2012年10月13日土曜日

東芝 多核種除去設備「アルプス」


原発汚染水処理設備 誤操作で停止
4月4日 12時52分


東京電力福島第一原子力発電所で、先月末に試運転を始めた汚染水から多くの放射性物質を取り除く新たな処理設備が4日朝、運転員の誤った操作で停止しました。

4日午前5時20分すぎ、福島第一原発の汚染水から多くの放射性物質を取り除く「ALPS」と呼ばれる処理設備が、突然運転を停止しました。

東京電力が設備を確認したところ、異常や汚染水の漏えいなどはなく、運転員が装置のボタンを押し間違ったことが原因だと分かり、1時間後に運転を再開しました。

この設備は、汚染水からこれまで除去できなかった62種類の放射性物質を取り除くもので、先月30日から試運転を始めていました。

今回のトラブル自体は大きなものではありませんでしたが、設備の安全を確認するまでに1時間以上かかっている間、国や自治体への連絡はなく、報道機関に発表があったのは発生から3時間後でした。

トラブルの発表を巡っては、先月、使用済み核燃料の冷却システムが停電で止まった際にも発生から3時間以上かかり、遅れが指摘されました。

東京電力は、「停止直後に誤操作と分かり、安全上問題はないと判断して再起動後の連絡となった。今後、できるだけ早い通報に努めたい」としています。



動画説明

福島第1原発で増え続けている汚染水から、60種類以上の放射性物質を除去することができる、多核種除去装置「ALPS(アルプス)」の試験運転が、30日から始まった。「ALPS」の試験運転は、3つある系統のうち、今回は1つの系統を使って行われており、汚染水をおよそ4カ月間処理し、ストロンチウムなど62の放射性物質が、計画通り除去できているかを確認する。問題がなければ、残る2つの系統も確認を行い、早ければ、秋ごろの本格的な稼働を目指す予定。一方で、汚染水に関して、東京電力は、放射性物質を除去したあと、海に放出することも検討しているが、「ALPS」でも全ての放射性物質を取り除けないため、本格的な稼働をしたとしても、増え続ける汚染水に対する根本的な問題の解決となるかは不透明となっている。

東日本大震災:福島第1原発事故 アルプス試運転 海へ放出、めど立たず 県漁連反対、なお残るトリチウム /福島

毎日新聞 2013年03月31日 地方版
 たまり続ける汚染水対策の切り札にと、東京電力が福島第1原発で試運転を始めた新浄化設備「ALPS(アルプス)」。浄化後の水は海に放出する方針だが、漁業者の反対で見通しが立たない。
 原子炉冷却などで生じた汚染水は放射性セシウムを除去後、淡水と濃縮塩水に分離する。淡水は炉の冷却に再利用し、塩水は敷地内の貯蔵タンクで保管しているが、すでに27万トンに上る。
 そこで、東電は塩水に含まれる63種類の放射性物質を取り除き、海に放出する計画を考案。東芝が受注して昨年3月から建設を開始、約1年かけて完成させた。建設費用は「契約上答えられない」。
 アルプスを通過した汚染水は有機物などが除去され、マグネシウムやカリウムなどのアルカリ性金属も取り除かれる。その後、交換式フィルターの詰まった14の吸着材を通過して浄化される。だが、唯一放射性トリチウムは除去できない。
 福島沖では今月、事故以来、操業自粛が続いていた沿岸漁業のコウナゴの試験操業が始まったばかり。県漁連の新妻芳弘専務理事は「たとえすべての放射性物質がなくなっても元は汚染水。海への放出は許されない」と、風評被害の拡大を恐れて強く反発している。
 東電は「地元の了承が得られなければ放出はしない」としているが、了承までに時間を要することは必至。中間貯蔵施設建設が引き延ばされ、仮置き場にたまり続ける汚染土壌同様、行き場のない汚染水がたまり続ける危険性をはらむ。【神保圭作】



62種の放射性物質を除去 廃炉作業を前進  

2012.8.26 18:00 (1/3ページ)すごいぞ!ニッポンのキーテク
福島第1原発の汚染水の放射性物質の除去に使われる東芝が開発した新装置 
福島第1原発の汚染水の放射性物質の除去に使われる東芝が開発した新装置 
 東芝が開発した、水に含まれる62種類の放射性物質を除去できる放射能汚染水処理装置が、東京電力福島第1原子力発電所の廃炉処理を大きく前進させると期待されている。同原発内に大量に存在している汚染水の処理に大いに貢献することが見込まれているからだ。東芝は9月から同原発内で試験運転を始め、年内にも本格稼働させる考えだ。
 「汚染水を処理できれば廃炉処理に向けた作業が大きく前進する。意義は大きい」。7月24日、東芝が京浜事業所(横浜市鶴見区)で開いた説明会で、原田稔之事業所長は新開発の処理装置の性能に胸を張った。
 東芝が開発したのは「アルプス」と呼ばれる多核種除去設備。汚染水から重金属やカルシウムなどを除去する前処理設備と、活性炭や樹脂などの特殊な吸着材で放射性物質を取り除く吸着塔で構成。福島第1原発では、汚染水からセシウムを取り除く東芝製の処理装置「サリー」が稼働中だが、アルプスは残留するストロンチウムやヨウ素などの放射性物質を除去し法定濃度以下に下げる。いずれの物質が外部に漏れ出しても許容される濃度以下にできるといい、例えばストロンチウムなら汚染水の濃度の約1000万分の1に下がる。

 
 福島第1原発には全部で3系統を設置。通常は2系統を稼働させて1日当たり計500トンを処理する。東電によれば、同原発の敷地内には約20万トンの汚染水があるため、同装置を使えば約400日で処理できる計算だ。放射性物質を吸着させた使用済み樹脂は、専用容器で保管するという。
 アルプスは、米放射性廃棄物処理事業大手のエナジーソリューションが開発した設計技術を基に東芝が系統や機器類を仕上げた。価格は非公表。東芝は2月に東電から機器類を受注。3月から製造を開始し、6月から同原発内で取り付け作業を進めている。 
 原発メーカーの東芝は、福島第1原発の事故の収束に向け、新技術を通じて東電や自治体の除染の支援を続けている。事故後、国内原発の新設が停止し、再稼働もままならない状況のなか、原発敷地内外の放射能を取り除くことが、国内事業が再スタートするためには欠かせないと判断しているためだ。
 汚染水処理分野では、移動式の処理装置をIHIと共同開発。特殊な吸着材を施したドラム缶に汚染水を通し、セシウムを取り除く仕組みで、農業用水やプール水を1時間当たり1トンの割合で処理できる性能を各自治体に売り込んでいる。また、土壌にたまった放射性物質の除去に向けては、トレーラーで運べる放射能汚染土壌処理装置「サリー・ソイル」を開発。土壌にたまった放射性セシウムを97%除去することが可能で、1日当たり砂場2面相当分の1.7トンの処理が行える。

 
東芝は、学校や公園などに装置と作業員を派遣し、1日当たり数百万円で除染を請け負う。 このほかに、持ち運びが可能な重量(9.8キロ)で、放射線量を色の変化で簡単に表示できる測定装置を開発し、1日当たり50万円で測定代行サービスを手がけている。
 環境省の試算によれば、福島第1原発事故に伴う除染活動で生じる土壌や廃棄物は合計で最大、東京ドーム35杯分に相当する4400万立方メートルにのぼるという。東芝では「敷地内の汚染水処理や、飛散した放射性物質の解決抜きに、原発の再稼働や新設の計画が動き出すのは難しい」(幹部)とみて、より効果的な除汚技術の開発を急ぐ。(今井裕治)

東芝 多核種除去設備「アルプス」 水が含む62種の放射性物質処理 (1/2ページ)




福島第1原発の汚染水の放射性物質の除去に使われる東芝が開発した装置
東芝が開発した、水に含まれる62種類の放射性物質を除去できる放射能汚染水処理装置が、東京電力福島第1原子力発電所の廃炉処理を大きく前進させると期待されている。同原発内に大量に存在している汚染水の処理に大いに貢献することが見込まれているからだ。東芝は9月から同原発内で試験運転を始め、年内にも本格稼働させる考えだ。
 ◆廃炉へ大きく前進
 「汚染水を処理できれば廃炉処理に向けた作業が大きく前進する。意義は大きい」。7月24日、東芝が京浜事業所(横浜市鶴見区)で開いた説明会で、原田稔之事業所長は新開発の処理装置の性能に胸を張った。
 東芝が開発したのは「アルプス」と呼ばれる多核種除去設備。汚染水から重金属やカルシウムなどを除去する前処理設備と、活性炭や樹脂などの特殊な吸着材で放射性物質を取り除く吸着塔で構成。福島第1原発では、汚染水からセシウムを取り除く東芝製の処理装置「サリー」が稼働中だが、アルプスは残留するストロンチウムやヨウ素などの放射性物質を除去し法定濃度以下に下げる。いずれの物質が外部に漏れ出しても許容される濃度以下にできるといい、例えばストロンチウムなら汚染水の濃度の約1000万分の1に下がる。
 福島第1原発には全部で3系統を設置。通常は2系統を稼働させて1日当たり計500トンを処理する。東電によれば、同原発の敷地内には約20万トンの汚染水があるため、同装置を使えば約400日で処理できる計算だ。放射性物質を吸着させた使用済み樹脂は、専用容器で保管するという。
 アルプスは、米放射性廃棄物処理事業大手のエナジーソリューションが開発した設計技術を基に東芝が系統や機器類を仕上げた。価格は非公表。東芝は2月に東電から機器類を受注。3月から製造を開始し、6月から同原発内で取り付け作業を進めている。

 ◆東電や自治体の除染支援
 原発メーカーの東芝は、福島第1原発の事故の収束に向け、新技術を通じて東電や自治体の除染の支援を続けている。事故後、国内原発の新設が停止し、再稼働もままならない状況のなか、原発敷地内外の放射能を取り除くことが、国内事業が再スタートするためには欠かせないと判断しているためだ。
 汚染水処理分野では、移動式の処理装置をIHIと共同開発。特殊な吸着材を施したドラム缶に汚染水を通し、セシウムを取り除く仕組みで、農業用水やプール水を1時間当たり1トンの割合で処理できる性能を各自治体に売り込んでいる。また、土壌にたまった放射性物質の除去に向けては、トレーラーで運べる放射能汚染土壌処理装置「サリー・ソイル」を開発。土壌にたまった放射性セシウムを97%除去することが可能で、1日当たり砂場2面相当分の1.7トンの処理が行える。東芝は、学校や公園などに装置と作業員を派遣し、1日当たり数百万円で除染を請け負う。
 このほかに、持ち運びが可能な重量(9.8キロ)で、放射線量を色の変化で簡単に表示できる測定装置を開発し、1日当たり50万円で測定代行サービスを手掛けている。
 環境省の試算によれば、福島第1原発事故に伴う除染活動で生じる土壌や廃棄物は合計で最大、東京ドーム35杯分に相当する4400万立方メートルに上るという。東芝では「敷地内の汚染水処理や、飛散した放射性物質の解決抜きに、原発の再稼働や新設の計画が動き出すのは難しい」(幹部)とみて、より効果的な除汚技術の開発を急ぐ。(今井裕治

物質・材料研究機構 「放射性物質の吸着材開発」に成功 実用化に向けて

[ 2012/06/29 ]
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独立行政法人物質・材料研究機構(NIMS)が、多くの細孔を持つ「メソポーラス物質」という新規材料で、放射性物質の吸着材を開発した。除染における利用に向け、実用化が進められている。(参照:東大生産技術研究所 放射性汚染水から放射性セシウムを吸着する「除染布」を開発
image from 物質・材料研究機構
今回吸着材の材料とされて注目が集まったのは、「メソポーラス物質」。多くの大きさ2~50ナノメートル程の孔(あな)を持つ、多孔性材料である。表面積が大きいことが特徴の、約20年前日本で発見された材料だ。
NIMSはそのメソポーラス物質を使って、溶液に含まれるヨウ素やセシウムなどの放射性物質を選択して捕まえ、除去もできる吸着材を開発した。開発したのは、元素戦略材料センターのエジプト人、シェリフ・エル・サフティ主幹研究員だ。
化学反応を利用して、目的の放射性物質だけを吸着するという同吸着材。シェリフ氏は「この吸着材は、選択性が高いのが特徴です。特定の物質しか捕獲しないので、塩分やミネラルが含まれている海水でも、目的の放射性物質だけを取り除くことができます」とコメントしている。
一方で、NIMSの国際ナノアーキテクトニクス研究拠点、山内悠輔独立研究者らは「プルシアンブルー」という顔料を用いたセシウム吸着材を開発した。
原発の放射性物質処理問題は、まだ続き、長期化が予想されている。今回の吸着材はいまだ実用化に向けては課題があるものの、除染システムへの新たな光として、今後が期待される。</p>

東大生産技術研究所 放射性汚染水から放射性セシウムを吸着する「除染布」を開発

[ 2012/05/29 ]
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2012年5月28日、東京大学生産技術研究所のチームは放射性汚染水から放射性セシウムを吸着する「除染布」を開発したことを発表した。放射性汚染水や放射性セシウムで汚染された土壌の除染に活用することが考えられている。
(参考:東京工業大原子炉工学研究所とのNPO法人「再生舎」がトラックで運べる汚染水処理装置の実証実験を公開
東京大学生産技術研究所の迫田章義教授らを中心とするチームは、「プルシアンブルー」という青い顔料の微粒子を布に固定し、放射性セシウムを吸着することに成功した。60センチ×40センチの薄い「除染布」1枚で10リットルの水に溶けた10ミリグラムの放射性セシウムを99%以上吸着できることが確認できている。
除染布を塩化水素の水溶液に付けることで100%放射性セシウムを回収することが出来る。今後は回収した放射性セシウムをどのように処理するかが課題となるだろう。

【物質・材料研究機構】微細な穴が放射性物質を捕まえる
[2012.04.11]独立行政法人物質・材料研究機構(本部・茨城県つくば市)は、メソポーラス物質という多くの細孔をもつ新規材料を使い、放射性物質の吸着材を開発した。汚染された土壌や海水の除染に向け、実用化が進められている。|http://www.nippon.com/ja/features/c00505/

日本で発見、無数の微細な孔をもつ“メソポーラス物質”

メソポーラス物質とは、2~50nm(1ナノメートルは1mの10億分の1)の大きさの孔(あな)をたくさん持つ多孔性材料。約20年前に日本で発見された。多くの孔を持つため、表面積が極端に大きいことが特徴だ。メソとは、ナノとマイクロの中間を意味する。大きさが2nm以下のナノ孔には、水やメタンなどのごく小さな分子しか入れないが、それより大きいメソ孔には、様々な化合物の分子が入ることができる。そのため、孔の中で多彩な化学反応が起こる。
一方、メソ孔の大きさでは、取り込まれた分子が集合し自由には動けず、分子の並びや動きが制限される。そのため、孔内部の分子を精密にコントロールできるといった、従来の材料にはない独自の機能を持つだろうと期待されている。現在、触媒や光学材料などの応用に向けて、世界中で研究が進められている。

化学反応で放射性物質だけを捕獲する

物質・材料研究機構(NIMS)は、メソポーラス物質を使って溶液に含まれるヨウ素やストロンチウム、セシウムなどの放射性物質を選択的に捕まえ、簡単に除去できる吸着材を開発した。開発したのは、元素戦略材料センターのシェリフ・エル・サフティ主幹研究員だ。エジプト人で、同センターにはこのほか、中東からの研究スタッフが集まっている。日本の研究機関としては珍しい顔ぶれだ。同機構は、国際化を積極的に推進しており、所内には海外出身の研究者が多く見受けられる。
メソポーラスシリカ:内部にナノサイズの微細孔が形成されている。
この吸着材は、食品の保存剤「シリカゲル」の材料としても知られるシリカ(二酸化ケイ素)を材料にして合成したメソポーラスシリカの孔の中の壁に、放射性物質を吸着する化合物をびっしりと敷き詰めたものだ。細かい穴が規則正しく無数に空いているために表面積が大きくなり、吸着化合物を高い密度で敷きつめることができた。そのおかげで、ごく微量しか含まれていない放射性物質を捕まえられる。
「この吸着材は、選択性が高いのが特徴です。特定の物質しか捕獲しないので、塩分やミネラルが含まれている海水でも、目的の放射性物質だけを取り除くことができます」とシェリフ主幹研究員は説明する。イオン交換材料や触媒などとして利用されているゼオライトなどの従来の吸着材は、特定の物質に吸着する力が弱いため、構造の似た他の物質も吸着してしまい、効率が悪かった。しかし、新しく開発された吸着材は、化学反応により目的の放射性物質だけを吸着するため、選択性が高く、効率がよい。
ただ、シェリフ主幹研究員によると、放射性物質に適合した吸着化合物を探すのにとても苦労したという。100回以上も試行錯誤を繰り返し、まずはヨウ素、続いてストロンチウムに適合する吸着材を開発。最近になって、セシウム用の吸着材もようやく開発することができた。
開発した吸着材は、化学反応を利用して、放射性物質を検出することもできる。例えば、ヨウ素が吸着すると、吸着化合物がそれに反応して吸着材は緑色に変色する。この色は、ヨウ素の量に合わせて変化するので、どのくらいの量が含まれているのかも簡単に調べられる。さらに、化学反応により、捕まえた放射性物質を吸着材から分離することも可能だ。
吸着する物質によって、色が変わる。シェリフ主幹研究員は、放射性物質以外にもさまざまな金属の吸着剤を開発。飲料水に含まれる有害金属の除去剤へも応用した。

抜群のセシウム吸着性能を実現

プルシアンブルーの溶液に水溶性ポリマーを加えかき混ぜるという簡単な方法で、メソポーラス・プルシアンブルーの合成に成功。
一方、同機構 国際ナノアーキテクトニクス研究拠点の山内悠輔独立研究者らが開発したのは、「プルシアンブルー」という顔料を用いたセシウム吸着材だ。プルシアンブルーは鉄を含む化合物で、鮮やかな青色をしている。ジャングルジムのような結晶構造をしており、その隙間にセシウムを取り込むことが可能だ。体内でも安定した構造を保つことができるので、放射性セシウムを大量に摂取した時の解毒剤として使われることもある。これまで、セシウムを吸着する効率があまりよくないという難点もあったが、山内氏らはプルシアンブルーの結晶にメソポーラス構造を形成させることで、セシウムを吸着する能力を高めることに成功した。
メソポーラス・プルシアンブルーの表面構造(左)と内部構造(右)。表面には細かい穴がびっしり。内部には大きな穴。(写真提供:山内悠輔独立研究者)
表面積の大きいポーラス材料を使って、プルシアンブルーのセシウム吸着能力を高める試みは以前から行われていたが、鋳型を使って孔の空いた結晶をつくるという従来の方法では、うまく実現できなかった。
「そこで、プルシアンブルーの結晶にエッチングで孔を空けてしまおうと思ったのです」と山内氏は説明する。新たに開発した合成法は、まず、プルシアンブルーの均一な粒子をつくり、その溶液に水溶性ポリマーを加える。すると、粒子の表面にポリマーが付着する。溶液を酸性にすると、ポリマーのついていない部分が溶液に溶けて、細かい孔が無数に空く——という具合だ。
メソポーラス・プルシアンブルーの結晶構造を分析する山内独立研究者
山内氏によると、「不規則に大小の孔を空け、できるだけ表面積を大きくしました」という。1gあたりの表面積は330m2。これは市販のプルシアンブルーの10倍以上だ。表面積の増大によりセシウムの吸着量も一挙に10倍以上に増えた。山内氏は、この高い吸着能力により、汚染土壌の処理などに利用できると考えている。
福島第一原子力発電所事故で漏れ出した放射性物質の処理問題は、長期化が予想されている。今回、開発された吸着材はまだ実用化に向けて量産化などの課題を残しているものの、長く困難な闘いを強いる除染の取り組みに向け、確かな貢献が期待されている。
取材・文=佐藤 成美
撮影=川本 聖哉




付録
福島第一原子力発電所における高濃度の放射性物質を含むたまり水の
貯蔵及び処理の状況について(第57報)
平成24 年7 月25 日
東京電力株式会社




































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