『人民の星』 5578号1面
トモダチ作戦でたかる米国 ポーズだけの支援
東日本大地震が三月一一日午後二時四六分、発生した。津波が来襲して東北、北関東の沿岸部は壊滅状態になり、福島第一原発の冷却機能喪失という重大事故が発生した。この非常事態をうけ、米国防総省は、在日米軍と米太平洋艦隊に東日本近海への出動を命じた。アメリカ政府はこの作戦を「トモダチ作戦」と名づけた。この作戦名にはアメリカ政府の狙いがこめられている。米軍の救援活動は、マスメディアをつうじて宣伝された。米兵が救援物資の輸送やがれきの整理などの作業をしたことは事実である。しかし、しなかったこともあり、この作戦と関連してやられたこともある。米軍はほんとうのところ、「トモダチ作戦」でなにをしたのか検証してみた。
なにもせず帰る核専門部隊
震災発生後、米軍の動きははやく、一三日には原子力空母ロナルド・レーガンと随伴するイージス艦など四隻が被災地の沖合に到着し、複数の艦載機ヘリコプターが支援物資の輸送を開始したと報じられた。また宮城県沖にも空母部隊とはべつに駆逐艦ジョン・S・マケインなど四隻が配置についた。
三月二五日のアメリカ大使館の発表では、「トモダチ作戦」に動員された兵力は一万八二八二人(うち沖縄から海兵隊員が三〇〇〇人)、艦船は空母、強襲揚陸艦などをふくむ一九隻、航空機一四〇機となっている。作戦の総司令部を米軍横田基地におき米太平洋艦隊司令官ウォルシュが指揮をとった。また現地司令部を陸上自衛隊仙台駐屯地(東北方面総監部)におき、一〇人の米軍幹部を派遣している。陸自東北方面総監部は日本の救援物流の指揮所でもあり、米軍は「トモダチ作戦」の遂行と同時に自衛隊の支援物流も指揮下においた。このほか、米軍の物資輸送の拠点として民間空港である、山形空港と仙台空港を占拠し、準戦時体制をしいた。
トモダチに込めた狙い
米軍はこの「日本支援」作戦を「トモダチ作戦」と命名した。在沖米海兵隊は、トモダチは日本政府が名づけたことを強調しているが、採用したのは米軍である。
というのは、地震発生の直前まで、日本人民の反米感情はピークに達していた。米国務省日本部長のケビン・メアが「日本人は合意文化をゆすりの手段につかう」「沖縄の人はごまかしとゆすりの名人だ」と暴言をはいていたことが暴露され、更迭せざるをえなくなっていた。実際は、アメリカこそ「ゆすりとたかりの名人」なのであるが、アメリカ支配階級の本音を正直にのべたメア発言で、日米関係は悪化し、「思いやり予算」もどうなるかわからない情勢であった。だからこそ、アメリカ帝国主義は東日本大震災を絶好のチャンスととらえ、「トモダチ」を売りこむことによって、対日要求を実現しようとしたのであった。
同時に、米軍の最大の関心事は、福島第一原発の行方だった。原発は核兵器製造の一工程を商用化したもので、軍事機密そのものであった。福島第一原発はアメリカのGE製であり、状況次第によっては人民の斗争が激化する可能性があった。福島原発を戒厳下におき、人民を抑圧することが必要であり、そのための部隊派遣でもあった。
放射能巡る米軍の動き
一二日に、同原発1号機の原子炉建屋が水素爆発しており、炉心溶融が確実視されていた。早晩、他の原子炉もおなじような状況におちいる可能性が大であった。一三日に「トモダチ作戦」を公表したが、この日空母ロナルド・レーガンの艦載機が仙台市周辺で活動して被ばくした。三機のヘリコプターと一七人の要員が低レベルの放射線を検知した。このとき同空母は福島第一原発の北東一八五㌔の地点を航行していた、被ばくにあわてて風下からの離脱をはかった。
その後、一四日から一五日にかけて2~4号機の建屋もすべて爆発炎上する最悪の事態となった。一五日、米国防総省は米軍兵士の福島第一原発から五〇カイリ(九三㌔㍍)以内への立ち入りを禁止する措置をうちだした。また、原発から八〇㌔圏内にいる米国人の避難、東京、横浜、名古屋在住の米政府職員の家族の日本からの離脱をみとめた。こうして米軍の「トモダチ作戦」は被ばくしない範囲でおこなうことが方針化された。
こののち、福島第一原発の放水による冷却がはじまるが、上空からの散水のための大きな袋、消防車、真水をはこぶ艀(はしけ)などは提供したが、けっして要員を提供することはしなかった。在沖海兵隊には放射能対応の専門部隊もふくまれていたが、出動することはなかった。
さらに、四月にはいりアメリカ本土から海兵隊放射能等対処専門部隊(CBIRF=シーバーフ)が秘密裏に米軍横田基地に到着していた。二日に一〇人、三日に九〇人、五日に五〇人と計一五〇人が来日したが、最終日になって防衛省が公表した。CBIRFは、核・生物・化学兵器(NBC)に対処する部隊である。この部隊の配備は、米軍が独自の判断でおこなったものである。それは防衛省幹部が語っているように「原発の状況が悪化し、付近で活動する米軍部隊に除染の必要が生じた場合にそなえる」ためであろう。あくまで米兵のための配置なのである。CBIRFは、原発汚染の情報を収集し、自衛隊員に除染の訓練をほどこして、帰国していった。海外の出動ははじめてで、いい訓練になったのである。
マスコミ使い美談宣伝
米大使館の発表によれば、第七艦隊の艦船、ヘリコプター、航空機は二六〇㌧の救援物資をとどけ、一六〇回の海上捜索をおこなったと“成果”を報告している。米軍のヘリや在沖海兵隊の一部が仙台以北を中心に一定の救援活動をおこなった。だが、この場合も、すべて政府の緊急災害対策本部の指示によって行動する自衛隊とはことなり、米軍は自由にヘリをとばして空から探索をし、すきなところに援助物資をとどけるという行動をおこなっている。しかも、これに日本の報道関係者を同乗させておこない、新聞やテレビではでに「トモダチ作戦」を宣伝した。
三月一一日の最初の地震からかなりの期間がたっても一度も援助物資がとどかないところもあった。そうしたところに米軍が物資をとどければ住民がよろこぶのは当然である。とくに典型的なのが災害で孤立した宮城県気仙沼大島の支援である。救援物資をはこび、がれきをとりのぞき、仮設のシャワー施設までつくったという美談として報じられている。しかし、仙台の日米共同調整所(現地司令部)では、「米軍が提供した仮設シャワーの利用がふえないのはなぜか」といった話になっている。
反米封じ日本資金略奪
ともかく、こうして在日米軍が一生懸命、災害救援活動に奮斗しているという報道が連日ながされることにより、情勢が熟したということで、国会は三月三一日、民主、自民の賛成多数で、向こう五年間毎年一八八〇億円の米軍への「思いやり予算」をきめた「特別協定」を可決した。「思いやり予算」はまったく根拠のない予算であり、米軍にただでくれてやっているのである。在日米軍基地は実際にはさらに多くの経費を日本政府からださせており、実際には毎年六〇〇〇億円にのぼる。これに在沖海兵隊の一部のグアム移転費も日本にださせ、日本の国家予算をアメリカの予算の一部のようにつかおうとしている。
「トモダチ作戦」でアメリカがつかった費用は八〇〇〇万㌦(約六八億円)であり、元は十分にとれたわけで、この面では来日した国務長官クリントンも米国大使ルースも笑いがとまらず、ルースなどは防衛相の北沢をつれて空母ロナルド・レーガンを訪問し、「よくやった」とたたえた。しかもアメリカ政府はあつかましくも、八〇〇〇万㌦をこえる分は日本政府が負担してほしいと申し入れている。これこそ「たかりとゆすりの名人」である。そして、この「トモダチ作戦」のアメリカ側の対日窓口が、更迭されたメアであり、たかりの名人とは自分のことであったのである。
おおざっぱであるが、「トモダチ作戦」の概要を見てきた。まだかくされているいろんな事実があるだろうが、おもてにでた事実をひろっただけでも、そのインチキは歴然としている。「アメリカはいいことをしてくれる」などとのんきなことをいっていたらたいへんなことになる。なによりも地震列島に原発をおしつけたのはアメリカである。日本がアメリカから独立することは、平和と人民生活の繁栄を実現するためにももっとも重要な課題となっている。
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