ばくによる健康影響へのメカニズムを、
あの児玉龍彦さんが解説してくれています。

また、前立腺肥大症の500例の膀胱の組織を集めた調査(国立バイオアッセイ研究所 福島先生)から、尿中に6ベクレル/㍑ くらいのセシウムが15年くらい検出された人は、ほぼ全員に前癌状態が確認されているそうです。


http://www.youtube.com/watch?v=hnh_ogQe47s



日本バイオアッセイ研究センターの福島昭治所長によれば、
セシウム汚染地域の住民の膀胱には,高い線量でも中間的線量でも,
前癌状態として増殖性の異型性の病変(“チェルノブイリ膀胱炎”)が
広範にわたり引き起こされていることがわかった。


高いセシウム線量(5~30 Ci/km2),中間的線量(0.5~5 Ci/km2),
非汚染地域の住民の 3 群にわけて検討。
これら 3 群のヒトの尿中のセシウム 137 は,それぞれ,6.47,1.23 そして 0.29 ベクレル/L 。


http://plusi.info/wp-content/uploads/2011/08/Vol.41.pdf


長期被曝が前癌状態を作り出すという報告は重要。


内部被曝の真実 児玉龍彦著 
http://www.yasuienv.net/Kodama.htm
今回の話題と関係するが、国は、やはり1mSvを超す地域の除染を国の責任で実施するという方針を固めた。

 5mSv程度の低線量地域に居住しても、神経症以外の健康被害はほとんど出ないと想定されるので、論理的には無駄なように思うのだが、日本農業をTPP下でも競争力のある形に変えるためや、東北の温泉への海外からの訪問者を増やすことなどを考えると、日本産の農産物や、日本の大部分の地域の安全性に対して、全く無理解な中国、韓国、欧州、米国、オーストラリアなどの国民への対応として、仕方がないのかもしれない。

 これに関連して、以下のような記事を書きました。



 9月以来、なかなか忙しくて、本屋に出かける機会がなかった。久しぶりに本屋に行って、新書の棚を覗き、2冊の本を買ってきた。1冊目が、「池上彰の宗教がわかれば世界が見える」、文春新書814。そして、2冊目が、「内部被曝の真実」、児玉龍彦著、幻冬舎新書228である。

 「内部被曝の真実」という本であるが、実は、本書の内容から言えば、「内部被曝の真実は分からない」という題名を付けるべき本である。これって詐欺ではないか。内部被曝がどのようなもので、今回、どのぐらいの内部被曝があったのか、あるいは、今後あるのか、そして影響がどのようなものなのか、などは全く語っていない。この本の結論は、「内部被曝は分からない。20年後にしか真実は分からない」、「だから注意しろ」、「国は除染せよ」、という本である。

 中身は136ページしかない。いや11ページから始まっているので、もっと短い。最初は、国会での参考人として何を述べたか。これは、Webを探せば出てくるので、本を買う必要はない。この部分がp26まで。
 そして、最後に、p137~165まで、国会への提出資料が付いているが、全体としての中身の希薄さは相当なもので、手抜き本の見本みたいなものである。「本の真実 それは読んでみるまで分からない」という本を書きたくなったぐらいのものである。


国会での応答

1.「国が線量について議論をしても意味が無い」

◎山口和之(民主党)
 (要約)唐木先生や明石先生が、今程度の対策で、まあ大丈夫ではないか、という証言をされましたが、それについて、ご意見は?
◆児玉
 放射線はですね、人間の遺伝子を障害します。人間には2万5000の遺伝子がありますが、一定の数のDNA修復に関係する遺伝子、DNAの保護に係わる遺伝子というものがあります。普通はこれらがやられないと、低線量の放射線による障害は、だいたい問題なく修復されるということが分かっています。
 ですけれども、さきほど、例えばα線でやられているp53(ガン抑制遺伝子)のお話をしました。それからわれわれは最近、がんゲノムシークエンスといって、肝臓がんやさまざまなものの遺伝子配列全体をけっていして、いわゆるドライバーミューテーションという、最初に感を作る方向に起こってしまう変異が何であるかというのを研究しております。その結果、例えばp53のような、最初のDNAを守っている遺伝子や、そういうところに関わる遺伝子を壊すとがんになる、ということが分かっています。そうしますと、実際には2万5000の遺伝子の中で、どこがやられるかということは極めて確率論的になってきます。
 ですから一般にわかるのは、統計学的に非常にたくさんの人を集めて、例えばチェルノブイルのときの甲状腺がんのように-多分長瀧先生のほうがご存知だと思いますが-最初に笹川財団で5万人ぐらいまで調べたときには、「有意な差がない」といわれたんです。ところがですね、今になってコンセンサスとして、「6000人の甲状腺がんと15人の死亡例が生まれている」というふうに変わってきています。
 私はもともと、コレステロールのほうが専門でして、コレステロールの薬を作るときにも、たくさんの論争がありました。それで私が医学者として今一番感じておりますのは、どこの線量が安全かという議論と、国の政治的な関わり方を分けていただきたいということです。コレステロール論争のときに一番大事だったのは、「コレステロールを下げる薬をやって心筋梗塞がふえるかどうか」という問題でした。それで今日の厚生労働委員会でも、学問論争に対して厚生労働委員会で結論をだしたり考えたりする必要は、私はないと思っています。考えていただきたいのは、どうしたら国民の健康を守れるかということです。
 国民の健康を守るためどいういうことができるかというとき、まずセシウム137という物質は、自然界には1945年以前に存在していないものです。原爆と原発で生まれて、それが1960年代のはじめに水爆実験によってピークになったものであります。そのときに猿橋勝子さんという女性研究者が、海水のセシウム濃度が100倍になっているということを微量線量計で確認して、そのデータをもってアメリカにいって、フォルサム博士と公開実験というのをやり、これが大気圏内核実験禁止の大きな学問的根拠になりました。
 その後セシウムはずっとへってきていたのが、今またそれをはるかに倍する量に上がろうとしています。そうしますと、線量の議論の問題を言うよりも、元来自然界にないセシウム137というものが膨大に撒かれて、ガンマカウンターで簡単に分かるような量にまでなって散らばっている。そかもそれが広島原爆の20倍の量撒かれているという事態に対して、国土を守る立場からぜひ積極的な対応をしていただきたいというのが、私の基本的なお願いです。



C先生:両君に、はっきり聞きたい。何を言いたいのか、結論は「除染すべき」であること。これは分かったけど、その論理展開が分かった?

A君:かなり分かりにくい。発がんは確率的事象だ。だから、5万人ぐらい調べても分からない。今回、セシウムはこれまで地球上に存在しなかった物質なので、いくら微量でも危険だ、と読むのでしょうか。

B君:論理的展開になっていない。ICRPの広島長崎でのデータから導いた被曝量と発がんの関係、すなわち、100mSv以下の被曝量では、重大な臨床学的な不都合は起きない、ということを否定するのは、さすがに難しいと考えていることは、伺える。しかし、それを言い出すと、自らがもっとも拘泥する主張である、「何が何でも除染が必要」が、危うくなって、5mSv/年程度以上の土地しか除染されなくなることが考えられる。そこで、被曝量はゼロでも危険だというLNT(線形しきい値なし仮説)を新しい観点から強化、すなわち、人類が歴史的には経験をしたことのないセシウム137という物質の出す放射線は、「慣れていないから微量でも危険だ」ということを主張したいのだろうか。


2.「放射線取扱者として30年間厳守してきた基準が反故にされている」

◆児玉
 私、放射線取扱者に1977年になりまして、1995年から放射線取扱主任として、除染と規制に関わっております。それで今まで、例えば平成12年の科学技術庁告示に基づいて、われわれがやらされていたことを、一つご報告しておきます。
 妊娠中である女子については、内部被曝を1ミリシーベルト以下にする(注:妊娠の事実を知ったときから出産までの間)。それから妊娠中である女子の腹部表面については、2ミリシーベルト。
 このように規制されて、この規制を守るべく、30年間やってまいりました。ところが、福島原発の事故で広島原爆20個分の放射線が撒き散らされた途端に、このような基準がすべて反故にされている。
 さきほど福島県の議員から「どのようにしたら安心か」というご質問がありました。私は安全に関しては、いったん基準をきめたら、危機になったからそれを変えていくという格好ではダメだと思います。基準を変えるのではなく、今は、今年は、できないかもしれないけれども、来年までにその基準にもっていく、再来年までにはこうする、ということでなければ住民が安心できるわけがないではありませんか。
 そのために最初から申し上げている通り、広島原爆20個分の、天然にないセシウム137を撒き散らした東電と政府の施策を反省し、これを減らすために全力を挙げる以外に安心できる解決などありえないのです。そのことを抜きにして、どこが安全だという議論をいくらやっても、国民は絶対に信用しません。


C先生:「今は、今年は、できないかもしれないけれども、来年までにその基準にもっていく、、、、」というのは、まさに緊急事態期での対応を表現しているのであって、反故にしたということではない、と考えるべきだ。

A君:基本的な理解がやはり問題。1ミリ、2ミリという値は、あくまでも平常時における管理基準。平常時には、ベネフィットの全くない放射線に被曝することを避けることは、実現可能なことなので、できるだけ避けよ。

B君:緊急事態期には、残念ながらいやでも被曝してしまう。それを避けるには、なんらかの対策が必要である。そのための対応原則がALARAの原則。無理なく避けることができる範囲で、できるだけ被曝量を下げようということ。非常事態であれば、最初の年なら100mSvまでも許容できると言うのがICRPの見解。しかし、日本政府は最初20mSvまでに抑えようという決断をした。

A君:しかし、今がICRPの言う緊急事態期であるという宣言を国は行なったのか、ということを逆の表現で質問しているという考えなのかも知れないですね。緊急事態期にあると宣言すると、反発が大きいので、避けているのでしょうか。

B君:除染を児玉先生が手伝うことで救われる南相馬は良いけれど、そうでないところは、ますます心配になって、ストレスが貯まる。緊急事態期には、リスクのトレードオフを考えるというもっとも根本的な原理原則が無視されているため、このような発言をすることで、結果的に他の多くの地域の住民を苦しめているという考え方は持たないのだろうか。

A君:唐木先生流に、まあ大丈夫です。無駄な心配をするぐらいなら、子供を外で遊ばせることができるように、遊び場ぐらいを除染すべきだ、というのも一つの考え方ではないですか。

B君:すべてを除染することが安心をするための必要条件だということにはならないのではないか。大体、「天然にないセシウム137」という言い方そのものが、安心を奪う条件になっているような気がする。そして、除染にすがる人を多く作る言葉なのではないか。

A君:まあ、児玉先生も全共闘世代ですからね。安心を与えるということを本当の目的としていないのでは。今回の彼の相手は、東電と政府か。

B君:被害補償についての児玉先生の意見は、妥当性が高い。しかし、だからといって、神経症がもっとも心配になるこの時期に、より不安になる「内部被曝の真実」を書いてはいけないような気がする。


3.セシウムは膀胱がんを引き起こす

◆児玉
 セシウムが何を起こすかを研究していらっしゃったのが、現在は国立の日本バイオアッセイ研究所センター所長を務めておられる福島昭治先生です。
 私が福島先生をとても尊敬しているのは、大阪市立大学教授時代に、チェルノブイリで、500体もの膀胱組織を調べられたからです。どうやったかというと、ベラルーシとかウクライナからで、前立腺肥大を手術するときに一緒に取れてくる膀胱を、現地のお医者さんと協力して調べたわけです。膀胱とか尿管上皮を調べたところ、尿中にセシウムが6ベクレル/リットルぐらいで出ている状態が15年ほど続いていると、みんな、増殖性膀胱炎になっている。そこにはp53遺伝子の変異が多く、小さいインサイツのがんが増えている。その結果、チェルノブイリ周辺の地域では、膀胱がんがだいたい6割増えている。この結果は、国際的な医学雑誌6誌に報告されています。
 
◆児玉
 こういうことを言うと、「それは児玉先生、リンケージですよ」と言われます。尿中のあれが高い、それで症状がでた、途中もこうかもしれない。それは連関があるだけで因果関係ではない、まだ直接的な証明ではない、と言われるのです。
 医学的にはそのような議論がいくらでも続きます。しかし、それはちょっと違う。現実に、幼稚園から学校から畑の田んぼから、至るところにセシウムが大量に散ってしまっているわけです。でもまだ一過性の飛散で、土でも多くは表面のところに留まっている。だったら、絶望的とか何とか言う前に、思い切ってセシウムを減らしていく。それが、今、我々に求められていることではないでしょうか。

C先生:議論がかなり単純なのだが、これで正しいのだろうか。

A君:まず、国に、あるいは、東電でも良いのですが、何10兆円もの除染の費用があれば、それを使うということで、もしも後々絶対に後悔しないということにするのなら、良いかもしれません。

B君:ということは、「無駄金を使ってしまった」、という後悔をする可能性があると言いたいようだ。

A君:児玉先生は、この話を、ここにも書いています。
http://plusi.info/wp-content/uploads/2011/08/Vol.41.pdf
 セシウムの尿中濃度が6ベクレル/L程度で、これが、100万人あたりの膀胱がんの発症が、86年26人から、01年43人に増加している原因であると断定します。

B君:6ベクレル/Lか。この場合には、セシウムの崩壊が6ベクレル/Lの原因であることまで分析されているということなのだろう。セシウムは、体内での挙動はカリウムと似ている。カリウム40は有名な自然放射線を出している物質。その量に関しては、
 「生物学的半減期は30日とされる。人体が持つ放射線強度は、体重60kgの成人男子で約4000ベクレルである」。「天然カリウム中に0.0117 %の割合で存在し、カリウム1グラム当りの放射能強度は30.4 Bqである」。
 カリウムは、成人1日で3.1gから3.5gを摂取。カリウム1gは、30.4Bqであるので約100Bq。これをほぼ尿として排出すると考えれば、1.2~1.5Lなので、尿中の放射線量は、67~83Bq/Lとなって、セシウム6Bq/Lは誤差の範囲でしかない。

A君:児玉先生の見解だと、セシウム137からのγ線は、地球上に存在していなかった自然ではない放射線なので、人体影響が大きいのでは。

B君:医学的な議論が続くということだが、どうも、その程度の理解だとしたら、それ以前の議論をする必要があるように思える。

A君:児玉理論を採用して、土壌からの被曝量が1mSvの場所も除染するというようなことになれば、日本という国はますます赤字。そして、ヘタをすればデフォルトに落ち込む原因となるような気がする。

C先生:そろそろ結論で良いだろう。児玉先生の理論が支持を得ているのは、どうやら被害補償を十二分にしろ、というところなのではないだろうか。

A君:実際、そこは十二分はとにかく、十分にするのが、東電と国の義務だと思いますね。やはり、生活を壊されたのですから。強制避難をしているときには補償されるが、自主避難だとすべてダメとか、こんな形になることを児玉先生は「駄目だ」と一喝しているところが、支持される理由ではないでしょうか。

B君:その部分はその部分。しかし、セシウム6Bq/Lの尿だと、膀胱がんになるというところは、どう考えても因果関係がなさそうに思える。住民にとって、これは単なる脅しにしか聞こえない。ますます神経症の発生数を増加させるだけのように思える。神経症の増加は、がんの研究者にとっては、関心のないことなのかもしれないが。

C先生:児玉先生の膀胱がんの話は、神経症を増加させるとの指摘は正しいように思える。
 余り大きな声では言えないが、福島県に雇用を増やして、意図的に失業状態を続けている人々を労働に復帰させないと、神経症とは別意味で不健康な地域になってしまうという心配がある。そのためにも、除染は一つの雇用を確保するための方法のようにも思える。
 それに、今回の前文でも述べたように、海外の人々の放射線リスクに対する無理解さ加減を考えると、日本の食料の輸出と観光客の数を復活させるという目的のためにも、除染はある程度認めざるを得ないのだろうと思っている。

児玉龍彦氏 

【東京大学アイソトープ総合センター長 ・児玉龍彦氏】
http://stopatomicenergy.blog59.fc2.com/blog-entry-983.html
(放射線が)遺伝子を傷つけるということは、昔の考え方と今日では、ヒトゲノムが読まれてから一変するような状態になっています。

今朝も、このミュンヘンの教授と話していたんですけれども、この結果は、ミュンヘン、ウクライナのグループが6月のアメリカ学士院の会報に発表しているものなんですが、チェルノブイリの甲状腺ガン、子供は甲状腺ガンが多く発症するんですが、いままで私どもが国会で申し上げたときに、レット遺伝子というのが活性化していると申し上げました。

ところが子供の甲状腺ガンでも、一般的にレット遺伝子は活性化していますから、チェルノブイリに特徴的なものはわかっていませんでした。

ところがミュンヘンのグループは、このゲノムの全体の配列の中での変異を見ることによって、チェルノブイリで起こっている甲状腺ガンの約4割の子供に染色体の7番が3つになっている。

これ、今、クリーブランドにいらっしゃる田中均という先生が、2007年に切断後にパリンドローム増幅ということで説明されている遺伝子の変異の格好でありまして、放射線などによって遺伝子が切られますと、切れた後に一部、遺伝子が重複して、2コピーになってしまう。もう一個に遺伝子が1コピーで、合計3コピーになってしまうという現象が知られています。

チェルノブイリの子供の甲状腺ガンのサンプルというものを分析しますと、非常に特徴的な7・9・11という領域が、このようにコピー数が3つなっているということが見つけられました。いっぽう、これは染色体の2番ですが、こちらに関しては普通の2個しかないということが示されています。

そうしますと、昔はゲノムという染色体がよくわからないので、低線量の被爆なんかというのは確率論的で、たとえば低線量であれば、放射線がぶつかっても、それを修復する機構があるんだ、というようなことがいろいろ言われたりしてきました。

しかしながら、今のゲノム科学で見ますと、DNAの切断が起こると一定の率で、パリンドローム変異が起こり、それが原因となって遺伝子が活性化される。それに続いてレット遺伝子が活性化されて、さらにそれから10年とか20年とか経つと、もう一個の遺伝子が変異を起こしてガン化するというメカニズムが、かなり決定論的なメカニズムとして分かるようになってきている。

それで、放射線の内部被曝というのを理解するのに、人間で経過がもっともよく取られておりますのは、α線のトロトラストによる肝障害であります。

これは、ドイツで1980年代から使われていた造影剤で、日本でも1930年代から使われてきた、まあ医薬品による薬害でありまして、第一段階でP53という遺伝子を保護する遺伝子がやられてしまうということで、この場合は、実際に使ったのがいつかがわかっておりますから、何年ぐらいでα線の障害が起こるかということがよく分っているのです。

そうしますとドイツ人でも20年、日本人でも20年ということで、最初にトロトラストを使って放射線の障害で実際にガン化が起こるのは、20年の年月がかかるということであります。

それで、α線の核種を飲んでも大丈夫ということが言われますが、これはほとんどネズミ、イヌのような寿命が2年から10年の動物で行われている動物の場合です。2年から10年の実験では、このように20年以降、人間で起こる放射線障害というのは、わからないのは自明のことでありまして、我々が内部被爆を問題にするときは、人間での被爆を問題にしなければいけません。

もうひとつ注意すべきことは、このトロトラストは肝臓に集まって肝臓で障害を起こします。さきほど申し上げたチェルノブイリの甲状腺ガンは、ヨウ素が非常に大きな原因と考えられていますが、ヨウ素の場合は甲状腺に集まって甲状腺ガンをつくっていきます。

それで、今までの低線量被爆の議論の中で、一部に考え方の違いがありまして、疫学とか統計学から見て厳密な証拠が必要だという議論がありますが、誤解の無いように申し上げたいのは、疫学とか統計学というのは、ひとつの経過が終った後に、そこから見て原因を探るという学問的作業であります。

それで甲状腺ガンの場合も、この問題が如実に顕れまして、実は91年ごろに甲状腺ガンが増えてきているということを、ウクライナ、ベラルーシの医師が報告したときに、ロシア、日本、アメリカの学者は、疫学的に明らかでないから、はっきりしたことは言えないということを言っていました。

それが実際にコンセンサスとなったのは、2005年、要するに4000人と言われる甲状腺ガン、15名の子供の死亡例が出た後に、初めて疫学とか統計学とかでコンセンサスになるということが生まれています。

それで、今、我々が福島原発事故の後で考えなければならないのは、この21世紀に生きている我々は、もっとこれから起こるいろいろな障害や事態をシミュレーションとするということを積極的に行って、それでこの事態に対処するということが非常に大事だと思っています。

2012年9月24日月曜日

除染の功罪 ふくしま市政だより(9月号) 安易な除染によって、健康被害を拡大しそうです 9月 8th, 2011


いるかちゃん ~ 子どもを守れ@福島市 より

除染の功罪

1.除染は危険な作業です
まるで清掃作業のように考えているフシがありますが、全く違う作業です。本来なら専門家が行う作業ですが、100歩譲っても管理された作業員が行うべきで す。通常時の原発作業と同等以上の作業ですから、キチンとした装備が必要です。線量管理、特に内部被ばくの管理が必須です。
2.除染自体が空中に放射性物質を飛散させます
決めつけていますが未知です (б。б;A)゛アセアセ
厳密な測定が必要ですが、測定された形跡が乏しいと思われます。精度の粗い測定による不検出ではなく、検出できる精度で、作業前・作業中・作業後の空中の放射性物質を測定すべきです。
参照ブログ記事:チェルノブイリ周辺では、粉塵による内部被ばくを避けるために作付けをしません
【デマ】大気中に放射性物質は無いからマスクは不要 (〃бOб)ノ コラァ~ 福島市では放射性物質が浮遊していることが確定しました 
マスクは必要!?1000倍の1000倍単位が違っています
3.除染により避難が不要のような錯覚を引き起こします
20ミリシーベルト/年などの法外に高い基準をクリアするために除染が利用されています。
5ミリシーベルト/年を超えるような地域は居住不適です。除染しても居住不適なことに変化はありませんが、避難を遅らせてしまいます。
功が無いけど、気にしないでくださいNE!!
少なくとも子どもや妊婦を避難させるのが先です。

大気中に放射性物質 2011年8月3日 福島第1原発:60キロ離れた福島大で大気中にセシウム

【デマ】大気中に放射性物質は無いからマスクは不要 
(〃бOб)ノ コラァ~ 福島市では放射性物質が浮遊していることが確定しました


福島第1原発:60キロ離れた福島大で大気中にセシウム - 毎日jp(毎日新聞) 
---全文転載
福島第1原発:60キロ離れた福島大で大気中にセシウム

 福島大(福島市)は3日、5月18日~7月15日に構内の大気を分析した結果、微量の放射性ヨウ素と同セシウムを検出したと発表した。ヨウ素は6月17日以降は未検出だが、セシウムは毎日検出された。同大学は東京電力福島第1原発から約60キロ離れており、遠隔地でもなお放射性物質が空気中に漂っていることが分かった。

 毎分500リットルの大気を吸引する装置を校舎屋上(地上24メートル)に設置、フィルターに吸着した放射性物質を分析した。最大値は5月23日で、セシウムが1リットル当たり10万分の3.29ベクレル、ヨウ素が同10万分の1.84ベクレル検出された。最大値の時に屋外に24時間いた場合、体内に取り込むセシウムは計1.9ベクレル、ヨウ素は計1.06ベクレルになる計算という。

 調査を担当した渡辺明副学長(気象学)は「空気中に放射性物質は残っていないと言う専門家もいるが、実際にはまだ検出されている。1日で体内に取り込む放射性物質量としては、食品由来などに比べて極めて低い値だが、窓の開閉やマスクの使用はデータを元に個人で判断してほしい」と話している。【関雄輔】

毎日新聞 2011年8月3日 19時20分

2012年9月22日土曜日

復興プロジェクトと米国


復興プロジェクトと米国


平野
写真:太平洋(2011年4月4日)は、日本の防衛大臣北沢は空母ロナルド·レーガン(CVN 76)に乗って彼の到着時に船員からの栄誉を受ける。 flickrのビア
(日本語による原文は下部に掲載)
2012年2月10日に、2011年3月11日に発生した東日本大震災後の十一月に、日本の復興庁が発足した復興プロジェクトが進行中であろう。"東日本大震災復興基本法"の原則に基づいており、そのような再建ゾーンの指定、規制緩和、手続きの簡素化、課税の免除、及び復興補助金などの特別措置に続いて、プロジェクトが実現することですが、ちゃっかり法人は、その中に日本に対する米国の戦略である。
日本政府と日本の金融界は、概念化と災害復興プロジェクトを決定するプロセスは、Basic "に経済団体連合会(3月31日)による"地震復興のための緊急提言 "から始まる一連の文書にさかのぼることができます東日本大震災 "(7月28日と8月11日に改訂)からの復興のライン。これらの中で、(a)は、彼らが "日本経済の再生と創造"として前者を定義して、回復から復興を区別し、(b)成長率が予想通りドメイン彼らは "環境/エネルギー"、 "医療/社会保障サービス"を重視"IT /インフラ建設"と "農林水産業"を、(c)は、彼らは金融界がそのような "税制や社会保障制度の統一改革"、 "新たな成長に向けた戦略としての災害の前によく要求してきたポリシーを維持"と" TPPに/参加との合意は、指揮命令に強力な権利を保持して本部の設立 "(d)とできるだけ早くそれらを実現するために、彼らのような大胆な措置を適用する"、 ""可能性を検討と "特別復興ゾーンの指定" "各地域にもっと自治権を与えるだろう連合国、都道府県に統合する改革を導入する"大面積の産業を再構築する計画。 "
しかし、再建を概念化のプロセスはまた、実際にアメリカの保守的なシンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所(CSIS))が介入しているプロセスであった。よく知られたようなマイケル·グリーン、リチャード·アーミテージとジョセフ·ナイ、シンクタンク大として"日本ハンドラー"はその後の復興計画のためのタスクフォースを発足させ、米国が日本の震災後の復興に大きな関心を共有していることをしっかりと認識を開催しました4月で11 回目。彼らはそれによって計画にアメリカの要求を挿入して、日本の金融界、政治家、官僚、専門家や地元政府と緊密に協議していた。
米国が導入を模索してきた4つの具体的な目標があります。
(1)これは、非常事態、大震災を活用することによって、2009年に政権交代によって中断された新自由主義的改革を蘇生させることが必要である。
現在の復興計画のための政策の中で、 "税制や社会保障制度の改革は統一された"などの新たな社会問題に対処することを意図して、2008年に存在に入って来たネットカフェ難民の新自由主義改革に伴うと不安定労働者。2009年には、オバマ氏の影響を受け、 "グリーン·ニューディール"、 "新成長戦略"は、環境、エネルギーなどの日本社会で問題に取り組むことになっている"問題解決のためのビジネスモデル"を導入する意思をもって発表された、高齢化と地域活性化。"TPPで/参加との契約は" TPPの拡大を交渉するための会議(米国の参加を得て)に続いて、2010年前後に押された。だから、復興事業の柱で形成政策のシリーズは二つの傾向の組み合わせとして、2008年から2010年の間には早くもすでに設置されていたことは明らかである:新自由主義政策を再開し、米国の政策に従う。
2009年の衆院​​選で国民の大部分は小泉政権とアジアに対するアメリカ/傾きからの独立の構造改革からの離脱を保持している民主党を支持した。一方の政権交代後、鳩山、菅の2民主党政権は、しかし、結果として、米国/日本の財界からの圧力と世論の間のポリシーの実行をキャッチしてきたが、不確定では、唯一の短命金融界の賛成で停止中になりました。
広く主張されているように、本復興プロジェクトは、緊急の状態として大震災を生かし、それがポリシーのグループを実現しようという意味で、 "日本式のショッ​​クドクトリン"の要素を持っています。法人税、労働条件の規制緩和、TPPへの参加や特区の指定を減らしそのストレスで、CSISは、日本の金融界と同じ位置に立っている。
新自由主義政策の再開に関して同じ興味、日本の金融界と米国のシェアが(2)、彼らは復興計画に反映され、復興事業の面でお互いに競い合います。
初めに、金融界による再構成のための提案は、このような復興庁と復興本部などの中枢機関への "指揮命令への強力な権限を保持している本部"の役割を与えるように努めた。これとは対照的に、CSISは、地域に取り組みを分散させ、民間企業、NPOや地域住民がプロジェクトに参加することによって、草の根意思決定を可能にするであろう "新しい公共方式"を提案した。その後、日本側の計画では、徐々にCSISの方向に傾いて。CSISはまた、共同研究企業の役割に関するプロジェクト、インフラを構築し、エネルギー産業間の日本/ USフォーラムを整理するために、ITを採用における協力を含め、民間のレベルで日本/米国の協力体制を確立することを提案した。
彼らは北東部の郷の建物についての情報を取得できるかどうか、彼らが意思決定に参加できるかどうかを、営利のためのチャンスとして再建プロジェクトを検討する企業向けの直接契約の金額に接続し、大きな問題となっている彼ら得ることができます。例えば、日本GEは非常に早い段階で宮城県との密接な関係を確立し、すでに2009年に記載さマグニチュード7以上のレベルに地震の場合にはエネルギー供給と医療を中心とした事業戦略を推進した。これらの法人のための本復興プロジェクトは、すでに彼らがを取る準備ができていますが、多くのアメリカの多国籍企業のために、東北エリアは意思決定のための情報取得の面ですぐにアクセス可能な単に外国の田舎ではなく、ビジネスチャンスです。CSISの提案では、意思決定の様々の参加を保障イニシアチブ中央本部から直接金融界に接続されており、各地域に分散を除去することによって、アメリカの多国籍企業の復興プロジェクトへのより容易なアクセスを与えるために、その目的を内部化企業やNGOなど、様々なドメインで日本/米国のコラボレーションを確立する。
米国と財界の両方が、それがエネルギーの安全サプライヤーになることよりも、これ以上原子力に意向を明らかにしていませんが(3)、その位置は、それへの依存度を低減しながら維持する上で会社です。この行には、アメリカと日本の企業の意思利益からより米国国家安全保障のための戦略からより多くを導出します。
冷戦終結後、米国はソ連からのいわゆる "ならず者国家"、イラク、イラン、北朝鮮などへの仮想敵を移し、そこからその軍事戦略は、核の核開発と予防の抑止力に基づいてされていますスプレッド(すなわち、テロリストへ)。そのような施設がある時には、ブッシュJrの政権は "民主化"と中東のアメリカのためのイラク戦争を繰り広げた。目標が達成された前に、しかし、イラクのルールは泥沼得ていた。障害のために、二つの政策転換は、2006年に開催されました:(I)のエネルギー供給に占める石油依存度を低減する必要性はオバマの "グリーン·ニューディール"政策につながった代替エネルギーを開発するための必要性をもたらし、(II)の戦略シフトで強調されるようになった核の分散を防止するための国際的な監視を強化するためネオコン同様に '民主主義'の一方的な展開から多国籍企業まで開催された
オバマ大統領の "核兵器のない世界"は2009年にプラハで話す。
後者は、米国は、日本が米国のラインに協力するため、原子力発電を維持すべきであると主張して作るものである前者は、日本の金融界の新たな成長戦略を通じ現在の復興プロジェクトに含まれています。即ち、日本でも原子爆弾と原子力事故の経験の後、より安全な技術を研磨し、国際的なレベルでの核管理のための洗練された力になって、原子力発電を維持することにより、国際的な核監視システムの強化に貢献しなければならない。日本が原子力発電を無効にした場合、その技術は失われ、それが核の分散を防止するための国際的な監視を強化するのではなく、核廃止を体現国になる。これは米国にとって大きな問題となります。
(4)経済的にも軍事的に日本でも強い関心を持つ米国では、アジアに向かってアメリカ/傾きからの独立の鳩山政権の行には、許せない裏切りだった。シンポジウム米国側から繰り返し強調されたものを、2011年11月に行われたCSISと日経ニュースペーパーによる共催ではあった: "日本/米国の同盟は党の路線を超えていますので、任意の政権交代によって動揺してはいけません"
東京財団とCNAS(新アメリカ安全保障センター)と題しリニューオールド約束と探るニューフロンティア*はそれに将来の目標として不可欠であることを提案している:同じ問題意識に基づいて、両者の間の共同研究プロジェクトでは、シンクタンク大学で働いて、日本の安全保障の専門家、シンクタンク、報道機関、政党、企業間のコミュニティ意識を醸成するためのフレームワークを確立します。同じビューには、CSISの報告で一致している。ここにストレスが両国の軍、省庁や金融界がするために、日中両国のNGO、大学、専門家グループやボランティア活動家との強固な関係を確立することを、より具体的に民間人レベルでの日本/米国の結びつきを強化する必要性であるか、または災​​害救助、人道的補助剤、医療行為などで協力
http://www.tokyofoundation.org/en/additional_info/tf-cnas_on_alliance.pdf
彼にパワーの未来(広報、2011)、ジョセフ·ナイはハードパワー(強制力)だけでなく、ソフトパワー(人々が自発的にフォローする力)だけでなく、下線が引かれる必要があることを維持して、そのソフトパワーがあっても、効果的になることができますそれは災害時に協力した場合の軍事的、人道的エイズ、これらのミッションのための訓練や教育を救う。CSISの提案は、省庁、経済界、大学、NGOに、軍に限らず、この考え方を拡張し、災害などのドメイン内のソフトパワーを強化しようとすると、人道的補助を救出、医療慣行と日本/日米共同のコミュニティを作るNGOや専門家の間で。回顧では、日本では原子力発電を推進してきた"原子力村"は、国際機関国際原子力機関(IAEA)、経済界、政治家、官僚、大学、専門家、マスメディア、かかわって、何も日本/米国の共同の利益に基づいた強力なコミュニティはありません労働組合、地域社会、さらには暴力団組織。何が今起こっていることは、日本/米同盟の民間ベースはさらに全く同じ利益集団によって引き起こされる人為的な災害の際に補強されているということです。
私は、復興プロジェクトに組み込まれている米国の計算の4点を説明してきました。表向きは彼らがそのような "環境の問題に取り組む高齢化、地域における草の根ベースの様々な主題を巻き込んで地域活性化を"、 "原子力発電の安全性を強化する"、 "災害救助を支援し、人道的補助として主張した目標にもっともらしい特徴を持っていると医療行為 "ではなく、その本質は、災害を利用して、営利のための新自由主義のドライブは、米国の軍事戦略に続いて、米国への日本の従属関係の深化である。一方、復興プロジェクトへの反対は、東北地域での生活や生活空間の意思決定の右オーバー反対です。これは、今年2012年に危機に瀕している。

ケン平野:
1962年に生まれ、彼は経済学の研究者とのマネージャーである福島第一ウィキ (日本語)。

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震災復興事業とアメリカ

平野健
2011年3月11日の東日本大震災から11カ月、今年の2月10日に復興庁が発足し、いよいよ復興事業が本格化する。この復興事業は「東日本大震災復興基本法」の基本理念に則って、また復興特区、規制緩和、手続き簡素化、税制減免措置、復興交付金などの特別措置をとって進められることになっているが、ここにはアメリカの対日戦略が巧みに組み込まれている。
そもそも日本の政府・財界が震災復興構想を議論し策定していくのは、3月31日の日本経団連「震災復興に向けた緊急提言」から7月28日(8月11日改訂)の震災復興対策本部「東日本大震災からの復興の基本方針」に至る一連の復興構想文書においてである。その中で彼らは、(a)まず復旧と復興を区別し、復興を「日本経済の再生・創生」と位置づけた上で、(b)今後の成長期待分野として「環境・エネルギー」「医療・社会保障サービス」「IT・インフラ構築」「農林水産業」を重視しつつ、(c)税と社会保障の一体改革」「新成長戦略」「TPP協定参加」などといった震災以前から財界が要求してきた政策群を、(d)「強力な指揮命令権を持った司令塔の確立」「道州制を視野に入れる」「復興特区」「広域産業復興計画」などの大胆な手法を用いて早期実現して行く方針を掲げてきた。
しかし、この復興構想策定プロセスは同時にまたアメリカの保守系シンクタンクCSIS(戦略国際問題研究所)による介入のプロセスでもあった。CSISとはマイケル・グリーン、リチャード・アーミテージ、ジョセフ・ナイなど著名なジャパン・ハンドラーたちを抱えている大型シンクタンクであるが、経済戦略と安全保障の両面で「アメリカは日本の震災復興に多大な利害を保持している」との認識から、4月11日に日本の復興構想に関するタスクフォースを発足させ、日本の財界・政治家・官僚・専門家・地方自治体などと綿密に協議して、アメリカの要求を日本の復興構想に反映させていったのである。
この復興構想に込められたアメリカの狙いは、大きく言って次の4点がある。
その1。それは2009年の政権交代によっていったん停止した新自由主義改革を大震災という非常事態につけ込んで再起動しようとする狙いを持っている。
今回の復興構想に組み込まれている政策群の内、「税と社会保障の一体改革」はネットカフェ難民、プレカリアートなどの社会問題化を受けて、何らかの対応を言及せざるを得ないがそれを新自由主義改革推進の方向で処理したいという思惑から2008年頃に登場したものである。また2009年にはオバマ大統領の「グリーン・ニューディール」政策の影響を受けて、環境・エネルギー・少子高齢化・地域活性化など日本社会が抱える諸課題に取り組む「問題解決型ビジネス・モデル」を盛り込んだ「新成長戦略」が提示された。「TPP交渉参加」は、アメリカを含めたTPP拡大交渉会合が開始されたのに追随して2010年に打ち出された。このように復興構想の柱となる政策群は、新自由主義政策の続行とアメリカの政策への追随とを混ぜ合わせる形で2008〜10年にすでに作られていたものなのである。
ところがその最中の2009年、国民は8月31日の衆議院選挙で小泉「構造改革」路線からの離脱と対米自立・アジア重視を掲げる民主党に強い支持を与えた。政権交代後、鳩山・菅の2つの民主党政権は、アメリカ・財界の圧力と国民世論との板挟みになり、どちらつかずの態度に終始して短命で終わっていくが、結果として財界が要求してきた政策群の実行は停止状態に陥っていた。
今回の復興構想は、そうした政策群を、大震災という非常事態につけ込んで、かつてない大胆な手法も動員して実現しようとしているという意味で、巷で言われている通り「日本版ショック・ドクトリン」という性格を持っている。CSISも復興にあたって法人税減税、労働規制緩和、TPP参加、特区構想を進めることが大事だと主張しており、この点では財界と全く同じ立場に立っている。
その2。財界とアメリカは、新自由主義の再起動という点では利害を共有しつつ、復興事業の受注という点では競合しあう側面もあり、復興構想にもそれが反映されている。
ここで注目されるのは、当初、財界の構想提言では復興庁・復興対策本部といった中央の機関に「強力な指揮命令権を持つ司令塔」という役割を持たせようとしていたのに対し、CSISはむしろ意思決定を地域ごとに分散化させ、民間企業・NPO・住民など多様な主体の参加で、草の根から意思決定していく「新しい公共」方式を採用すべきであると提言し、日本側の構想も徐々にCSIS寄りへと傾いて行ったことである。またCSISは、様々な重点分野における民間レベルでの日米協力体制をつくるよう提言している。具体的には、復興における企業の役割に関する共同研究の推進、インフラ整備でのIT活用における日米協力の推進、エネルギー業界関係者の日米共同フォーラムの形成などがある。
復興事業をビジネスチャンスととらえる企業にすれば、東北各地のまちづくり案の情報を迅速に入手できるかどうか、あるいはその意思決定に参加できるかどうかは、復興事業をより多く受注できるかどうかに直結する大問題である。日本GE社などは早くから宮城県と密接な関係を築いて、2009年の時点ですでにマグニチュード7超の大地震を想定したエネルギー供給・医療体制構築を重視する事業戦略を打ち出していた。こうした企業にとって今回の復興事業はすでに準備万端整ったビジネス・チャンスであろうが、多くのアメリカ多国籍企業にとって復興事業が展開される東北地域は外国の一地域にすぎず、情報入手と意思決定へのアクセスという点では不利を免れない。CSISの提言には、復興事業の意思決定を意思決定を財界直結の中央機関に一元化させるのではなく、むしろ各地域へ分散させ、そこへの企業・NPOなど多様な主体の参加を保証させ、また様々な事業分野で日米共同体制を築いていくことで、アメリカ多国籍企業の復興事業へのアクセスをより容易なものにするという狙いが含まれている。
その3。原発問題について、アメリカも財界もエネルギーの安定供給という以上のことを明記していないが、内心では原発の依存度を下げても存続はさせるという立場で固まっている。これは日米大企業の利益という以上にアメリカ国家の安全保障戦略から導きだされた方針である。
アメリカは、冷戦崩壊以後、仮想敵国をソ連からイラク、イラン、北朝鮮などの「ならず者国家」へと移し、それらの国々での核開発抑止とテロリストへの核拡散防止を軍事戦略の基本としてきた。その上でブッシュJr.政権はより積極的にイラク戦争を仕掛けることで中東全体の民主化・親米化をめざす作戦に出たが、結局、その目的は果たせないままイラク統治は泥沼化してしまった。この失敗を受けて2006年に2つの政策転換が進められた。ひとつはエネルギー供給における石油依存度を引き下げることであり、そこから代替エネルギーの技術開発を促進する必要が生まれ、それがオバマ政権の「グリーン・ニューディール」政策へと発展していく。もうひとつはネオコン流の単独行動主義的な「民主主義の拡大」戦略から核不拡散・監視体制強化への多国間協調戦略への転換で、これがオバマ大統領のプラハでの「核なき世界」演説へと結びついていく。
前者の戦略は日本の財界の「新成長戦略」を経て、上で述べたような形で今日の復興構想に組み込まれているが、後者の戦略はそれに協力するために日本は今後も引き続き原発を存続すべしという結論につながっていく。すなわち、核兵器の被爆国であり、原発事故の被災国であり、高い技術力を持つ日本が、引き続き原発を保持し、安全技術にも磨きをかけ、国際的にも核管理に神経を使う国になることでアメリカ主導の国際的核監視体制強化という戦略に貢献するというわけである。もし日本が原発をゼロにしたら、核技術も失われるし、そもそも核不拡散・監視強化ではなく本気で核廃絶を主張する国になってしまう。彼らにとってはそれでは困るのである。
その4。以上のように経済・軍事の両面で日本に利害関係を持つアメリカにとって、鳩山政権が対米自立・アジア重視の素振りを見せたことは許し難い裏切り行為であった。昨年11月8日に開かれたCSIS・日本経済新聞社共催のシンポジウムでも「日米同盟は超党派的問題なのだから、政権交代などで揺らいではならない」ということをくどいくらいに強調している。
同じ問題意識は東京財団とCNAS(新アメリカ安全保障センター)の共同研究「『従来の約束』の刷新と『新しいフロンティア』の開拓」(2010年10月27日)でも貫かれており、そこには今後の対策として大学・シンクタンク・報道機関・政党・企業などに散在している日本の安全保障の専門家たちにコミュニティー意識を持たせる枠組みをつくることを提言している。そのような視点でCSISレポートを読み直すと、ここにも類似の提言が見いだせる。すなわち市民社会レベルで日米間の結びつきの強化という提言であり、具体的には日米両国の軍・官庁・財界などは、両国のNGO・大学・専門家集団・ボランティア活動家などと結びつきを強め、災害救助・人道的活動・医療活動などの領域で日米間の協力共同体制を築くよう努めるべきだと提言している。
ジョセフ・ナイは、その著書『スマート・パワー』の中で、アメリカの覇権を存続させるためにハード・パワー(強制力)だけでなくソフト・パワー(自発的に追従させる力)をもっと重視すべきだとしつつ、軍隊であっても災害支援・人道的活動やその訓練・教育への協力することでソフト・パワーを発揮することができると述べている。CSISの今回の提言は、これを軍に限らず、官庁・財界・大学・ NGOなどにまで拡張して、災害支援・人道的活動・医療活動などの領域でソフト・パワーを発揮して、NGOや専門家の日米共同コミュニティを作ろうとするものである。思い返せば、日本で原発を推進してきた「原子力村」もまた、IAEAといった国際機関から始まって、財界・政治家・官僚・大学・専門家・マスコミ・労組・地域社会・暴力団までを巻き込んだ強度の日米利益共同体に他ならない。そいつが引き起こした人災をきっかけに日米同盟の市民的基盤をさらに増強しようとしているのである。
以上、4点にわたって震災復興構想の中に組み込まれたアメリカの思惑について述べてきた。その本質は災害便乗ビジネスの新自由主義的な展開、アメリカの軍事戦略への追従、そして対米従属体制のより一層の深化であるが、外見上は「環境・少子高齢化・地域活性化などの課題に、地域の草の根から、多様な主体の参加で取り組んでいく」「原発の安全対策強化」「災害救助・人道的活動・医療活動の支援」など、一見もっともらしい姿をまとっている。震災復興事業の在り方をめぐる対抗は東北という生活空間とそこにおける生の決定権をめぐる対抗である。今年それが問われる。
平野健:

エートス・プロジェクト

 このエートスというのは、首都圏も含む東日本全体に当てはまることですが、
福島に人を留め置くことで首都圏、東日本全体からの人口流出を防ごうという政府の戦略は今のところ成功しています。
関東の人は「福島の人でさえあんな高いところにまだ住んでいるのだから、私たちが逃げるわけにはいかない」と考え、
動きにくいという心理戦です。
つまり、福島は原発を押し付けられ、事故で被曝し、何もかも失い、今も被爆し続け、復興もままならないという上に、
東日本からの人口流出の捨石にされ、何重もの意味で犠牲になっているのです。 
逃げたほうがいいのはわかっているのだが、逃げられるようになるまでの間、
なるべく放射線防護をしたほうが良いともちろん思いますが、
そんな努力がこのエートスに取り込まれてしまうという悩ましさとおそろしさがあります。 
私もNagiさんに賛成。
子どもを逃がさなくてはと思っています。
ふるさとを失うのは慟哭ですが、新しい場所にふるさとを作り、子どもを守るほうがふるさとよりも大事だと思います。
東京からこんなこといって申し訳ないけど、自分も家を構えるときは西日本でと思っています。 
以下、貼り付けです。


エートス・プロジェクトについて

市民と科学者の内部被曝問題研究会
牟田おりえ
はじめに 昨年末から

エートス・プロジェクト」あるいは
「ダイアローグ・セミナー」
「ステークホル ダー」

などの言葉が福島をめぐって飛び交っています。
そして、中心人物である

ICRP (国際放 射線防護委員会)第4 委員会委員長の

ジャック・ロシャール氏(Jacques Lochard )

が日本政府・ 福島県、そして市民に精力的に働きかけを始めているようです。 
ロシャール氏が福島で始めようというエートス・プロジェクトとは何か、
その原点であるベ ラルーシにおけるエートス・プロジェクトについて、
ミシェル・フェルネックス教授1に伺い、 自分でも調査を進めたので、現時点で判明したことをお知らせいたします。


まさに「国際原子 力ムラが企んでいること」を知らなければ、餌食にされてしまうという危機感を持ちました。 

フェルネックスさんも、


犠牲者はいつも子どもである

ベラルーシのエートス・プロジェク トは医学的「惨事」で、
それを福島で繰り返してはならないとおっしゃっています。 以下の要点に沿って、述べていきます。


1. エートス・プロジェクト主導者のジャック・ロシャール氏と福島のエートス・プロジェクト の関係について。
また、ロシャール氏と共同でプロジェクトを進めてきた
テリー・シュナイ ダー氏(Thierry Schneider )
の所属母体CEPN(Nuclear Protection Evaluation Center 放射線防護評価センター)が国際原子力ロビーの中心にあること。

 2. プロジェクトの究極の目的が


「コスト・ベネフィット(費用効果)」にある点。

住民を安全地 帯に移住させるコスト、
賠償コストと、
汚染地域に残して、
住民主導とみせかけた「放射線 防護教育・ダイアローグ」をする場合のコスト
とを比較して、
エートス・プロジェクトを始 めたという経緯が見られること。

つまり、プロジェクトの主目的が


「政府が住民を汚染地域 から出さないために、

住民自らが残ることを選択したように見せる」

ことである点。


 3. モデルとされるベラルーシのエートス・プロジェクトが子どもの健康面を無視し、

現地の小 児科医の訴えと
報告(プロジェクトが進む中で子どもたちの症状が悪化し続けた)を公式報 告書から削除したこと。

福島のエートス・プロジェクトも汚染地に子どもを残し、

健康面と 医療面を無視する可能性が大きいこと。


1.ジャック・ロシャール氏と
福島のエートス・プロジェクトとの関係 ロシャール氏が関与したICRP (国際放射線防護委員会)主導、
福島県庁・日本政府その他 主催の「ダイアローグ・セミナー」については
「ETHOS IN FUKUSHIMA 」ホームページ その他で知られているので、
あまり知られていない動きに焦点を宛てます。

その上でロシャ ール氏とICRP の関係、彼が所長、テリー・シュナイダー氏が副所長を務める
CEPN(Nuclear Protection Evaluation Center 放射線防護評価センター)という組織と
国際原子力ロビーと の緊密な関係について述べます。

1.1.
福島とエートス・プロジェクト

a. 2011 年11 月28 日:
ジャック・ロシャール氏が11 月28 日に内閣府
「低線量被ばくのリスク 管理に関するワーキンググループ」委員会で、

「チェルノブイリ事故からのいくつかの教訓:

    生活環境改善に向けたステークホルダー関与の2つの事例、

        福島に向けた提案」を発表。

 ロシャール氏がベラルーシで行ったエートス・プロジェクトを勧めるという内容は、
ICRP ・ 福島県主導のダイアローグセミナーと同じであり、
日本政府・県庁レベルと市民レベル(ETHOS IN FUKUSHIMA )を巻き込む運動を
ICRP, OECD などが積極的に進めていると読めます。

内 容は内閣府からアクセス可:http://www.cas.go/jp/jp/genpatsujiko/info/twg/dai5/siryou2.pdf 

ロシャール氏プレゼンの要点

* ICRP 作成の2011/4 発行ICRP Publication111 (第一執筆者がロシャール氏)について。 
* 汚染地域で住み続けることを前提にしている。
* 住民が自発的に放射線防護にあたること、そのための勉強会をサポートすること(放射 能測定、正しい情報提供等)
  あくまでも住民主体というスタンスを強調していますが、
  高濃度汚染地域に住み続けさせることを目的とし、
  押しつけではなく住民主体の放射線 防護運動に見せかける提言と読めます。

b. 2011 年11月8日:
ロシャール氏の相棒的存在のテリー・シュナイダー氏も同時期にヨーロッパ でプレゼンを行っていましたが、
彼の発表の方が世界原子力ロビーの企みをはっきり述べてい て、わかりやすいです。

シュナイダー氏プレゼンの要点

当局(福島県・日本政府)は

 住民に汚染地域に住み続けるよう提案すべきである。

  しかし、この決定は

 住民とのダイアローグ(対話)を通じて生まれる必要がある

 (つ まり、住民が自主的に残ると決めたように見せなければならない)。 



住民が自分たちの(放射線)防護を自分たち自らで行うこと。 

* その地域(福島)の発展を求めるようにするための、

  経済対策を立ち上げること。

 * ベラルーシでのエートス・プロジェクトとコア・プログラム

 (CORE: Cooperation for Rehabilitation /復興.回復への協力)

  から生まれた経験を活かすこと。

 * 結論:チェルノブイリ事故の経験から得た上記の点は、

 福島事故の管理/対処に役立つ。 

 シュナイダー氏のプレゼン資料:

 http://www.eurosafe-
forum.org/userfiles/2_6_slides_lessons%20Chernobyl%20post%20accid _T_%20Schneider_20111108.pdf

主催者のユーロセイフ・フォーラム(EUROSAFE Forum )は、ヨーロッパの原子力の技術 的安全使用の一体化を促進するために、1999年に設立され、ヨーロッパ各地の原子力に関する 省庁、研究機関、原子力産業などが参加しています。なぜヨーロッパで同時期に同じ内容を発 表したのか、原子力ロビーの理由と論理がありそうです。 1.2. ジャック・ロシャール氏について
a.ICRP 第4 委員会委員長という肩書き
ETHOS IN FUKUSHIMA (福島のエートス)の理論的支柱となっているロシャール氏の現 在の肩書きは「ICRP 第4 委員会委員長」と「CEPN 所長」です。ICRP 第4 委員会は放射線 防護システムの応用について助言をし、また、防護に関する国際組織との連絡役を果たすとさ れています。オブザーバーとしてEC(欧州委員会放射線防護ユニット)・IAEA (国際原子力 機関)・ILO (国際労働機関)・UNSCEAR (原子放射線の影響に関する国連科学委員会)・WHO (世界保健機関)などがあがっています。(ICRP のHP 参照) b.CEPN(Nuclear Protection Evaluation Center 放射線防護評価センター)長という肩書き CEPN センター長のロシャール氏にならんで、ETHOS IN FUKUSHIMA ホームページに は、同センター副所長のテリー・シュナイダー氏もたびたび登場します。ベラルーシにおける ETHOS プロジェクトでは、この二人が重要な位置を占めていました。 二人が所属するCEPN のホームページによると、1976 年に設立されたNPO (非営利組織) で、目的は放射線防護の最適化原則を開発し応用することだったが、最近の研究プログラムは 放射能評価とリスク管理にステークホルダー(市民・専門家を含めた当事者の意味で使われる) を取り込み、放射線防護の文化を広めることに焦点が移っていると述べられています。 c.CEPN の協力組織
CEPN のホームページには「メンバー」として、4組織があげられています。EDF (フラ 
ンス電力公社)・IRSN (フランス放射線防護原子力安全研究所)・CEA(フランス原子力庁)・ アレヴァ社です。CEPN のホームページ参照:http://www.cepn.asso.fr/spip.php?lang=en ロシャール氏とCEPN の関係は、このセンターが設立された翌年の1977 年に、経済学部卒の ロシャール氏が研究助手として入り、10 年後の1989 年に所長になったとOECD の履歴紹介 文書に書かれています(http://www.oecd-nea.org/press/press-kits/lochard.pdf )。 世界一の原子力企業と言われるアレヴァ社とフランス原子力庁、フランス電力公社を「メン バー」として持つということは、世界原子力ムラの中心にいると言ってもいいと思います。3.11 直後にアレヴァ社とサルコジ前大統領が乗り込んできたことと、その1年後にロシャール・シ ュナイダー氏が乗り込んできたことは無関係ではないと思います。 2.ロシャール氏の原点 ロシャール氏とは何ものか追跡していて、原点とも言えるIAEA との関係、原発事故後の社 会の沈静化のメッセンジャーとしての役割などが浮上してきました。「沈静化」には2つの側面 があり、1つは汚染地域から移住させないため、賠償金を要求させないために「汚染地域でも 楽しく生きられる」というメッセージを植え付けること、もう1つは、原子力ムラ(政府・行 政・専門家)への市民の不満・不信感をそらすためです。 ベラルーシのエートス・プロジェクトの前段階の動きが1990-1991 年のIAEA (国際原子力 機関)「国際チェルノブイリ・プロジェクト」に見られますが、ロシャール氏はこのIAEA のプ ロジェクトに大きく関わっています。彼の役割がその後のエートス・プロジェクトにつながっ ていると思われます。ちなみに、シュナイダー氏もこの報告書に名前が記載されています。 2-1. 「国際チェルノブイリ・プロジェクト」について チェルノブイリ事故から3 年半後の1989 年にソ連政府は、事故対策や今後の防護対策につ いて評価してほしいとIAEA に依頼し、IAEA やWHO (世界保健機関)は調査団を派遣して、 少数の被災地を短期間まわり、市民や当局者との対話を行い、ソ連当局から提供された資料を もとに、1991 年に報告会議を開催して、報告書(全750 ページ)を公表しています。 その結論は「放射線と直接に関係がある障害はみられなかった。事故に関連する不安が高レ ベルで継続し、心配やストレスといった形で多大な負の心理的影響を及ぼした」とし、現地(ベ ラルーシやウクライナ)の科学者たちが汚染地域の発症率の増加を認めているのに、「放射線 によるとされた健康被害は、適切に実施された地域調査、およびプロジェクト(注:IAEA の 国際チェルノブイリ・プロジェクト)による調査のいずれによっても、証拠づけられなかった」 2としています。このプロジェクトに参加したベラルーシやウクライナの専門家は、この結論 に対し、反対声明を出しています3。

2-2. 国際チェルノブイリ・プロジェクトにおけるロシャール氏の役割 このプロジェクトにおけるロシャール氏の役割はCEPN 所属のコンサルタントで、「移住に 関する評価」のセッションで、「コスト・ベネフィット(費用効果)分析」と題した報告を行 っています。つまり、汚染地域から市民を移住させるべきか、残すべきかの決断をソ連政府が するための助言的役割と言えるのでしょうが、IAEA の結論は最初から「放射能被害はない」 というものですから、その答えにあうような「分析」を行うのがロシャール氏の役割だったと 言ってもよいと思います。 この会議でなされた報告についてコメントする役割の審査官(K. Duncan, ダンカン)がロ シャール氏の分析について述べていますから、その一部を翻訳紹介します。このコメントはロ シャール氏の報告についてだけでなく、IAEA の「国際チェルノブイリ・プロジェクト」の本 質を突いていること、その「非道さ」を正当化しようと必死になって支離滅裂なコメントをし ていることがわかると思います。
さて、ロシャール氏の報告、コスト・ベネフィット/費用効果の問題ですが、多くの人 の耳には、この言葉(コスト・ベネフィット/費用効果)が冷たく響くでしょう。残念な 言葉の選択ですが、決して非道な方法に使われるのではないのです。決して非道なつもり ではなく、この分野全体も非道ではないのですが、確かにそう聞こえてしまう。人という ものは感情的に発言するもので、この問題にも感情が入りすぎています。人の命をお金に 換算することはできないと。ある意味では、できませんが、ある意味では、そうしなけれ ばならない。なぜなら、健康にお金を使いすぎるべきではないという人もいるからです。 全くばかげています! 国家予算すべてを健康にかけた結果、以前よりも悪くなることもありえるのです。医者 だけが金儲けをする結果になります。(p.55)
出典:The International Chernobyl Project: Proceedings of an International Conference held in Vienna, 21-24 May 1991 for presentation and discussion of the Technical Report (1991):http://www-pub.iaea.org/MTCD/publications/PDF/Pub894_web.pdf
2-3. ロシャール氏の報告「移住のコスト・ベネフィット/費用効果の分析」 上記のダンカン審査官が必死でかばったロシャール氏の報告には何が強調されていたのか、 いくつか拾ってみたいと思います。ロシャール氏担当と思われる箇所はテクニカル・レポート の第4 章「ソ連邦で取られた防護対策の評価」の「移住」の節です。 出典:The International Chernobyl Project Technical Report: Assessment of Radiological Consequences and Evaluation of Protective Measures, Report by an International

Advisory Committee (『国際チェルノブイリ・プロジェクト テクニカル・レポート..放射能 の影響と防護策の評価..国際諮問委員会報告』)http://www-pub.iaea.org/MTCD/Publications/PDF/Pub885e_web.pdf
この報告書で繰り返し強調されているのは、住民を汚染地域から移住させるべきかどうかの 決め手とされる放射線量について、ソ連で受け入れられている線量は低すぎる、現実的ではな いという点と、移住にかかるコストです。最初の点について、ソ連側が設定していた1990 年 (事故後5 年目)の線量は「生涯350mSv 」で、それに対しIAEA は「2~3mSv /年~100mSv /年」という驚くべき線量を示しています。しかも、譲歩したのだと言わんばかりに、注をつ けて、以前は「年50-500mSv 」だったと書いています(p.433 )。この350mSv はICRP と WHO から派遣された専門家によってソ連政府に提案されたもので、ソ連の科学者は年1mSv を限度にして全員の移住を求めたそうですが、ICRP の専門家は「資金がない、ということは 問題がないということだ」と答えたそうで、これが最近日本でも聞かれ始めているALARA(as low as reasonably achievable =合理的に達成可能な限り低く)という概念とoptimization (最 適化)の始まりのようです。いずれも健康よりも、経済を優先する考え方です。 ソ連側の設定した線量が低すぎると報告書の中で何回も強調して、「被曝した住民のために という善意から出たとしても、間違っている」(p.438 )とまで言っています。その上、ソ連側 が設定した生涯350mSv を、年5mSv だと理解する人が多いが、これも間違っているという のです(p.439 )。だからといって、どう理解するのが正しいのかは言っていません。 この後、いくつかの計算式が出され、線量にかかる移住コストの計算を5組織がそれぞれ出 し、その1 組織がロシャール氏とシュナイダー氏が所属するCEPN です(p.449 )。そして、 コスト・ベネフィット分析の結論として、「汚染地域に住んでいる住民のこれ以上の移住は正 当化できない」(p.449 )と断定しています。 奇妙なことは、この移住のメリット・デメリットを検討する40 ページ以上の報告の中に、 子どもや妊婦については一切言及がなく、1987 年あたりから顕在化していた放射能による健 康被害についても言及されていません。「放射能被害はない」というIAEA のスタンスに忠実 なロシャール氏の報告だと読めるわけです。
IAEA, ICRP などの国際組織とロシャール氏たちが日本政府と福島県と共に、福島で進めつ つあるエートス・プロジェクトの理由がコスト面だけではないことが、この報告書の随所から 窺い取れます。国際原子力ロビーの本音とも言えると思います。たとえば、移住の決め手とな る放射線量の基準設定に関して、「多くの要素を考慮しなければならない複雑」なものだと言 った上で、1 国が設定したレベルは近隣諸国にも影響を与えるから、1 国だけで決めるべきで はない、また、「社会的政治的プレッシャーによって、他国より低い線量レベルを導入して、 自国の世論の信頼を増そうとする場合、それはとめどもない影響を及ぼして、究極は世論の信 頼を失うだけという結果になるから、断固として阻止すべきである」(p.458 )と述べています。 これがIAEA と世界の原子力ロビーの本音だろうと思います。つまり、ソ連政府が住民の安 全のために設定しようとした「低い線量レベル」を「断固として阻止すべき」だというIAEA の本音は、将来の原発事故のモデルにされて、原子力産業が衰退することにつながるから「断 固として阻止」すべきだということだと読めます。この点で、ロシャール氏が2012 年1 月に 「福島のエートス」に送った手紙にある文言(「20 mSv/年を基準にするという決断は良い知ら せです。これで、多くの人が早期に家に帰る事ができる」4)とつながってきます。 このIAEA 「国際チェルノブイリ・プロジェクト」の諮問委員会委員長は公益財団法人放射 線影響研究所の所長(当時)の重松逸造氏です。このプロジェクトの中心人物の一人として日 本人が関わっていたこと、そして今、IAEA のトップが日本人であることは皮肉な巡り合わせ と言ってばかりはいられないと思います。日本人として被害者であり、加害者でもあることを 頭に置きながら、25 年後の現在チェルノブイリ被害が甚大であることと、福島で繰り返して はならない健康被害を食い止めることに対応していかなければならないと思います。 3.ベラルーシのエートス・プロジェクトとロシャール氏について 3-1. エートス・プロジェクト
2000 年5 月18 日にシュナイダー氏が広島で発表した「汚染地域における生活条件の回復. エートス・アプローチ」(国際放射線防護学会主催)で、なぜETHOS プロジェクトが必要と されたかについて述べているので、ご紹介します。現在の日本の事情と似通っています。 チェルノブイリ原発事故から10 年後の1996 年4 月に始まったこのプロジェクト(CEPN 主導)の達成目標は、汚染地域の住民が回復プロセスにおいて、自主的な自治能力をもった行 動者となるための条件作りで、住民の自信と社会の信頼を取り戻すことだと言っています (p.5 )。この実験的プロジェクトの対象として選んだのが、年間線量1~5mSv 、土壌中のセ シウム量が185~555kBq/ ㎡の所、ベラルーシ法(1991)によると、「移住権利地域」(voluntary relocation zone )であり、かつ、地域コミュニティーがプロジェクトに参加してくれることが 条件で、チェルノブイリの西に位置するブレスト(Brest )地方のストリン(Stolyn )地区の 中の人口1,265 人のオルマニー(Olmany )村を選びました。理由は強制的移住地域ではない ため、残っている人の生活条件の回復が必要とされたからです。 日本と比較した場合のご参考までに、2012 年5 月22 日に市民放射能測定所理事の丸森あや さんに連れられて、フェルネックスさんとご一緒に福島市内をまわり、渡利地区の公園で撮っ た写真をフランスの放射線専門家に送った時の反応をご紹介します。「この公園は除染作業が 完了しました」という立て看板の隣のモニタリング・ポストの値が0.479μSv/h を示している 写真です。早速驚きの返答がきて、「除染後でも年間線量が4.2mSv になる! ICRP の非科 学的限度値でも、一般市民が受けていいとされる線量の4 倍以上だ。土壌の表面のセシウム量 は240,000Bq/ ㎡だろう」とのことでした。そして、そこでの生活は勿論、子どもを決して近 づけてはならないと忠告しています。 セシウム量だけに関していえば、エートス・プロジェクトが対象とする「移住権利地域」に 相当するわけですが、ベラルーシ法の基本は「年間被曝量が1 ミリシーベルトを越えなければ、 人々の生活および労働において何の制限措置も必要としない」5というものです。日本政府は 20mSv まで子どもが普通に暮らしていいとしていますし、ロシャール氏も、日本政府の20mSv を支持しています。 ロシャール氏・シュナイダー氏ら、ヨーロッパから来たプロジェクト・チームがベラルーシ で最初に遭遇したのは対話集会における村人、特に母親たちからの質問攻めでした。 * 子どもたちとここに住み続けても大丈夫でしょうか?
* 健康被害があるでしょうか?
* 移住したほうがいいか、残っても大丈夫か? 村人の「専門家」に対する不信感は強く、プロジェクト・チームが倫理的観点から村人の質 問に答えられないのだというと、別の形で聞いてきました。 * あなただったら、ここに子どもを連れてきて、住みますか? (p.7.) 村人は科学者が自分たちをモルモット扱いしているように感じること、このプロジェクトに 参加することで、どんなメリットがあるのかという懐疑的な質問も多かったそうです。 プロジェクト・チームがしたことは、母親たちに線量計を渡して、自分たちで計測し、内部 被曝についても、子どもたちが何をどのくらい食べれば、線量がどの程度になるのかを自ら計 測して知ることで、その結果、母親たちはむやみに心配しなくなったといいます。 プロジェクト・チームは、校医である小児科医に対して、子どもたちの検診と放射線防護と を結びつけるために、定期的なホールボディーカウンターによるモニタリングと健康診断をさ せました。その結果、2,3 ヶ月後には子どもたちの内部被曝量が下がり、1997 年7 月から1998 年12 月の間の減少率が30%以上だと報告しています(p.10) 。 この報告書に対する疑問は、特にこの箇所で強くなりました。成果報告なのに、子どもの内 部被曝量が数値で示されず、検査方法も検査者も明記されずですから、口から出まかせの数字 と批判されても仕方のない杜撰な報告書です。次節3-2 でご紹介するように、フェルネックス さんからの情報では、数値を発表できない理由があったわけです。「成功」どころか「惨事」 だったわけですから。 最後に気がつく点として、しきりに「放射能文化」(radiological culture) という言葉を使い、 子どもたちにもこの文化を学ばせると強調しています。しかも「汚染地域に住む子どもたちの 教育」という章では、最初にすることとして、プロジェクト・チームと学校側との「ロマンス」 をあげています。この場合の「ロマンス」は単にいい関係と理解するのでしょうが、このプロ ジェクトが母親や学校側に対して、情緒に訴える方法を重要視しているようで、非常な違和感 を覚えます。特に「放射能文化」という語を使い始めたロシャール氏とシュナイダー氏らがな そうとしていることを考えると戦慄を覚えます。20 世紀後半まで市民生活の中には存在しな かった放射能(ここで言う放射能は広島・長崎の原水爆投下に始まり、核実験や幾多の原発事 故から放出された放射性物質)との共存生活を正当化し、受け入れるための新たな「文化」創 出だと理解するからです。人類と自然界を滅ぼす「文化」の創出だと理解できます。 出典:ロシャール氏とシュナイダー氏を含む10 人の執筆者The ETHOS Project in Belarus 1996-1998: Synthesis of the major outcomes of the ETHOS research project on the rehabilitation of living conditions in contaminated territories affected by the Chernobyl accident”, May, 10th International Congress of the International Radiation Protection Association: http://www.irpa.net/irpa10/pdf/E11.pdf
3-2. エートス・プロジェクトによる子どもの高い罹患率の隠蔽 ロシャール氏・シュナイダー氏らによるエートス・プロジェクト成功報告会は、この後、現 在に至るまで22 年間続くわけですが、2001 年11 月15-16 日に実験地であったベラルーシのス トリンでも第1 回エートス・プロジェクトの国際セミナーが開かれました。 この会議にはミシェル・フェルネックスさんご夫妻も、ドキュメタリー映画『真実はどこに? ..WHO とIAEA 放射能汚染をめぐって』の監督のウラジーミル・チェルトコフさんも出席し ていらしたそうです。フェルネックスさんはエートス・プロジェクトを計画している福島の人々 に以下の事実を知らせてほしいと書いて下さいました。
この国際セミナーで最後に発表したのは、この地区を担当する小児科医でした。いろい ろなデータを示してくれましたが、医学のどの分野でも、壊滅的な状態を示すものでした。 * 誕生時からの恒常的な健康悪化
* 深刻な症状の急激な増加
* ブレストでは入院を必要とした子どもが1986-87 年の10 倍に増加。 (注:ブレストはオルマニーから西へ400km ほどの位置にある人口31 万人の都市で、 放射能汚染の点では、オルマニーほど高くない所のようです)。 この小児科医以外のプレゼンテーションはすべて主催者が準備し、配布資料がありま したが、小児科医の発表については主催者側は何の用意もせず、配布資料もなく、セミ ナー後に公刊された長い報告書には彼女の報告は削除されていました。 エートス・プロジェクトの目的はなんだったのでしょう? エートス・プロジェクト の医学的失敗は、子どもたちの健康の改善が見られなかったどころか、子ども達の症状 が恒常的に悪化していったことです。特に重篤な症状で入院する子どもたちが10 倍にも 増えたことです。これは誰もが最も知りたい情報のはずです。 報告書の中で「汚染地域における健康問題に関する研究は続けられなければならない」 とされていますが、この報告は真実ではありません。このセミナーでは小児科医が報告 したのですから。

私(牟田)の「ふくしま集団疎開裁判」ML 宛の6 月7 日付けメールでお知らせした内 容をお読みにならなかった方のために、付け加えておきたいと思います。この国際セミ ナーでフェルネックスさんはプロジェクト・チーム内の専門家に実際のところはどうだ ったのか聞いたそうです。
状況について、小規模農業の専門家として知られているオラニョン教授の言葉を借り て要約します。この人物とは会議で会ったのですが、そこにはロシャール氏もいました。 オラニョン教授にエートス・プロジェクトの結果を聞くと、「上出来でしたよ。…子ども たちがどんどん悪くなっていきましたからね!」と言うのです。 オラニョン教授は真実を語っていました。私はエートス・プログラムの最終段階の頃 に、ベラルーシのストリンにいましたから、よく知っています。[会議では]報告者すべて が、いかにすばらしいプロジェクトか、市民といかにうまくやったかを説明していまし た。汚染が深刻な地域ほど、[放射線]防護がうまくいったと。母親の[放射能]教育につい て、そして、最後にじゃがいもの生産について、セシウム137 が以前より少なくなって いたので、ミンスクでもこの汚染野菜が販売できる程度に、ぎりぎりだけれど、下がっ ていたことなど。このように、会議全体は見事にまとめられ、発表者はみなパワーポイ ントでスライドを見やすいスクリーンに映すなど、見事でした。 最後にこの地区を担当している小児科医が登場しました。彼女はパソコンも持たず、 パワーポイントのスライドもなく、手書きの紙原稿と、複雑な表を持って現れ、それを 手で示しながら話すのです。最後の発表者でした。彼女の話は私にはよくわかり、表も 見せてもらいました。 エートス・プロジェクトが行われた5 年間[注:第2 回エートス・プロジェクトを含め てだと思われます]、状況はどんどん悪くなっていきました。呼吸器感染が頻度だけでな く、深刻度の点でも増えていき、異常な合併症を伴い、心臓病もずっと深刻化し、どの 症状でも同様でした。[チェルノブイリ原発]爆発の年は、入院が必要な事例は年間100 だ 
ったのに(1986.88 年は変化がなく)、その後、極度の感染症による入院者数は年々上 昇し、最後の年は1200 事例でした。エートス・プロジェクトが始まって、この増加線は 安定するどころか、落ち着く筈の年にまで上がっていたのです。[学校の]学期中の欠席者 数は増え、尿管の感染症がぶり返し、慢性化しました。問題は生まれると同時に始まり、 新生児のほとんどが治療を必要としていました。 エートス・プロジェクトは医学的に見れば「惨事」です。この小児科医のデータは出 版されることなく、忘れ去られています。エートス・プロジェクトは次のコア(CORE )・ プログラムのモデルとなって、これは今も続いています。ロシャール氏のこのような許 されない行為をどうやって阻止できるかという点について。日本の医者のみなさんが、 この現実に目を覚まし、現状を正しく研究してくれることを今でも[遅すぎるけれど]願っ ています。この放射能事故によって、市民全体の健康がとてもゆっくりとしたペースで はあるけれど、悪化し続け、それは一番幼い子どもから始まり、次に原子炉で働く作業 員、そしてその子どもたちというように、ただし、被曝した父親よりも子どもの方が先 に悪くなる場合が多いということに、日本の医者はもっと関心を払うべきです。 注:この内容をパリ在住のジャーナリスト、コリン・コバヤシさんが6 月28 日にフェルネック スさんの自宅を訪ねて、インタビューし、日本語字幕つきのユーチューブにして下さいました ので、ご覧ください。http://www.youtube.com/watch?v=2_oKtjnh52c&feature=youtu.be また、当時フェルネックスさんが書かれた投稿記事も日本語訳して、アップして下さいまし たので、あわせてお読みいただければと思います。 http://echoechanges-echoechanges.blogspot.fr/2012/07/blog-post_16.html
3-3. エートス・プロジェクトのもう一つの顔 フェルネックスさんが福島のみなさんに是非伝えてもらいたいというもう一つの点は、エー トス・プロジェクトがベラルーシに入ってくる6 年以上前から住民の放射線測定や放射線被害 防止のための研究と活動を続けていた民間組織「ベルラド研究所」の計測機を使用し、研究所 の技師を使って、地域の生産物の放射線量を計測したのですが、その結果を研究所長のワシー リ・ネステレンコ博士に渡さずに隠蔽したのです。現実は、計測結果が期待したものではなか ったからです。世界銀行なども関わる世界的なプロジェクトですから、資金も潤沢だった筈で すが、ベルラド研究所の技師と機具を使い、その分の給料を要求しても認めず、また、研究所 が開発したペクチンを3 週間子どもに与え、セシウムの蓄積を減らすプログラムへの資金援助 も断り続けていました。エートス・プロジェクトが得た情報の提供と、研究所の活動に対する 支援を依頼すると、「ストリン地方で追跡調査する予算はない」と一蹴されたそうです。 
ワシリー・ネステレンコ博士(1934-2008 )はベラルーシの核エネルギー研究所所長で、原 子炉開発で著名だったそうですが、チェルノブイリ事故に衝撃を受け、事故直後にヘリコプタ ーで上空を飛んで視察をし、その後は亡くなるまで住民を放射線被害から守るために研究と活 動を終生続けた方です。また、バンダジェフスキー博士と共に、内部被曝の研究をして、目下 チェルノブイリの放射能被害に関する研究書としては最高と評価されているニューヨーク科 学アカデミー刊『チェルノブイリ..大惨事が人びとと環境におよぼした影響』(ネットで閲覧 可:http://www.strahlentelex.de/Yablokov%20Chernobyl%20book.pdf、翻訳は岩波書店から 刊行予定とのことです)の編著者の一人です。
おわりに
4 月21 日に東京大学で内部被曝問題研究会・東京大学講演会実行委員会・北海道大学GCOE 境界研究の拠点形成共催で行われた「低線量被ばくに向き合う..チェルノブイリからの教訓」 講演会でウクライナ国立放射線研究所小児放射線部長のエフゲーニアヤ・ステパーノヴァさん がなさった報告内容は衝撃的でした。 慢性疾患を持つ子どもの割合が1986-87 年の8.4% から、2005 年の77.8% に増加したという 研究データ、その他、ありとあらゆる疾患に苦しむ子どもの割合が年を経るごとに増加してい る現実は、日本の放射能被害のこれからの発症率を想像させます。 更に悲惨なのはベラルーシの子どもたちです。ガリーナ・バンダジェフスカヤ(小児科医、 心臓専門医、バンダジェフスキー夫人)さんが2012 年5 月12 日にジュネーブで開催された 「WHO 独立を求める会」(Independent WHO )主催の「放射能防護に関する科学者と市民フ ォーラム..チェルノブイリからフクシマまで」で報告なさいました。 2009 年のベラルーシ全土の就学児童のうち、58.1% が機能障害と慢性疾患リスクを抱え、 13.8% が慢性疾患を発症しており、2007 年のデータと比べると、健康な子どもの数は減少して いるそうです。2002 年から2010 年のデータでは、先天性心臓病の率が3 倍以上に増加してい ること、先天性心臓奇形の頻度も上昇し続けていること、悪性腫瘍だけでなく、眼疾患、循環 器系疾患等々、25 年後の今子どもたちに何が起こっているかを詳細に報告なさいました。そし て最後に悲痛な叫びに近い訴えをなさいました。「政府はこの国の未成年者の健康が悪化したこ とを認め、子どもたちの健康にとって有害な状況は政府・放射線防護専門家・科学者が改善し、 治療に対して、具体的な行動を起こすことが不可欠です。政府がすべき最も重要な義務は、子 どもと青少年の健康を守ることです。これらの子どもたちが国の経済の可能性を決定し,その 国の人口増加能力があるかどうかを決めるのです」。
4 月21 日の講演会のDVD がようやく完成したので、ご紹介します。講演会ではわかりにく かった部分を字幕で補い、翻訳・通訳の間違いも専門家に念入りなチェックをお願いし、コメ ンテーターの今中哲二さんにも内容チェックなど、緻密な編集をなさったので、講演会よりも わかりやすいものになりました。ご注文は牟田(muta.orie@gmail.com )までお願いします。2 枚1組セットで送料込み¥2,000 です。
ジュネーブ・フォーラムの報告集は目下、各国言語に翻訳中で、近いうちに公刊される予定 です。

最後に、エートス・プロジェクトの背景を知る意味でも、なぜ世界の市民の健康を守る役割 である筈のWHO が核推進のIAEA と一緒に放射能被害に眼をつぶっているのか等の背景も知 っておく必要があると思いますので、是非以下のDVD をご覧ください。 * ウラジミール・チェルトコフ監督『真実はどこに?..WHO とIAEA 放射能汚染をめぐ
って』(2004)のDVD をご覧ください。フェルネックスさん、ネステレンコさん、その 他、チェルノブイリの子どもたちを救うために長年闘ってきた方々がIAEA, WHO と激 論する会議の様子や、放射線被害に苦しむ子どもたちの話を追求しています。 * ウラジミール・チェルトコフ監督『サクリファイス』(犠牲)はチェルノブイリ事故処理 にあたった作業員たちの記録とインタビューです。
1 ミシェル・フェルネックス(Michel Fernex ):スイスのバーゼル大学医学部名誉教授。長年 WHO の委員として感染症研究に携わった。チェルノブイリ事故後になぜWHO が援助しないの かに疑問を持ち、1957 年のIAEA とWHO の協定にいきあたった過程が『真実はどこに?』で 描かれている。2012 年5 月12 日のジュネーブ・フォーラムでは「福島の失われた時間」とい う発表をし(フクシマ集団疎開裁判ブログに掲載)、福島の子どもたちが心配だと、その直後に 自費で日本に向かい、広島・京都・浦和(肥田舜太郎先生との講演会)・福島・東京で講演会+ 上映会(『真実はどこに?』)、そして福島の市民や医師、農家の人々との交流会でアドバイスを なさいました。市民の心配の声に真摯に耳を傾け、一人一人に向き合う姿には感銘を受けまし た。フェルネックスさん他の『終わりのない惨劇..チェルノブイリの教訓から』(竹内雅史訳、 緑風出版、2012)もあわせてお読みいただければ、かなり問題が見えてくると思います。 2 ミハイル・マリコ「チェルノブイリ原発事故:国際原子力共同体の危機」、今中哲二(編)『チ ェルノブイリによる放射能災害..国際共同研究報告書』、技術と人間、1998、ネットで閲覧可: http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/saigai/Malko96a-j.html
3 V.G. バリヤフタル他、今中哲二(訳)「IAEA 報告への反論」、『技術と人間』1992 年9 月号所 収、ネットで閲覧可:http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/etc/GN1992-9.pdf. 4 出典:ETHOS IN FUKUSHIMA ブログ http://ethos-fukushima.blogspot.jp/2012_01_01_archive.html
5 ウラジーミル・P・マツコ、今中哲二「ベラルーシにおける法的取り組みと影響研究の概要」、 今中哲二(編)『チェルノブイリによる放射能災害..国際共同研究報告書』、技術と人間、1998、 ネットで閲覧可:http://www.rri.kyoto-u.ac.jp/NSRG/Chernobyl/J-Version.html2012 年7 月17 日




  • 11時間前
    • Nagiさん、これ、とっても心配しています。
      「日本の震災復興とアメリカ」英語日本語両方で読めます。
      アメリカとそのシンクタンクCSISの思惑がここに。
      日本の復興計画にアメリカは内政介入とも取れるほどの関与をしてきた。その目的は?
      1.新自由主義の復活
      2.復興事業受注による米企業の増益
      3.日本における原子力開発の再開と推進
      4.日本をアジアから孤立させ対米依存を深める
      そう、今起こっていることのほとんどがここにあります。
      http://www.jfissures.org/2012/04/18/the-reconstruction-project-and-the-us/

    • www.jfissures.org
      Photo: PACIFIC OCEAN (April 4, 2011) Japan Defense Minister Toshimi Kitazawa receives honors from Sailors upon his arrival aboard the aircraft carrier USS

  • 数秒前
    Nagi Wind
    • ありがとうございます。
      ブログにコピーさせて頂きます。

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  読書会に爆破予告? 多様性をめぐり分断深まるアメリカの今 アメリカ各地で広がっている、ある読書会。 子どもたちに多様性への理解を深めてもらいたい。そんな思いから始まりました。 しかし今、こうした読書会が爆破予告や反対デモで、中止に追い込まれる事態が相次いでいるといいます。 い...