2020年10月31日土曜日

 傷害罪と暴行罪の違い

Yoshihito Hashimoto
2012年7月15日  推定所要時間: 1分 
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傷害罪と暴行罪の違い http://blog.livedoor.jp/let_it_be_taka/archives/26551066.html (傷害) 第二百四条  人の身体を傷害した者は、十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。    (暴行) 第二百八条  暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、二年以下の懲役若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する。     今日例の傷害で起訴された奈良のおばさんの初公判があったとのことで、こんなエントリーを書いてみることにしました。   さて傷害と暴行の違いですが、傷害のほうが重い罪だということを知っている人も多いと思います。条文に書いてあるように暴行を加えて傷害が発生すれば傷害罪、発生しなければ暴行罪となります。   まず傷害とは何かということですが、学説は大体3つに分かれており、A説:身体の完全性の侵害(例:体に傷を負わせる、髪を切る)B説:生理機能の障害(例:体に傷を負わせる、体調を悪化させる)C説:生理機能を障害しまたは身体の外形に重大な変化を生ぜしめること(AとBの折衷説)   学説ではC説が有力ですが、裁判所はB説をとっているとされています。この根拠としてよく引用されるのが、女性の髪の毛を根元から切る行為を傷害ではなく暴行とした判例です。(大判明治45年6月20日)髪の毛を切っただけでは生理機能は害さないと言ってます。ただし同じく女性の頭髪を根元から切断した事例で、こちらは判例ではなく裁判例ですが、傷害罪に当たると判示した例もあります。(東京地判昭和38年3月23日)前者の例は明治時代の大審院(戦前の最上級の裁判所)による判断なので、今の日本で女の人を丸坊主にするようなことをしたらもしかしたら傷害になるかもしれません。ただ判例は具体的な事件について判断したものなので、どのように切断したか、などで判決が変わることは十分考えられます。     そして暴行を加えなくとも傷害罪は成立します。毒を飲ませて下痢を起こさせたりとか、嫌がらせ電話をしつこくかけて精神障害を起こさせた事例で傷害罪を認めています。今回の奈良の事件は被害者が騒音のために不眠や頭痛、めまいを起こし、約1カ月の治療が必要と診断されたために傷害罪で起訴されたのですね。     次は暴行罪です。暴行の定義は"人の身体に向けられた有形力の行使"とされています。有形力が人に向けられてさえいれば足り、物理的に接触しなくてもかまいません。有形力には物理的な力以外に、光や音といったエネルギーも含まれます。暴行罪が適用された具体例としては、1.髪を根元から切る2.塩を振りかける3.石を投げたが当たらなかった4.狭い四畳半の部屋で抜き身の刀を振り回すなどなど。     ちなみに傷害罪と暴行罪の分かれ目は全治5日ぐらいだそうで。たとえ傷を負ってもごく軽微な場合は暴行罪で処理されるようです。

 OCHAによる健康被害報告

Yoshihito Hashimoto
2012年7月19日  推定所要時間: 1分 
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—————-OCHAによる健康被害報告 (wikiより引用)————– OCHAによる健康被害報告1991年、国連はチェルノブイリ信託基金(Chernobyl Trust Fund)を創設し、管理運営は国際連合人道問題調整事務所(OCHA)が担うことになった[25]。OCHAは、2000年に「Chernobyl A Continuing Catastrophe」を発表し、被害の概観を報告している。 事故から20年を経た2006年には、ベラルーシ、ウクライナ、ロシアの国家レポートが、それぞれの国ごとに寄せられている。OCHAの立ち上げた「The United Nations and Chernobyl」によると、核分裂生成物、大気中に放出された放射性核種は約520種類にも及びベラルーシ、ウクライナ、ロシアの三カ国で、840万人近くの人達が放射線に曝されたとの見積りがなされている。「The United Nations and Chernobyl」によると、ウクライナでは350万人以上が事故の影響を受けており、その内の150万人が子供であった。   癌の症例数は19.5倍に増加し、甲状腺癌で54倍、甲状腺腫は44倍、甲状腺機能低下症は5.7倍、結節は55倍となった。ベラルーシでは放射性降下物の70%が国土の四分の一に降り、50万人の子供を含む220万人が放射性降下物の影響を受けた。   ベラルーシ政府は15歳未満の子供の甲状腺癌の発生率が2001年には1990年の2000例から8,000-10,000例に急激に上昇したと推定している。ロシアでは270万人が事故の影響を受け、1985年から2000年に汚染地域のカルーガで行われた検診では癌の症例が著しく増加しており、それぞれ、乳癌が121%、肺癌が58%、食道癌が112%、子宮癌が88%、リンパ腺と造血組織で59%の増加を示した。 乳癌ベラルーシとウクライナの汚染地域で乳癌の増加が報告されている。この乳癌の増加に対するバイアスについても検討され、その結果、スクリーニングが原因の可能性はありそうにないことが示された。 最近の研究によれば、DNA修復における遺伝子の変異の発生と損傷した認知遺伝子が、低線量であっても、電離放射線の暴露によって乳癌のリスクの増加になることを示している。       膀胱癌 ウクライナの汚染地域において膀胱癌の増加が報告されており、この地域の膀胱癌発生のメカニズムは一般的な膀胱発癌と異なった経路で発症する可能性が示唆された。 2004年に、日本バイオアッセイ研究センターの福島昭治所長らによって、この汚染地域において、長期にわたるセシウム137による低線量放射線の慢性的被曝に関連した膀胱癌の前癌状態として、増殖性の異型性変化を特徴とする膀胱の慢性炎症をチェルノブイリ膀胱炎(Chernobyl cystitis)と名付けられた。 比較対象は、非汚染地域、0.5-5 Ci/km2、5-30 Ci/km2に住む住民の3つの群に分けられ、尿中のセシウム137の濃度は、それぞれ、0.29 Bq/l、1.23 Bq/l、6.47 Bq/lであった。 研究の結果、膀胱尿路上皮においてNF-κBとp38 MAPキナーゼなどのシグナル伝達経路の発現上昇や成長因子受容体などの活性化を伴う酸化ストレスが生じたことによって慢性炎症が引き起こされ、前癌状態とされる増殖性の異型性膀胱炎に発展したものと結論づけられた。     胎児、子供の健康影響  チェルノブイリ原子力発電所から約80キロ西にあるウクライナの農業地帯のNarodichesky地区に住む子供は、事故から十年以上を経ていながら、慢性的な低線量被曝下にあり、1993-1998年の6年間にわたる追跡調査によると、土壌に含まれるセシウム137の濃度に比例して、赤血球、白血球、血小板の減少、ヘモグロビン濃度の低下が観測され、スパイロメトリー(Spirometry)を用いた検査からは、気道閉塞(Airway obstruction)および拘束性肺機能障害の有意な増加が観測されている。    小児甲状腺癌  UNSCEARによれば、ヨウ素131で汚染されたミルクに対する迅速な対策に欠けていたために、一般市民の甲状腺に大量の被曝をもたらすことになり、このことが、事故当時、子供や青年であった人々に観測された6,000件以上の甲状腺癌の大部分を導いたとしている。甲状腺癌患者への治療は、短期的な有効性にもかかわらず、長期的な生活の質(QOL)は生涯にわたる甲状腺ホルモンの補充療法の必要性によって低下し、将来的な医療支援が必要になる。2011年、アメリカ国立衛生研究所の機関であるアメリカ国立癌研究所を中心とした国際的な研究チームは、子供の被曝は大人が被曝した場合に比べて甲状腺癌にかかるリスクが高く、依然として甲状腺癌の発症リスクが減少傾向に転じていないことを報告した。     —————-チェルノブイリで起きた健康障害————– 1)頭:頭痛、めまい、ぼうっとする、考えがまとまらない、ハイになる、うつになる、計算ができなくなる、多動様、二世においては少し知性に異常がでる、ノイローゼ、てんかん 2)粘膜:目、鼻、口、喉、声帯、性器関連の炎症が繰り返される。目は子供にも白内障がのちのち増える、声帯が痛んで声がでなくなる。くりかえしおよび多発する口内炎。鼻:線量の高い低いにかかわらず、子供大人にかかわらず出る鼻血、あるいは異常な色の鼻水。歯茎からの出血。虫歯の悪化。 3)肺:咳、色のついたタンが止まらない。カラ咳。風邪と違う。あるいは繰り返す風邪。風邪が治らず気管支炎、肺炎と繰り返して入退院するようになる。喘息になる。子供は特に肺炎にかかりやすくなる。 4)胃腸:下痢あるいは軟便が長期にわたり続く。胃の上部がしまった感じで食べ物が入って行かない、食欲が無い、吐き気、嘔吐、揚げ物がむかつく、量が食べられなくなる。胃がいたくなる。 5)疲労感:突然襲ってくる、身体がだるいことが続く、眠くて仕方がない、立ってられない、子供の場合はゴロゴロしている。今まで感じたことのないだるさ。→原爆ぶらぶら病にとてもよく似ている 6)脱毛:徐々に抜ける場合もある 7)腎臓:夜中に腰の上あたり、腎臓のあたりが激痛が走るようになる。押すと少し楽になるが、ときどき起こる。腎臓炎、膀胱炎など。おねしょ。 8)耳:中耳炎を繰り返すようになる 9)皮膚:アレルギー症状の悪化、手の皮が向ける、傷が治りにくい、ヘルペス。皮膚が弱くなる。 10)心臓:大人も子供も心臓が痛くなる、病院に行って心電図をとってもらうが異常がでない。夜中に踏まれたように胸が痛くなる。血圧異常が大人にも子供にも起こる。息が切れるようになる。パタンと倒れる。老若にかかわらず突然死。 11)関節痛、あるいは骨の痛み、骨の異常 12)生理不順、出血異常。女性器に関するトラブル。乳がんなどの増加 13)甲状腺の異常、腫れ 14)リンパ節の腫れ、特に首や脇の下 15)その他:発熱など、神経反応の異常、ホルモンの異常、内分びつの異常 16)出産の異常、分娩の異常、出生率と死亡率の逆転(汚染地域)   チェルノブイリの架け橋 『チ ェ ル ノ ブ イ リ 症 候群 』より引用

 何故、ベータ線が内部被曝に有害? 放射線の飛程と放射能汚染の測定について

Yoshihito Hashimoto
2012年7月25日  推定所要時間: 1分 
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何故、ベータ線が内部被曝に有害? 放射線の飛程と放射能汚染の測定について がんばる主婦てんままの日常日記より 福島原発事故から数日後、水道水から放射性ヨウ素131が検出されて、世の中が放射能汚染パニックに陥ってしまったのはみなさん良く覚えておられるかと思います。ヨウ素131は寿命(半減期)8日なので、さすがにもう消滅して放射能汚染の問題も落ち着いたと思ったら、今度はセシウム137が現れました。   どうしてこの時間差が生ずるのだろう? セシウム137は寿命(半減期)が約30年と長いから、その放射能はヨウ素131のそれより約1400倍弱いはず。(原発から放出された放射性物質の数は同じだとした場合。)ヨウ素131さえ消えてくれれば、セシウム137による汚染はさほど問題にはならないだろうと、楽観視していました。そもそも原発から放出された量が違うのか、ヨウ素131は寿命が短いから地表にフォールアウトする前にほとんど消えてくれただけのことなのか?   いずれにしても、私たちは、寿命の長いセシウム137と末長く付き合っていかなければいけません。   つい最近では、規制値を超えるセシウム137を含んだ牛肉が流通してしまいました。近所の、小田急町田店でも扱っていたらしいのです。私は、ここで、てんちゃんの大好物の牛肉コロッケを買って食べさせたような気がします。問い合わせようかと思ったけど、何も張り紙もなかった。対応がおかしくないだろうか。もしかしたら、てんちゃんのお腹の中でベータ線がはじけているかもしれません。   ちなみに、75000Bqのセシウム137を摂取した場合、その後50年間に受ける内部被曝の量(預託線量当量といいます )1mSvになります。この値には、人体がセシウム137を生理的に排出することを考慮していないので、実際はこの値より小さくなります。たしか、汚染牛肉は1kg当たり多くて数1000Bqだったと思うけど、コロッケに入っている牛肉は100gということにすると、てんちゃんの預託線量当量は数μSvになります。 小さいからとりあえず安心!! でも、これ、まったく意図しない被曝だから、安全であっても気分悪いです。ちゃんと検査してくださいよね。 でないと、〇〇産というだけで買うの控えます。   ところでですね、「牛肉1kg当たり数1000Bqのセシウム137を検出した」という感じで報道されますが、食品の放射能汚染は、つまりこの食品内のセシウム137はどうやって検出しているのでしょう? 知ってる方おられたらぜひ教えて頂けないでしょうか? 以前から疑問に思っていることがあるのです。   セシウム137(ヨウ素131もそうですが)はベータ線を放出します。そのうちの約95%のベータ線のエネルギーは最大512keV、残り5%のエネルギーは最大1.17MeVです(参考) 。ヨウ素131の場合は、約90%が最大600keV、残りが最大300keVです(参考)。いずれも、最大数100keVと考えることにします。   ちなみに、「最大」というのは、原子核のベータ崩壊ではベータ線といっしょにニュートリノを放出するので (2つの粒子を放出するので)、ベータ線がニュートリノと数100keVのエネルギーを分け持つので、最大で数100kevの エネルギーを持つことになります。実際は、どういう分布で分け持つのでしょう?古典粒子であれば質量で決まりますが、ベータ崩壊(弱い力)はとっても難しくて わかりません。 とりあえず、原子核のベータ崩壊により放出されるベータ線のエネルギーは一意ではない、スペクトルを見ると単色(モノクロ)でなく連続スペクトルになります。この特徴は覚えておいてください。あとで、また触れます。   原子核から放出されたベータ線は、物質中でそれを構成する原子や分子と衝突し、それらの電離、励起、、、といった反応を繰り返し起こして 、エネルギーを浪費し、完全に失うことで止まります。 放射線が止まるまでの移動距離を、「飛程」といいます。 ベータ線の飛程は、水の中で数mm(空気中で数m)だったと記憶しています。ただし、セシウム137やヨウ素131のベータ線は数100keVと若干典型的な放射線のエネルギーより低いのと、上述の通り 、これはあくまで最大なので平均はより短いことになります。 ここでは、最大を考えた方がいいので、ベータ粒子の飛程は数mmとします。   ついでに、放射線の単位飛程当たりに失う(物質に付与する)エネルギーを「阻止能」と言います。 ベータ線(それ以上にアルファ線、さらにそれ以上に重粒子線)は、阻止能が大きいのです。つまり、ベータ線は短い距離移動する間に多くのエネルギーを失うのです。従って、ベータ線の飛程は短いのです。上記のとおり、水中で数mm(空気中で数m)。ちなみに、アルファ線の飛程は、水中で数0.1mm(空気中で数cm)といったところだと思います。 空気中での飛程を考えると、ベータ線、アルファ線の外部被曝は(ガンマ線ほど)気にする必要はないと言えます。線源から数m、数cmも距離を置けば、届きませんから。 一方、ガンマ線の阻止能は小さく、飛程は長いです。(典型的にどのくらいとは聞かないですね。)外部被曝ではガンマ線を特に重視しなければなりません。   ちなみに、飛程が短い場合、簡単に遮蔽できます。アルファ線なら紙1枚、ベータ線なら数ミリ程度のアクリル板だったかアルミ板で遮蔽できます。飛程の長いガンマ線は厄介。一般に、約50cmのコンクリート或いは約10cmの鉛で遮蔽します。飛程が短いから遮蔽ができて、私たちは、放射線に曝されることなく安心して暮らせるわけです。   この放射線の飛程は、放射線の基本的な性質なので覚えてくださいね。そして、飛程は阻止能の裏返しであることも覚えておくと、内部被曝でなぜベータ線(それ以上にアルファ線、重粒子線)が有害なのかわかります。   余談ですが、ふと疑問に思ったことですが、セシウム137やヨウ素131が放出するベータ線は、β^-線(電子)であってβ^+線(陽電子)ではありませんよね。ずっと、気にしていませんでしたが。 β^+線(陽電子)だと、物質中の電子と対消滅して約500keVのガンマ線を2本放出します。さらに被曝しますが、この2本のガンマ線はとっても特徴的なので、内部被曝の検査、つまり体内の放射性物質を検出するのに使えます。PETと同じことができるので、精密な検査ができる、と思ったのですが、β^-線(電子)ではできません。   話を戻しますが、以前からの放射能汚染の検出方法の疑問ですが、セシウム137(ヨウ素131も同様)もベータ線しか放出しません。ということは、食品等の被検物内のセシウム137を測るのに、それが放出するベータ線を測る必要があります。でも、ベータ線の飛程は数mmと短いから、被検物の表面から出てくるベータ線しか測れず、内部からでてくるベータ線は 検出器まで届かなくて測れないということになるのです。( ここでは、人体、食品はほとんど水が占めているとして考えています。)   だから、厚労省はどうやって放射能汚染の測定をしているのか疑問だったのですが、先日の記事で紹介したように、厚労省の「緊急時におけ る放射性ヨウ素測定法」というマニュアルがあって、これに従うと、ゲルマニウム半導体検出器を使って測定しているのだそうです。ちなみに、民間業者でもゲルマニウム半導体検出器、或いはNaIシンチを使っているようです。これらの検出器は、ガンマ線検出器 です。なお、ただガンマ線を測定するのはなく、ガンマ線のエネルギースペクトルを測定します。   ここで、不思議なのは、セシウム137(ヨウ素131も同様)もベータ線しか放出しないのに、厚労省はガンマ線を測定しているのです。 どうして?何を測っているの? これは核データ(上の参考をご参照ください)を見ると、セシウム137はベータ線のみ放出しますが、それがベータ崩壊してできる娘核バリウム137(おいしくなさそう。明日、健康診断で飲まないといけない。)が662keVのガンマ線を放出します。ヨウ素131の場合、その娘核ゼノン131が361keVと637keVのガンマ線を放出します。   ガンマ線は飛程が長いので被検物の中から外に出てきます。そのガンマ線を測定すれば、被検物中のセシウム137やヨウ素131を検出できるということです。   ついでに、原子核が放出するガンマ線のエネルギーはモノクロ(単色)なので、検出したガンマ線のエネルギーを特定 できれば、それを放出した核種を容易に同定することができます。例えば、662keVのガンマ線を検出したら、バリウム137を同定できます。これは、セシウム137がベータ崩壊してできる 原子核なので、セシウム137を検出できたことになります。 放射線のエネルギースペクトルを測定すること、そのスペクトルから線源を同定することを、スペクトル分析と言ったりします。   これは食品等の汚染検査ではなく環境放射能の測定としてのガンマ線スペクトルの測定結果です(産総研のホームページに飛びます)。2つ目の図、「図 ビニールシート上に降下してきたほこりなどを、、、」がそうです。細かいピークが、特定の核種から放出されたガンマ線であって、同定された核種が図中に示されていますね。662keVのところにセシウムCs137(バリウム137)のピーク、361keVのところにヨウ素I131(ゼノン131)のピークが確認できるでしょ。 また、ガンマ線の測定数(単位時間当たりのカウント数)を、分岐比とか、、、を使って換算すると、被検物に含まれる放射能の強度(単位時間あたりの崩壊数、すなわちベクレル)が求められます。   放射線計測というのは、よく考えられているものです。おもしろいと思いません?   このように、ガンマ線のエネルギーと数とから、汚染物(核種)を同定し、その量(ベクレルで表現)を求めることが できます。   ベータ線を測る必要はありません。測ろうにも、飛程が短いから被検物の表面から出てくるベータ線しか測れません。それに、(原子核のベータ崩壊に由来する)ベータ線のエネルギースペクトルは連続だから、そのエネルギーが特定できず、そのベータ線を放出した核種を同定することは難しいのです。上のようなスペクトル分析ができません。   なお、私は放射能汚染の測定の実際についてはまったく知りません。上のことは、厚労省のマニュアルと、物理学の基礎知識から予測しただけのことです。 でも、結構いい線いっていると思うのですが、どうでしょうか? 産総研のホームページで紹介されているガンマ線スペクトルより、私の予想はずばり正解だと思うのですが。   そんな疑問を以前の記事に書きました。 そしたら、「とおりすがり」さんと言う方が、こんなコメントを残して行きました。(ついでに、ちゃんとハンドルネームを書くのが礼儀ではありませんか?一定の者であることを表す必要があるでしょ。)そのまま、書き写します。   『γ線測定しても意味無いですよ人体の内部被曝で有害なのはβ線です。 β線を測定出来る機械じゃなきゃ無意味ですし、ヨウ素やセシウムみたいな核種の測定は格納容器みたいな特殊な容器 に入れてで測定します。簡易測定なんてありえないですよ』   私は、これを見て、拍子抜けしてしまいました。   『内部被曝で有害なのはβ線』、これはそのとおりです。 理由は、上で説明したように、ベータ線の飛程が短いから。 つまり、阻止能が高いからです。短い飛程の中で高いエネルギーを人体を構成する臓器・組織に直に付与するからです。臓器・組織が局所にダメージを受けるわけですから。 アルファ線、重粒子線の場合、ベータ線よりさらに阻止能が大きいから、さらに狭い範囲に大きなダメージを与えます。特に、止まる瞬間にそのほとんどのエネルギーを物質に付与します。これにより、狙った標的、例えば人体内のがん細胞をピンポイントで撃ち殺すことができます。だから、放医研のHIMACのように、放射線(重粒子線)を用いたがん治療に利用されています。 逆に、外部被曝の場合は、体表面がベータ線を遮蔽してくれるので、臓器・組織にまで届くことはほとんどないのです。そんなに神経質にならなくてもよいかと思います。皮膚がんになるかもしれませんが。   ついでに、被曝について楽観的な私であっても、ベータ線(さらにアルファ線)の内部被曝はぞっとするものを感じます。(もっと怖いのは中性子。これは恐怖です。) その発癌リスクがうんぬん以前に、被曝していること、放射性物質を体内に摂取したこと気がつかないからです。 外部被曝であれば、線量計でモニタできるし、衣服や皮膚に付着した放射性物質が放出する放射線を検出したりすることで、被曝の事実を知ることができます。気がついたら、線源から距離を置くことで被曝を回避できます。 でも、内部被曝の場合、放射性物質を体内にいれたらもう終わり。それが物理的・生理的に消滅するまで被曝し続けます。ベータ線、アルファー線は飛程が短くて、体外に出てこないから、内部被曝していることにすら気がつかずに。セシウム137やヨウ素131なら娘核がガンマ線を放出してくれるのでまだ検出できますが、ストロンチウム90はガンマ線を放出しないので検出できません。   放射性物質を体内にいれてしまったこと自体に気がつかないことがほとんでではないでしょうか? 内部被曝は、ホールボディカウンタを使う、喉の粘膜や排泄物を検査することで、体内にある放射性物質を検出して、今後の被曝量を推定しますが、いつどれだけの量の放射性物質を摂取したかわからなければ、検出するまでの被曝量ははっきりわかりません。 また、ヨウ素131については、もうほとんど消滅しているので、それによる内部被曝はもう測定しようがありません。ヨウ素131の崩壊により生じる寿命の長い娘核が検出できれば可能性がありますが、核データを見る限り、そんな娘核はない。 国がなかなかふくしまの方々の検査をしないのは、時間を稼いで、被曝量をごまかす狙いがあるのかもしれません。私だったらそう疑います。   しかし、だから、『β線を測定出来る機械じゃなきゃ無意味』。 どういうベータ線検出器を使うのか是非教えて頂きたいものです。ベータ線検出器ってあまり聞いた記憶がないんです。そして、飛程の短いベータ線をどうやって測定するのか? ベータ線の飛程は数mm、セシウム137やヨウ素131のベータ線の飛程はもっと短いと予想されます。従って、これらのベータ線は、ほとんど、被検物から出てきません。 どんな容器に入れようとも、ベータ線の測定は困難です。   それに、ベータ線のエネルギースペクトルは連続です。ガンマ線のように単色にはなり得ません。従って、ベータ線測定ではスペクトル分析ができません。 どうやって、核種を同定するのでしょうか?   なお内部被曝の検査に用いられるホールボディカウンタもガンマ線を測定します。事情は、上述と同じです。   『内部被曝で有害なのはベータ線、だからベータ線を放出する核種を検出しなければ意味がない』と言うのならよくわかります。しかし、その検出方法はベータ線測定である必要はないのです。むしろ、ベータ線測定は不可能です。 「内部被曝で有害なのはベータ線」であることの上述した理由を理解していれば、ベータ線の測定は困難だと言うこともすぐわかります。   『格納容器みたいな特殊な容器』、どんな容器でしょう? 格納容器と言えば、「原子炉の格納容器」です。辞書、学術用語集を調べても、やはりwell definedです。そんな特殊な容器にいれて測定する必要があるのですか?想像を絶します。   もしかしてこの緑色の容器(?)のこと? 産総研の装置(一番下の写真)にも薄緑の容器(?)があります。他にそれらしい特殊なものはなさそうです。ただ、これを「容器(物を入れるうつわ。いれもの。)」とは言わないと思いますが。なお、私なら、この大きさ、壁の厚さから、「金庫」とでも呼びます。被検物が大事そうに中に入れられています。 これはバックグラウンド(自然放射能等)を遮蔽するためのもので、数cm厚の鉛の壁で被検物を囲むのでしょうね。規制値超えるかどうかの微量の汚染物が放出する微量の放射線を検出しなければならないのだから、ガンマ線スペクトル分析をするのなら特に高いS/N比を要するのだから、厳重な遮蔽が必要です。 個人で測定する場合だって、鉛のブロックで小さい空間を作って、そこに被検物と検出器をおいて(のぞき窓も作って)測定すれば、同じことができます。全然、特殊ではありません。(私も現役で放射線の研究をしていた時は、鉛のブロックで遮蔽しました。)個人でスペクトル分析をするのは難しいけど、そんなことしなくても、今私たちの環境に存在する放射性物質はセシウム137のみと思っていい状況ですから、ガンマ線を検出=セシウム137を検出とみなしてよいでしょ。   『簡易測定なんてありえないですよ』、この方の言う簡易測定とは何でしょう? 数万円程度で簡易検出器、簡易線量計が販売されていますね。実際、個人で購入して、食品等の汚染の有無を確認するかたもいますね。検出精度が足りるか、バックグラウンドに埋もれて役に立たないのではないか、気になるところですが、セシウム137やヨウ素131(の娘核)のガンマ線を測定できるので、適切な行為です。 外部被曝のスクリーニング検査もあなたの言う簡易検査に該当すると思いますが、これも意味がないと言うのでしょうか? よくGM管を使うのを見かけますが、これ一応ベータ線も測れますが、2.5MeV以上のエネルギーの高いベータ線が対象のようですよ。セシウム131 やヨウ素131のベータ線はエネルギーが低いので、もっぱらガンマ線を測定していると思われますが。   なお、これでも「γ線を測定しても意味無い、β線を測定出来る機械じゃなきゃ無意味」というのなら、実際にどういう検出器を使ってβ線を測定するのか、どうやって核種を同定するのか説明してください、とお願いしていることろです。   以上のことは先の記事でも、記載しています。併せてご参照ください。 関連することあれこれ書いています。

 原子炉メーカーの製造物責任

Yoshihito Hashimoto
2012年7月28日  推定所要時間: 1分 
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原子炉メーカーの製造物責任早稲田大学大学院法務研究科教授・弁護士道垣内 正人 メーカーにとって製造物責任は大きなリスクである。しかし、原子力損害の賠償に関する法律4条3項は、「原子炉の運転等により生じた原子力損害については、・・・製造物責任法 (平成六年法律第八十五号)の規定は、適用しない。」と定めている。原子力事故の場合の責任主体は原子力事業者(電力会社等)だけであって、原子炉メーカーは責任を負わないのである。 これは責任集中と呼ばれる。 なぜ、原子炉メーカーは製造物責任法の適用除外を受けているのであろうか。それは、日本がアメリカから原子力関連技術の供与を受け、原子力発電事業を始める際にアメリカから提示された条件のひとつだったからである。アメリカの原子炉メーカーとしては、原子炉設備の瑕疵による事故が万一起これば巨額の賠償責任を負うことになりかねず、そのようなリスクを負うことはできないというビジネス判断をしたのである。 アメリカの技術をもとにして原子力発電を始めた国々は、原子力事故の民事責任についてはほぼ同一の法制となっており、それらの国の間では原子炉メーカーの製造物責任は問わないというルールが国際標準となっている。 1986年、チェルノブイリ原子力発電所事故が発生した。ソ連時代に発生した事故であるから、死の灰の飛散により西側諸国の酪農家等が被った損害についてソ連が何らの賠償をしなかったことは不当とはいえ、当時はいかんともしがたいことであった。ソ連の崩壊後、ドイツはロシア型原子炉の危険性を理由として、旧東ドイツの原子力発電所をすべて停止したが、ロシア・東欧の多くの国は主要なエネルギー源として原子炉を稼働し続けた。これをめぐって、上記の問題がクローズアップされた。すなわち、それらの国の多くは製造物責任の特則を設けていないため、西側のメーカーは、ロシア型原子炉の補修工事を受注することによって生ずるリスクを回避したのである。 IAEAは国境を越える原子力事故に備える様々な法的対応をとったが、そのひとつとして、1997年に「原子力損害の補完的補償に関する条約(CSC)」を作成した。CSCは、責任集中のほか、無過失責任、一定額以上の賠償措置(責任保険、国の措置等による)等を定める法制を有している国が締約国となることができ、締約国で原子力事故が発生した場合には、原則として事故発生国のみが裁判管轄を有することとするとともに、国際基金から一定額が賠償資金として提供されるという仕組みを定めるものである。ロシア・東欧のほか、新たに原子力発電を始めようとする国々に国際基金というバックアップを提供する代わりに、国際標準の原子力損害賠償法制を作ってもらおうというわけである。そのため、CSCは原子力ルネサンスを謳歌して設備の輸出を積極的に行おうとする原子炉メーカー、その多くを擁する日本のためのものであると言われている。 もし、国際標準の原子力損害賠償法制を有していないA国に日本の原子炉メーカーYが設備を輸出し、同国の電力会社Bが発電中にY製設備の瑕疵により原子力事故が発生した場合、A国居住者を中心とする被害者Xらは、日本の裁判所においてYを被告として損害賠償請求訴訟を提起することになろう。この場合、日本は被告住所地国であるので、日本の裁判所は国際裁判管轄を認め、本案の審理に入る。そして、国際私法によれば事故の発生地であるA国法が準拠法となり、同法には通常の民事責任法しかないとすれば、Yは倒産リスクにさらされることになる。 これに対して、もしA国も日本もCSCの締約国になっていれば、裁判管轄は事故発生国に限定されるので、Xらが日本で提訴してもその訴えは却下され、A国で請求するほかない。そして、責任集中を定めるA国法により、A国の電力会社Bにのみ賠償責任があり(A国法上、Bは原子力損害賠償のための責任保険等の措置をとっているはずであり、それに加え、その賠償能力を補うため国際基金から一定額の拠出がされる)、Yに対する請求は認められない。 最近、ベトナムに対する日本からの原子炉の輸出が決まったという報道に接し、日本は進んでCSCを批准するとともに、その世界各国での批准を推進する役割を果たすべき時期に来たのではないかと思う。 (なお、ロシアは現在、責任集中等を定めるIAEAの古い条約の締約国となっている。他方、アメリカ等4ヵ国がCSCをすでに批准しているものの、発効要件である5ヵ国に達せず、CSCは未発効である。) (掲載日 2011年2月7日)  原子力損害賠償法の2つの目的 早稲田大学大学院法務研究科教授・弁護士道垣内 正人 本年2月7日の第138回のコラムで、「原子炉メーカーの製造物責任」について書いた。もちろん今日の状況を予想していたはずもなく、20年間以上にわたって原子力法制に関係してきた者として、再び訪れようとしていた原子力発電所建設ラッシュとその市場への日本の原子炉メーカーの参入を前提にした話であった。 そのような前途洋々たる「原子力ルネサンス」と呼ばれていた時代は3月11日に終わったように見える。これから先のことは予想はつかないが、少なくとも原子力発電のコスト計算はやり直さざるを得ないであろう。 さて、現在、東京電力は世間の逆風を一身に受けている。確かに、今回の津波後の措置は、少なくとも報道による限り、後手後手に回った感が否めない。しかし、法律家たるもの、事実認定には慎重であるべきである。特に本件では明らかになっていない点があまりにも多い。そこで、以下では、事実への法の具体的な当てはめではなく、やや抽象的に「原子力損害の賠償に関する法律」(原賠法)の適用上の要点と思われる点を若干指摘しておきたい。 原賠法1条は、「この法律は、原子炉の運転等により原子力損害が生じた場合における損害賠償に関する基本的制度を定め、もつて被害者の保護を図り、及び原子力事業の健全な発達に資することを目的とする。」と定めている。つまり、「被害者の保護」と「原子力事業の健全な発達」という2つの目的のバランスをとって、通常の不法行為法とは異なるいくつかの定めをしているのが原賠法なのである。 原賠法は、この2つの目的達成のため、①原子力事業者への責任集中(製造物責任等の排除)、②無過失責任、③免責事由の限定、④賠償措置の強制(原子力事業者は責任保険等を掛けておかなければ原子力事業をすることはできない)、⑤国の援助、などを定めている。多くの原子力発電国はこれらに加えて、原子力事業者の有限責任を定めているが、日本はこれを採用せず、一般の不法行為の場合と同じく無限責任となっている。この点で、日本の原賠法は被害者保護に相当に傾いており、原子力産業の健全な発展とのバランスをとるためには、しかるべき場合には免責を認め(③)、必要があれば、しかるべく国が援助する必要がある(⑤)。 ③について、原賠法3条1項は、本文で原子力事業者の責任を定めた上で、「ただし、その損害が異常に巨大な天災地変又は社会的動乱によって生じたものであるときは、この限りでない。」と定めている。この「異常に巨大な天災地変」について、従来、日本の歴史上あまり例の見られない大地震、大噴火、大風水災等を指すという説明や、地震についての例として、関東大震災を相当程度(約3倍以上)上回るものといった説明がされてきた。しかし、そのような解釈の根拠は示されてはいない。 原賠法3条1項但書は、同項本文との関係、さらには原賠法全体の歴史的経緯・基本構造などを踏まえて解釈されるべきである。すなわち、ある天災地変が「異常に巨大」ではないとの判断をすることは、その天災地変により原子力事故を起こしてしまった原子力事業者は過去に遡って間違った判断をしていたと評価することであるので、そのような評価が原賠法のもとで経営をしてきた当該事業者にとって不意打ちになってはならない。また同時に、その解釈は、将来に向けて、他の電力会社を含むすべての原子力事業者にとって、いかなる対策をとっておけば原子力事業を継続することが可能なのかを合理的に判断できる基準に基づいていなければならない。福島原発事故の原因が確定されていない以上、迂闊なことを言うことはできないが、各電力会社が一斉に、今回の津波にも耐える施設にする補強工事の完了までは原発を止めるとか、そもそも原子力事業から完全撤退するという判断をすることもあり得るところであり、それでも日本国としてよいのか否か、そこまで考えて3条1項但書の適用・不適用をする必要があり、不適用の場合にもその基準をこの際明らかにすべきである。 では、仮に東京電力の免責は認められないとの判断となった場合はどうなるであろうか。民間の保険会社は地震・津波による損害についての責任保険は受け付けないため、上記④の賠償措置として、東京電力は国との間で原子力損害賠償補償契約に関する法律に基づく契約を締結している。これにより、福島第1原発分として1200億円と、同第2原発分として1200億円(第2原発の事故を原因とする避難等による損害額がこれを上回ることを前提とする。)との計2400億円が国から東京電力に支払われる。これは、国が受領してきた補償料の対価であるので、国の義務的な支出である。 それを超える分は東京電力の自己資金によることになるが、全体の損害額が巨額になることが予想されるため、債務超過に陥るおそれがある。このような場合に備えて、原賠法16条1項は、「政府は、原子力損害が生じた場合において、原子力事業者(・・・)が第3条の規定により損害を賠償する責めに任ずべき額が賠償措置額をこえ、かつ、この法律の目的を達成するため必要があると認めるときは、原子力事業者に対し、原子力事業者が損害を賠償するために必要な援助を行なうものとする。」と定めている。これが上記の⑤である。 この国の「援助」として立法当初から想定されていたのは、原子力事業者の責任であることを前提に、被害者の保護のため、当該原子力事業者が外部から資金を借り受けることができるように政府が保証を与えるといったことである。日本が採用している原子力事業者の無限責任は世界に誇るべきものである。今回の事故について東京電力に責任があるとしても、東京電力を存続させることこそが被害者に対する100%の補償を確保することになるのである。その実現方法は様々に存在するであろうが、社会全体の経済活動や日常生活に混乱・支障をもたらすことなく、円滑な賠償金の支払いが実現されるスキームを創り出すことが肝要である。 世間では、原賠法3条1項但書の議論はスキップされ、東京電力を存続させるスキームについて、それがまさに16条により予定されていることであるとの認識を欠いたまま、あたかも政府が東京電力を特別に救済しようとしているとの批判もされている。しかし、問題の根源は日本の原子力政策にあるのであり、ひとり東京電力の問題ではないはずである。法律家としては、原賠法の2つの目的を踏まえ、冷静な眼で落としどころを見定めていく必要があるように思われる。 (掲載日 2011年5月2日)
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2020年6月22日月曜日

六ヶ所再処理工場 検証 ジェット機が墜落

活動報告:原発裁判(六ヶ所)◆
   本件再処理工場が破壊される航空機衝突条件について

 六ヶ所再処理工場を含む核燃料サイクル施設は、三沢対地訓練区域(天ヶ森射爆撃場)から10kmの場所に立地され、航空機に対する防護設計がなされていますが、それは戦闘機が通常の訓練コースから「エンジン停止」で「グライダー状に滑空した場合」を想定した速度150m毎秒で衝突した場合の解析に基づいています。再処理工場に航空機が落下する場合、戦闘機とは限りません(例えば羽田-新千歳間の定期航空路は下北半島上を通ります)し、エンジン停止状態で衝突してくれる保証はありません。
 ここでは、安全審査で行われた解析方法を用いた上で、衝突する航空機の重量や速度を変化させた場合、どの程度で再処理工場が破壊されるかを明らかにし、それがむしろ現実的な衝突条件であることを論じます。

 なお、航空機の全体荷重による再処理工場の壁・天井の破壊についての解析は、東芝で格納容器設計グループ長を務めた後藤政志さんにお願いしました。
 提出した準備書面の内容を基本的にそのまま掲載します。
 全体破壊については、後藤政志さんの鑑定意見書(準備書面で引用する甲D第174号証)を見ないとわかりにくいところがありますが、現時点では後藤政志さんの鑑定意見書のそのままの掲載は見合わせます。
 
 ☆原告準備書面(114) 本件再処理工場が破壊される航空機衝突条件について
第1 はじめに
 本件再処理工場の安全審査と設計及び工事方法認可では、航空機に対する防護設計として、①総重量20tの航空機(戦闘機)が150m毎秒(以下、m毎秒をm/sと表記する)で衝突した場合の壁・天井等の鉄筋コンクリート版の全体破壊の有無、②戦闘機F16が150m/sで衝突した場合のエンジン1基及びF4EJ改が155m/sで衝突した場合のエンジン2基相当によるエンジンの貫通・裏面剥離限界厚さのみを評価し、これを設計基準としている。
 しかしながら、本件再処理工場に墜落・衝突する可能性がある航空機は戦闘機に限られないし、また衝突速度は三沢対地訓練区域(天ヶ森射爆撃場)の訓練機の通常飛行コース・高度から「エンジン停止」で「グライダー状に滑空」した場合を想定した150m/sにとどまる保証は全くない。
 本準備書面においては、本件安全審査や設計及び工事方法認可で採用されている解析条件、計算方法に基づいて衝突する航空機の速度や重量を変化させた場合にどの程度の速度ないし重量で衝突すれば本件再処理工場の壁・天井が破壊されるかを明らかにし、それが現実にあり得る条件であることを示して、本件安全審査の誤りを指摘する。

第2 全体破壊の検討
 1 はじめに

 航空機が衝突した場合に、その航空機全体の荷重により壁・天井が大きく変形して、それが限界に達すると壁・天井が破壊されることになる。これを全体破壊と呼んでいる。
 全体破壊の解析は、解析コードにより行われ、その解析コードは公開されていないか一般人に使用が許されていないものであるために、これまでその検証が困難であった。
 しかし、コンピュータの能力の著しい向上と有限要素法解析ソフトの開発の進展により、市販の有限要素法解析ソフトによってもある程度その解析を追うことができるようになってきている。
 原告らは、東芝で原子炉格納容器の設計に携わり格納容器設計グループ長を務めた後藤政志氏に、本件再処理工場の設計及び工事方法認可の解析条件に基づき、衝突する航空機の速度及び重量を変化させた場合の天井スラブの歪み(ひずみ)及び変位の解析を依頼し、このほどその結果が得られた(甲D第174号証)。

 2 甲D第174号証の解析方法について
 甲D第174号証の解析は、市販の有限要素法解析ソフトANSYS-EDver.10を用いて行われた。
 全体破壊の解析は、衝突を想定する壁・天井の設計(版の寸法、天井で言えば壁・柱等の支持条件等)によって条件も結果も異なることになり、1つ1つの解析に相当な労力を要することから多数のか所について行うことができないため、本件再処理工場の高レベル廃液ガラス固化建屋の天井スラブのうち第6回設計及び工事方法認可申請書中の航空機に対する防護設計計算書で解析の概要が示されている1か所について行われた。
 天井スラブの版の寸法、支持・拘束条件、材料物性値等はすべて設計及び工事方法認可申請書中の航空機に対する防護設計計算書記載の通りの条件で解析した。有限要素法においてその精度上重要なメッシュの切り方については甲D第174号証の図1(設工認申請書のメッシュ)と図2(甲D第174号証の解析のメッシュ)を比較すればわかるように設工認よりも細かく切っているくらいである。
 他方、解析ソフトの仕様・限界により版内部のコンクリートと鉄筋を別々に扱うことができないため、天井スラブ内が均一の性質を持つものとして解析せざるを得ない。そのため、甲D第174号証の解析では、解析で求めるべき衝撃荷重による歪み・変位との関係で重要な曲げ剛性が、設計及び工事方法認可申請書中の航空機に対する防護設計計算書記載の厚さと鉄筋の径・配置を持つ鉄筋コンクリート版と等価になるような均一版の物性値(ここではヤング率)を理論的に求め、これを用いて解析を行っている(甲D第174号証14~17ページに、その理論的計算の過程が示されている)。
 甲D第174号証の解析では、この理論的に求めた等価ヤング率を用いて、設計及び工事方法認可申請書中の航空機に対する防護設計計算書と同じ条件の解析を行い、その結果、最大変位量、歪みとも航空機に対する防護設計計算書の解析結果に対し2割増し程度に収まることを確認し、理論的に求めた等価ヤング率が航空機に対する防護設計計算書の計算の再現に十分使用できることを確認している(甲D第174号証14ページ、19~20ページ)。
 なお、甲D第174号証の解析は、基本的には設計及び工事方法認可の際に行われた航空機に対する防護設計計算書の解析の再現であり、その再現に当たり解析条件の1つである衝突速度や航空機重量を変化させた場合に、解析結果である最大変位量や歪みがどの程度変化するかを確認するものである。つまり、甲D第174号証の解析は、航空機に対する防護設計計算書の解析を前提としそれが正しければその条件を変化させるとこうなるはずだということであり、独自に直接に解析結果を保証するという性質のものではない。後藤政志氏が甲D第174号証の中で「本解析がパラメータスタディであることから、ある程度変形が表現できれば、解析モデルの厳密性はそれほど重要ではない」(甲D第174号証10ページ)としているのはそういうことである。
 その上で、速度、重量を変化させる際には、航空機による荷重曲線(荷重の時刻歴)を、理論的な帰結に従い、重量が変化するときは荷重側に重量変化を乗じ、速度が変化するときは時刻側を速度変化で除すとともに荷重側に速度変化を乗じ、旅客機については機体長さが異なることから時刻側に機体長さ比を乗じるとともに荷重側を機体長さ比で除して求めている(甲D第174号証21~23ページ)。
 これらの条件に基づいて有限要素法を用いて本件再処理工場の設工認で行われている全体破壊の解析で衝突速度や重量を変化させた場合の最大変位量と歪みの変化を求めたのが甲D第174号証の解析である。

 3 解析結果
 機体重量20tの戦闘機について、衝突速度を変化させた場合の解析結果は次の通りである(甲D第174号証26ページ)
  
 ここでは、速度187.5m/s(150m/sの1.25倍)で最大圧縮歪みが(-)1%すなわち10000×10-6を超えていることが注目される。安全審査における全体破壊の判定基準は6500×10-6(いいかえれば0.65%)であり、甲D第174号証の解析がパラメータスタディの基本としている設計及び工事方法認可申請書中の航空機に対する防護設計計算書の解析について2割増しの数値となったことから解析結果は2割減で見るべきということを考慮しても、十分に安全審査基準を超えることになる。
 戦闘機について、衝突速度を150m/sで重量を変化させた場合の解析結果は次の通りである(甲D第174号証27ページ)。
  
 ここでも、機体重量30t(20tの1.5倍)で最大圧縮歪みが(-)1%に達していることが注目される。
 次に旅客機について、総重量325tの旅客機(ジャンボ機の標準的な重量)について速度を変化させた場合の解析結果は次の通りである(甲D第174号証28ページ)。
  
 ここでは、最大圧縮歪みが、速度150m/sでも(-)1%に達していることが注目される。
 旅客機について、衝突速度を222m/sとして総重量を変化させた場合の解析結果は次の通りである。
  
 ここではいずれの解析結果も、最大圧縮歪みが(-)1%を遥かに超えている。

 4 本件再処理工場の全体破壊条件
 甲D第174号証の解析結果を見ると、総重量20tの戦闘機においても衝突速度が187.5m/sに至れば、全体破壊の判定基準を十分に超え、また戦闘機において衝突速度が150m/sであっても総重量が30tに至れば全体破壊の判定基準を超えること、旅客機の場合は標準的なジャンボ機の重量では衝突速度が150m/sであっても全体破壊の判定基準を十分に超えることがわかる。
 後藤政志氏は、この解析結果について、設計者としての立場から、判定基準超えが直ちに現実の破壊を意味しないことを考慮して控えめに、戦闘機については20tで衝突速度200m/sでは限界歪みを遥かに超え、速度150m/sで30t以上では破壊してしまう可能性が極めて高くなる、標準的な重量の旅客機で衝突速度200m/s以上でほぼ確実に破壊すると考えられるとしている(甲D第174号証30ページ)。
 なお、甲D第174号証の解析が対象とした天井スラブは、直接には高レベル廃液ガラス固化建屋の天井スラブのうち第6回設計及び工事方法認可申請書中航空機に対する防護設計計算書で解析の概要が記載されている特定の1か所であるが、この版厚が120cmであり、本件再処理工場の主要建屋の天井スラブの版厚や航空機に対する防護設計計算書で解析されているか所の版厚が多くの場所で120cmないし125cmであることを考慮すれば、典型的なものに属すると考えられる。従って、本件再処理工場の別の建屋の天井スラブ等についても、同様の解析を行えば、これと大差ない結果となることが推測できる。

第3 局部破壊の検討
 1 はじめに
 航空機が建屋の壁・天井に衝突した場合、航空機全体の荷重による破壊の他に、比較的断面積が小さく硬い物体(航空機の場合はエンジン)が壁・天井を貫通して破壊し内部に到達する危険がある。これを局部破壊と呼んでいる。
 局部破壊については、貫通限界厚さ(エンジンが完全に貫通してしまう版厚)と裏面剥離限界厚さ(エンジンが貫通には至らないがエンジンの貫入の影響が壁・天井の反対側の面まで及び裏面が剥離する版厚)を特定の計算式により算出している。これらの計算式は、式中に含まれるデータさえそろえば1回の計算により求められる形になっているから、その気になれば関数電卓で計算することもできるし、エクセルで容易に算出することができる。
 これについては、専門家の手を煩わせるほどのことでもないので、原告ら訴訟代理人において、本件再処理工場の安全審査と設計及び工事方法認可で採用されている計算方法により、設計及び工事方法認可申請書の計算を再現するとともに、衝突速度のみを変化させた場合の計算を行った(甲D第175号証:私が作成した計算結果報告書)。

 2 貫通限界厚さについて

 本件再処理工場の設計及び工事方法認可申請書の「航空機に対する防護設計に関する説明書」では、エンジンの衝突による貫通限界厚さの計算方法を次のように説明している。

 本件再処理工場の設工認の計算では、Degen式の飛来物形状係数を無前提に0.72としている。0.72は飛来物の衝突面が「平坦」である場合の係数であり、エンジンが完全に水平か完全に垂直に衝突する場合であれば平坦と評価できるかもしれないが、ほとんどの衝突では斜めに衝突するはずであるからこれは明らかに過小評価につながる計算方法である。しかし、甲D第175号証の計算結果報告書では、そういった過小評価も含めて本件安全審査で用いられた計算方法を用いて計算した。
 もっとも、ここでDegen式で求められた貫通限界厚さに対して最終的に乗じられている0.65の柔飛来物低減係数は、Degen式自体に含まれるものではなく、本件再処理工場等(ウラン濃縮工場でも同様)の設計に用いられた独自の係数である。そして、この係数について、ウラン濃縮工場の安全審査の際の資料(被告は「メモ」と称してウラン濃縮工場の裁判で長きにわたりその存在を隠し続け開示を拒み続けていた)では、以下のように説明されていた。

 ここでは、柔飛来物低減係数は「速度が小さくなると低減効果が大きくなる傾向がある」とされ、衝突速度が150m/sのときの実験値の中央値が0.65、215m/sのときの実験値の中央値は0.75とされ、かつその中央値はグラフ上直線で表現されている。
 そうすると、本件安全審査や設工認では衝突速度がF16につき150m/s、F4EJ改につき155m/sとされたが故に、柔飛来物低減係数が0.65とされたに過ぎず、衝突速度がそれより大きくなれば上記ウラン濃縮工場の安全審査資料の図にそった柔飛来物低減係数が採用されるべきと考えられる。
 そこで、甲D第175号証の計算結果報告書では、Degen式による貫通限界厚さの計算後の柔飛来物低減係数については、安全審査の立場として、0.65に固定したものと、衝突速度が上がるにつれて漸増する(150m/sで0.65、215m/sで0.75の2点を結んだ直線上の数値を採用する)ものの2つの計算を示した(ウラン濃縮工場の安全審査資料を前提とすれば、安全審査の考え方としても、後者の方がより正しいはずである)。
 上記の計算方法により、柔飛来物低減係数を0.65に固定した場合とウラン濃縮工場の安全審査資料に従い漸増させた場合について、それぞれF16のエンジン1基の評価とF4EJ改のエンジン2基の評価を計算し、合計4パターンの計算結果を得た。
 柔飛来物低減係数を0.65に固定し衝突速度に安全審査の際に採用された速度(F16につき150m/s、F4EJ改につき155m/s)を入れたものでは設工認の計算結果と完全に一致した。その上で、衝突速度を変化させると、F16のエンジン1基の評価では、260m/sで115cmを超え、275m/sで120cmを超え、290m/sで125cmを超え、305m/sで130cmを超え、335m/sで140cmを超える。F4EJ改のエンジン2基の評価では、205m/sで115cmを超え、220m/sで120cmを超え、230m/sで125cmを超え、240m/sで130cmを超え、265m/sで140cmを超え、285m/sで150cmを超え、310m/sで160cmを超え、335m/sで170cmを超える(別紙1-1、別紙1-2↓)。


 柔飛来物低減係数をウラン濃縮工場安全審査資料に従い漸増させた場合は、F16のエンジン1基の評価では、215m/sで115cmを超え、225m/sで120cmを超え、230m/sで125cmを超え、240m/sで130cmを超え、255m/sで140cmを超え、270m/sで150cmを超え、280m/sで160cmを超え、295m/sで170cmを超え、310m/sで180cmを超え、335m/sでは200cmをも超える。F4EJ改のエンジン2基の評価では、190m/sで115cmを超え、195m/sで120cmを超え、200m/sで125cmを超え、205m/sで130cmを超え、220m/sで140cmを超え、230m/sで150cmを超え、245m/sで160cmを超え、255m/sで170cmを超え、265m/sで180cmを超え、290m/sでは200cmをも超える(別紙2-1、別紙2-2↓)。


 3 裏面剥離限界厚さについて
 本件再処理工場の設計及び工事方法認可申請書の「航空機に対する防護設計に関する説明書」では、エンジンの衝突による裏面剥離限界厚さの計算方法を次のように説明している。

 甲D第175号証では、この計算方法に基づき、入力式としては高レベル廃棄物貯蔵施設の安全審査資料に記載されているメートル法換算した式を用いて計算をした。
 本件再処理工場の設工認においてChang式に独自に付け加えられている「飛来物係数」については十分な説明がなく、とりわけ、F4EJ改についてはなぜ0.55を採用するのかについては何ら説明がなく、結果を操作する(F4EJ改のエンジン2基の評価でも基準をクリアする結果を出す)目的と疑われるが、甲D第175号証の計算結果報告書では、それでもなお、本件安全審査・設工認で行われたように、Chang式による裏面剥離限界厚さにあえてF16のエンジン1基では0.6、F4EJ改のエンジン2基の評価では0.55を乗じた数値を算出した。
 安全審査の際に採用された速度(F16につき150m/s、F4EJ改につき155m/s)を入れたものでは設工認の計算結果と一致した(F16について小数点以下で若干の差があったが端数処理レベルの問題と考えられる)。その上で、衝突速度を変化させると、F16のエンジン1基の評価では、155m/sで115cmを超え、165m/sで120cmを超え、175m/sで125cmを超え、185m/sで130cmを超え、205m/sで140cmを超え、225m/sで150cmを超え、250m/sで160cmを超え、275m/sで170cmを超え、295m/sで180cmを超え、345m/sでは200cmをも超える。F4EJ改のエンジン2基の評価では、150m/sですでに120cmを超え、155m/sで125cmを超え、160m/sで130cmを超え、180m/sで140cmを超え、200m/sで150cmを超え、220m/sで160cmを超え、240m/sで170cmを超え、260m/sで180cmを超え、305m/sでは200cmをも超える(別紙3-1、別紙3-2↓)。


 4 本件再処理工場の局部破壊条件
 本件再処理工場の事故想定において重要な意味を持つ主要建屋(建屋が破壊されたときに大量の放射性物質が漏洩しやすい高レベル廃液貯蔵建屋、精製建屋、分離建屋、前処理建屋等)の多くにおいては、航空機防護にあたって検討すべき壁・天井厚は125cmまでである。この版厚125cmの壁・天井は、柔飛来物低減係数をウラン濃縮工場の安全審査参考資料のデータによって漸増させた場合のF4EJ改エンジン2基の評価では200m/sで、同様の場合のF16のエンジン1基の評価及び柔飛来物低減係数を0.65に固定した場合のF4EJ改エンジン2基の評価ではいずれも230m/sで、最も評価が小さくなる柔飛来物低減係数を0.65に固定した場合のF16のエンジン1基の評価では290m/sでエンジンが貫通するに至る。(裏面剥離については、F4EJ改エンジン2基の評価では155m/sで、F16のエンジン1基の評価では175m/sで裏面剥離に至る)

第4 破壊条件の現実性:安全審査条件の非現実性
 1 高レベル安全審査資料の2段階想定

 本件再処理工場と並行して安全審査が行われていた高レベル放射性廃棄物貯蔵施設の第1次審査の資料に含まれていた「衝突速度条件の二段階設定にかかる問題点について」という文書(甲D第53号証)には、「安全上重要な施設のうち特に重要と判断される施設」については衝突速度を「三沢対地訓練区域で訓練飛行中の航空機に係る事故で発生すると考えられる最大速度とする」その最大速度の例としては、「1800m(国会答弁による高度)から滑空飛行するとして飛行特性に基づき求められた衝突速度(215m/s程度)」「23000ft(訓練区域の上限高度)から滑空飛行するとして飛行特性に基づき求められた衝突速度と音速(訓練区域では音速では飛行していない)のうち大きい方の速度(~340m/s)」とされていた。
 この第二段階衝突速度が、結局採用されなかった理由は、大幅な設計変更を要し工期が大幅に遅れることに加えて、ウラン濃縮工場で採用された衝突速度条件150m/sとの整合性、これまで衝突速度150m/sと説明してきたことを他の数値に変更するとPA(Public Acceptance)上大きな社会問題となり立地点としての適合性の問題がクローズアップされる、設計及びコスト面への影響が過大である、他の原子力施設での安全評価に影響を与える恐れがあるということにあった。
 すなわち、三沢対地訓練区域を間近に控える本件再処理工場においては、戦闘機が墜落衝突する場合の衝突速度として、その可能性自体からは215m/sないしはそれ以上が十分に考えられ、安全審査において検討すべきと、日本原燃自身あるいは行政庁も考えていたものである。

 2 F16の現実の墜落事例
 2009年10月15日午後8時24分、訓練中のF16同士が大西洋上で空中衝突し、1機が海上に墜落する事故が発生した。その事故機から完全な形で回収されたフライトレコーダーの記録では、海面衝突の瞬間(At impact)の対気速度は770ノット、機首の俯角は60°であった。1ノットは1852m/3600s≒0.514444m/sであり、770ノットは396.1222m/sにあたる。俯角が60°であるから、墜落時の速度の垂直成分は sin60°=0.866025を乗じて343.052m/sとなる。
 すなわち、2009年10月15日にアメリカで現実に発生したF16の空中衝突による墜落事故では地上面(この事故では海面)に達したときの衝突速度の垂直成分だけを見ても343m/sに達していたのである。このことからすると、同様の事故が発生して本件再処理工場の主要建屋の天井スラブ上にF16が墜落した場合、天井スラブへの衝突速度は343m/sとなるのである。

第5 まとめ
 第4に述べたところから明らかなように、本件再処理工場の主要建屋への航空機の墜落を想定する場合には、三沢対地訓練区域で訓練中の戦闘機がエンジン停止して滑空するという想定ですら215m/sが十分にあり得、F16の現実の事故例から見ても343m/sということが十分にありうるのである。
 そして第2及び第3で述べたところから、本件再処理工場の主要建屋は、総重量20tの戦闘機(F16を想定)が187.5m/sで衝突すれば全体破壊の判定基準を十分に超え、200m/s程度で全体破壊の危険があるとともに局部破壊の危険もあるのであるから、三沢対地訓練区域で訓練中の戦闘機がエンジン停止して滑空するケースでも局部破壊及び全体破壊の可能性があり、2009年10月15日に発生したF16の墜落事故と同様の事故が発生した場合には確実に全体破壊及び局部破壊が発生することになる。
 本件安全審査は、このような可能性をあえて無視し、日本原燃のコスト増や他の原子力施設を含めたPA上の問題に配慮して、純粋な安全性検討上は想定すべきであった衝突速度を想定しないこととしたものであり、いってみれば貞観津波の研究が進み10m超えの津波の可能性を指摘されてもさまざまな言い訳をして津波対策を進めなかった東京電力福島第一原子力発電所とそれを許容した原子力安全・保安院と同じ道を歩んでいるもので、不合理であり違法である。
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白菜 おばあちゃん と・・・・・

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