2012年8月13日月曜日

玉音放送



<編者追加史料>
終戦の詔勅
-玉音放送-
(1945.8.15正午)
http://homepage1.nifty.com/tukahara/manshu/syusensyousyo.htm
原 文口語訳(編者)
朕深ク世界ノ大勢ト帝國ノ現状トニ鑑ミ非常ノ措置ヲ以テ時局ヲ收拾セムト欲シ茲ニ忠良ナル爾臣民ニ告ク
 私は、深く世界の大勢と日本国の現状とを振返り、非常の措置をもって時局を収拾しようと思い、ここに忠実かつ善良なあなたがた国民に申し伝える。
朕ハ帝國政府ヲシテ米英支蘇四國ニ對シ其ノ共同宣言ヲ受諾スル旨通告セシメタリ 私は、日本国政府から米、英、中、ソの四国に対して、それらの共同宣言(ポツダム宣言)を受諾することを通告するよう下命した。
抑ゝ帝國臣民ノ康寧ヲ圖リ萬邦共榮ノ樂ヲ偕ニスルハ皇祖皇宗ノ遺範ニシテ朕ノ拳々措カサル所曩ニ米英二國ニ宣戰セル所以モ亦實ニ帝國ノ自存ト東亞ノ安定トヲ庶幾スルニ出テ他國ノ主權ヲ排シ領土ヲ侵スカ如キハ固ヨリ朕カ志ニアラス然ルニ交戰已ニ四歳ヲ閲シ朕カ陸海將兵ノ勇戰朕カ百僚有司ノ勵精朕カ一億衆庶ノ奉公各ゝ最善ヲ盡セルニ拘ラス戰局必スシモ好轉セス世界ノ大勢亦我ニ利アラス加之敵ハ新ニ殘虐ナル爆彈ヲ使用シテ頻ニ無辜ヲ殺傷シ慘害ノ及フ所眞ニ測ルヘカラサルニ至ル而モ尚交戰ヲ繼續セムカ終ニ我カ民族ノ滅亡ヲ招來スルノミナラス延テ人類ノ文明ヲモ破却スヘシ斯ノ如クムハ朕何ヲ以テカ億兆ノ赤子ヲ保シ皇祖皇宗ノ神靈ニ謝セムヤ是レ朕カ帝國政府ヲシテ共同宣言ニ應セシムルニ至レル所以ナリ
 そもそも日本国民の平穏無事を図って世界繁栄の喜びを共有することは、代々天皇が伝えてきた理念であり、私が常々大切にしてきたことである。先に米英二国に対して宣戦した理由も、本来日本の自立と東アジア諸国の安定とを望み願う思いから出たものであり、他国の主権を排除して領土を侵すようなことは、もとから私の望むところではない。
 ところが交戦はもう四年を経て、我が陸海将兵の勇敢な戦いも、我が多くの公職者の奮励努力も、我が一億国民の無私の尽力も、それぞれ最善を尽くしたにもかかわらず、戦局は必ずしも好転していないし、世界の大勢もまた我国に有利をもたらしていない。それどころか、敵は新たに残虐な爆弾(原爆)を使用して、しきりに無実の人々までをも殺傷しており、惨澹たる被害がどこまで及ぶのか全く予測できないまでに至った。
 なのにまだ戦争を継続するならば、ついには我が民族の滅亡を招くだけでなく、ひいては人類の文明をも破滅しかねないであろう。このようなことでは、私は一体どうやって多くの愛すべき国民を守り、代々の天皇の御霊に謝罪したら良いというのか。これこそが、私が日本国政府に対し共同宣言を受諾(無条件降伏)するよう下命するに至った理由なのである。
朕ハ帝國ト共ニ終始東亞ノ解放ニ協力セル諸盟邦ニ對シ遺憾ノ意ヲ表セサルヲ得ス帝國臣民ニシテ戰陣ニ死シ職域ニ殉シ非命ニ斃レタル者及其ノ遺族ニ想ヲ致セハ五内爲ニ裂ク且戰傷ヲ負ヒ災禍ヲ蒙リ家業ヲ失ヒタル者ノ厚生ニ至リテハ朕ノ深ク軫念スル所ナリ惟フニ今後帝國ノ受クヘキ苦難ハ固ヨリ尋常ニアラス爾臣民ノ衷情モ朕善ク之ヲ知ル然レトモ朕ハ時運ノ趨ク所堪ヘ難キヲ堪ヘ忍ヒ難キヲ忍ヒ以テ萬世ノ爲ニ太平ヲ開カムト欲ス
 私は、日本と共に終始東アジア諸国の解放に協力してくれた同盟諸国に対しては遺憾の意を表せざるを得ない。日本国民であって前線で戦死した者、公務にて殉職した者、戦災に倒れた者、さらにはその遺族の気持ちに想いを寄せると、我が身を引き裂かれる思いである。また戦傷を負ったり、災禍を被って家財職業を失った人々の再起については、私が深く心を痛めているところである。
 考えれば、今後日本国の受けるべき苦難はきっと並大抵のことではなかろう。あなたがた国民の本心も私はよく理解している。しかしながら、私は時の巡り合せに逆らわず、堪えがたくまた忍びがたい思いを乗り越えて、未来永劫のために平和な世界を切り開こうと思うのである。
朕ハ茲ニ國體ヲ護持シ得テ忠良ナル爾臣民ノ赤誠ニ信倚シ常ニ爾臣民ト共ニ在リ若シ夫レ情ノ激スル所濫ニ事端ヲ滋クシ或ハ同胞排擠互ニ時局ヲ亂リ爲ニ大道ヲ誤リ信義ヲ世界ニ失フカ如キハ朕最モ之ヲ戒ム宜シク擧國一家子孫相傳ヘ確ク神州ノ不滅ヲ信シ任重クシテ道遠キヲ念ヒ總力ヲ將來ノ建設ニ傾ケ道義ヲ篤クシ志操ヲ鞏クシ誓テ國體ノ精華ヲ發揚シ世界ノ進運ニ後レサラムコトヲ期スヘシ爾臣民其レ克ク朕カ意ヲ體セヨ 私は、ここに国としての形を維持し得れば、善良なあなたがた国民の真心を拠所として、常にあなたがた国民と共に過ごすことができる。もしだれかが感情の高ぶりからむやみやたらに事件を起したり、あるいは仲間を陥れたりして互いに時勢の成り行きを混乱させ、そのために進むべき正しい道を誤って世界の国々から信頼を失うようなことは、私が最も強く警戒するところである。
 ぜひとも国を挙げて一家の子孫にまで語り伝え、誇るべき自国の不滅を確信し、責任は重くかつ復興への道のりは遠いことを覚悟し、総力を将来の建設に傾け、正しい道を常に忘れずその心を堅持し、誓って国のあるべき姿の真髄を発揚し、世界の流れに遅れを取らぬよう決意しなければならない。
 あなたがた国民は、これら私の意をよく理解して行動せよ。

「・・・堪えがたきを堪え、忍びがたきを忍び・・・」
この断片だけはよく知られている玉音放送(終戦の詔勅)だが、
これまで全文を通して聴いた(読んだ)ことがなかった。
最近この文を全文読んで初めて、昭和天皇が心底いかに平和を希求していたかを知った。

あの戦争を始めてしまったこと、
そして最悪の結末に突き進みつつあるにもかかわらず、なお戦闘を止めようとしない軍部、
そしてそれに追隨せざるを得ない善良な国民たちの行動などに、
誰よりも心を痛めていたのが昭和天皇ご自身であったことが滲んでいる。

「・・・生きて虜囚の辱めを受けず・・・」
軍の掲げたこんな戦陣訓のもと、負けて生き延びることは許されないと任じた全ての国民は、
実に多くの犧牲を払わされた。

昭和天皇は、意に添わない戦争を押し進めた人たちが靖国神社に合祀されて以後、
靖国参拝を行っていない。
上掲の終戦の詔書からその御心を推し量れば、至極当然のことと思う。
2005.12.17-29
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プルトニウム微粒子1個の吸入でも2ミリシーベルト超の被ばくをもたらす

プルトニウム微粒子1個の吸入でも2ミリシーベルト超の被ばくをもたらす
原燃報告の「内部被ばくなし」には根拠がない


 日本原燃は7月3日付報告書で、作業員の糞中にプルトニウムがでなかったから内部被ばくもないと結論づけている。しかし、プルトニウム微粒子をただ1個だけ肺に吸い込み、それが口内に押し戻されずに肺にとどまるだけで、2mSv(ミリシーベルト)を超える内部被ばくをする。糞になくても肺にはある可能性、そのような可能性を原燃は頭から無視している。
 試料小皿から剥離・飛散して汚染と被ばくとをもたらしたプルトニウムは基本的に酸化プルトニウムであった。本来はごく微量の硝酸プルトニウムを焼きつけるはずだったその試料小皿には、大量の酸化プルトニウムがのせられ加熱され、桁違いに強い放射能を持つに至った。融点の高い酸化プルトニウムは十分に焼きつけることができずにあちこちに飛散したのである。
1.たった1個のプルトニウム微粒子が数mSvの被ばくをもたらす
 プルトニウムのアルファ線スペクトルが未公表なので飛散したプルトニウムの核種とそれらの組成は分からないが、燃焼度が30000MWD/Tであるような典型的な場合をとりあげよう。直径5ミクロンのプルトニウム酸化物微粒子の放射能は、α線だけで13Bq(ベクレル)程度になる。このような粒子を1個吸い込むと、それだけで約2.3mSv(ミリシーベルト)の被ばくに至る。つまり、日本原燃が最初予測した2mSv超の被ばくはたった1個の微粒子吸入で実現される。
 今回の被ばく事故をもたらしたプルトニウム酸化物は、これほどまでに放射能の強い粒子であった。したがって、バイオアッセイで糞中に放射能が見つからなかったからといって、内部被ばくが無かったとは絶対に言えない。1個の微粒子が肺の奥に入ってしまえば、数日間後の糞の中にそれが出てくることはないからである。ICRP-78にも記載されているように、酸化物の微粉末を吸引した後であっても、咽せ返すような生理反応によって気管から肺に入ろうとしていた粉末が口腔に戻り、食道から消化器系統に入ることは一般にはあり得るだろう。そして、消化器系からは非常に吸収されにくいプルトニウム微粉末が糞の中に見つかることはあり得る。ICRP-78のモデルは一定の割合で吸引したプルトニウムの一部は、最初の数日間はその一割程度が糞から検出されるであろうと予測している。原子状のガスか、あるいは、大量の微粉末が、被ばくをもたらす放射能の実体であったならばこのようなモデルは成立すると思われる。しかし、放射能の実体が極めて放射能の高い微粉末になると事態は一変する。たった1個の微粉末で数ミリシーベルトを超える内部被ばくが簡単にもたらされてしまうからである。内部被ばくがなかったと断定するのであれば、糞の中にプルトニウムがないことを示すだけでは不十分であり、肺の中にプルトニウム微粒子が1個もないことを確かめなければならない。
 わずか1個の微粒子が生涯にわたって肺や肝臓や骨表面を被ばくさせる。これこそが内部被ばくの恐ろしさ、危険性なのである。
2.原燃報告では、内部被ばくなしとは言えない
 プルトニウム微粒子の強い放射能強度にはもっと注意が払われるべきであるが、青森県の顧問である「専門家」はこれについて一切沈黙し、その一方で暴言を繰り返している。そして原燃の報告書にも、飛散したプルトニウム酸化物微粒子の危険性を記した箇所がない。
 それだけでなく原燃報告書には、事故に関係する設備や施設の写真は一枚もない。汚染源となった試料小皿の写真すらない。記されている放射能も全て評価値であって、その基礎になったはずの計測値は皆無であり、計測時間等の測定条件も記されていない。したがって、原燃が述べている放射能に関する量等を誰も検証することが出来ない。汚染したプルトニウムの組成を把握するために必要な、計測していたアルファ線スペクトルは未公開。鼻スミヤの測定値や測定条件も未公開。バイオアッセイ法で採取した糞の重量、その化学処理方法、放射能測定の測定値と測定条件も未公開だ。被ばく線量はICRP-78等を参考にして、直径5ミクロンの粒子を考えているというが、いわゆる「公式」として示されているだけであって、被ばくの実態を解明するために必要な、飛散したプルトニウムの化学形や粒子サイズの実測データはない。それらについての議論もどこにも示されていない。
 このような無内容な報告書に対し、原子力安全・保安院は書きなおしを指示していた。それに対し原燃は7月11日に「調査結果の補正について」を公表した。これは、「内部被ばくなし」の判断の不備にはまったく何も触れていない。ただ、運転員等の技術・技能の資格更新を改善するというだけのものだ。報告書をあれだけ酷評した保安院はこれを黙って受け入れるのだろうか。

補 足 説 明
(1)飛散したプルトニウムは基本的に酸化プルトニウムである
 試料は本来、ほとんどが酸化プルトニウムである溶液から酸化プルトニウムを除いて(4価のプルトニウムを除いて)、わずかに残る硝酸プルトニウム(3価のプルトニウム)をチェックするためにつくられるはずであった。ところが、酸化プルトニウムを除くための前処理が省略されたため、大量の酸化プルトニウムを試料皿に焼付けることになった。融点の高い酸化プルトニウムでは焼付けがうまくいかず、酸化プルトニウムが粉末状の微粒子になって飛び散ったと考えられる。それゆえ、ここでは吸入した微粒子は酸化プルトニウム(タイプS)であると想定する(原燃は被ばくを高めに評価するためにタイプMの硝酸プルトニウムを想定している)。
(2)直径5ミクロンのプルトニウム粒子の放射能とそれによる被ばく評価
 ここでは原燃が報告書で採用している直径5ミクロンの酸化プルトニウム粒子について、燃焼度30000MWd/tの場合を考察する。Am241はないとし(あると効果は相当に高くなるが)、Pu238,239,240のアルファ線による効果を考える。Puの密度10.1g/cm3を用いると、5ミクロン粒子のPu全重量は6.61×10-10gとなる。
 燃焼度30000MWd/tで、存在比率をPu238:Pu239:Pu240:Pu241=0.0254:0.6097:0.2502:0.1147とし、各半減期を用いて重量(g)をBq単位に直すことができる。そうすると、Pu238=10.64Bq、Pu239=0.926Bq、Pu240=1.39Bq、合計13.0Bqとなる(Pu241は無視できる)。つまり5ミクロンの微粒子1個は約13Bqのアルファ放射能である。
 さて、次にこの微粒子1個を肺に吸入したときの預託等価線量を計算しよう。それは、指針「核燃料施設の立地評価上必要なプルトニウムに関するめやす線量について」を適用すれば可能となる。指針第4表で、直径1ミクロンの酸化プルトニウムを1回吸入したとき、それが1Bqであったときに50年間にどれだけ被ばくするかという数値が書かれている。骨表面、肺、肝の合計値で書くと、その1BqのPuがPu238、Pu239、Pu240であったときの値がそれぞれ0.29mSv、0.31mSv、0.31mSvとなる。この数値はBqをmSvに直す換算係数となる。ただしこれは直径1ミクロンの場合であり、直径が5ミクロンの酸化プルトニウムの場合は、この換算係数に0.6をかけることになる(指針第1表)。
 前記のBq単位の各数値にこれらの係数をかけて計算すると、
      (10.64×0.29+0.926×0.31+1.39×0.31)×0.6=2.3(mSv)
が得られる。結局、5ミクロンの微粒子1個の吸入で生涯に2.3mSvの被ばくをすることになる。
(3)微粒子の放射能が0.7Bqの場合
 鼻スミヤで鼻孔から0.7Bqが検出されていることから、参考までに、1個の微粒子が0.7Bqである場合を考えておこう。この場合の微粒子の直径は1.89ミクロンとなる(鼻孔に0.7Bqでも、肺には5ミクロンが入ることも十分考えられるが)。これから(2)で行ったのと同様の計算をすると、0.7Bq微粒子1個の吸入によって0.19mSvの被ばく線量となる(この場合、1ミクロンの場合の換算係数に対し0.6ではなく0.91倍することになる)。
 仮に存在するのがこの径の微粒子ばかりだとすると、11個を吸入すると2mSvを超えることになる。11個が肺に入って口にでないからと言って、それが不自然だと言えるだろうか。

2012年8月12日日曜日

食品安全委員会の答申「生涯累積被曝量100ミリシーベルト」のいいかげんさ


EX-SKF-JPさんのブログより


食品安全委員会の答申「生涯累積被曝量100ミリシーベルト」のいいかげんさ

内閣府の食品安全委員会が、
食品に含まれる放射性物質からの内部被曝の生涯累積線量
100ミリシーベルトとする答申を正式に提出したニュースはご存知かと思います。(まだの方は、読売新聞10月27日付け記事ご参考。)

メディアは、これで暫定基準値が大幅に引き下げられ厳しい基準値になる、
と報道しています。とくに読売などは、
セシウムの暫定基準値が年間5ミリシーベルトの内部被曝を前提にした値だ、
と(おそらく新聞としては初めて)認めています。
(ちなみにヨウ素の暫定基準値は2ミリシーベルト被曝を前提です。
このブログの読者の方々はご存知でしたよね。念のため、4月25日ポストご参照。)

福島事故前の日本では、食品からの自然内部被曝(主にカリウム40)は
年間平均0.41ミリシーベルトでした。
今回の食品安全委員会の答申は、
この自然内部被曝に付け加えての数字です。
しかも、自然内部被曝の半分を占めていたラドンの
吸引による自然内部被曝年間0.45ミリシーベルトに付け加えて、
原発から出た放射性物質の吸引はまったく考慮に入れていません。
(日本の平均放射線被曝量については、
9月4日のポスト『日本の人工放射線被曝、世界平均の5倍以上』をご参照。)

従来の食品(カリウム40)、ラドン吸引からの自然内部被曝はそのまま、それプラス年間ベースで1ミリシーベルト以上、しかも外部被曝、医療被曝は考慮に入れていない、となると、年間で
従来の自然被曝: 1.45ミリシーベルト(日本平均)
人工被曝(食品のみ): 1.43ミリシーベルト(今回の答申による限度; 70年の余命として計算)
人工被曝(福島原発事故由来の放射性物質吸引): ???
人工被曝(福島原発由来の放射性物質からの外部被曝): ???
医療などの人工被曝: 2.35ミリシーベルト(日本平均;世界平均の5倍以上、工業国平均の2倍近く。法律で決められた限度は現在ではまだ年間1ミリシーベルトです)
限度まで食品からの被曝をする、と仮定すると、今回推定すらされていない吸引による内部被曝、追加の外部被曝を加えた年間の被曝は、結構大変な数字になりそうです。

福島原発由来の放射性物質による外部被曝、吸引による内部被曝の推定値すら出さず、食品だけで生涯100ミリシーベルトまでOK、というのは、無責任、としか言いようがありません。

加えて更に無責任なことに、子供は放射能の影響を受けやすい「可能性」がある、としながらも、子供の被曝量については触れず、厚生労働省などの政府機関が検討すべきこと、と逃げています(読売新聞)。

食品安全委員会は、答申の考え方、根拠をまとめた1ページの資料を出しています。

これをベースにした答申で、食品からだけで生涯100ミリシーベルト(非常時、平常時共通)の被曝までOKになるわけです。
資料を見た私の疑問:
  • インドの高線量地帯にずっと住んでいる人々に発ガンリスクの増加なし
いったいどこと比べて増加なしなんでしょうか?インドの他の地域?それとも、同じ場所の経年比較?ずっと住んでいる人々の経年比較しても意味が無いので前者だとは思いますが、そうだとしても、「だからどうした」が私の反論。ガンにさえかからなければOKなのでしょうか?また、この地域の人の平均寿命はどれくらいなのか、ガン以外の病気はどのように発生しているのか、一切情報なしで、ただ高線量地帯にすむ外国人に発ガンリスクが増加していない、といわれて、ああそうですか、と安心する人はよほど情報が無い日本人です。
  • 100ミリシーベルトで統計的に有意な[がんによる死亡リスク]増加は見られない(原爆被ばく者)(左下の図)
ここでもがんだけが考慮に挙がっています。また、統計的に、と言いますが、原発事故から発生した放射性物質の中で生活を続ける中での健康への被害が統計的に捕らえられたのはチェルノブイリ事故後の調査でしょう。原発ではなく。
更に、この図は生涯全被曝量であるはずです。委員会の答申は食品による人工内部被曝のみ。この図をみると、委員会の答申の100ミリシーベルトがいかにも害がなさそうに思えますが、食品からの内部被曝だけで100ミリということは、ほかを付け加えたら生涯全被曝量はインドの高線量地帯をおそらく越えるでしょう。
  • 100ミリシーベルト未満の健康影響について言及することは現在得られている知見からは困難
専門家が投げ出したら一般人はお手上げ。もう専門家に頼る必要はないと言うことですね。頼りようがないですから。健康影響がある、と言ったら各方面にまずいけれども、健康影響がない、と言って万が一影響があった、となると将来問題になるから逃げる、という姿勢でしょうか。それは政治家の姿勢であって科学者ではない気がするのです。
ちなみに、食品安全委員会のメンバーはこの方々。常勤4名、非常勤3名、合計7名の方々による答申が、新たな日本の法律になります。
インドの累積被曝量500ミリシーベルトを何気なく出していることを見ると、委員会のメンバーの方々も、人工内部被曝、人工外部被曝、自然被曝、医療被曝、全部合算した数字はこれに近いのではないか、と潜在的に思っていらっしゃるのかもしれません。(だったらそうはっきり言うのが科学者ではないかとは思いますが。)

2012年8月11日土曜日

1万5千カ所に摩耗 三菱重工製の米原発機器


1万5千カ所に摩耗 三菱重工製の米原発機器

2012.7.13 14:41 原発
米カリフォルニア州のサンオノフレ原発=2011年3月(共同)
米カリフォルニア州のサンオノフレ原発=2011年3月(共同)
 米カリフォルニア州にあるサンオノフレ原発2、3号機の蒸気発生器の細管に「異常な摩耗」が多数見つかった問題で、米原子力規制委員会(NRC)は12日、摩耗の数は約1万5千カ所に達したとの調査結果を公表した。
 蒸気発生器は三菱重工業製で、同社の設計に問題があった可能性が高いことがこれまでのNRCの調査で明らかになっている。今回は、トラブルが深刻なことを示す内容で、原発反対派からは「同原発の運転を再開するべきではない」との声が強まっている。
 蒸気発生器は原子炉で温められた水の熱を外部に伝えて、タービンを回すための蒸気を発生させる機器で、多数の細管で構成される。傷つきやすく、加圧水型軽水炉の“アキレスけん”ともいわれる。(共同)


納入前に損傷、米原発の三菱重工業製蒸気発生器で

2012.2.28 19:02
 米カリフォルニア州南部のサンオノフレ原発3号機で、1月末に放射性物質を含んだ水漏れを起こした三菱重工業製の蒸気発生器は納入前の2009年にも溶接部にひび割れや傷が見つかり修理していた部品のあることが米原子力規制委員会(NRC)の文書で28日、分かった。
 同原発では、2号機の三菱重工製の蒸気発生器でも2月上旬、細管に異常な摩耗が多数見つかるなどトラブルが相次いでいる。
 科学者でつくる「憂慮する科学者同盟」のエドウィン・ライマン博士は「運転方法に問題があるか、製造段階から欠陥があったのではないか」と指摘。三菱重工と、原発を運営するサザン・カリフォルニア・エジソン社はともに「調査中でコメントできない」とした。
 蒸気発生器は多数の細管で構成され、加圧水型原発の“アキレスけん”ともいわれる。(共同)

東電の手に余る事態=米原子力規制委員会の日本調査団トップ


東電の手に余る事態=米原子力規制委員会の日本調査団トップ

Japan Real Time



Chuck Casto
米原子力規制委員会(NRC)の日本調査団責任者、チャック・カスト氏
米原子力規制当局のベテランスタッフ、チャック・カスト氏は2011年3月16日、日本に降り立った。福島第1原発の現状を把握し、その問題解決を手助けするという極めて難しい任務を負っていた。
米原子力規制委員会(NRC)の本部と現場スタッフとの電話会議の内容が21日、公表されたが、その中で主役を演じていたのがカスト氏だ。
東京に派遣されたNRC調査団を統括していたカスト氏は、ほぼ寝る間もなく、しばしば厳しいコメントを交えながら上司に東京電力の初動対応に関する報告を行った。
「東電の手には負えない状態だ。東電の手に余る事態だ」と、カスト氏は米国時間3月16日遅くにこう述べた
カスト氏とその他米当局者は、使用済み燃料プールに自衛隊ヘリで注水するという東電の初期の試みを、最初から成功の見込みはなかったと批判した。米国時間3月17日、カスト氏は本部に「彼らのようにやみくもに解決策を講じるようなことはしたくない」と述べた
カスト氏は、福島第1原発4号機の燃料プールの水がなくなり、放射性物質が放出される公算が大きいと繰り返し主張し、米政府が原発から50マイル(約80キロメートル)圏を避難区域に指定する上で中心的役割を果たした。
カスト氏は21日にジャパン・リアル・タイムの取材に応じ、燃料プールの水位を示す証拠として日本が唯一提示できたのは、日本サイドが引き渡しを拒んだビデオの静止画数枚だけだったと語った。静止画は燃料プールに水が光っていることを示すもののようであったが、カスト氏は納得できなかった。
「わたしは『見えない』と言ったし、実際に見えなかった」と、カスト氏は当時を思い出しながらインタビューでこう述べた。カスト氏は、燃料プールが破壊されているようみえる米国側が示した証拠の方をより信頼していた。
会議記録の中でカスト氏は「私はプールには水がないと一段と確信している。職を賭してもいい」と述べている。
Bloomberg News
2月20日、福島第1原発で原子力安全・保安院による安全検査を受ける東電当局者
最終的に日本は燃料プールには常時水があったとの結論を出した。カスト氏はその点に関して部分的に認めたものの、4号機の問題は東電がとらえているよりもずっと深刻であった可能性があると今も考えていると語った。
「結果はまだ分からない。燃料を取り出してみるまでは、何が起こっていたかは判断できない」とカスト氏は述べた。
また、燃料プールの損傷への懸念を生じさせる原因となった3月15日の4号機建屋の爆発についても、3号機の水素漏れを原因とする東電の説に疑問を呈した。
「わたしからしてみれば依然証拠がない」と、カスト氏は述べ、4号機の燃料棒の損傷が爆発の引き金となった可能性もあるとした。
カスト氏は、事故発生から10日目以降の東電の対応については、はるかに高い評価を示した。米国側は3月22日ごろからは日本政府の高官級当局者と日々の会議で連絡を取り合えるようになった。
カスト氏によると、NRC調査団は日本の事故収束に向けたロードマップ(工程表)作りを手助けし、そのおかげで、ようやく昨年12月に冷温停止状態を宣言できるまでに至った。
「彼らは一時は打ちのめされ立ち上がれないような状態だったが、再び立ち上がり、歩いたり、走り回ったりし始めた」と、カスト氏は述べた。
カスト氏は、数回にわたる短期間の帰国を除いて、2月2日まで日本に常駐し、国際原子力機関(IAEA)による日本の原子炉に対する「ストレステスト(耐性評価)」の評価を手伝った。カスト氏は先日、NRCのトップ職の1つ、リージョンIIIのシカゴ在勤の行政官に任命された。
カスト氏は今回の経験から次の教訓を学んだ。
「トップとできるだけ早く話をすること」

日本の原発事故で米の惰報に混乱=NRC文書


米NRC、原発認可手続きを停止

米原子力規制委員会(NRC)は7日、最近の連邦控訴裁判所の判決で提起された使用済み核燃料政策の問題への対応ができるまで、原子力発電所建設の認可手続きを停止すると発表した。
Getty Images
今年1月に水漏れが起きたサンオノフレ原子力発電所(米カリフォルニア州)
 この措置が直ちに原発に影響を与えるとは予想されていないが、米国の使用済み核燃料の恒久的な処理場を見いだせないでいることが原子力エネルギー拡大を阻害していることを示している。原発は既に安価な天然ガスによって難問を突きつけられている。
 コロンビア特別区巡回控訴裁判所は6月、NRCの使用済み核燃料への対応は連邦環境基準に合致していないとの判断を示した。この判決が出るまではNRCは、新規原発を認可したり、既存原発の認可を延長する際にはいわゆる「廃棄物信頼性決議(Waste Confidence Decision)」に依拠していた。同決議に従ってNRCは、政府は最終的に恒久的な処理場を設けると信頼していることを理由に認可してきた。
 しかし、オバマ政権がネバダ州のユッカマウンテンに処理場を作る計画を打ち切ったことから、こうした見方に疑問が出てきた。
 控訴裁判所は、必要になれば最終処理場が建設されると見るべき「合理的な保証」があるとしたNRCの見解を退けた。また、使用済み核燃料は原発の認可期間を超える60年間にわたり、プールあるいはキャスク(使用済み燃料用容器)の中で安全に貯蔵できるだろうとするNRCの主張も認めなかった。同裁判所は、プールからの漏れはこれまで害がなかったとNRCが考えたとしても、NRCはこれまで以上の漏れやその他の事故の可能性とその結果を評価しなければならないとした。
 NRCの7日の措置により、原発認可の決定は1年ないしそれ以上遅れる可能性がある。その期間は、裁判所が指摘した問題の解決にどの程度時間がかかるかによる。年内は認可決定はないとみられる。ただ、複数年にわたる遅延が起きても、既存原発が閉鎖される事態にはならないだろう。認可期限の少なくとも5年前に延長を申請する限り原発は運転を続けられる。
 環境保護活動家らは、使用済み核燃料の専門家であるマクファーレン新NRC委員長の最初の重要なステップであるこのNRCの決定を歓迎している。環境保護グループ、パブリック・ジャスティスのリチャード・ウェブスター氏は、使用済み核燃料に関する既存のシステムが十分だという「錯覚」の下でNRCが運営されることを認めようとしていない、と述べた。この問題でいくつかの市民グループの代表を務めている弁護士、ダイアン・カラン氏は、NRCは「たくさんの宿題」を抱え込んだとし、1年間で対応できるとは思えないと話した。
 一方、原発業界の業界団体である原子力エネルギー協会(NEI)のゼネラルカウンセル、エレン・ギンズバーグ氏は、控訴審の判断によって今回のNRCの決定は不可避だったと指摘した上で、連邦政府は電力会社の使用済み核燃料問題を解決するための「法令上の義務を果たしていない」と強調した。
 NRCの広報担当者によると、NRCスタッフは今後数週間のうちに、判決に対処するためのいくつかの選択肢をNRCの5人の委員に送るという。
 原発運営会社はこれまで、使用済み核燃料は長期間置いておいても安全であることを請け合うために、原発敷地内での貯蔵を増やす用意があるとしている。これらの企業は、NRCがこの方法を選択すれば、これが業界全体の基準になるだろうと期待している。
 環境保護活動家らは、プールの漏れや、火災などでプールの水が沸騰して蒸発したり、流出したりする危険性があるとしている。こうした懸念は福島第1原発事故のあと、一段と深刻なものとなった。






2012年8月10日金曜日

放射線障害

放射線障害


電離放射線は,放射線の種類,ならびに暴露の量および程度に応じて,多様な組織損傷をもたらす。症状は,局所的(例,熱傷)であることも,全身的(例,急性放射線症)であることもある。診断は暴露歴により,およびときにガイガーカウンターやアルファカウンターを用いて行う。治療は逆隔離と(適応とされる場合)除染によるが,それ以外にも広く支持療法を行う。特異的な放射性核種による体内汚染の治療では,吸収阻害剤やキレート剤が有用なことがある。予後は,初めの24〜72時間にリンパ球数を測定することによって推定される。

放射線とは,放射性元素や人工線源(例,X線装置や放射線治療装置)により放射される高エネルギーの電磁波(X線,ガンマ線)や粒子(アルファ粒子,ベータ粒子,中性子)を指す。

アルファ粒子は,様々な放射性核種(例,プルトニウム,ラジウム,ウラン)により放射されるヘリウム核で,薄い層(0.1mm未満)を越えて皮膚を透過できない。ベータ粒子は,不安定な原子(例,セシウム137,ヨウ素131)の核から放射される高エネルギーの電子である。この粒子はより深く皮膚(1〜2cm)を透過でき,上皮および上皮下の損傷をもたらす。中性子は,いくつかの放射性原子の核からはじきとばされた電気的に中性の粒子であり,核反応(例,原子炉,リニアック)によって生成される;中性子は組織へ深く透過し(2cm以上),その場で安定の原子と衝突した結果,アルファ粒子やベータ粒子およびガンマ線が放射される。ガンマ線およびX線は高エネルギーの電磁放射線(すなわち,光子)であり,何cmもヒトの組織中へ進入できる。

こうした特徴により,アルファおよびベータ粒子は,それらを放射する放射性元素が身体の内部(体内汚染)や直接体表上にある場合に,最も大きな損傷をもたらす;元素に近接する組織のみが侵される。ガンマ線およびX線は,線源から遠く離れて損傷を引き起こすことがあり,一般的に急性放射線症候群(放射線障害: 急性放射線症候群を参照 )の原因となる。

測定: 測定単位にはレントゲン,グレイ,シーベルトがある。レントゲン(R)は,大気中のX線やガンマ線の強度を示す。グレイ(Gy)は,組織によって吸収されたエネルギーの量である。Gy当たりの生物学的損傷は放射線の種類によって変わるため(中性子およびアルファ粒子で大きい),Gyでの線量は線質計数により補正される;これにより求まる単位がシーベルト(Sv)である。GyおよびSvは,ラドとレムに代わる現在の用語であり(Gy= 100ラド;Sv = 100レム),ガンマ線やベータ線を表すときは基本的に等しくなる。

暴露: 2つの主な放射線暴露のタイプは,汚染と被曝である。多くの放射線事故が両方を含む。

汚染は,放射性物質(通常は塵埃や液体として)との接触およびその滞留である。体外汚染は皮膚や衣服上に起こり,そこから落下したり,はがれ落ちたりして,他の人々や物体を汚染することがある。放射性物質はまた,肺,胃腸管,または皮膚の裂け目から吸収されることがある(体内汚染)。吸収された物質は体内の多様な部位へ運ばれ(例,骨髄),除去されるか崩壊するまでその部位で放射線を放出し続ける。体内汚染は除去がより困難である。

被曝は透過性放射線への暴露であるが,放射性物質への暴露ではない(すなわち,汚染は関連しない)。典型的には,ガンマ線およびX線が関連する。被曝は,全身に影響して全身症状および放射線症候群(放射線障害: 急性放射線症候群を参照 )を引き起こしたり,身体の一部(例,治療的照射による)に影響して局所症状を引き起こすことがある。

線源: 人は常に低レベルの自然放射線(バックグラウンド放射線)に被曝している。バックグラウンド放射線には宇宙線があるが,その大部分が大気によってブロックされている;したがって,被曝は高所に住んでいる人や飛行機に乗っている人で大きくなる。放射性元素(特にラドンガス)はまた,多くの岩や鉱物中に存在する。これらの元素は最終的には,食品や建設資材など各種物質中に含まれる。ラドン被曝は典型的には,自然放射線総線量の約23を占める。

人はさらに,核兵器(例,実験中に)および各種の医学的検査や治療など,人工線源からの放射線にもさらされる。一般人は,自然および人工の線源から合計して3〜4mSv/年を受けている( 放射線障害: 米国における平均年間被曝量表 1: 表を参照)。

表 1
米国における平均年間被曝量
線源
線量(mSv)
天然に存在する線源
ラドンガス
2.00
その他の地球放射線源
0.28
宇宙空間からの放射線
0.27
天然に存在する体内放射性元素
0.39
小計
2.94
人工線源
診断用X線(一般人に対する)
0.39
核医学
0.14
消費財
0.10
核実験による放射性降下物
<0.01
原子力産業
<0.01
小計
0.63
合計年間被曝量
3.6
その他の被曝源
飛行機旅行
0.005/飛行1時間
歯科用X線
0.09
胸部X線
0.10
バリウム注腸
8.75

1979年のペンシルベニア州スリーマイル島発電所,1986年のウクライナのチェルノブイリ発電所など,原子力発電所から放射線が漏れたことがある。スリーマイル島からの放射線による被曝は非常に少なく,発電所から1.6km以内の住人が受けた線量は約0.08mSvに留まった。しかしながら,チェルノブイリ発電所近くの住人は,約430mSvの放射線に被曝した。30人以上の死者が出て,多くの人々が障害を受け,同事故で放出された放射線は他のヨーロッパ地域,アジア,および米国まで達した。全体で(チェルノブイリを除き),核燃料の使用が始まってから40年間のうちに,原子炉が原因の放射線被曝は,35件の重篤な被曝と10件の死亡をもたらしているが,このうち商業用発電所に関連するものはない。その他の重大な出来事として,1945年8月の日本への原子力爆弾投下があり,これによる直接的な爆風により100,000人以上,放射線障害および他の関連障害により数十万人の死者が出た。

テロリスト活動による意図的な被曝が懸念される。考えられうるシナリオは,爆発物を用いない放射性物質の小規模な拡散から,通常の爆発物を用いた拡散(“ダーティボム”),原子炉の攻撃,そして核兵器の投下まで,幅広い。

病態生理

電離放射線は,mRNA,DNAおよび蛋白を直接的に,および反応性に富むフリーラジカルを産生して損傷させる。高線量の電離放射線は細胞死を引き起こし,低線量は細胞増殖を妨げる。他の細胞成分への損傷により,進行性の形成不全,萎縮,および最終的には線維症が生じうる。遺伝子の損傷により,悪性形質転換や遺伝性の遺伝子欠損がもたらされることがある。

正常の場合に頻繁および迅速な再生をすすめる組織は,特に放射線に脆弱である。最も感受性が高いのはリンパ球で,以下(高い順に),性腺,増殖骨髄細胞,腸上皮細胞,表皮,肝細胞,肺胞および胆管の上皮,腎上皮細胞,内皮細胞(胸膜と腹膜),神経細胞,骨細胞,筋肉および結合組織の細胞が続く。

毒性作用を起こす正確な線量は,被曝の時間経過に依存する(すなわち,数Gyという線量を短時間に1回受けるのは,同じ線量を数週間や数カ月かけて受けるよりも大きな損傷を及ぼす)。線量反応はまた,被曝した体面積の量に依存する。4.5Gy以上による全身的な被曝を受けると,重篤な病気が確実で,死亡する;しかしながら,数十Gyでも長期間かけて組織の小部分に照射される場合(例,癌治療のため)は,十分耐容されうる。

小児は最も放射線障害を受けやすいが,それは,細胞増殖率が高く,将来の細胞分裂の数が多いためである。

症状と徴候

症状は,被曝が全身(急性放射線症候群)に及ぶか,それとも局所かに依存する。

急性放射線症候群: 全身被曝後にはいくつか独特な症候群が生じる。これらの症候群には,3つの異なる段階がある:侵される主要臓器系により,嗜眠,悪心,嘔吐を伴う前駆期(被曝0〜2日後),潜在的無症候期(被曝1〜20日後),顕性全身疾患期(被曝2〜60日後)に分類される。放射線量が高いほど,進行が激しく急速である。特定の放射線量に対して,症状および経過はほぼ一致する;したがって,被曝線量の推定に利用できる。

非常に高い全身被曝線量(10Gy以上)により生じる大脳症候群は,常に致死的である。前駆症状は,被曝して数分〜1時間以内に発現する。潜伏期はほとんど,または全くなく,患者は数時間〜1または2日以内に振戦,発作,運動失調,脳浮腫を発現し,死亡する。

胃腸症候群は,4Gy以上の全身線量により引き起こされ,胃腸管への影響が主体となる。前駆症状がしばしば顕著で,2〜12時間以内に発現し,2日以内に消失する。潜伏期の4〜5日の間,胃腸粘膜細胞が死滅する;細胞死の後に難治性の悪心,嘔吐および下痢が現れ,これにより重症の脱水および電解質平衡異常,血漿量減少,血管虚脱に至る。さらに腸壊死が起き,菌血症および敗血症の素因となることがある。死亡することが多い。生存者には造血症候群も生じる。

造血症候群は,2Gy以上の全身被曝線量により起こる。軽度の前駆症状が6〜12時間後に始まり,24〜36時間持続することがある。骨髄細胞はすぐに影響を受け,早期にリンパ球減少症が生じる(24〜36時間以内に最大)。しかしながら,1週間以上続く潜伏期の間は,骨髄産生は低下しつつも患者は無症状のままである。好中球減少(2〜4週間で最も顕著)により多様な感染症が生じ,抗体産生の低下,血小板減少(3〜4週間以内に発現し,数カ月間持続することがある)による点状出血や粘膜出血が起こる。被曝前から存在していた赤血球の寿命は白血球および血小板より長いため,貧血は緩徐に発現する。生存者で白血病の発生率が高まる。

局所障害: ほぼ全ての臓器で,照射により急性と慢性の両方の有害作用がもたらされる可能性がある。大部分の患者において,これらの有害作用は放射線治療により生じる( 放射線障害: 局所的放射線障害*表 2: 表および癌治療の原則: 放射線療法を参照 )。

表 2
局所的放射線障害*
被曝組織
有害作用
心血管系
胸痛,放射線心外膜炎,放射線心筋炎
皮膚
強い灼熱感や刺痛を伴う局所の紅斑,乾燥症,角化症,毛細血管拡張症,小水疱形成,脱毛(被曝して5〜21日以内)
線量> 5Gy:湿性壊疽,潰瘍形成
長期作用:進行性の線維症,扁平上皮癌
性腺
線量 0.01〜0.015Gy:精子形成能低下,無月経,性欲減退
線量5〜6Gy:不妊
頭頸部
粘膜炎,嚥下痛,甲状腺癌
筋骨格
筋障害,腫瘍性変化,骨肉腫
線量0.2Gy:白内障
放射線肺炎
線量> 30Gy:ときに致死的となる肺線維症
FR低下,尿細管機能低下
高線量(6カ月〜1年の潜伏期):蛋白尿,腎不全,貧血,高血圧
累積線量5週間未満に> 20Gy:放射線線維症,乏尿性腎不全
脊髄
線量> 50Gy:脊髄症,神経機能障害
胎児
成長制限,先天性奇形,先天性代謝異常,癌,胎児死亡
*典型的には放射線治療による。

診断

急性被曝後に行う検査は,血液化学検査,尿検査,およびCBCと白血球分画などである。輸血や造血幹細胞移植が必要な場合,型と適合性の検査を行いHLAタイピング用の血液を採取すべきである。被曝から24,48,および72時間後にリンパ球数を調べ,最初の放射線量と予後を推定すべきである( 放射線障害: 48時間時のリンパ球数,放射線量*,および予後の関連性表 3: 表を参照)。骨髄活性をモニタリングするため,毎週,および臨床経過に基づき必要な場合に繰り返し,CBCを測定する。

表 3
48時間時のリンパ球数,放射線量*,および予後の関連性
最低リンパ球数(個/μL)
放射線量(Gy)
予後
1500(正常)
0.4
非常によい
1000–1499
0.5–1.9
よい
500–999
2.0–3.9
普通
100–499
4.0–7.9
悪い
< 100
8.0
ほとんど常に死亡
*全身被曝(おおよその線量)。
Adapted from Mettler FA Jr, Voelz GL: Major radiation exposure—what to expect and how to respond. New England Journal of Medicine346:1554–1561, 2002.

汚染: 放射性核種が関与している場合,全身をガイガーカウンターで測定し,体外汚染を同定する。さらに,体内汚染の可能性を検出するため,鼻孔,耳,口腔,および創傷を湿らせたスワブでぬぐい,それらをカウンターにより検査する。尿,糞便および吐瀉物についても放射活性を検査する。

予後

医学的治療を施さない場合,全身被曝に対するLD50(50%の患者が60日以内に死亡する線量)は約4Gyである;6Gy以上の被曝はほとんど致死的である。6Gy未満では生存の可能性があり,それは総線量と反比例する。死亡するまでの期間もまた線量(ひいては症状)と反比例する。大脳症候群では数時間〜数日以内に,胃腸症候群では通常3〜10日以内に,死に至る。造血症候群では,併発する感染症により2〜3週間以内に,または大量出血により3〜6週間以内に死亡することがある。2Gy未満の全身線量に被曝した患者は,1カ月以内に十分回復するはずであるが,長期の後遺症(例,癌)が起こることがある。

医学的治療を施す場合,LD50は約6Gyで,ときに患者は10Gyでも生存することがある。

治療

被曝と同時に身体的損傷が生じることがある(例,爆風や転落により);関連する外傷は被曝と比べてより短時間で命を脅かすため,即刻に治療する外傷患者へのアプローチ: 評価と治療を参照 )。重篤な損傷の外傷蘇生を,特殊な放射線処理の装置や職員を待って遅らせることがあってはならない。外傷管理においてルーチンに使用される標準の普遍的予防策を実施することにより,蘇生チームは適切に防護される。

入院: 認定機関は,全ての病院がプロトコルを有し,職員が放射能汚染を処理する訓練を受けることを義務づけている。患者の放射能汚染が確認されれば,患者を指定された区域に即座に隔離し,除染し,病院の放射線安全担当職員,公衆衛生当局者,危険物チームおよび適切な司法当局に知らせて放射線源を調査する。

治療区域の表面は,施設の除染に有効なビニールシートで覆う;この準備を,医学的安定化の確保よりも決して優先して行ってはならない。汚物容器(“注意,放射性物質”とラベルを貼る),検体容器,およびガイガーカウンターを直ちに使用できるようにする。その部屋や患者と接触した全ての備品(救急車の機材を含め)は,汚染していないことが立証されるまで隔離する。

職員はキャップ,マスク,ガウン,グローブ,および靴カバーを装着し,防具の開口部は全てテープで封印する。使用した装具は,特別に印をつけた袋や容器に入れる。線量計バッジをつけて被曝のモニタリングを行う。職員を交代させて被曝を最小限とし,さらに妊娠している職員は治療区域から外す。

除染: 指定区域に隔離した後,衣服を注意深く脱がせて汚染の拡散を最小限に留め,適切に印をつけた容器に入れる。脱衣により約90%の体外汚染が排除される。汚染された皮膚表面は,放射能計数がバックグラウンドの約2倍となるまで,または一連の洗浄により汚染レベルが有意に低下しなくなるまで,微温湯と中性洗剤で洗う。洗浄中は全ての創傷を覆い,放射性物質の侵入を防ぐ。ブラシ洗浄は確実性を高めうるが,皮膚を剥離してはならない。指の爪および皮膚のひだには通常特別な注意が必要である。エチレンジアミン四酢酸を含んだ特殊なキレート溶液は必要ない。

創傷をガイガーカウンターで検査し,数値が正常化するまで洗浄する;埋没している物質の除去に壊死組織切除を要することがある。異物は鉛の容器に捨てる。

摂取された放射性物質は,被曝直後であれば催吐や洗浄により速やかに除去する。生理食塩水や希釈した過酸化水素での頻回の口腔洗浄は,口腔汚染に用いられる。眼汚染は,鼻涙管の汚染を避けるために,水や生理食塩水の流れを水平方向に向けて除染すべきである。

その他,体内汚染を減少させる特異的な方法は,関与している具体的な放射性核種に依存する;専門家との相談が推奨される。放射性ヨウ素への暴露(原子炉事故や核爆発後に想定されうる)があれば,患者にヨウ化カリウム(KI)をできる限り速やかに投与すべきである;その有効性は,被曝後数時間以内に大きく低下する。KIは,錠剤でまたは過飽和溶液として投与できる(投与量:成人,130mg;3〜18歳,65mg;1〜36カ月齢,32mg;1カ月齢未満,16mg)。他の放射性物質による体内汚染を治療するには,各種のキレート剤が使用可能である:過飽和させたカリウム(放射性ヨウ素),ジエチレントリアミン五酢酸のカルシウム塩または亜鉛塩(プルトニウム239やイットリウム90),プルシアンブルー(セシウム137,ルビジウム82,タリウム201),経口のリン酸カルシウム溶液やリン酸アルミニウム溶液(放射性ストロンチウム)などである。

除染は,体外の線源により被曝し,汚染を受けていない患者には必要ない。

特異的治療: 必要に応じて対症療法を行い,これにはショックや酸素欠乏症の管理,疼痛や不安の緩和,鎮静薬投与(ロラゼパム1〜2mg,静脈内,必要時)による発作コントロール,制吐薬投与(メトクロプラミド10〜20mg,静脈内,4〜6時間毎;プロクロルペラジン5〜10mg,静脈内,4〜6時間毎;オンダンセトロン4〜8mg,静脈内,8〜12時間毎)による嘔吐コントロール,下痢に対する止痢薬投与(カオリン/ペクチン30〜60mL,経口,軟便があるたびに;ロペラミド初回は4mg,経口,その後は軟便があるたびに2mg,経口)が含まれる。

大脳症候群に特異的な治療法はない。例外なく死亡する;ケアにより患者に安らぎを与えるべきである。

胃腸症候群は,積極的な急速補液および電解質補充により治療する。経静脈栄養を開始し,腸管の安静を促進するべきである。患者が発熱していれば,広域抗生物質(例,イミペネム500mg,静脈内,6時間毎)を直ちに開始すべきである。しかしながら,激しい感染症による敗血症性ショックが依然として最も多い死因である。

造血症候群の治療は,各種原因による骨髄低形成および汎血球減少症の治療に準じる(赤血球産生低下による貧血: 再生不良性貧血を参照 )。血液製剤を輸注して貧血および血小板減少を治療し,さらに造血成長因子(顆粒球コロニー刺激因子および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子)と広域抗生物質を投与して好中球減少および好中球減少性発熱をそれぞれ治療するべきである(好中球減少症とリンパ球減少症: 治療を参照 )。好中球減少のある患者もまた逆隔離する。4Gyを超える放射線量では骨髄回復の見込みは少なく,造血成長因子をできる限り速やかに投与する。幹細胞移植の成功例は限られているが,7〜8Gyを超える被曝では考慮すべきである(移植: 造血幹細胞移植を参照 )。

定期的な疾患徴候のモニタリング(例,白内障に対する眼科検査,甲状腺疾患に対する甲状腺機能試験)を除いて,特定の組織障害に対する特異的なモニタリングや治療はない。放射線誘発癌は,同様の自然発生癌と同じ方法で治療する。

予防

被曝からの防護は,被曝時間を極力短くし,線源からの距離を最大にとり,さらに遮蔽を使用することにより達成される。既知の個々の放射線源から防護を図ることは無理なく達成できる(例,鉛のエプロンや市販の透明シールドにより);しかしながら,大規模な災害(例,原子力事故や核攻撃)による放射性核種汚染の場合,多くが防護不可能である。したがって,放射線漏出後は可能な限り,被曝エリアからの避難が行われるべきであり,予想線量が0.05Gyを超えるときは避難を1週間継続し,生涯線量が1Gyを超えると予測されるときは永久的にその地域を離れる。避難が不可能であれば,コンクリートまたは金属構造のシェルター(例,地下室)の利用によりいくらか防護が得られる。

原子力発電所から16km(10マイル)以内の住人は,KI錠を即座に利用できるようにしておくべきである。これらは,地域の薬局および一部の公衆衛生当局から入手できる。動物においては,種々の薬物および化学物質(例,スルフヒドリル化合物)の被曝前投与により生存率が向上する。しかしながら,人間にはどれも実用的でない。

放射能関連の作業に従事する職員は全て,線量計バッジをつけ,過度の被曝の徴候がないかモニタリングされるべきである。標準の職業的限界は0.05Gy/年である。緊急医療スタッフに対する許容線量限界は,非救命的な事態で0.05Gy,救命的な事態で0.25Gyが推奨されている。
最終改訂月 2005年11月
最終更新月 2005年11月


















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